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12話

 12話


 ポーションができたことで探索に対する安全性が増した俺は、装備を確認する。


【武器】

 ・刺突の短槍

 ・採取用のナイフ

【防具】

 ・グリーンリザードのベスト

 ・ブーツ

 ・フード付きコート


【背負い鞄】

 ・保存食×3食分

 ・ライフポーション×2本

 ・短槍の修理用のこぶし大の鉄塊×1

 ・薬草採取用の鉄製の水筒(水筒の底に植物繊維の塊を入れて湿らせている)

 ・麻袋とロープ、麻紐等――


 日々の探索で少しずつ装備を充実させてきた俺は、遂に北側の探索に足を延ばす。

 そして、北に進んだところで、ある物に気付く。


「なんだ、あのレンガの入口は」


 北側には、高い山脈が広がっており、ある地点から森が切れている。

 そして、その山脈沿いに進んでいくと人間が作ったようなレンガ造りの入口がある。

 周囲の山脈の色合いが白っぽいのに対して、レンガの色合いが黄色なので、かなり浮いて見える。

 更にレンガ造りの入口の奥は、ランタンなどの灯りがないのに、見通せるほど明るい。


「なんだ、ここは」


 俺は、少し離れた岩陰からその様子を確かめる。

 そして、しばらくしてレンガ造りの入口から一匹のゴブリンが外に出てきた。


「ギャギャッ!」


 手には、新品っぽい鉄剣を持ったゴブリンが、ギャアギャアと騒ぎながら、東の森の方に向かって行く。


「ゴブリンの巣穴か? 遺跡か何かを利用して巣を作ってるのか?」


 それにしても内部は明るく、ゴブリンが通るにしては、汚さはない。


「……とりあえず、入ってみるか」


 俺は、短槍を構えたまま、恐る恐るレンガ造りの入口に入っていく。

 最初は一本道だった遺跡は、しばらくして二手に分かれ始める。


「ほんと、どっちに行くかなぁ」


 左右の角からゴブリンが出てこないか慎重に覗き込み、魔物がいないことを確かめて道を悩む。


「まぁ、とりあえず左手に行くかな」


 左手伝いに進むと決めていれば、帰り道は迷わないはずだ。

 俺が左の道に進んでいくと、そこには部屋になっており、何体かの魔物がいた。


「あれは、ゴブリンが三体か」


 先程出て行ったゴブリンと同じく鉄の剣やナイフ、革の盾を持っている。


「ここも先手必勝! ――【錬成変化】!」


 足元を踏み込み、レンガの形状を変化させて、相手を拘束しようとする。

 だが、足裏に妙な抵抗があり、レンガの床が変化しない。

 そして、ゴブリンたちは、俺の存在に気付き、通路の方に襲い掛かってくる。


「はっ!? どういうことだよ! なんで【錬成変化】が発動しないんだよ!」


 俺は、バラバラに襲ってくるゴブリンを狭い通路に誘き寄せるが、今までは【錬成変化】で拘束してから背後から倒していたために正面から敵意を向けてくる相手に手間取る。


「これで、どうだ!」


 俺は、力一杯に短槍を突き出す。

 鉄器同士がぶつかり合い、火花が散るが、短槍の【刺突強化】のスキルが作用しているのか、相手の鉄剣が弾かれ、ゴブリンの首元に槍が突き刺さる。

 だが、思いのほか、強く刺しすぎたために、短槍からゴブリンを引き抜けずに残ってしまう。


『グギャギャッ――!』

「おりゃぁぁぁっ!」


 俺は、ゴブリンの突き刺さったままの短槍を振り回すようにして盾持ちのゴブリンにぶつけて転ばす。

 そして、短槍を手放し、ゴブリンが落とした鉄剣を拾い上げて、体勢が崩れた盾持ちゴブリンの首に突き立てる。

 盾持ちゴブリンの返り血で汚れるが、構わず引き抜き、ナイフ持ちに対して、鉄剣を投げる。

 全力で投げた鉄剣は、狭い通路で回転しながらゴブリンに向かい、自分の体を守ろうと腕を掲げるが、鉄剣が斬り落とし、肩に深く食い込み、絶命する。


「はぁはぁ……ゴブリンの巣って、危険かも。それにこの遺跡には、スキル封じでも掛かってるのか?」


 俺は、明るい自然発光するレンガ造りの遺跡を見て、深い溜息を吐き出す。

 ゴブリンの死体の後処理をしなければ、と思い目を向けると、倒れた死体が溶けるように黒い煙に変わり、後には、ゴブリンが使っていた武器と少し大きめの魔石が残されていた。


