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20話


 20話


『だからね。トールくんは、私が見えても、もう関わっちゃダメだよ』

「でも、ティエリアさんは、俺を呪わなかった。だから、悪い霊とは思えない」


 俺は、自分が感じたことをハッキリと告げる。

 ティエリアさんは、とても優しい人なのだろう。

 だから、神霊にも選ばれ、自分に優しくしてくれた村人の仇のために、自ら地縛霊に墜ちたんだと思う。


『トールくん、ありがとう。ふふっ、君は不思議な子どもだね』


 そう言って、寂しそうな笑みから楽しそうな笑みに変わる。


『トールくん。私と少しお話ししない?』

「いいですよ。俺も話し相手が欲しかったんです」

『なら、トールくんは、なんでこんなところに居るの? それに、なんで北側の森から現れたの?』


 ティエリアさんに聞かれて、俺も自分のことを話す。

 元々は、異世界の住人だったこと、男神に異世界転生させられたこと、この森での2ヶ月の生活。そして、俺の【錬成変化】のユニークスキルについてだ。


 なぜか、ティエリアさんに全部話せた。

 本当なら、秘密にしなきゃいけないことだと思うが、相手が地縛霊だからだろうか。

 それとも自分が思っている以上に、人との会話に飢えていたのかもしれない。

【錬成変化】については、一度この村でウルフの集団と戦った時に、バレているという開き直りもある。


『そうなんだ。じゃあ、トールくんは、私と同じアーライダ様の使徒になるのかな?』

「使徒じゃないですけど、世界に【成長因子】を広げることを頼まれたのは、確かです」


 俺とティエリアさんは、互いに話をする。

 どうやら、俺を転生させた男神は、創世神・アーライダという名前であるらしい。


 次にティエリアさんから地縛霊になった後の話を聞く。


『私が死んだのは、もう500年も前かしらね。その間に、この場所には何度も村ができて、そして滅んだわ。みんな穏やかでいい人だった』


 冒険者の開拓団だから、気性は荒いが面倒見のいい男性たちやそんな男たちを尻に敷く女たち。

 そうした人たちが子どもを産み、育て、そして村が発展して、魔物が壊す。

 そうしたことが何度も起こる。


『私はね。この土地で村の人々がアーライダ様に祈る力を少しだけ分けてもらって、これまで存在し続けられたの』

「それって、地縛霊というより土着の神様に近い気がする」

『ふふっ、そうかもね。神霊候補だったから、その予定はあったかもね。でも、非正規の神様じゃあ、実際には振るえる力は限られていたわ』


 死んだ直後は、霊魂に多大な力が有った。だから、大勢を呪うことができた。

 その後は、力の大半を失い、神霊候補として信仰心を掠め取るように存在を維持しつつ、村が魔物に襲われた時、その力を振るって村人を逃がしていたらしい。

 だが、それでも殿を務める人が死んだりして、放置された人骨はその人のものらしい。

 そして、ここ50年は廃村になっている。


『最近では、信仰心が手に入らないから、村の跡地に入り込む魔物から生命力や魔力を奪って生き長らえていたわ』

「そうなんですか」


 俺もティエリアさんに相槌を打ち、話をする。


『ふふっ、500年ぶりに楽しい会話だったわ。ありがとうね、トールくん』

「いえ、俺もティエリアさんと話せて良かったです」

『最期にトールくんと話せて良かったわ』


 そう言ってティエリアさんは、儚げに微笑む。


「待ってください! 最期ってなんですか!?」

『言葉通りの最期よ。地縛霊としても長く留まりすぎて、私の霊格が弱まっているわ。だから、私の魂は近いうちに消滅するの』

「いやです! せっかく話せる相手に会えたのに!」


 俺が大きな声で抵抗するが、ティエリアさんは、寂しそうな微笑みのまま俺を宥めるように霊体の手で触れられない頭を撫でる。


『神霊が霊格を維持するには、司る環境や信仰心、地脈の力を利用するけど、正規の神霊じゃない私は利用できない。だから、アーライダ様の信仰を掠めるように維持してた。それ以外の方法だと悪霊が霊格を維持するには、他者から奪う必要があるのよ』

