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第33章:対決

 ジリジリと互いに間合いを詰め合った私とラインハルト修道司祭だけど私は妙な気を感じていた。


 その妙な気はラインハルト修道司祭が持つロングソードから来ていた。


 『ロングソードに細工しているのか?』


 一瞬は考えたけど直ぐ違うと否定する。


 武器に魔石を粉末状にして擦り込ませて魔法剣にする技術はある。


 だけど光や熱、または風や水で魔石が属性によって反応するけどラインハルト修道司祭の剣は何ら反応を見せない。


 だから魔法剣とは考え辛い。


 となれば・・・・・・・・


 『衣服・・・・だな』


 ラインハルト修道司祭は「ガンベゾン」の上からサーコートを着た出で立ちだった。


 鎧の下に着るガンベゾンも立派な防具だから下手に打ち込むのは危険だ。


 顔面はさらけ出しているから狙えい易いるけど・・・・それこそ狙いという事だってあり得る。


 「・・・・・・・・」


 ここでラインハルト修道司祭の足が止まった。


 そして刹那・・・・・・・・ 


 勢いよく走って来た。


 「死ねぇっ!!」


 走りながら振り下ろされた斬撃を私は中段の構えを崩さず半身となって躱した。


 「ぬぇいっ!!」


 しかしラインハルト修道司祭は斬撃を躱されると今度は当て身を繰り出してきた。


 「・・・・・・・・」


 私は当て身も躱すと眉間を狙い平突きを繰り出した。


 「ぬぅんっ!!」


 ラインハルト修道司祭は平突きをロングソードで弾くと間合いを取り直した。


 「中々に鋭い突きだな。しかし、剣術も異教徒の剣術とは情けない」


 「剣術すら差別対象にする貴方の“貧しい精神”の方が私は聖職者として情けなく見えますよ」


 皮肉を込めて言いながら私は中段から上段にスクラマサクスを構え直した。


 ただ「素肌剣法」の上段とは違う。


 「甲冑剣法」の時に構える上段とラインハルト修道司祭は直ぐ察したのか・・・・左脚を引いて右半身となった。


 「・・・・・・・・!!」

  

 私は摺り足から踵を地面に付ける走り方で距離を縮めながら上段の構えからスクラマサクスを振り下ろした。


 狙ったのは左袈裟でラインハルト修道司祭はロングソードでスクラマサクスを受け止めた。


 そして力任せに押し返してきたけど私は力を抜いてラインハルト修道司祭を前のめりにしながら・・・・右へ移動した。


 これにラインハルト修道司祭はハッとするけど・・・・その時には右腋下にスクラマサクスが食い込んでいた。


 本当ならこの時点で勝負は決まった。


 右腋下は動脈が流れているから急所なんだ。


 ところが刃は当たった瞬間・・・・鈍い音が鳴ると同時に・・・・ある程度の所で刃が止まった。

  

 それを見てメルセデス殿はギリッと歯軋りするのとは対称的にラインハルト修道司祭はニヤリと笑った。


 そしてロングソードを振り上げたけど私は直ぐ後ろに引いて白刃を躱した。


 「フッ・・・・良く躱したな?」


 「・・・・・・・・」


 勝ち誇った笑みを浮かべるラインハルト修道司祭にバルバドス大宮中伯が静かに言葉を投げ付けた。


 「決闘に卑怯な小細工をするとは・・・・ハインリッヒの言う通り貧しい精神を持った奴だな。そして私が生きた時代から変わらんな」


 「悪魔の手先が何を言うか!しかし・・・・こいつを助けないのか?」


 ラインハルト修道司祭は私を一瞥してからバルバドス大宮中伯に問いを投げたけどバルバドス大宮中伯は薄ら笑いを浮かべた。


 「その者は自分が死ぬ際は貴様も道連れにすると言った。つまり・・・・私が手を下さずとも貴様の死は確実だ」


 この言葉にラインハルト修道司祭は青筋を浮かべたけど直ぐ私に視線を戻してきた。


 対して私は無言でスクラマサクスを下段に構えつつ目の前の腐れ聖職者の小細工を再確認する。


 『あの感触からして補助防具としてチェイン・メイルを使っているな』


 一昔前はチェイン・メイルが主防具だったけどラメラー・アーマー等の鎧が生み出されるとチェイン・メイルは補助防具の地位に追い遣られたんだ。


 だけど一昔前は主防具の地位に居ただけあって斬撃は通じない。


 通じるのは突きや殴打による攻撃だけど・・・・・・・・


 「・・・・・・・・」


 下段に構えたまま私はラインハルト修道司祭に近付いた。


 対してラインハルト修道司祭は日/屋根よりの構えできたけど自分の勝利を疑っていない様子だった。


 その傲慢な態度が如何にも聖教らしいと思った刹那・・・・ラインハルト修道司祭がロングソードを振り下ろしてきた。


 鋭い斬撃は私の頭を狙っている。


 だけど私はギリギリの距離で躱すとスクラマサクスの峰でロングソードを「擦り上げ」た。


 「!?」


 これにラインハルト修道司祭は驚いたけど躱す暇すらなかった。


 ガギィン!!


