18話
18話
結局、全ての呪われた装飾品を浄化するのに、一晩掛かってしまった。
「ふぅ、疲れた。って言うか、昨日も今日も夜更かしするのは悪いなぁ。もう夜明け前だ」
ふわぁっ、と欠伸が出た俺は、浄化し終えた元・呪われた装飾品を見る。
【御子守りの反転指輪】――ユニークスキル【性別反転】
貴族の第三夫人が息子を当主争いに巻き込ませないために、女性で生まれることを望んだ情念が産んだ指輪。
呪いとしては、性別が反転し、著しく身体機能が低下して、徐々に衰弱する。
【精霊の籠】――ユニークスキル【土精霊の召喚】
弱い精霊を土地から切り離して、その力を得るための道具。
ただし、司る属性から切り離された精霊は、弱体化して、邪精霊として墜ちてしまい、呪いを振りまく道具となったが、浄化され、元に戻った。だが、精霊の力が戻ったわけではない。
【魔力保存の首飾り】――スキル【魔力保存Lv5】
MPを別途に蓄えておくことができる魔道具の首飾り。
所有者が壮絶な死に様を経験し、不死者の魔術師・リッチになったことで生命力と魔力を吸収する呪いの道具に変化したが、浄化されて元に戻った。
レベル数×100ポイント分を別途で蓄えられる。
【怨敵のための短剣】――スキル【対人特攻Lv2】
貴族として、害となる身内や敵対者に対して利用する短剣。これによって自決を促されて死んだ者の情念が多くの呪いを蓄えており、手にした者の精神を病ませ、人型の存在に対して強い不快感を覚えて襲いたくなる【狂戦士化】スキルがあったが、呪いの浄化により消え、普通の短剣となる。
【奴隷の首輪】――スキル【痛覚増加Lv3】
貴族向けに装飾された奴隷の首輪。貴族に売られた後、貴族の趣味の拷問により地下室で亡くなり、壮絶な死により呪いを得た。
この首輪の装着者には、亡くなった人の拷問を追体験させる効果があった。
浄化されたことで元々あった【呪い】と【隷属化】スキルが消失した。
「中々にピーキーだなぁ。さて、どうするか」
俺はこの道具のスキル群を見て、呪いの装備を浄化して得られるのは中々に癖が強い、と感じる。
とりあえず使用しても問題ない魔道具になったので、一つずつ手に取ってみる。
「まずは反転の指輪だな」
俺の指よりも一回り以上も大きい指輪に指を通してみると、自動調節の機能があるのか、指にピッタリと嵌る。
そして、僅かに体が軋むような感覚と共に、体に変化が起こる。
気持ち髪の毛が伸びて、少しだけ胸が出たような気がする。そして、そっとズボンの中を確かめると、男の証が消えていた。
「うーん。ただの身体的な変化かぁ。まぁ潜入とか変装には使えるかな」
鏡がないので容姿とかはわからないが、一応13歳相応の少女らしさは出ているのではないか、と思う。
ステータス面では、HPとSTR、VITのステータスが二割ほど下がり、他のステータスが1割ほど上がったのは、性別によるステータス補正があるのではないか、と思った。
俺は反転の指輪を外して元に戻ると、続いてミスリルを混ぜ込んだ合金の鳥籠を手にとる。
精霊を捕らえる【精霊の籠】の中には、うっすらと黄色っぽい光が見える。
【霊視】スキルがあるために、多分これが精霊なのだろう、と思いながら、どうするか悩む。
「うーん。囚われの精霊を放置するとまた周囲を呪う危険物になりそうだし、解放するか」
俺は、【錬成変化】で鳥籠の一部を変形させて、精霊に対する拘束力を壊す。
すると、ふよふよと頼りない感じで精霊が鳥籠から抜け出して、俺の指先に止まる。
「おまえ、自分の司る属性から切り離されて弱ってるんだったな。魔力をやれば、少しは力を取り戻すか?」
俺は、ティエリア先生のMPを回復させた時に使った【魔力譲渡】スキルでMPを土精霊に与える。
ただ、通常の魔力をそのまま与えても受け付けないらしく、一度体内で土属性の魔力に変換してから与えたところ、効率良く吸収を始める。
「うぉっ、お前、弱ってるって言ってもやっぱり精霊なんだな」
俺の持つ700近いMPによる魔力譲渡でも精霊を満たすことはできない。
きっと3000から5000くらいのMP量があるんだろう。
「まだ足りないか? 悪いな、MPポーションもないし、俺も休ませてくれ」
俺がそう言うと、そのままふよふよと窓から飛び出して、宿の裏手の土の中に入っていく。
「とりあえず、あれだけ回復したら自分の司る大地に戻るくらいはできるか。あとは、少し休めば元通りの力に戻るのかな」
