14話
14話
薬草などを土ごと持ち帰って育ててみたが、根付かずに枯れてしまったために、どうやら薬草畑というのは難しいようだ。
「まぁ、薬草は採取するもの、って感じらしいから仕方がないか。いつかは、薬草畑も作りたいなぁ」
俺は、作りたい物がたくさんあるなぁ、と一人小さく苦笑を浮かべながら、畑に水を遣る。
【錬成変化】で大気中の水分を集めて、水を撒き、雑草や生ゴミ、傷んだ食肉を分解して養分にして土に混ぜ込む。
「さて、今日もお勤め行きますか」
ここ二週間ほど、毎日30~50体ほどの魔物と戦ってきた。
だが、レベル10を超した辺りからレベルの上昇速度が停滞し、その一方で集まる【スキルの残滓】のお陰で少しずつだが、ステータスが上がってきた。
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NAME:トール・ライド
年齢:12
JOB【錬金術師】
LV 15
HP :570/570(生命力)MP :120/120(魔力量)
STR :90(筋力) VIT :82(耐久力) DEX :80(器用さ) AGI :104(速度)
INT :73(知力、理解力) MGI :75(魔力) RMG :73(耐魔)
武器スキル
【槍Lv3】
【剣Lv1】
【短剣Lv2】
【棍棒Lv1】
【斧Lv1】
【投擲Lv1】
魔法スキル
【魔力回復Lv1】
強化スキル
【刺突強化Lv3】
【斬撃強化Lv1】
【打撃強化Lv2】
【生命力強化Lv1】
【筋力強化Lv2】
【器用強化Lv1】
【速度強化Lv2】
【自己強化:脚力Lv2】
【感覚強化:嗅覚Lv1】
耐性スキル
【物理耐性Lv2】
【毒耐性Lv2】
生産スキル
【錬金術Lv1】
【料理Lv2】
【調合Lv2】
技能スキル
【鑑定Lv2】
【採取Lv2】
【跳躍Lv2】
【暗視Lv2】
【騎乗Lv1】
【調教Lv1】
【罠師Lv1】
戦術スキル
【連携Lv1】
【追跡Lv2】
【逃走Lv2】
感知・隠密系スキル
【気配察知Lv2】
【気配遮断Lv2】
【罠感知Lv1】
ユニークスキル
【錬成変化】
【成長因子】
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二週間、戦い続けてもゴブリンかウルフ、コボルトなどの魔物くらいしか相手をしていないが、細々としたスキルが増えた。
武器系は、その武器の行動に補正やダメージを与えてくれる。
強化系は、ステータスの表記以上の力をボーナスで与えてくれるようだ。
それに強化対象に部分的な身体や感覚器官のスキルなどがあるので、腕力や五感、第六感などの強化などがあるのか、楽しみである。
また、コボルト・ライダーから【調教】スキルが手に入ったので、ボッチ脱出の目処がたった。
個人的に嬉しいのは、【罠師】や【罠感知】などの罠関連のスキルである。
手先が器用なゴブリンが罠を仕掛けているのを見つけたので倒し、ソイツらから手に入れたスキルだ。
いつか危険なダンジョン内を探索する時に、活用できるだろう。
なにより正面から戦うのは危険なフォレスト・ボアを倒すためには、有用かもしれない。
ただ、これだけ戦っても魔法系スキルが手に入らないのを考えると、ゴブリンの巣にいる上位種を探し出すか、自力で習得するべきなんだろうか、と考え始める。
そんな中――
「――【錬成変化】!」
今日も今日とて、ゴブリンを背後から奇襲して打ち倒す。
変わらず、錆びた剣や棍棒装備のために、大したスキルは期待していなかった。
「さてと、こいつらから【スキルの残滓】を抜き取るか」
そして肉体は、分解して森の養分になってもらおう、と手を翳して、スキルを発動させる。
「――【錬成変化】!」
『――ギャギャギャギャギャッ!』
倒したはずのゴブリンの背中に手を当てて、分解しようとするが、突然、顔を上げて暴れ出す。
土による拘束で抜け出せないが、倒したと思ったゴブリンが暴れ出したことに驚き、俺は更にスキルを強める。
いち早く、分解を――その思いが強く、いつも以上に魔力を消費しているようだ。
だが、ゴブリンは塵に分解できず、暴れて傷から多くの血を流し、ぐったりしているがまだ生きている。
「はぁはぁはぁ……なんだったんだ? ん?」
【錬成変化】で無駄に魔力を消費し、ゴブリンを分解できずに疲労感を覚える中、俺はいつの間にか手に握っていたものを目にする。
「これは、【スキルの残滓】? いや――」
俺は、鑑定スキルを発動して確かめる。
【スキル珠】――DEX+1上昇、スキル【仮死Lv2】
俺は、肩で息をしながら、【スキル珠】を手にしていた。
