第13話 4大国
皆さん、こんにちは。
あの夜以来、ラーファ様はお越しくださいません。と言いましても2日しか経っていないのですが、寂しいと我儘を言ってしまいそうなフルールです。
さてさて、今日はお店も暇なので各国のお話をしましょう。
東のデメテール、西のアルブレス、南のアウスディース、北のセプトゥスウリスが四方を代表する大国です。
東に位置する我らがデメテール王国。実は力を与えられるのは、王国内で力を持つ親から生まれた者だけなのだそうです。他国から移住して子供が生まれても、親が力を持たなければ子は力を与えません。
他の国ではスキルを与えられるという事は無いようですが、精霊と共存していたり魔術を使う者がいたりするのだとか。
いつかこの目で、まだ知らぬ世界を見てみたいです。
西の果てにあるアルブレス王国はご存知通り、戦が頻繁に起きており、あまり豊かな国とは言えません。貧困で苦しむ民が多く治安も悪いとか。
世界で唯一、奴隷制度が遺った国です。ですが、少しずつではあるものの他国が秘密裏に奴隷を保護していると噂されています。
ラーファ様のお兄様がご家族とお暮らしになっている、南のアウスディース王国。
争いとは無縁で、年中お祭り騒ぎの賑やかな国です。とても楽しそうで、私もいつか訪れてみたい国なのです。
北の奥地にあるセプトゥスウリス国は、大昔よりエルフの方々が暮らす格式高い厳格な国です。
エルフとは長く尖った耳が特徴の妖精です。精霊と共に平和に暮らしているそうです。
今は深い雪に覆われた北の大山の麓にあります。ですが元々は 、今のアルブレス王国の辺りに豊かな国を構えていたのです。後のアルブレス王国となった部族との戦に敗れ北に追いやられたのだとか。
セプトゥスウリスとデメテールは昔から親交が深く、お互いに支え合って発展してきました。
アウスディースはアルブレス以外の国とは友好関係を築いています。
年に数回セプトゥスウリスから使節団が来て、王国総出でお迎えします。
その使節団の一員としてデメテールを訪れたリーフというエルフの女の子と仲良くなり、時々お手紙の交換をしています。
4つの大国の他にも国や集落があります。龍の里や魔物の国があるという伝説もありますが定かではありません。
時々やってくる旅人から、他国の様子や冒険譚を聞くのは楽しいものです。私も幼い頃、一度は旅に出てみたいと思ったものです。
年に数回セプトゥスウリスから使節団が来て、王国総出でお迎えします。その使節団の一員としてデメテールを訪れたリーフというエルフの女の子と仲良くなり、時々お手紙の交換をしています。
いつかラーファ様が仰っていましたが、新婚旅行は世界一周だと。本当にそんな日が来れば良いのですが、人生そう上手くは運ばないものです。私は日々のささやかな幸せを大切に生きてゆきたいです。
各国の紹介は以上です。とても簡単な紹介になってしまいましたね。
お話は変わりますが、フルールは少しだけレベルアップしました。
ラーファ様がいらっしゃらない間、落ち込んだ気持ちでお花を出現させていたら、花びらだけで出現させる事ができたのです。これを使えば、これまでよりも舞華姫の技の幅が広がります。もっともっと精進しなくては!!
「我儘言ってないで頑張らなくちゃね」
「フルールは頑張りすぎるから心配だよ」
「ひゃぁぁぁっ!! ラーファ様!?」
突然ラーファ様に耳元で囁かれ、思わず悲鳴をあげてしまいました。
「ごめんごめん、驚かしちゃった? なんかずっとお花に話しかけてたみたいだけど······。お邪魔だったかな?」
「そ、そんなことはありません。ラーファ様が会いにいらしてくれないので、お花に愚痴を言っておりました」
「そんな······。ごめんね、ちょっと家がバタバタしててね」
「うふふ、冗談ですよ。お家で何かあったのですか?」
「大したことじゃないんだけどね······。ほら、パーティでのドナの件でね、お父上が激怒しちゃって」
「でぇ、ドナパパが怒鳴りこんで来たんだよねぇ」
ラーファ様の後ろからヒョコッとアズ様が出ていらっしゃいました。
「あら、アズ様もいらしたんですね。こんにちは」
「うん、こんにちはぁ。ドナパパすっごかたんだよぉ。パーティの次の日にね、待ち合わせ場所にラーファが来ないから迎えに行ったら、ヌーアみたいな顔したドナパパがラーファのパパにめちゃくちゃ怒鳴ってたの」
ヌーアとは長い2本の角が特徴的な魔物です。お伽噺などで動物を食べてしまう悪い魔物です。
「まぁ······。やはりマズかったのですね。それで、どうなったのですか?」
「父さんが追い返したよ」
「え?」
「ラーファのお父さん、実はめっちゃ強んだよぉ。ドナパパ浮かせて敷地の外まで放り出しちゃったの。あれは······あっははは······何度思い出しても、ブフッ······笑える······」
「アズ······もういいだろ。笑いすぎ」
「ラーファだってお父さんの後ろで笑い転げてたじゃないかぁ。ふふふ······」
「だって、ねぇ、あれはフルールにも見せたかったよ」
そう言ってラーファ様は天井を見つめ、笑いを堪えられました。
「だ、大丈夫なのですか? 笑い事なのですか?」
「あ~大丈夫。ドナは昔から僕と結婚するって騒いでたんだけど、適当にあしらっては毎回お父上が怒鳴りこんで来るんだ。で、毎回 懲りもせず父さんに放り出されるんだ。まぁ今回はドナと同様にお父上もフルールを蔑むような事言ったから、父さんキレちゃってちょっと勢い良く吹っ飛ばしちゃったんだよね。その飛びっぷりったら見事だったよ」
「わ、私の所為でそのような事に······」
「違うよ。フルールの所為じゃないよ。あの一族は昔からそう。平気で人を傷つけるから許せないんだ」
「そうだったんですか······」
「確かにぃ、フルールちゃんが気にする事はないと思う。ドナはラーファに好かれようと必死だけど、全然わかってないもん。根本的に違うんだよねぇ」
「そうそう。はい、この話はお終い」
ラーファ様が手をポンとひとつ叩き、お話を切ってしまわれました。
「フルール、今からちょっと出掛けない?
もうお店もしまう時間でしょ?」
「はい、構いませんがどちらに?」
「それは行ってのお楽しみ」
ラーファ様はニタァーッと笑みを浮かべて、アズ様とお顔を見合わせたまま教えてくださいませんでした。一体、何処へ連れて行かれるのでしょうか······。