4話
4話
翌日から【錬成変化】で作った籠を背負い、森の中で使える素材を探し、魔物を見つけては倒していく。
グリーンリザードを1匹倒せば、一食分。一日3匹倒せば、一日を健康に過ごせると考えていた。
だがグリーンリザードは、隠れて過ごすために中々見つからなかった。
その代わり、別の魔物を見つけることができた。
灰色の猫ほどの大きさがあるネズミ――グレイラット。
弾力性のある体を持つ不定形の魔法生物――スライム。
角を持ち、攻撃的な突進をしてくるウサギ――ホーン・ラビット。
俺は、そんな魔物たちと遭遇し、戦闘を行なう。
とは言っても、事前に戦闘をパターン化していたので、苦戦することはなかった。
【錬成変化】でグレイラットやホーン・ラビットの足元の地面を操って拘束し、木の枝と石から錬成した石の槍で安全に狩る。
土を圧縮して硬質化するので、石ほどの強度を持つ拘束を振り解くのは、難しい。
スライムだけは、拘束しても不定形の体でスルリと抜け出すので、石の槍で突き続けた。
何度も槍に突かれて、粘液の体が削られて体を維持できなくなったのか、ドロリと体を崩し、核の魔石が粘液の中に浮かぶ。
「ふぅ、スライムは強敵だな。もっと楽に倒す方法を考えよう」
俺は、そう呟きながら、スライムの死体(?)に【錬成変化】を使用する。
スライムの体を解析した結果、水分と魔力で構成されているらしく、得られるものは、青い魔石と新たな【スキルの残滓】だけだった。
「さて、もう帰るとするか――」
俺は、背負い籠に入った果物や大きな葉っぱに包まれたホーン・ラビットの肉や毛皮、角を家に持ち帰る。
グレイラットは、食用に適さないらしいので、魔石と【スキルの残滓】を抽出した後、その場で土に分解する。
「ただいまー。ってまぁ、人はいないけどね」
俺は、今日の食料を家に運び、集めた素材を家の前に広げる。
「さて、まずは、【スキルの残滓】を取り込むか」
俺は、今日手に入れた【スキルの残滓】を【錬成変化】で取り込む。
再び得られた充足感の後、ステータスを開く
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NAME:トール・ライド
年齢:12
JOB【異邦人】
LV :2
HP :220/220(生命力)MP :39/44(魔力量)
STR :23(筋力) VIT :23(耐久力) DEX :22(器用) AGI :24(速度)
INT :22(知力、理解力) MGI :22(魔力) RMG :22(耐魔)
スキル
【採取Lv1】
【跳躍Lv1】
【物理耐性Lv1】
【気配察知Lv1】
【気配遮断Lv1】
ユニークスキル
【錬成変化】
【成長因子】
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「レベルが上がってる。それに【採取】スキルがある」
【跳躍】【物理耐性】【気配察知】【気配遮断】のスキルは、倒した魔物たちが所持していたスキルだろう。
だが、【採取】スキルは、自力で取得したようだ。
それに、意外と早くレベル2に上がったのは、【成長因子】のユニークスキルで俺の成長が早いためだろうか。
それともう一つの変化がある。
「全部平均的だったステータスに差が――」
STRやVIT、AGIのステータスが少しだけ上がっている。
【スキルの残滓】を取り込んだために、そのスキルや魔物に対応するステータスの一部を取り込み、伸びたのかもしれない。
例えば、ホーン・ラビットならSTR、スライムならVIT、グリーンリザードとグレイラットがAGIのような感じでステータスが上昇してるのかもしれない。
「もっと魔物を倒して強くならないとな。それに、【錬成変化】を使うのは、効率が悪い」
一回の戦闘で足元を固めて拘束するのにMPを5使う。
その後、死体を分解して素材や【スキルの残滓】を取り出すのにも5使う。
MPは自然回復するが、効率的に魔物を倒せない状況だ。
もし、十分なMPがなく魔物を倒した場合、MPが貯まるまで待っていると、死体を分解した際に、時間が経ちすぎて【スキルの残滓】を得られない可能性がある。
「レベルを上げてMPを増やせば、【錬成変化】の使用回数が増えるよな」
俺は、森で集めた雑草や葉っぱから繊維を抽出し、錬成して作った茶色い紙に、炭と木の枝で作った鉛筆でメモを取る。
・自力で魔物を倒せるようになる。
・【錬成変化】を連続的に使えるようにレベルを上げてMPを増やす。
・MPを増やす【スキルの残滓】を得る。
「やるべきことは、こんなところか」
俺は、そう思いながら、今日手に入れたホーン・ラビットの角を使い、石槍から新しい角槍を錬成する。
「これ一本作るのにMP30か。重いなぁ」
俺は、そう呟き、MPが自然回復するまで角槍で突きの練習をする。
努力をしていれば、【採取】スキルのように自力でスキルが手に入ることを期待し、槍を突き続けた。