武器や防具に【スキルの残滓】を融合し、スキルだけを再抽出した際に生まれるアイテムだった。
だが、【鑑定】された結果は、【スキルの残滓】の上位素材と言える内容である。
「どうなってる……はっ! まさか!」
この【仮死】スキルというのは、いわゆる死んだふり、ではないだろうか。
死体だと思って【錬成変化】を使い、生きたゴブリンからスキルを直接抽出したようだ。
その結果が、この【スキル珠】ではないだろうか。
「このスキルレベル2ってことは、相手のスキルをそのまま奪える、ってことだよな。それにステータス上昇量も確定で1上昇する」
ただ、大幅にMPを奪われた気がして、ステータスを確認すると、俺のMPの100ほど使用したようだ。
「とりあえず、連発は――っ! やばっ、魔物が来た」
俺が考察のために放置していたゴブリンの血の臭いを嗅ぎつけて、ウルフなどの魔物が接近しているのを感じ、素早くその場から逃げる。
「ふぅ、油断しちゃいけないな。けど、検証してみないとな」
俺は、手に入れたばかりのゴブリンの【スキル珠】を取り込む。
DEXのステータスが1上昇し、【仮死Lv2】のスキルが手に入った。
もしも、相手のスキルをそのまま抽出できれば、更に効率的に強くなることができる。
俺は、次の魔物を探すと、再びゴブリンの集団を見つける。
「とりあえず、死なない程度に弱らせるか。――【錬成変化】!」
普段のように足元の土を操り、ゴブリンたちを拘束し、ゴブリンが持っていた棍棒を奪って全力で殴る。
俺が棍棒で全力で殴った結果、ゴブリン三体の二体が昏倒し、一体は手加減を間違えて即死した。
「とりあえず、更に拘束を厳重にするか」
周りの土砂を固めて逃げ出せないように体を拘束し、殴り殺してしまったゴブリンを分解する。
その際、やはり【スキルの残滓】を得たので、ユニークスキルの【錬成変化】が成長したわけではなさそうだ。
「さてと、相手は、どんなスキルを持ってるかな。――【鑑定】!」
日常生活で頻繁に使い、レベルが2になったことで魔物の簡易ステータスを見ることができるようになった。
その鑑定結果が――
ゴブリン【魔物】
スキル【棍棒Lv1】【生命力強化Lv1】【性欲増強Lv2】
ゴブリン【魔物】
スキル【逃走Lv2】【暗視Lv2】【性欲増強Lv1】
対極的なスキルを所持するゴブリンは、検証相手として悪くないと感じた。
「とりあえず、また騒がれても困るし、口に何か詰めて置くか」
木の樹皮から繊維の塊を錬成し、ゴブリンの口の中に詰めて紐で口を押さえる。
とりあえず、鼻呼吸しているので、死んではいないが、中々に凶悪な絵面だ。
それに再び魔物に襲われると困るので、二体のゴブリンの足を引きずって、森の家の魔物が寄り付かない結界の範囲まで運び、そこで実験する。
「転生して、一人で居るから常識的なストッパーがないんだよなぁ。なんか、どこまでもマッドなことに突き進んでいきそう」
俺は、そうぼやきながらもMPが十分に回復したことを確認する。
「さて、検証のために、狙い通りのスキルを奪えるか。――【錬成変化】!」
俺は、逃げ足の速そうなゴブリンからスキルを抽出する。
狙うのは、【逃走Lv2】のスキルを意識しながら、ゴブリンからスキルの抽出をする。
生きたままスキルを抽出すると苦痛を感じるのか、拘束されたゴブリンが目を覚まして、激しく暴れる。
だが、口に物を詰めているためにくぐもった声のために、先程の二の舞にならずに済んだ。
そして、無事に【逃走Lv2】のスキル珠を抽出することができた。
【スキル珠】――AGI+1上昇、スキル【逃走Lv2】
スキルを奪われたゴブリンは、目や鼻から体液を垂れ流し、ぐったりとしている。
「一度のMP消費は100かぁ、結構キツイなぁ」
俺は、その場で胡座を組んで【魔力回復】を行なう。
体の中の魔力を巡らせ、そして、外部の魔力を取り込んで回復していく。
「よし、MP回復したな。おっ、新しいスキルが生えてる」
自身の体内魔力を動かす【魔力操作】と外界の魔力を知覚する【魔力感知】スキルがレベル1で生まれていた。
確かに魔物からのスキルを手に入れて強くなるのも間違いじゃないが、こうした努力した部分が反映されるのは嬉しく思う。
「さて、やるとするか」
俺は、再び同じゴブリンに対してスキルの抽出を行ない、【暗視】と【性欲増強】スキルを手に入れる。
だが、スキルを一つずつ奪うごとにゴブリンの衰弱が激しくなり、三つ目で事切れるように亡くなった。
一応死なないように、勿体ないがポーションも振り掛けたのに、不思議に思う。
次に時間を掛けてもう一体のゴブリンからスキルを抽出するが、やはり酷く衰弱していく。
最後には、検証に協力してくれたゴブリンは、森の養分となるように魔石を取り出して分解した。