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第25章:女神との約束

 私は夢を見ていた。


 あれからシパクリに連れられて私は眠ったけど自分の気持ちとは裏腹に直ぐ眠ったんだ。


 そして・・・・再び女神と再会している。


 『相変わらず無茶するわね』


 女神は私を見て呆れた様子で言ってきたけど私の性格を熟知しているからか、直ぐ苦笑した。


 『民草を護る盾となる・・・・だったかしら?』


 「そうだよ。とはいえ・・・・今は剣にもなるよ」


 女神の言葉に私も苦笑しながら現状打破の為に意気込みを語った。


 『貴方なら出来るわ。ただ・・・・メルセデス殿も護ってね?』

 

 「私が護らなくてもメルセデス殿なら大軍相手でも勝てるよ。頼れる部下も居るんだ」


 こう私が言うと女神はを否定するように首を横に振った。


 『確かにメルセデス殿自身が強いし部下も頼りになるわ。でも、あの方だって人間よ』


 そして鎧を脱げば女になると女神は言い、私はハッとした。


 「・・・・上に立つ身だから・・・・その孤独を耐えるしかないんだね?」


 私の言葉に女神は静かに頷いた。


 『えぇ、そうよ。あの方は人の上に立つ身だから孤独なの。そして孤独に耐えなくてはならないの』


 この孤独に耐えるのは何かしらの「拠り所」が必要と女神は説いた。


 『メルセデス殿は今まで・・・・ずっと孤独だったの。両親が居た時は両親が支えとなり、師が居た際は師が支えとなったわ』


 しかし、それだってメルセデス殿の立場を考えれば表立って甘える事は許される事ではないと女神は私に説き、それに私も納得した。


 同時に自分が如何に人を見る眼が甘いか思い知らされたよ。


 『私の言葉で自分を責めるならメルセデス殿の支えとなって』


 女神は私の心中を読んだのか、強い口調で私に言ってきた。


 『貴方は言ったでしょ?例え自分が瀕死の状態であろうと民草を護る為に盾となるのが守護騎士の役目と。そして立てない者が居れば寄り添って柱になると』


 それをメルセデス殿にもしてやって欲しいと女神は語り・・・・メルセデス殿と同じ色を持った青い瞳で私を見つめてきた。


 『私の愛する騎士ハインリッヒ・・・・メルセデス殿を助けて上げて』


 女神は私を真っ直ぐ見つめながら頼んできた。


 その瞳から私は眼を逸らす事が出来なかったし、それを女神も承知している。


 この辺は女性らしい「強かさ」を持っている表れと言える。


 ただ、それは自分の為ではなく常に自分より弱い者や・・・・その地に住む全ての生き物を考えて行動している。


 だから私は今回の件も先の先を読んで行動したと解ったから責めなかった。


 そんな私を見つめながら女神はメルセデス殿の心境を語った。 


 『あの方も私同様に枷で自由に動けないの。だから同情もしているわ。そして・・・・私の代わりに真の意味で自由になって欲しいと思ったのよ』


 私は肉体を失った事で自由の身となったからと女神は語り私は沈黙する。


 『ハインリッヒ。間違えないでね?私は貴方に救われた事に感謝しているわ』


 決して死後になって自由を得た事を悔いていないと女神は語った。


 『ただメルセデス殿は今も枷によって動けないわ。それこそ先祖の代から今に掛けて・・・・だから私はあの方の枷を外して上げたいの』


 「・・・・私にメルセデス殿を支えられるのかい?」


 私の問いに女神は深い笑みを浮かべて答えた。


 『貴方なら出来るわ。アグヌス・デイ騎士団も倒せるから自信を持って』


 そして私の分まで長生きしてと女神は語り私の額に口付けを落とした。

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 女神と夢で再会して翌日、私は出来るだけメルセデス殿の側に居て彼女の重みを少しでも軽くしようと務めた。


