冒険者になるまで
四葉の街のギルドでは前代未聞の事態が起きようとしていた。
「ギルドの登録ですね!それでしたらステータスプレートの提示をお願いします。」
ギルドの登録にはステータスプレートの提示が必要となる。ステータスプレートとは自分のステータスを表示したもので、この世界に住む人ならば誰しもが持つ身分証明のためにも必須のアイテムである。なお、レベルが上がるごとに自動更新される。
俺はステータスプレートを出した。
「はい!ありがとうございます!ただ今確認しますね。えっと....え!?」
名前 鵜飼 ケイト
年齢15
レベル10
HP1
MP∞
攻撃力1
防御力1
魔力1
すばやさ1
運1
スキル なし
魔法 なし
ステータスプレートには絶望的に低いステータスが表示されていた。
この世界の10レベル時の平均ステータスは50程度で冒険者に絞ると500はある。見ての通り、冒険者と普通の人には平均ステータスに10倍もの差がある。これは冒険者は危険がつきものの職であり、自分の強さに自信がない人しか基本はならないからである。
「あのー、非常に申し訳ないんですがこのステータスではちょっと冒険者は厳しいがもしれません。いえ!別に強制はできないんですけど、ね?流石にこれはちょっと...それにMPの表記もよくわからないことになってますね。∞?8のことかな?ステータスプレートが壊れるなんて聞いたことありませんが...一応再発行しますか?ステータス1ももしかしたら不具合が原因かもしれませんし...」
お姉さんはあまりのステータスに驚きを隠せず、ステータスプレートのバグだど思っているがこのステータスは間違いじゃない。なんせ俺が生まれた時から変わってないからである。
「いえ、これであってますのでギルドの登録の方お願いします。」
「はい...わかりました。それでは15分ほどお待ちください」
お姉さんは渋々といった感じで、裏に入っていった。
「さて、少しの間だがどうしようか..」
すると見るからに悪そうな雰囲気の男たちが近づいてきた。
「おいおいそこのガキ!聞いたぜ?お前ステータス1なんだってな!冒険者なめてんのか!お前が冒険者になっても死ぬだけだ。悪いことは言わねーからおうちに帰んな!」
リーダーらしき人がそういと、周りの男もゲラゲラ笑っていた。
「ご忠告感謝します。ですがこれは私が決めたことなので口出ししないでください。」
そういうと、青筋を立てて拳を鳴らしながらさらに近づいてきた。
「だからそれが舐めてるっつってんだろ!殴られなきゃわかんねーのか!あん!?」
「HP1なので死にますけど、殺人で役所に連れてかれてもいいならどうぞご自由に」
この脅しは小さい頃からよく使っており、抜群にきいた。なお、自分の心にもダメージがいくが、死なないのでよしとしよう。
「ま、まあ俺がやらなくても冒険者になれば勝手にくたばるだろうし、勘弁しといてやる!」
その男たちが戻っていくと、ちょうどいいタイミングでお姉さんが裏から戻ってきた。
「ケイト様、冒険者登録が完了しましたので、まずは冒険者について軽く説明いたします。まず冒険者には階級がありF〜Sランクまであり、そのランクに応じて受けることができるクエストも変わります。あなたの今のランクはFなので受けられるクエストは採取系かゴブリンなどの低位のモンスターの討伐ですね。一応最後に行っておきますが、本当に冒険者になるんですか?その...ステータスがあまりにも低いですし、スキルもないですし...もしかしてとんでもない武器や魔法書をお持ちですか?それでしたら...いや、でも攻撃力も魔力も1だから結局...うーん...」
どうやら俺がすぐに死んでしまわないか最後まで心配してくれているようだ。なんとも優しいお姉さんだ。
「ええ、冒険者になります。それに魔法書を1つですがもっていますので...低位のモンスター程度でしたらそれでなんとかなります。」
魔法書とは魔法を覚えていなくても、その魔法書を使えばそこに登録されている魔法を行使できるもので、MP消費はあるが便利な代物である。
「うーーーん、でもMPも8?ですよね?それじゃあ使える魔法なんて....はぁ...意志は固いようですね。わかりました。これからあなたは冒険者です。クエストはあちらの掲示板に張り出されていますので探してみてください。それではあなたの旅の無事を祈ります。」
ようやく諦めてくれたようで、晴れて俺は今日、冒険者となった。