「なんだ、これは……」


 夢か、幻か、と思う反面。自分の体に掛かったゴブリンの返り血は本物である。


「まさかっ!?」


 俺は、このレンガ造りの壁に対して、【鑑定】を行なう。


 ――【ダンジョンの壁】

 レンガで構築されたダンジョンの壁。破壊することは困難であり、自動修復される。


 俺は、それを見て理解した。


「ここは、ダンジョンか!」


 俺は、とりあえず、落ちている魔石とゴブリンたちの武器を拾い、ダンジョンから脱出する。

 そして、ダンジョンの入口まで戻ってきた俺は、ダンジョン前で返り血などの汚れを【錬成変化】で分解して落とし、一息吐く。


「ここがダンジョンか。なら、確かめないとな」


 俺は、ダンジョンの入口が見える範囲で探索しながら、待つ。

 途中、食料やポーションの材料であるキィール草を採取して待っていると、今度は、ダンジョンの入口からウルフが現れ、俺は即座に【錬成変化】で拘束する。


『――ギャンギャンギャン!』


 硬い土塊に押さえつけられるようなウルフに対して、短槍を突き立てて倒す。

 そして、絶命した後、しばらく【錬成変化】での拘束を解いて観察するが、ウルフの死体は、黒い煙になって消えることはなく、【錬成変化】で分解し、スキルの残滓を手に入れた。


「なるほど、ダンジョン外だと魔物は、消えないか。とりあえず、一度家に帰ってから本でダンジョンについて調べるか」


 まともな戦闘は一回だけだが、正面から戦ったために精神的にかなり疲れた。

 とりあえず、今日はもう家に帰って、ベッドで休みながらダンジョンについて調べることにした。


「ただいまー、ってまぁ、人はいないけど」


 俺は、前世での癖に対して、一人ツッコミを入れながら、本棚の本を調べる。

 まだ全て読み切れていないが、軽く流し読みした際に、ダンジョンの記述があった本を手に取る。


「あった。これだ」


 俺は、適当にベッドに横になり、その部分を読む。


「――『ダンジョンとは、魔物を生み出す、巨大な生物、もしくは施設。内部は、千差万別で天然洞窟のような階層もあれば、いきなり平原の階層に変わったりする』――まぁ、レンガ造りになっているからそういう階層なんだろうな」


 更に、ダンジョンの魔物に関して読んでいくと、興味深い一文がある。


「なになに――『ダンジョンの魔物は、倒すとその体を消し、魔石や魔物の素材、武器などを落とし、これをドロップと呼ぶ。また、ごく稀に宝箱を落とし、そこにはマジックアイテムなどの貴重な魔道具が入っていることがある』――なるほど、マジックアイテム」


 それは、是非とも欲しいと思う。

 有用な装備は、俺の戦力強化に繋がるほか、マジックアイテムを解析すれば、より【錬金術】の付与を理解できるかもしれない。

 今は、【スキルの残滓】を融合した疑似マジックアイテムであるが、できるなら、複数の技術を習得した相乗効果で強力な道具を作りたいと思う。


「……うーん。魔物を倒して【スキルの残滓】を集められない代わりに、マジックアイテムの可能性かぁ」


 他にも戦利品として今欲しい鉄製品を手に入れることができる。


「まぁしばらくは、ダンジョンは止そう。まだまだ弱いからな」


 俺は、ふとダンジョンの項目を流し読みながら、ダンジョンからゴブリンやウルフが現れたのを思い出す。

 あんな感じでダンジョンから現れた魔物が外部に広がり、群れを作って生息しているんだろうか。

 それに、魔物たちが使っていた武器は、ダンジョンから持ち出した物を使い続けていたんだろうな、と思う。


「考えてみれば、なんでゴブリンが錆びた武器とか持ってるんだよ。どこにも鍛冶施設なんてないのに……」


 どこかで冒険者から奪ったのかな、とか思っていたけど、まさかダンジョンからの流出物だとは思わなかった。


「とりあえず、錆びた武器の由来は分かったな。けど、いつかはダンジョン攻略して、アイテムボックスを探したいな」


 ダンジョン攻略できるくらいになるのは、いつになるか分からないが、強くなろう、と心に誓う。


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