 逆にメルセデス殿は私を支えるように動き、周りはアグヌス・デイ騎士団の襲撃に備えた。


 フランツの方は自分の女神の側に居たけど、頃合いを見計らったように私の所へ来た。


 その隣には牧師が居た。


 「アグヌス・デイ騎士団に所属していたアルベルト牧師です」


 アルベルトと名乗った牧師は傷付いた身体なのにフランツから離れると私に深く頭を下げてきた。


 「サルバーナ王国王立司法省傘下国境警備課に所属するハインリッヒです。傷はどうですか?」


 「何とか自力で歩行する事は出来ますが・・・・貴方達に大変な迷惑を掛けてしまいましたね」


 アルベルト牧師は私を見て罪悪感に満ちた表情を浮かべた。


 「牧師様、そいつは違うぜ」


 ここでフランツがアルベルト牧師に語り掛けた。


 「あんたは牧師として正しい行動をした。間違っているのはあいつ等さ。それに賽は投げられたんだ。もう行き着く先まで行くしかない」


 「だがフランツ、君は・・・・・・・・」


 「俺は良いんです。それより牧師様が聞いた話を聞かせて下さい」


 アグヌス・デイ騎士団が王国に入る理由等を・・・・・・・・


 フランツの言葉にアルベルト牧師は神妙な表情を浮かべたけど、それは何と説明して良いのか考えている表情だった。


 「・・・・”真・聖教”も絡んでいるのですか?」


 私はアルベルト牧師に内乱後に生まれたばかりの新たな聖教を口にした。


 「御存じなのですか?」


 アルベルト牧師は少し驚いた表情を浮かべながら私に問い返してきた。


 「私達が王都警備課に居た時から何かと問題を起こしていましたから・・・・ある程度の予想は出来ました」


 「そうでしたか・・・・では、ある程度は想像できると思うでしょうが・・・・アグヌス・デイ騎士団は元大司教アレクサンドロスの手引きでヴァエリエに侵入する計画です」


 その際は聖教派に属する中央貴族および地方貴族も呼応し兵を挙げる予定ともアルベルト牧師は語ったけど私は大して驚かなかった。


 何せ聖教には2000年前に「前科」があるし、その後も何かと物騒な話が絶えなかったからね。


 「ですが2000年前に起きた春の政変の教訓を生かしたのか・・・・この地に拠点を設ける計画もあります」


 私達を監禁していた拠点がそれだとアルベルト牧師は語り、一緒に囚われていた婦女子達を罪悪感の眼差しで見た。


 「・・・・私の想像と大して変わりはありませんね。しかし、春の政変ではイプロシグ陛下等を子飼いの中央貴族に暗殺させましたが今回はどうなさるつもりなのですか?」


 今の王室は簡単に暗殺されるような警備体制ではないと私が言うとアルベルト牧師は婦女子達から視線を外して頷いた。


 「仰る通りですが・・・・今も女王陛下は”病床の身”という事もあり地方で療養中の筈です」


 「・・・・流石は腐っても国教ですね。情報網は侮れませんね」

 

 私はアルベルト牧師の言葉で奴等の狙いを理解した。


 奴等は地方で療養中の女王陛下を拉致し神輿として担ぎ上げ自身等の正当性を訴えつつ・・・・エリーナ王女達に対抗する腹だ。


 ここ等辺は春の政変で失敗した部分を実に勉強していると高評価を与えられるけど・・・・・・・・

 

 「そんな血生臭い夢物語は・・・・大嫌いなので何としてでも阻止します」


 私は静かにアルベルト牧師に言い、自身を奮い立たせた。


 「ですが、この状況を打破しなくては・・・・・・・・」


 「えぇ、そうですね。ですが・・・・貴方はフランツの言う通り正しい行動をしました。それを天上に居る神も・・・・きっと見ています」


 だから貴方は今も生きていると私は語った。


 「・・・・そうかもしれませんね。ただ、神は奇跡を何度も起こしたりはしません」


 「そうですね。ただ、神が奇跡を起こさずとも・・・・私達で奇跡を起こせば問題ありません。ですから諦めたりしないで下さい」


 それより不安がっている婦女子達に温かい言葉を掛けて励まして欲しいと私はアルベルト牧師に語った。


 「聖教の教えでは常に”信者と共にあれ”とある筈です」

 

 「・・・・分かりました・・・・ありがとうございます」


 アルベルト牧師は私の言葉に深く頭を下げるとフランツに支えられながら婦女子達の方へ行った。

 

 ただ、肩が小さく震えているのを私は・・・・シッカリ見た。


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