「なら、俺からHPとMPを奪ってください!」

『だめよ。元神霊候補の悪霊が奪うなんてのは、ちょっとでは済まない。魔物だから遠慮は要らないけど、人間ならすぐに死んじゃうわ。だから我が儘言わないで』


 俺は、ティエリアさんが消えないように説得するが、困った微笑みのままである。

 俺は、自分の不甲斐なさにポロポロと涙が零れ、余計に困らせてしまう。


『なら最期に、ひとつだけお願いを聞いてくれる?』

「……なん、ですか」


 俺は、涙を袖で乱暴に拭い、ティエリアさんの顔を見上げる。


『私の魂に刻まれたスキルを奪って、あなたが使って。長い地縛霊生活の中で、多くのスキルを失っているけど、きっとトールくんの役に立つスキルがあるはずよ』


 俺は、目を見開き、ティエリアさんを見つめる。


「本気なんですか?」

『ええ。どうせ私は、近いうちに魔力が尽きて消えてしまうもの。なら同じ神に導かれたトールくんの役に立ちたいわ』


 俺は、目を瞑り、そしてティエリアさんを見つめ返す。


「わかりました。なら、【錬成変化】で抽出するスキルを選ぶために【鑑定】を使っていいですか?」

「ええ、存分に選んでちょうだい」


 俺は、ティエリアさんに【鑑定】スキルを使い、その存在を確かめる。


 ――――――――――――――――――


 NAME:ティエリア・シルヴァルウィ

 年齢:200+500

 JOB【地縛霊】

 LV :251

 HP :0/0(生命力)MP :400/312000(魔力量)


 武器スキル

【聖杖Lv8】


 魔法スキル

【生命吸収Lv3】

【魔力吸収Lv5】

【魔力制御Lv10】

【魔力譲渡Lv7】

【氷雪魔法Lv3】

【嵐雷魔法Lv5】

【聖光魔法Lv4】

【治癒魔法Lv8】

【結界魔法Lv9】

【精霊魔法Lv10】

【生活魔法Lv10】

【闇魔法Lv2】

【念動力Lv2】


 強化スキル

【打撃増大Lv8】

【魔力量増大Lv9】

【知力増大Lv6】

【魔力増大Lv4】

【耐魔増大Lv3】

【霊感強化Lv10】


 耐性スキル

【物理無効Lv‐】


 技能スキル

【浮遊Lv5】


 戦術スキル

【隠密行動Lv5】


 感知・隠密系スキル

【気配遮断Lv10】

【魔力感知Lv10】


その他スキル

【精霊視Lv2】


 ユニークスキル

【創世神・アーライダの神霊】

【精霊王の祝福】

【地縛霊の鎖】


 ―――――――――――――――――――――


 死後に徐々にスキルが零れると言うが、魔法系のスキルは残り、肉体に起因するスキルが消えているようだ。

 それでも上位スキルを持つ彼女は、生前はかなり強かったと思われる。

 それに、幾つか気になることがある。


「ティエリアさん。この膨大なMP上限はなんですか?」

『生前は、そんなんでもなかったのよ。ただ、神霊になると、MPが100倍になって、HPの代わりになるのよ』


 つまり、生前のMPが3120だったのが、100倍か。それでも十分に凄い。

 そして、現在のティエリアさんは、MPが命の残量である。

 たしかに、このMP量を満たすために【生命力吸収】や【魔力吸収】スキルを使われたら、死んでしまう。


「次に質問です。この【地縛霊の鎖】とは、どんなユニークスキルなんですか?」

『それは、私が地縛霊である証よ。このスキルがあるから私は、この地に縛られ、神霊として得るはずだった権能を封じられ、多くのスキルを少しずつ失っていった』


 そう言って答えてくれるティエリアさんは、次に努めて明るく話してくる。


『私のオススメとしては、魔法系スキルよ。上位の魔法スキルは、下位や中位よりも凄いのよ。でもトールくんのMP量を考えると、まずは、【魔力増大】スキルかしら』


 ティエリアさんのアドバイスを聞いた俺だが、どのスキルを抽出し、そして使うのか決めた。


「――ティエリアさんから貰うスキルを選びました」

『そう、私は抵抗しないわ。好きにスキルを選んでいいわよ』


 ティエリアさんは、無抵抗に受け入れるように両手を広げる。


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