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APPORTS ARCHIVE(アポーツアーカイブ)  作者: イズクラジエイ
第一章 ~暴走魔女は止まらない~
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#11 折れない心と折れる角


 アマレロの【不思議な宝箱】( パンドラボックス)の中から突如現れた悪魔バフォメット。


 凄まじい威圧感と魔力を帯びた悪魔を前に、立ち尽くすしかないバリー達の中で唯一ティピカだけが落ち着いていた。


 新しいおもちゃを手に入れてはしゃぐ子供が意味もわからずそこに居たが正解かもしれない。


 ただ何も考えていない魔女の子が投げたブーメランは悪魔の顔の真横をかすめ空に向かって飛んでいった。



「アブネーな! 何をする小娘!」


 いきりたつ悪魔バフォメットの低く響く声に反応の薄いティピカをたしなめるバリー。



「下がってろティピカ。」


 しかし、そこへ新たな乱入者現る。



「おーい! ティピカー。お前の好物のドーナツ焼けたぞぉー」


「はわ! うわーい! どぉーなつたべるぅぅぅぅぅぅ!」


 最悪のタイミングでエンオウがティピカの為に焼き菓子を用意して現れたのだ。



「お前も、空気読めない系かー!」


 思わず突っ込んでしまったバリーだったが、まったく笑える状況ではない。その証拠にメデリンが震えて動けないでいる状態である何かを知っているようだ。



「あいつについて何か知ってるかメデリン」


「バリエダ。無理よ……バフォメットは錬金術を操る最上級の悪魔よ。きっと逃げることすら出来ないわ」


 そんな状況とも知らず、エンオウから大きなドーナツを貰い嬉しそうに駆け回るティピカ。



「オイ、待てティピカ!」


 ドーナツを頭上に掲げて山羊の頭をした悪魔に臆する事もなく横切ろうとした時、悪魔バフォメットの手が動いた。



「チョウド腹が減っていたのダ。」


「はわ!?」


 ティピカの持っていたドーナツをすれ違いざまに拾い上げると、悪魔は高笑いをして魔の瘴気を漂わせ威嚇してくる。



「ちょっと待て。俺達はお前と敵対する気はない! お前の要求は何だ?」


「要求? そうだな……まずは我を良いように使ってくれた人間を噛み砕き、皆殺しにすることだ。こんな風になぁ」


 焼きたてのドーナツを取り上げられテンションの下がったティピカの頭上ではモグモグと焼きたてのドーナツを貪りたべる山羊の化物の姿が目に映った。



「ティピカ! こっちへ来い!」


 バリーがそう呼びかけようにも、その場にうつむき震えるティピカは動かない。


 ティピカは無邪気でまだあんなに小さな少女だ。見たこともない大きな悪魔の威圧感に恐怖して動けずも無理はない。



 しかし、どうも様子がおかしい。その時ティピカの表情に見えたのはは憎悪とも取れる激怒の感情であった。



「……すでしょうよ……」


「あぁ?」


 悪魔に向かって何かを呟いたティピカの異変にバフォメット自身も気づいた頃、バリー達にもそれまでのティピカからは想像できない信じられない事が起こった。



「どーなつ! 返すでしょうよ!」


 バフォメットを遥かに凌駕する緑色に輝く魔力がティピカの身を包み、怒りの言葉を放つと同時に悪魔はティピカの放つ魔力に押し出されるようにバリー達から遠く吹き飛ばされた。


「うぉぉぉぉぉぉ! なん……だとぉぉぉぉぉぉ!」



「これは……一体どういう事だ」


 バリー達もそのティピカの放つ圧に立っているのがやっとの状態でその状況をただ見ているしか無かった。



「ポラリスの魔女……魔女の頂点の存在、始めてみたわ。あれがあの子の正体よ」


 メデリンは魔道具職人故に魔法に関する知識が豊富である。当然その根源である魔力を操る魔女の存在については知っていたが、自身で目の当たりにしたのは初であり、この場で一番状況を理解し一番驚いていた。



「バリー何なのこれ? あの子なんなの?」


「もっと離れてろアマレロ。何かやばい……近くの建物が崩れてきている」


 ティピカの解き放った魔力は近くの建造物の脆い部分を剥ぎ取り、巻き上げ竜巻のようになっている。高速ではじけ飛ぶレンガの様子を見るにとても近寄れた物ではない。



「ほう……面白い……自由になってそうそう、ポラリスの魔女と対峙できるとは思わなかったぞ。これも運命か」


「……許さないでしょうよ」


 バリー達からしてみれば力の及ばない自然災害に巻き込まれたようなものである。睨み合う悪魔とティピカの成り行きをただ見守るしか術はなかった。



「……メ……ッム……」


 ティピカ何かを呟やくと自身を取り巻いていた魔力が悪魔に向けてかざされた手に集中してゆく。



「遅いわ! 確かに魔力は凄まじいが、小娘のトロい詠唱の魔法にやられる我ではな……ぃ?」


 ティピカへと上空から飛びかかったバフォメットだったが、いつの間にかその大きな体を貫いた輝く緑の光線に阻まれ地に叩きつけられる悪魔の姿があった。



「……なん……だと」


 バフォメットには何が起こったのかも分からないまま、さらなる魔女の追い打ちにその理由を知ることになる。



「ビーム! めからビーーーーム!」


 ティピカの目から放たれ凝縮された魔力の光線はその後もバフォメットの腕を貫き、その大きな角さえあっさりと切断し、勢いよく跳ね返ってティピカの足元へと転がった。



(マジかよ……魔力の光線で撃ち落とされたのか。とんでもないガキだ)


 バフォメットは格の違いを見せつけられ一瞬で敗北を悟った。



「まて、まてまて! 我の負けだ。まいった! あんなお菓子ならいくらでも買ってやるから!」


「はわ! ホント!?」


 一気に明るい表情に変わるティピカに調子の良い軽い口調へと変わる悪魔。



「ホント、ホント! 何なら使い魔として何でも言うこと聞くから命だけは……」


「わーい! やったでしょうよー」


(……あぶねぇ。無詠唱の光で攻撃してくるなんて何でもありかこのガキ。だが、馬鹿で助かったぜ)



「ティピカー! 家が壊れるだろうがよぉ! もっと遠くで遊んでくれー」


 エンオウがわりとこんな深刻な事態にも慣れた感じでティピカに語りかける。



「ハゲオー! この人がね~お菓子いっぱい買ってくれるって~!」


 そこで安心しきって振り返ったティピカのスキを悪魔は見逃さなかった。



(今だ! 魔力さえ扱わなければただのガキだ今なら殺れる!)


 バフォメットは手から鋭い爪を出し、油断しきっていたティピカに後ろから襲いかかった。



「ティピカ! 危ない後ろ!」


 奇襲に気づいて声をかけたバリーだったが、ティピカはその事に気づいていない。


 駆け寄ってくるティピカの背後をを追うように悪魔の手が迫ってくる。


 その時だった。



 「ズザシュ!」


 バフォメットが前のめりに倒れ、その後頭部にはティピカが先刻投げたブーメランが深々と突き刺さっていた。


 魔女は喜び庭駆け回り、悪魔は地に伏しうずくまる。


 その他一同はただ唖然とするだけだった。


「何なんだ一体……」

ティピカ「キュピーン!ビームビーム!」


バリー「いや、魔法使えよ」


挿絵(By みてみん)

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