俺は、そう呟き、残りの魔道具も見る。
【魔力保存の首飾り】は俺に不釣り合いなデザインであるが、有用な魔道具である。
これは魔力を貯めておき、他者にも使えるように共有化することができる魔道具だ。
そうした利点からこの魔道具は、そのまま使うことにした。
残りの【怨敵のための短剣】と【奴隷の首輪】など、浄化した後でも持っているだけで気分が悪いので、【対人特攻Lv2】と【痛覚増加Lv3】のスキルだけ抽出して分解した。
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【ステータス】
NAME:トール・ライド
年齢:13
JOB【錬金術師】
LV 40
HP :2550/2550(生命力)MP :220/710(魔力量)
STR :358(筋力) VIT :310(耐久力) DEX :325(器用さ) AGI :388(速度)
INT :268(知力、理解力) MGI :301(魔力) RMG :249(耐魔)
武器スキル
【槍Lv7】
【剣Lv3】
【短剣Lv3】
【棍棒Lv3】
【斧Lv3】
【投擲Lv5】
【盾Lv3】
【弓Lv2】
【体術Lv4】
魔法スキル
【魔力回復Lv6】
【魔力制御Lv1】
【火魔法Lv2】
【水魔法Lv4】
【土魔法Lv3】
【光魔法Lv1】
【生活魔法Lv7】
【魔力譲渡Lv8】
【回復魔法Lv2】
【空間魔法Lv3】
【結界魔法Lv1】
強化スキル
【刺突強化Lv7】
【斬撃強化Lv5】
【打撃強化Lv4】
【生命力強化Lv7】
【魔力量強化Lv4】
【筋力強化Lv7】
【耐久力強化Lv5】
【器用強化Lv6】
【速度強化Lv5】
【知力強化Lv4】
【魔力強化Lv3】
【耐魔強化Lv3】
【自己強化:身体Lv3】
【五感強化Lv1】
【消化Lv3】
【回復速度強化Lv4】
【身体強化Lv2】
【並列思考Lv2】
【硬化Lv3】
【自己回復Lv1】
【痛覚増加Lv3】
耐性スキル
【物理耐性Lv5】
【魔法耐性Lv2】
【毒耐性Lv3】
【睡眠耐性Lv2】
【威圧耐性Lv2】
【病気耐性Lv1】
【呪い耐性Lv1】
【火耐性Lv2】
【水耐性Lv2】
【闇耐性Lv1】
生産スキル
【錬金術Lv6】
【料理Lv5】
【調合Lv6】
【建築Lv4】
【栽培Lv4】
【裁縫Lv3】
【彫刻Lv1】
【陶芸Lv1】
技能スキル
【鑑定Lv7】
【採取Lv6】
【跳躍Lv5】
【暗視Lv6】
【騎乗Lv1】
【調教Lv1】
【罠師Lv3】
【狩猟Lv4】
【伐採Lv3】
【水泳Lv3】
【登攀Lv2】
【解体Lv2】
【教導Lv3】
【速読記Lv2】
戦術スキル
【連携Lv4】
【追跡Lv3】
【逃走Lv3】
【指揮Lv4】
【威圧Lv4】
【挑発Lv1】
【潜伏Lv2】
【奇襲Lv2】
感知・隠密系スキル
【気配察知Lv5】
【気配遮断Lv5】
【罠感知Lv3】
【魔力感知Lv6】
【危機察知Lv3】
【魔力隠蔽Lv4】
【霊視Lv4】
【空間把握Lv3】
【偽装Lv8】
操作スキル
【操糸Lv4】
【操水Lv3】
【血流操作Lv2】
特攻スキル
【対人特攻Lv2】
その他スキル
【仮死Lv2】
【礼儀作法Lv3】
ユニークスキル
【錬成変化】
【成長因子】
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こうしてみると、レベルは上がらないが、得られたスキルは面白かった。
人間同士の生活の中で必要なスキルや、人同士の関係から生まれる軋轢が関わるスキル、また弱い人間が自身を守るために得る耐性など、魔物相手では中々得られないスキルが多い。
耐性スキルなど、得る前に死ぬ、弱肉強食だ。
ただ、一つ疑問がある。
「森に居た頃、結構な数のゴブリンを倒したことがあるけど、【鬼特攻】とか【魔物特攻】とかのスキルはないよなぁ。数が足りないのか? それとも別の条件かな?」
俺は、首を傾げるが、とりあえず徹夜して眠いために、仮眠を取ってから、何か面白いものはないか、と期待を込めてお祭り最終日に出かけるのだった。
1月30日、追記:特攻スキルを【特効】ではないかの指摘があり、迷いましたが、特定の条件下でダメージが増加するために特攻の方を選択しました。
以後、よろしくお願いします。