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14話

 14話


 季節は夏になり、外での依頼が暑くて少し辛くなる時期になった。

【商業ギルド】での【熱量交換の魔法陣】の登録完了を待つ間、俺は日々の依頼を受けて過ごす。

 午前中には、Fランクの薬草採取のついでに、食費を減らすために平原に出現するホーンラビットなどを討伐して薬草と食肉を納品して、余った分は調合と料理に使って過ごす。

 午後には、平原で集めた余剰に確保した薬草からライフポーションを作り、時折平原で見つかるエーダル草からマナポーションも作る。

【冒険者ギルド】のリグルードさんに卸した後は、午後に短時間で終わるGランクの雑務依頼を受けて帰りに町をふらつきながら新しい魔道具のアイディアを探す。


「先生の復活には、いくらお金が掛かるか分からないからなぁ」


 ティエリア先生を復活させるための肉体を用意するにしても、死者蘇生に必要な素材を考えると、幾らお金があっても足りないだろう。

 そもそもお金では買えない素材があるかもしれない。


「そろそろ、自分が強くなるために魔物狩りを再開するかなぁ……どうしようか」


 そんな感じで町中を歩きつつ、今晩の夕飯の食材を馴染みのお店で買い、宿屋に帰ると、宿屋の共同スペースでアランたちが寛いでいた。

 確か、今日は先輩冒険者に鍛錬を付けてもらっているので、鍛錬後に休んでいるようだ。


「アランたち、ただいまー。今日の夕飯は、フォレスト・ボアのお肉が売ってたから茹で豚と生野菜のゴマドレッシングであっさり食べようと思うんだ」

「おっ、旨そうだな! 俺は、あの唐揚げって奴が食べたいな! 前に、トールが獲ったクックル鳥で作ったやつ」

「あれはまた今度ね、そもそも油をたくさん使うし、味を付けておかないとね」


 クックル鳥は、味がそこそこ良い鳥の魔物だ。

 逃げ足が速いが俺のレベルになれば、投石一つで仕留められる。

 醤油や味噌はまだ完成していないために味付けは、塩と柑橘系の果物の果汁、乾燥ハーブ、白ワイン、水飴、ニンニクとショウガなどで味付けして、片栗粉に付けてゴマ油で揚げたのだ。

 片栗粉は、市場に安く売っているジャガイモのデンプンから生成したもの。

 ゴマ油は、同じく安く売られているゴマから【錬金術】で抽出したもの。

 更に、そのデンプンと大麦を発芽させた麦芽から【錬金術】で酵素を抽出して、その酵素を水溶きデンプンに混ぜてできた液を漉し取り、煮詰めて水飴を作った。


 本来は、砂糖やハチミツで甘みを足すのだが、やはり高い。

 なので、水飴で代用しており、現在は、市場で買った小さな蓋付きの甕に水飴を作って保存している。


 そうした手間暇掛けた食材で作った塩カラアゲは、育ち盛りのアランたちの胃袋を掴んでしまったようで度々、催促される。


 俺は、聞き流しつつ夕飯の支度をすると、ノーマンも手伝ってくれる。

 そして、夕飯ができた頃、宿屋にライナスさんも来て、宿屋の受付と四人の見習い冒険者が食卓を囲むのが最近の日課になっている。

 そんな食卓で今日の出来事を聞いたりする中で、アランたちがある話を振ってくる。


「なぁ、トール。今度、祭りが開かれるから見に行かないか?」

「祭り?」


 俺が小首を傾げると、ライナスさんも、もうそんな時期か、と呟いて説明してくれる。


「この時期は、ラウハルス王国の建国祭が行なわれるんだ」

「へぇ、そうなんですか。それで、何をやるんですか?」

「王都なんかだと建国祭に合わせて各地の珍しい物が集まって露店を開かれるが、こっちの辺境の町だと、臨時の屋台が開かれたり、各店の売れ残りなんかが露店で安く売られたりするんだ」


