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花の方舟  作者: よつば 綴
第一章 出会い
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第5話 再会




 皆様、こんにちは。ポカポカ陽気で少しおねむなフルールです。王国は今日も今日とて平和です。


 今日はお店番の合間にデメテール王国の紹介をしましょう。


 まずは王宮からです。王宮には国王様のお住まいである、とても立派なお城があります。それから、国事の際の道具や食料庫、大臣方の執務室、美しい庭園などもありとーっても広いのです。

 数十年に一度、王族が入れ替わる時には大掛かりなお引越しが行われます。数日かけて行われるのですが、その間は国中がお祭り騒ぎになります。頻繁にあることではないので、私はまだ見たことがありません。

 次は、私の花屋もある城下町です。城下町にはたくさんのお店が並んでいて、中央広場には立派な噴水があります。噴水の周りにはスキルを使って大道芸を披露する人や、露店が沢山あります。なので広場はいつも賑わっているのです。

 王宮の周りには貴族の方々のお屋敷が王宮を囲うようにあります。王宮に品物をおろすお店は大半が王宮の近くに店を構えられるのです。

 王宮、上級貴族邸、貴族邸、卸業者、中央広場、一般のお店、住宅街、農業地帯となっています。郊外には広大な牧草地があり、民家や貴族の別邸などもあります。

 王国は20m程の高さの壁や柵に囲まれていて、獣から守られています。壁や柵の内側は堀になっていて、王宮の背後にある大きな山から流れてくる川が通っています。天然水なので美味しく飲めるのです。

 王国の大門を出て数時間ほど、王国を背に歩くと海があります。海もかなり広い範囲がデメテール王国の領地なのです。漁業が盛んで、お魚の燻製が王国の名産品です。

 さて、王国の説明はこのくらいにしておきましょう。今日は本当にポカポカしていて眠くなってしまいます。お花さんたちもお日様を浴びて気持ち良さそうです。そんなお花さんたちを眺めていると、少しウトウトしてしまいます······。



「お花、くださいな」


 はぅっ、いけません。あまりの心地良さで眠ってしまっていたようです。


「あらっ、失礼致しました! どちらを差し上げましょう······か······。あら、ラーファ様ではありませんか」


 赤い薔薇を1本だけ持って立っているのは、王宮の東屋でお会いしたラーファ様です。


「こんにちは。起こしちゃってごめんね?このバラを頂きたいんだけど······」

「とっ、とんでもありません! お見苦しい所をお見せしてしまって申し訳ございません。えっと、こちらのバラですね。かしこまりました。あの······今日はとっても良いお天気ですね」

「うん、すごく気持ち良さそうにお昼寝してたね。起こすのが申し訳なくて少し待っていたんだ」

「まぁ、なんてこと······。お待たせしてすみませんでした。お恥ずかしい限りです······」


 恥ずかしくてお顔を見れません。


「あっはは。可愛いね。この薔薇みたいに真っ赤だね」

「もうっ、からかわないでください」

「からかってないよ。本気で可愛いと思ったんだよ。はいこれ、フルールにプレゼントだよ」


 ラーファ様は買ったばかりの薔薇を私にくださいました。


「私に······ですか? どうして······?」

「さぁどうしてかな? ねぇ、ここのお花は全部フルールが出したものなの?」

「はい。そうなんです。毎朝お散歩しながら出したり、お店の開店準備をしながら出すんです。楽しいとぽんぽん出しちゃうんです」

「へぇ、いいね。なんだか幸せそうだね。見ているだけで幸せを分けてもらえるみたいだ」

「そんな······。大袈裟ですよ。私はただ、私の出したお花で誰かが笑顔になってくれたら嬉しいなって、そう思うだけです」

「素敵だね。そんな君だから美しい花を出せるんだよ」

「うふふ、ありがとうございます」

「お話出来て楽しかったよ。ありがとう。また来るね」

「いえ、こちらこそありがとうございました。またいらしてくださいね」


 とても年下とは思えません。お上品で紳士的で、前回お会いした時とは別人の様に余裕があって、まるでお兄様みたいです。


「フルール、今のがこの間お会いした坊ちゃんかい?」

「そうよ、父さん。すごくお優しい方なの。先日は泣いてらしたから、弟を慰めるように優しくしたんだけれど、今日お会いしたら私の方が年下みたいだったわ」

「そうかい······良かったねぇ」

「えぇ、どうかしたの?」

「いやぁ、なんでもねぇよ」


 ──あの坊ちゃん、どう見てもフルールに気があるだろ──


「お若いのに立派だなぁと思ってな。主に口が」

「ん? 口がどうしたの?」

「何でもねぇよ〜」


 父さんはこの辺りじゃ1番の大男で、大工さんをしながら時々花屋の方も手伝ってくれています。父さんと私があまり似てないと言われるのが寂しいようです。母さんが亡くなってから、ちょっと過保護かなと思うところもあるのですが、とってもいいお父さんです。


「フルールももう15か。大きくなったよなぁ。······あの坊ちゃんたまに来るのかい?」

「いいえ、今日初めていらしたの。お会いするのも、王宮でお会いして以来よ」

「そうかい。フルール、気をつけな。外面そとづらは紳士でも、男は皆狼だからな」

「ふふっ。父さんったらなんの心配してるの?」

「いや、なに······お前もいい歳だからな。変な男に引っかからねぇかと心配になったんだよ」

「まぁ、父さんは私を信じてないのかしら。母さんに似てしっかりものよ?」

「そうだな。お前は母さんににて美人で気立ても良くて優しい。俺には天使みてぇだよ」


 父さんは近頃、以前にも増して心配性です。私をあまり外に出したがりません。


「最近、ここいらでもかどわかしが出たらしいからな。くれぐれも気をつけるんだぞ。俺は大工あっちの仕事に戻るからな」

「はい。充分気をつけます。行ってらっしゃい、父さん。気をつけてね」

「おう」



 近頃この城下町で10歳前後の少女が数人、拐かされる事件が起きているのです。先日も、近くの通りで11歳の少女が忽然と消えたそうです。早く見つかって、犯人が捕まるといいのですが······。

 他人事ではない大変な事件ですが、私には大仕事があって今はそちらの事で頭がいっぱいなのです。来週の王妃様のご生誕祭で、数ある余興のうち私もその一つを務めるのです。

 様々なお花を出しながら舞を披露するのですが、まだまだ練習しなければなりません。一度に両手いっぱいに花を出せるようになるのが目標なのです。

 さて、そろそろ練習をしなければなので今日はこの辺で(*´︶`*)





✳1本の薔薇

 意味:一目惚れ。



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