第2話 確信
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春の衝撃的な態度を思い出しながら、俺はとぼとぼと学校へ足を進める。
突然の出来事のダメージは著しかったが、遅刻するわけにはいかない。
(誰かに何か脅されてるとか...? いや、漫画でもあるまいし。その可能性は低いよなぁ...)
春は知り合った時から、明るい性格だった。
ごく普通の男子生徒で、時折ネガティブな考えが出てくる俺を、その持ち前の明るさで引っ張っていってくれるような、太陽のような存在だ。
春と知り合ったきっかけは、学校の花壇の水やりだった。
俺は中学の頃、それなりに学校での勉強や部活に時間を費やしてはいたが、それは楽しみとは言えなかった。
そんな俺の、学校での唯一の楽しみは、校舎の近くにある円形花壇の水やりだった。
当時お世話になっていた先生に、一度だけお手伝いとして水やりをお願いされたのがきっかけで、円形花壇の外側から内側にかけて、丁寧に水やりをするのが、なぜか無性に楽しく感じた。
それから、先生に円形花壇の平日の管理を任せてほしいと願い出たのだ。
中学3年になってからも、もはや日々の日課となっていた水やり。ある日、いつも通り水やりをエンジョイしていた時、1人の女子が話しかけてきた。
「こんにちは、君いっつも、水やりやってるね。飽きないのー?」
「あ、あぁ。楽しいから飽きないんだ。これが。」
興味深々な様子で話しかけてきたのは、茶色がかったセミロングヘアに、くりっとした大きな目、全体的に健康的なイメージの女子。
これが春との最初の出会いだった。
今朝の出来事がトリガーとなって、春との出会いの記憶を思い出して、より悲しい気持ちになってきた。
(本当に記憶がないなら、出会った瞬間のことも、出会って以降、幾度となく行った円形花壇での会話も全て忘れているということだよな...)
ただ、まだ確定したわけではない、俺は僅かな希望を抱いたまま、校舎の入り口を抜けて靴箱に着いた。
すると、馴染みのある顔が、靴箱の前に見えた。
幼馴染の加奈だ。
加奈とは小学校の頃からの付き合いだ。加奈は成績優秀で眉目秀麗、おまけに品行方正で、なかなかに完璧超人である。
ガキの頃は、わぬ一緒に泥まみれになって遊んでいたが、今の姿からは想像できない。
艶のある長く伸びた黒髪に、清楚を体現したような、容姿や整った言葉遣い。
高校では、清楚系美女の頂点として君臨しているらしい。
「加奈、おはよう。」
「お、おはようございます...」
「聞いてくれよ、春のやつ、俺のこと初対面の人みたいに接するんだ、悪ふざけも大概にしてほしいよな。」
加奈の返しの歯切れの悪さから生まれた、嫌な予感を振り払うように、世間話のテンションで話しかける。
「あの...」
嫌だ。やめてくれ。そんな顔をしないでくれ。いつも通り、呆れた顔で俺の話を聞いてくれ。叱ってくれ。お願いだ。
「あの...私達、どこがでお会いしましたか?」
春のことも含め、悪い意味で疑惑が確信に変わった瞬間だった。
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