 なるほど、掘り出し物を探すのも楽しそうだ、と思う。


「面白そうだろ! 先輩の冒険者から聞いたんだけど、金のない見習いたちは、そこで武器を探したりするらしいんだ!」

「私は、魔法の威力を高めてくれる杖か、手頃なナイフが欲しいな」

「……料理に使える鍋とまな板代わりの盾」


 それぞれ欲しいものがあるんだな、と微笑ましく思う。


「それで、トールも一緒に行かないか!」

「うーん。みんなと一緒だと楽しそうだけど、俺は一人で行くよ」

「そうか。まぁ祭りの楽しみ方は人それぞれだしな。よーし、明日から祭りの資金を貯めるぞ!」


 そして、アランたちは、建国祭を楽しむためにギルドの依頼を頑張っていく。

 それに祭りが近づくほどに、屋台で使う食肉の需要が増し、様々な食肉確保に繋がる依頼の報酬が値上がりして掲示される。

 Fランクでも受けられる食肉確保の依頼で報酬が増えたアランたちは、嬉しそうに毎日報告してくれる。

 俺たちも建国祭を楽しみにしながら、Fランクの採取依頼と時々討伐、そして建国祭の準備で貼り出される雑務依頼の手伝いと忙しい日々を過ごし、建国祭当日を迎える。


「トール。俺たちは、行ってくるな!」

「うん、行ってらっしゃい。あんまり危ないところに近づかないようにね」

「分かってるよ!」


 そう言ってアランたちは、朝早くから出かけ、俺は少しだけ遅れて祭りに繰り出す。

 露店の一つで朝食代わりの串焼きを食べ歩きながら、祭りの様子を眺める。


「まぁ、たまには屋台とかで食事をするのも楽しいかな」


 所々でお酒を飲んでいる大人たちがいる中、早速露店が開かれている場所に向かい、商品を眺める。


「まぁ、予算はあるし、適当に使えそうなものを探すかな」


 リグルードさんや調合ギルドに尋ねて、二日酔いに効く薬のレシピを教えてもらい、二日酔いにも効く解毒ポーションを作って売っておいた。

 祭りになれば、お酒を飲んで二日酔いする人が増えることを見越した薬は、全て買い取ってもらえた。

 今までのポーションの販売額などと合わせて、銀貨150枚ほどが祭りの予算になる。


「さて、良さそうなお店はあるかな?」


 ぶらぶらと適当に露店を見て回れば、鍛冶屋が出した店を見つけた。

 弟子や売れ残りなどを纏め、中古品を綺麗に修理して磨いたりした物を売っている。


「おっ、これは――」


 中古品の剣の中で一本、良さそうなものを見つけた。


 鉄の剣――スキル【耐久力強化Lv1】


 一見普通の剣だが、スキル付きである。


「すみません。この剣っていくらですか?」

「うん? それは全部中古の売れ残りだから、銀貨1枚。これで売れなきゃ、溶かして新しい剣の素材だよ」

「なら、これとその投げナイフを20本ずつお願いします」

「なら、銀貨3枚だよ。別売りのナイフホルダーベルトはいる?」


 投げナイフ用のナイフホルダーだろうが、【アイテムボックス】に仕舞っておけばいいので、不要なことを告げる。

 そして、剣と投げナイフを【アイテムボックス】に仕舞い、思わぬ掘り出し物にホクホク顔になる。


「スキル付きの武器があるんだな。これなら結構面白そうな物が見つかるかもな」


 そうして中古品を見て回れば、人の遺品だとか長年使われた道具にスキルが宿っていたりする。

 例えば――


 鋼鉄の短剣(破損)――スキル【短剣Lv1】【器用強化Lv2】

 陶器の食器――スキル【危機察知LV1】

 ロッキングチェア――スキル【回復速度強化Lv1】


 元は、冒険者が使っていた優秀な道具が所有者の想いや魔力、道具自身の経験によって、スキルを得たのかもしれない。

 特に、遺品などは、人の死の間際の強い情念が道具にスキルという形で移ったのかもしれない。

 その道具らしい、スキルが付いていたりする。

 俺は、他のスキル付きの道具がないか、露店を巡っていく。

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