第4話 春
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「君、初対面なのに、今朝待ち伏せしてきた人だよね。」
アジフライモグモグ状態の俺に話しかけてきた恋人の春。
状況のロマンチック度に天と地の差があるが、
円形花壇での最初の出会いを彷彿とさせる彼女の様子に、現状に対しての寂寥感と懐かしさを感じて少し複雑な気分になった。
「なんかね、君を見てると不思議な気持ちになるの。」
「新手のナンパかな?」
「...朝から待ち伏せしてる人間が言えることかねー。」
「まぁそうだね、ははっ、ごめん。以後気をつけるよ。」
これ以上は耐えきれなかった。会話が楽しくなって、より今の現状が悲しくなる。
俺は少しだけ残った白米と味噌汁にアジフライを口にかきこんで、逃げるように席を立つ。
「ちょ、ちょっと!」
背後に薄っすら聞こえてきた、春の声を振り切るように、俺は教室へと戻った。
今回の記憶喪失、少し厄介なのが、春と加奈以外の人間は俺の存在を覚えているということだ。
春と加奈の友達や家族からすれば、彼女達がとぼけているようにしか見えない。
まぁ、今朝、加奈の友達が大喧嘩したと勘違いしたことで丸くおさまったし、俺も2人と大喧嘩したという設定に合わせてあげることで、変な悪目立ちをさせてあげないようにするしかないか。
俺の中で、今後の対外的な行動の指針が決まった。
「なぁ、本当に何があったんだよ、お前ら。」
教室に戻ると、今朝とは一変して、本気で心配な様子で和也が話しかけてきた。
「まぁ、なんか、俺がしたのかもな。ずっとあんな感じだから。」
「そうかもしんねぇけど、2人同時にだし、2人とも初対面のフリ上手すぎねぇか?」
まぁ察しのいい和也のことだから、不審に思うとは考えていた。
「俺もびっくりしたけど、あんまり騒いでも2人に迷惑かけるから、時間が解決するのを待つよ。」.
「そっかー、大変だな、なんかあれだ、今度飯奢ってやるよ!」
「よし、焼肉ありがとう。」
「いや、ファミレスな。ソイゼな。」
「まぁ、良いだろう。」
一番高いメニュー頼んでめちゃくちゃに食いまくってしまおう。人の金で食う飯は美味い。
その分、和也になにかあったら、できる限り俺が助けてフォローしよう。
俺は和也の優しさに感謝しながら、心に誓った。
午後の授業を終えて、あっという間に放課後になった。
今日は激動の一日だった...精神的にかなりぐらついたが、なんとか心の整理ができそうだ。
「あー見つけた!」
心の整理ができそうだったのにぃ...
後ろから春の声が近づいてくる。
「なんで、昼ご飯時、急いで抜けたの?ー」
「食べ終わったからね。」
「無理やり詰め込んでた!」
「用事を思い出したんだ。」
「あー、主張が変わった!」
あー鬱陶しい、可愛い。煩わしい。
「私みたいなか弱い女の子を無視したり、ぞんざいに扱うのはよくないよー?!」
「わかったわかった。悪かったよ。」
「分かったなら、よろしい!」
「そうだ、君、明日も私を待ち伏せるの?」
「...さぁね。」
俺は明日の自分に選択肢を持たせるために、言葉を濁した。
誰に対しても相変わらず底抜けに明るいな春は...本当に...
まるで、二度目の恋をしてるかのようだ。
そう感じたと同時に、俺は春に対しての行動の指針の変更を決意する。
本人に迷惑をかけないのを前提に、
俺は必ず、春の記憶を取り戻してみせる。
今後新しく関係性を築いていく春と、恋人時代の思い出や思い出の場所にたくさん触れて、春に思い出してもらいたい。
そして、記憶が戻ったとき、恋人として、改めて想いを伝える。
俺は世界で一番君が好きだと。
今後、周囲の人間も増えて、展開が膨らんでいきます。記憶がなぜ消えたのか予想しながら読んでいただけると幸せです。
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