第1話 冗談じゃない
少し反応頂いたのて、進めます!
その瞬間は突然やってきた。
俺は恋人の春と、毎朝一緒に登校している。
お互いの通学路が交わるあの曲がり角の電柱で、朝7時45分頃に待ち合わせ。
同じ高校に進学してから、それが日課だ。
今日は俺が先に電柱に着いた。いや、珍しく春がいつもの時間に遅れたという表現がしっくりくるか。
ときどき7時45分から数分遅れて、あの場所に到着するのは、いつも俺の方だった。
だから、春のことが少し心配だ。どこか体調が悪いのか、何かに巻き込まれたのか。
(あと、もうちょい待って来なかったら、電話かけようかな。)
不安と心配が入り混じって、少しだけ落ち着かない俺だが、まぁそのうち来るだろうと思って、スマホをいじる。
すると、少し先の歩道から、春がこちらに歩いてくるのが見えた。
(良かった...)
「珍しいな、遅れるなんて」
俺は春に向かって、軽く手を挙げて、話しかける。
と、春は表情一つ変えずに俺の横を通り過ぎた。
おいおいおい。珍しいこととはいえ、遅れたのに待ってる相手に対して無視はさすがに...悪ふざけか?
「おいーっ、春っ、無視はないだろ!?」
「...?」
なぜか怪訝な顔で、こちらを見てくる春。様子が明らかにおかしい。
「は、春?なんかあった?怒ってるのか?」
俺が何かやらかしたのか... もしかして、こないだ、映画の途中でお腹壊してトイレにこもってたことをまだ怒っているのか。
不安になって問い詰める。
「あの...初対面だよね?なんか馴れ馴れしいね、君。」
春はそう言い放って、学校に足を進めていった。
あの顔は、冗談や怒りの部類に分けられる顔じゃない。
あれは、無関心や警戒など、まさしく、初めて話しかけてきた他人に対して向けるそれだった。
俺はその場に立ち尽くすしかできなかった。
ショックなやーつ。