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寝支度を整えると、覚悟を決めてジェームズの隣に横たわり、シーツの下に潜り込んだ。彼は片肘をついて横たわったまま、びくついた彼女の一挙一動を見守っていたが、やがてふっと表情を改めた。


「今まで自分がしでかしてきたことは理解しているつもりだ。君が俺のことを心底軽蔑しているだろうことも分かっている。だが、手紙に書いた通り、今は、どうしても君とやり直したい。もし謝罪を受け入れてもらえるなら、どんなことでもしよう」



君とやり直したい



その言葉に彼女は目の前が真っ暗になったように感じた。


「…貴方は戦争から戻ったら、私とは別れるおつもりだと仰ったわ…」


囁くようなエラの言葉に、彼は視線を落とした。


「俺はどうかしていた…君みたいな素晴らしい人をみすみす手放すなんて愚かな人間のすることだ。君のことを冷たい女と罵ったり、容姿を貶すようなことを繰り返し言い続けたことを心から後悔している。君ほど美しい人はいないのに」


(な、にを言っているの…?)


あまりのことに頭がまともに働かないエラが呆然としているのを見てとると、ジェームズはベッドに静かに横たわり、彼女を見つめた。


「君は信じられないだろうが…俺は変わるつもりだ、今度こそ夫としての義務を果たさせてくれ。どうか慈悲の心でもって、もう一度だけチャンスを与えてくれないか。俺はもう間違えない」


彼女は瞬きもせず、夫のことを見ていた。それから長い息を吐き、静かに彼とは反対側の方向を向くと、目を閉じた。あの手紙と同じでその問いかけには返事をすることは、この数年ずっと彼から自尊心を傷つけられていた彼女にはどうしても出来なかったからである。


少なくても、彼は夫としての義務、と言った。夫としての権利、ではなく。ならば、彼女が望まない限り彼が手を伸ばしてくることはないだろう、と同じ空間にいることも嫌がる自分の心を無理やり納得させ、諦めて夫の隣で今夜は眠ることにした。





翌朝早くに夫が身を起こしたので、エラも目が覚めた。


「君はまだ寝ていたまえ」


彼女も起き上がろうとすると、彼が優しく制した。


「軍にいたからどうしても早く目が覚めるんだ、君は気にせず寝ているがいい」


以前のジェームズは昼に起きてくればいいというような生活をしていた。朝方までルーリアの家にいるのだから当然といえば当然だが。


彼が浴室で身支度を整え、そのまま静かに部屋を出ていった後、とてもじゃないがそのまま寝直せなかったエラはため息を吐いた。ジェームズは確かに昨夜、彼女に手を出しては来なかった。きっと数日で気が変わって、ルーリアの元へ行くだろう。どうせ長くは続かないのだろうが、しばらくは夫の『改心ごっこ』に付き合わなければならないようだ、と自分の心に言い聞かせた。



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