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「ここは...どこだ...?」
気づいたら俺は白い部屋にいた。
(俺はさっきアイツと喧嘩して、それから...)
思い出そうとしていると、声が聞こえた。
『やぁ!君が 小野田 歩 くんだね!』
僕の名前は小野田 歩 広島に住む平凡な高校生だ。
嘘だ。正確には何においても落ちこぼれの高校生だ。生まれてこの方、勉強、運動などどの分野においても、最底辺を進んできた。九九を覚えたのも中三の夏休みだ。今まで何も努力してこなかったわけではない、むしろ誰よりも努力した。
ただ僕には全くと言っていいほど、全ての分野において、適正がなかった。多分普通の人の適正を100とすると、多分僕の適正は0.01くらいなのだ。
まあ、努力したと言っても中三の夏までだ。
中三の夏あけの登校日僕は友人に九九を覚えたことを言った
『ごめん、どーでもいい笑』
ここで僕の心は折れてしまった。
それからずっと家に引きこもってしまった。
高校生受験は名前を書けば受かるような高校生に進学したので、受かるには受かったが、結構不登校になってしまった。
そんな僕を心配してか幼馴染の夏美が僕の部屋を訪れた。
『ちゃんと学校行ってるの?』
「...」
僕は何も答えられなかった。
『歩くんのいいところは諦めずに努力するところだよ!君なら出来るから!』
そこで僕は思った。
夏美は県内でもっとも偏差値の高い青霧高校に進学するくらい頭が良く、バレーボールでは県選抜に選ばれるほどの天才だ。何でそんな奴に僕の気持ちがわかるのか、わかるはずがない。
そして言ってしまった。
「お前に僕の気持ちがわかるわけないだろ!勉強も運動も出来て、大した努力もせずに成功してきたんだろ!僕はお前みたいになんでも出来るわけじゃない!むしろ何も出来ないんだよ!本当は僕をバカにしにきたんだろ?そうなんだろ?もう帰ってくれ。二度と顔も見たくない!」
『ぅ...もう知らない!』
彼女は泣き出して走り去って行った。
もちろん僕は夏美が、どれほど努力したのかなんて知らない。でも、人間なんて自分の出来ないことができる人間をみたら努力もせずにと思ってしまうものだ。
そこで僕は自分のやったしまったことに気がついて夏美を追いかけた。
外は大雨だった。そういえば今日は台風だった。
夏美はそんな中で僕に会いにきてくれていた。
僕は自分が許せなかった。
日頃の動いてないから、夏美を追いかけるだけでは追いつくことはできないので先回りすることにした。
すると、目の前には赤信号に気付かず、直進しようとする夏美の奥にトラックが見えた。
「夏美!!!」
夏美は立ち止まってこっちを見た。
ただその時には夏美はすでに車道に入っていた。
僕は夏美に向かって全力で走った。さっきまで走って疲れきっていたのが嘘みたいに体が動いた。
トラックがぶつかる直前に夏美の身体を押し飛ばしたところで、僕は右側から強烈な衝撃を受けた...。
そこで僕の記憶は途切れた。