2話
2話
生前は、アラフォー手前だったのが、体は12歳くらいに若返って小さな家の中にいた。
家の中には、数日分の食料とナイフ、ベッドなどがある。
台所と寝室、二つの空き部屋がある石造りの頑丈そうな家の中を見て回れば、戸棚には、生活に必要な雑貨や塩などの調味料が、本棚には、この世界の宗教本や調合、錬金術などの本が用意されていた。
「若返らせて転生ってことは、強くなる準備期間が用意されている、ってことかな?」
俺は、家の中を見て回った後、自室のベッドに腰を下ろし、転生と共に与えられた基礎知識からステータスを開き、確認する。
「とりあえず――【ステータス】」
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NAME:トール・ライド
年齢:12
JOB:【異邦人】
LV :1
HP :200/200(生命力)MP :40/40(魔力量)
STR :20(筋力) VIT :20(耐久力) DEX :20(器用) AGI :20(速度)
INT :20(知力、理解力) MGI :20(魔力) RMG :20(耐魔)
ユニークスキル
【錬成変化】
【成長因子】
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とてもフラットなステータスに、俺はどう判断すればいいのか分からない。
「12歳としては平均的なのかな? けど、レベル1ってことは、普通に死にそう」
そうなるとこの家を拠点にレベル上げしていく必要がありそうだ。
「とりあえず、12歳でハーレムとかないよなぁ」
この体を見て、いきなりハーレム目指すなんてあり得ないと思い、その考えは一度脇に置いておくことにする。
「ハーレムとかは知らないけど、【成長因子】の拡散はわかった。いつかは、世界中を旅する。そのために、生き延びなきゃ」
俺は、ナイフを手に取り、家の外に出る。
「……森の中か。ここで安定した生活をするか、近くで人里を見つけないと」
俺は、そう呟き、家の周りを見回す。
家の周りを見れば、森に侵食されていないのか、不自然なほどポッカリと空間が空いている。
石造りの立派な家は、小綺麗だが、人が使っていた気配はなかった。
なので、その周りも多少荒れていると思っていたのに予想外である。
まるで、結界か何かで守られているように思う。
「……とりあえず、安全地帯だと思おう。使えるものを近くから探さないと」
俺は、ナイフを手に、結界の外に出て、森の中を歩いていく。
迷わないように木に目印を付けながら、食べられそうな木の実や野菜などを探していく。
だが、森歩きの素人のために、何が食べられるのか分からない。
そもそもこの異世界の物が俺の知識にあるものと同じかどうかの確証もない。
そんな中、森の中で水音が聞こえたのでそちらに向かう。
「水があるなら、しばらくは生きられるな」
俺は、そちらの方に歩いて行くと、視界が開け、小さな湧き水と小川を見つけた。
多少落ち葉は溜まっているが、それさえ払えば、飲めるほど綺麗な水に安心する。
だがここで、水を汲む道具がないことに気付く。
「はぁ、ナイフ一本で出てきたのは、不味かったかなぁ。もう少し探せば、何かあったかも」
俺はそう呟き、水場を確認できたし、帰ろうと振り返る。
その時、水辺の岩の傍で何かが動いた。
「っ!? 魔物か!」
岩場の陰から這い出してきた体長30センチほどの緑色のトカゲが俺の存在に気付き、シャァーと威嚇してくる。
手元のナイフで戦っても倒せそうなほど弱そうな魔物だが、まだ直接戦う覚悟を決め切れていなかった。
いつかは、魔物を倒してレベルを上げていかなければいけない。
だから俺は、足元の石を拾い上げて、緑色のトカゲに投げる。
「喰らえっ!」
投げた石は、トカゲの体に当たり、肉を打つような音が響く。
トカゲは、血を吐き、か細い息を繰り返している。
「……ごめん」
俺は、それだけ言って、抵抗できないトカゲの頭にナイフを突き立てて、トドメを刺す。
手に残る感触の気持ち悪さと言いようの知れない充足感を覚え、微妙な表情でトカゲの体を掴む。
「今日は帰ろう」
トカゲの死体を運ぶ俺は、帰りに何個かのリンゴに似た果実をもぎ取り、家に帰る。