 スクラマサクスがラインハルト修道司祭の右袈裟を強く打ってサーコートを切り裂いた。


 切り裂かれたサーコートは無惨に布切れと化して宙を舞う。


 「ぬぐっ・・・・・・・・!?」


 ラインハルト修道司祭は右袈裟に強い衝撃を浴びて後ろへ僅かに引く。


 それでも私にロングソードを向けてきたけど・・・・それを私は「擦り落とし」て眉間を狙い突きを放った。


 ところがラインハルト修道司祭は笑っていた。


 何で笑うのか?


 その笑みが解らなかったけど次の瞬間・・・・私は胴に痛みを覚えた。

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 私は自分の胴に鋭い斬撃が与えられた事を一瞬遅れて理解した。


 そしてラインハルト修道司祭が残酷な笑みを浮かべながらサーコートの切れ端が無数に浮かんでいるのを見て・・・・その正体を見破った。


 「・・・・風の魔法をサーコートに施していた、か」


 「貴様のような背徳者に”切り札”を使うとは思わなかったが・・・・これで私の勝利は決まったな」


 ニヤリとラインハルト修道司祭は笑いながら後退する私に剣先を向けた。


 「せめてもの情けだ。死ぬ前に言い残す事はあるか?」


 「・・・・先ほども言った筈だ。私が死ぬ時は貴様も道連れだ」


 私は血が流れる胴にスカーフを巻いて応急処置を施してからスクラマサクスを下段に構えた。


 「ふんっ・・・・人の親切に唾を吐くなら良いだろう。嬲り殺してやる」

 

 ラインハルト修道司祭は自分の手でサーコートを切り裂くと空中に浮遊させると私を指さした。


 「さぁ、部下達の恨みを晴らさせてもらうぞ!!」


 私をラインハルト修道司祭が指さすと切り裂かれたサーコートは風のような速度で私に襲い掛かってきた。


 一瞬の痛みと共に私の左膝から血が流れたけど今度は右腕から血が流れた。


 「ふははははははっ!!良い光景だ!神の兵たる我々に歯向かった背徳者が傷つく姿を見るのは!!」

 

 狂ったようにラインハルト修道司祭は高笑いをしたけどバルバドス大宮中伯達は無言で侮蔑の視線を送った。


 対してフランツ達は憎悪と怒りの眼差しでラインハルト修道司祭を睨み据えている。


 だけどフランツ達より危険な雰囲気を出しているのは・・・・メルセデス殿だった。

 

 メルセデス殿はダニ達に囲まれるようにして立っているけど愛剣に伸びている左手を数人係りで抑えられている。


 それを見れば今の心境が如何なるものか解かる。


 メルセデス殿の気持ちは嬉しい。


 でも、メルセデス殿が一歩でも動けばバルバドス大宮中伯は間違いなくメルセデス殿を処罰するだろう。


 それをダニ達は阻止しているけど時間は余りない感じだったけど・・・・・・・・


 「”怒りは自分に盛る毒”ですよ。メルセデス殿」


 私は嘗て欠伸をする猫達の集落を訪ねた際に言われた言葉をメルセデス殿に投げた。


 「・・・・・・・・」


 メルセデス殿は私の言葉を無言で受け止めたけど私は顔を向けず段々と重く感じてきたスクラマサクスを握り直した。


 その瞬間も鋭い刃と化したサーコートの切れ端が私の足首を軽く切って出血を強いたけど私は痛みを堪えてメルセデス殿に言った。


 「メルセデス殿、貴女の御気持ちは嬉しいです。ですが先ほども言った通り・・・・この腐れ聖職者は私が倒します。ですから貴女はフランツ達と同じく見届けて下さい」


 「・・・・・・・・」


 私の言葉にメルセデス殿は左手を愛剣から離し怒気を抑え込む事で応じた。


 だけど、ここぞとばかりにラインハルト修道司祭は私を詰ってきた。


 「ふんっ。他人の心配をするとは余裕だな?」


 「・・・・騎士王アルフレット陛下はこう言われた」


 『自分が如何に苦境の立場にあろうとも婦女子が居たら命を懸けて護るのが騎士である』


 「ふんっ。奴隷を正妃に迎える愚王の言葉を使うとは・・・・とことん背徳者だな!!」


 ラインハルト修道司祭は私の引き出した言葉に悪態を吐きながら再び指を私に向け、鋭い刃と化したサーコートの切れ端を一斉に飛ばしてきた。


 その刹那・・・・私は前に進んだ。


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