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23話

 23話


『トールくんは、異世界からの転生で大人だったから魔法のイメージがしっかりしている、って前提でお話しします』

「は、はい!」

『正直、魔法ってイメージです。多くの魔法書が、魔法名を決め、説明を書いて、呪文があり、それを真似して練習して覚えますが、極論――やりたい形があれば、自作できます』

「えーっ……」


 かなりぶっちゃけるティエリア先生の言葉に、俺は、半目になる。


『魔法は基本、起こしたい現象を選んで、規模を決めて、形を整え、撃つ。これだけだから』

「まぁ、言いたいことはわかりますよ」


 俺は、20メートル離れた地面から土壁を生み出し、魔法練習の的にする。


「例えば、水を生み出す。――【ウォーター】」


 俺は、空中に水球を生み出し、ぷかぷかと浮かべる。


「これをそのまま当てれば、【ウォーター・ボール】の魔法」


 次に水球を槍状に変形させた形で空中で浮かべる。


「これが――【ウォーター・ランス】。他にも壁のウォールとか矢のように飛距離を延ばしたアローとか、そんな感じですか?」


 最後に浮かべた水の矢を土の壁にぶつけるが、表面が少し削れただけだ。

 これだけの威力を見ると、呪文で詠唱して威力を上げた方がいいと感じる。


『そうそう。ちなみに、ある程度、規模が大きい魔法には、オリジナルの呪文とか付ける魔法使いとか、一派に伝わる伝統の魔法とかそんなのがあるのよねぇ』


 ただ、基本は、現象の選択、規模の選択、形状の選択、そして発動のために、その部分とか細かな細部さえ決めれば、割と自由だ。


『まぁそんな感じで攻撃魔法が用いられるけど、本音を言うとね。9割以上が使えないから』

「本当に、本音を言いますね」


 上位魔法スキルを習得したハイエルフの大魔法使いから言えば、魔法ってそうらしい。


『魔法使いの最終的な理想は、思ったら望んだ現象が起きていた、なのよねぇ』

「もはやそれは、神の領域では…………いや先生は、神霊でしたね」


 ティエリア先生は、準神様だったことを思い出す。


「じゃあ、なんで魔法スキルにレベルがあるんでしょうね」

『魔法スキルのレベルが上がれば、魔法の発動時間の短縮や威力も上がったり、消費魔力も抑えられるわ。まぁ、いくら抑えられると言っても規模が大きい魔法は、消費魔力も増える』

「へぇ~」


 なら、低レベルの魔法スキル持ちたちが、儀式魔法で高レベルに匹敵する魔法を生み出すのは、そうしたスキルレベルの恩恵を数で補って再現するためだろうか、などと思う。


「本当にメリットがよく分からない。いや、でも、下級の魔法が扱い易くなる、ってことは、【ファイア・ボール】の速射とか多重発動とかあるのか」

『そうなのよ。私は、一撃の魔法も好きだけど、そうした技巧派の魔法使いも派手で人気があったわねぇ』


 昔を思い出して嬉しそうにするティエリア先生に、俺も楽しく魔法講義を受ける。


『と、いうことで、どうせトールくんは、魔物から魔法スキルを奪って勝手にレベルを上げるだろうから、戦闘で使い勝手のいい魔法の練習以外はやりません』

「えー、そんな殺生な……」


 密かにカッコイイ魔法とか楽しみにしていたのに……と落胆する。


『その代わりトールくんには、【魔力操作】スキルを練習して、ゆくゆくは【魔力制御】スキルに成長するのを目指して頑張りましょうね』

「はい。ところで何をやるんですか?」

『体の中で魔力を巡らせるのよ。心臓やお腹の中心の魔力を体の末端に動かし、そして自分の中心に戻す。その巡回を練習して、最終的に自分以外にまで魔力を通すのよ』


 それができれば、様々な魔法スキルの運用効率が良くなるし、他者に介入する付与や回復魔法、生産スキルの扱いが上手にできる下地ができるらしい。


『【魔力操作】を極めれば、魔力を覆っての【身体強化】や魔力を放出する種類の【威圧】、逆に一切漏らさず実力を隠す【魔力隠蔽】とか得られるし、効率良く魔力を流せれば、魔力を通した武器スキルの必殺技――武技ができるようになるわ』

