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9話

 9話


 東、南と探索した俺は、一度集めたものを整理していた。


「さて、金属が手に入ったことだし、槍を強化するか」


 今までは、ホーン・ラビットの角槍を使っていたが、ウルフの毛皮を貫いた時の手応えからより強い武器が必要だと感じた。

 廃村に残されていた道具から抽出した金属から鉄の槍の作成に取り掛かる。

 手頃な長さの木の枝から成形した柄に、【錬成変化】で作り出した鉄の穂先を取り付ける。

【錬成変化】でお手軽に武器が作られるので、ちょっとズルいスキルに感じる。


「さて、試し振りするかな」


 家の前で鉄の短槍を軽く振ってみる。

 角槍に比べると、斬ることもできる短槍となっており、先端が金属なので、前より重い。

 だが、レベルアップによりステータスが向上しているので難なく扱える。


「角槍は、突き一辺倒だったけど、今の槍は、斬ることもできるな」


 俺は、地面に木の棒を突き立てて、槍を振るう。

 槍の先端で斬り払えば、木の枝が切れて、端が地面に落ちる。

 槍を構えて上下、左右、斜めなどの色々な方向から槍を振るい、動きを確かめる。


「まぁ、こんなものかな。最後に、手元に残しておいたウルフの【刺突強化】の【スキルの残滓】を融合させて完成だな」


 やっと槍を強化できると思い、風属性の魔石と共に【錬成変化】でスキルを付与する。


 刺突の短槍【武器】

 STR+20 スキル【刺突強化Lv1】


「完成したから全力で、突きでもやってみるか」


 俺は、近くの木の幹を敵に見立てて構える。


「はぁぁぁぁぁっ――!」


 そして、一気に跳躍し、鋭い突きを放つ。

 スキルと装備の【跳躍】と【刺突強化】が相乗効果を生み、爆発的な力が槍の先端に集まる。

 そして――


 空気が弾けるような音と共に、木の幹が抉れ、穴が空いている。


「へっ?」


 予想外の威力に俺が戸惑いの声を上げ、ゆっくりと槍を引き抜く。

 中身の詰まった生木――約20センチほどまで抉れて、穴が空いてしまっている。

 これがもしゴブリンなら、弾けて周囲に肉片が飛び散っていたかもしれない。


「……オーバーキルになるな。しばらく封印しよう」


 俺は、そう誓い、最近習得したスキルなどを確認するためにステータスを開く。


 ―――――――――――――――――――――――


 NAME:トール・ライド

 年齢:12

 JOB【錬金術師】

 LV :6

 HP :320/320(生命力)MP :60/60(魔力量)

 STR :38(筋力) VIT :34(耐久力) DEX :34(器用) AGI :45(速度)

 INT :30(知力、理解力) MGI :30(魔力) RMG :30(耐魔)


 武器スキル

【槍Lv2】

【短剣Lv1】


 魔法スキル

【魔力回復Lv1】


 強化スキル

【刺突強化Lv1】

【斬撃強化Lv1】


 耐性スキル

【物理耐性Lv2】


 生産スキル

【錬金術Lv1】

【料理Lv1】


 技能スキル

【鑑定Lv2】

【採取Lv2】

【跳躍Lv1】

【暗視Lv1】



 戦術スキル

【連携Lv1】

【追跡Lv1】

【逃走Lv1】


 感知・隠密系スキル

【気配察知Lv2】

【気配遮断Lv2】


 ユニークスキル

【錬成変化】

【成長因子】


―――――――――――――――――――――――


 表示されたステータスは、スキルが増えて見づらいなぁ、と思ったところ、自然とスキル欄が整理されていく。

 スキルとは、こんなに色んな区分があるんだな、と感心しながら、幾つかの変化に気付く。


 まず、スライムやホーン・ラビットなどの近隣に出現する魔物の【スキルの残滓】は、スキルを習得した後にも取り込み続けた。

 ステータス効果などは、上昇量が1未満の数値らしく、十何個と吸収してようやく変化が確認できた。

 そうした小さな積み重ねから元々フラットだったステータスに差が生まれ始めた。

 スキルの方も同じように経験値を蓄積させていると信じて、【スキルの残滓】を取り込み続けた結果、レベル2に上がった。


「あと、何気に【鑑定】と【採取】を使ってるからレベルが2に上がってるし、【料理】スキルも生えてる」


 この森に来て、そろそろ1ヶ月が経つので、その間の自炊がスキルとして現れたようだ。

 あと、余談ではあるが――


「家の中の調味料の塩瓶(しおがめ)。明らかにこの容量以上の塩使ってるよなぁ」


 時折、この塩が無くなったら、どうしようかと考えていたが、不思議と補充されている。

 そして、その塩瓶を【鑑定】すると――


 無限の塩瓶【アーティファクト】

 神が転生者の修練場に置く無限に塩が湧き出す塩瓶。

 ただし、転生者の健康と食生活を守るために用意された神器であるが、持ち出そうとすると元の家の戸棚に戻され、持ち出せない。


「ああ、神様ありがとう。味気のない食生活にならなくて。そして、塩商人になって楽はできないのね」


 塩さえあれば、内陸部なら即座に換金できると思ったが、世の中甘くはないようだ。

 いつか旅立つ日のために、【錬成変化】で塩を入れる容器を作って移し替えておくべきか、などと考え、錬成した紙に鉛筆でメモを取る。


「そういえば、書く文字とか色々とこの世界の文字に変換されるよなぁ」


 日本語で書いたつもりが、異世界文字で書いているし、この家に置かれた本も異世界文字なのに、問題なく読めるので人との交流には問題ないだろう。


「ああ、人との交流か。ウルフ・リーダー倒した時に【連携】スキルを手に入れたけど、今の俺には、必要無いよなぁ」


 いつか仲間を持つことができるだろうか。

【錬金術】の中には、魔石を核とした創造物として、ゴーレムが存在する。

 ゴーレムとの連携に効果を発揮するスキルなのかもしれない。

 だけど、やっぱり血が通った相手が欲しいと思う。


「コボルト・ライダー倒せば、【調教】スキルとか手に入らないかなぁ。けど、俺独りぼっちでも、精神病まないよなぁ」


 俺の呟きが夕暮れの真っ赤な空に溶けるのだった。


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