転生しようと思ったら、閻魔に怒られた件について
「聞いたか?あいつ死んだらしいよ」
「まじ?何で?」
仲良しの二人。街をぶらつく。
「アニメ好きだったじゃん、あいつ」
「うん」
「特に転生もの」
「うん」
信号が赤になる。交差点で立ち止まる。
車が行き交う。
「中の人死んだから、俺も、とか言ってさ。転生する前にあの世で会ってくるって息巻いてた」
「それで?」
「電車に引かれて死んだ」
「ふーん、割とグロいね」
信号が青に変わる。仲良しの二人はまた歩き始めた。
そのころ地獄では、揉め事が起きていた。
「え、転生できないの?何で」
「ろくに働かないでゲームばっかりしてたじゃんお前、しかも税金払ってないし」
閻魔大王はさらっと言い放った。
「じゃあせめて憧れの人に会わせてよ」
「あれがそうだけど」
丸い火の玉を閻魔大王は指差した。
「え、何あれ」
「お前の好きな声優」
「まじかー」
仲良し二人組は駅に到着した。
「いやあ、今日のオフ会楽しかったね」
「またやろうぜ」
「じゃあな」
それぞれ上りと下りに乗り込んだ。
「あ、そう言えば、あいつ死んだのこの辺りか」
急行電車はあっという間に通り過ぎる。
ホームの人々は皆スマホや、友人とのお喋りに夢中だ。
こうして人間が死んでも数日経てば何事もなかったかのように、日々の暮らしが取り戻されるのであった。
「せめて税金払っとけばよかったー」
閻魔大王に摘ままれたきったない魂は、獄炎に投げ込まれて塵と化した。
「普通に考えて転生とかできるわけないじゃん」
欠伸を噛み殺した閻魔は阿呆な人間を笑った。
閻魔が厳しいのがダメなんだからねッ