「やること地味な割に、凄い効果がありますね」

『そうなのよ。この基礎をちゃんと伸ばすことができる子は、みんな強くなるけど、そうじゃない子は普通のままで一生終わるのよ』


 俺は、ティエリア先生の解説を聞きながら、その場で座禅を組んで【魔力操作】を意識して行なう。

 今までは、豊富なMPで無理やりに現象を引き起こしていた。

 魔力というのを効率的に動かそうと意識しようとすると、中々上手く動かない。

 自然と体から僅かに漏れる、一部を動かそうとすると思った以上に魔力が動いてしまう、他にも魔力の動きがぎこちないなどある。


『トールくんは、歳の割に魔力が多いから魔力制御が難しいんじゃないかしら?』

「そうなんですか?」

『ええ、生まれつき魔力が多い子は、【魔力操作】が苦手だったりするのよ。場合によっては感情で魔力が暴発する【魔力暴走】なんてスキルを発現したりするわ。そういう子たちが【魔力操作】を習得する場合には、扱い易い魔力量になるまで魔法を使ってから【魔力操作】の練習をするのよ』


 だから、はい、と差し出してくるティエリア先生の手に俺の手を重ねる。


『最初は、1割くらいの魔力から始めましょう』

「はい。――【トランスファー】」


 気持ち悪くなるギリギリまでティエリア先生に魔力を譲渡する。

 その際に、魔力の流れを意識すると、半分以上が空気中に霧散していた。

 これが原因でティエリア先生への譲渡する魔力が少なかったのだろう。

 また一つ【魔力操作】の練習のモチベーションが上がった。


『さぁ、そのくらいの魔力から始めましょう。最初は、体中に魔力を動かす感じよ』

「はい」


 さっきよりも小さくなった魔力を感じながら、手先や足先に動かしていく。

 最初は、スムーズに動く魔力だが、外部の魔力を取り込み、自然回復するので、動かす魔力量が増える。

 徐々に操作する魔力が大きくなり、動きが鈍くなる。


「うぐぐっ、これはちょっと難しい……」

『でも、感覚は掴めたでしょ?』


 ティエリア先生は、ニコニコと楽しそうにこちらを見ているが、俺は魔力操作に集中して、疲れたためにその場に仰向けに倒れる。


『さて、今日の授業は、ここまでかな?』

「えっ? どういうことですか? ちょっと休めばまだできますよ!」

『こら、初日から根を詰めちゃダメよ』


 そう言って、俺の額にティエリア先生は、人差し指を押し当てる素振りをする。


『トールくんが早く私の魔力を回復させたい気持ちは、ちゃんと伝わっているわ。でも焦っても意味はないわ。だからトールくんは、今まで通り魔物を倒して強くなりなさい』

「でも……」

『ふふっ、心配しなくてもトールくんやマナポーションからたっぷりと魔力を貰ったから昨日、今日で消えることはないわ。それと、これからの行動は、魔力を気にして使ってね』


 そうすれば、自然と魔力操作が上手くなって、無意識に扱えるようになれば、最良ね。

 そう言って、俺とティエリア先生との最初の授業が終わった。


「それじゃあ、先生、また明日」

『ええ、また明日。それとトールくんは、ユニークスキルのお陰で無理をしなくても強くなれるから気をつけて、適度に休んでね』


 正直、学び足りないが、授業ばかりに傾倒してレベル上げや食生活に必要な狩りを疎かにできない。

 それに、俺の【魔力譲渡】の効率が悪いために、先生の魔力回復の有用な手段は、マナポーションである。

 なので、マナポーションの原料のエーダル草を集めるために、一度森の家に帰り装備を整え、採取と狩りに向かう。



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