66話 自称魔王と古書『ドキドキ! ドリームワールド』 -4-
パチッと目を覚ます。
ああ、またこの光景からなのか……
「……」
「おはようさん」
「おはようございますゲルオく、ゲルオ様」
「……今回はどうなった?」
「瞬殺やね」
「精神は落ち着いてきているんですがね」
「気が付いたら後ろからスパッとや」
「綺麗に右と左に分かれてました」
「……そうか」
えっとつまりなんだ。
もうあれから何度も繰り返している。何故かカギの位置が一向にキララの記憶のエリアから変わらず、しかもキララによるとどうも奥にある模様。
ただエリアに入ると精神的にきつかったのはだいぶ慣れてきた。ようはあの作用は初見殺しみたいなもので、深呼吸すれば幾分か和らぐものだったのだ。まあ、なんでそれは問題ないんだが……
「キララのオカンが強すぎる件について」
いやいや、マジでありえんほど強い。
「ウチらがスキル使えるってことは相手も使えるって事やからなぁ」
あのオカンは潜伏するし罠は張るし、終いにゃ遠距離から矢で狙撃までしてきやがった。更にキララの持つスキルである盗賊の心得を遺伝元である奴は当然の権利の様に行使しているようで、的確に俺の位置を把握して命を盗っていきやがる。
「的確にゲルオ様だけを殺しに来てますしね」
「……もうこれで5回は死んだぞ」
さっきのなんか入ってすぐにだぞ!?
本当に何が起きたかわからんかったらな。
「気配は消すしあの洞窟ン中じゃ先も良く見えねぇし……てか固定ボスみたいのが移動すんじゃねえよ!!」
入り口で待機とかアホか!?
「というかアレは本当にキララ様のお母様何でしょうか?」
「……たぶんな? 声からしてオカンやと思うんやけど」
「顔はなんか変なお面付けて見えないからな」
最初は何もわからず殺されて声だけしかわからなかったが、次の時辺りに少しその容姿がわかった。何といえばいいか、点と棒だけで出来た顔のお面を付けてて服装はちょっときわどい恰好をしている。キララには悪いがぶっちゃけエロイです。
「確かにお面付けて戦利品を担いできておった記憶はあるからなぁ……せやからホンマにオカンだと思うんやけど……」
自信はないって事か……
「それにしても、ガチで戦闘できるんがアロマはんのみってのも痛いとこなんよね」
「俺もキララも戦闘スキル皆無だからな」
「あんな便利なモノを何故お二人とも習得していないのか不思議でなりませんよ」
だって俺らが戦うなんてのは前提条件で外してるしな。まさかこの二人だけでこんな目に遭うなんて想定してないっての!
「そういや、キララが狙われた事はないな」
「一度だけ私の方に来ましたが直ぐに隣のゲルオ様に切り替えましたしね」
「……的確な判断だと思うわ」
その時アロマを盾にしようとしたのは内緒だ。結局は背後に回られて殺されたけど……
「んじゃ、キバって次行きましょか」
「あ、ちょっと待ってくれ」
「なんですゲルオ様?」
「このまま対策なしに行ったって死にに行くようなもんだろ? トライ&エラーだって限度ってもんがあるぞ?」
本当にもう嫌なんです。死ぬの。
「まあ、ゲルオ様だけですけどね」
このアロマさんは本当に忠誠度がないんだよね。
「いややわぁ~まだ5回死んだだけやないの。もうギブアップなんか?」
「おい、死んでるこっちの身にもなってくれ。マジで苦しいしキツいんだからな?」
特に転移の罠で殺されたときが一番つらかった。転移先ってちゃんと指定しないと大変なことになるんだね。二度と窒息死だけは勘弁してほしいと思ったよ。
「相手が考えなしのバカなら良かったんでしょうが……常にこちらの一歩先を読んで行動してきますからね」
「しかも俺だけを狙ってな」
しかも向こうはこの繰り返しのルールを把握してるっぽいんだよなぁ……
俺さえ殺せばいいみたいな感じすらある。
「……ウチだけで行った方がやっぱええのかなぁ」
「えっ!? い、いいの」
行ってくれるなら有り難いんですけど!
正直、お前の家族の問題でこんなことになってるからな。俺が殺される因果関係がおかしなことになってるからね。キララが一人で行ってカギを回収できれば後は扉を探して無事帰還って事だ。うん、いいねそれ。
「ゲルオ様、ちょっと最低なこと考えてません?」
「か、考えてねえよ。ただ俺が死ぬと最初からなんだからキララだけで行った方がいいんじゃね? って話だろ」
「問題はウチのことをオカンが娘だってわかってなさそうなとこなんよね」
「ああ、確かにそうだな」
わかっているならこちらに協力ぐらいしてくれてもいいだろうしな
それこそ何とか話し合いに持ち込めればいいんだけどね。
「そもそもこの世界の住人はどう思っているんだ?」
「どうってなにがや?」
「いや、自分は本人だと思っている訳だろ。なら、こうも繰り返される世界に違和感を持っていてもおかしくない。あと、不思議に思ってたことがひとつ」
「不思議にって?」
「なんでもっと他の奴が出てこないんだ? 俺の方じゃアロマだけだし、キララの方なんか討伐に来た兵隊がわんさか出てきてもおかしかないだろ?」
だというのに今まで登場したのはこの人間のアロマとキララのオカンと思わしき人物だけだ。まあ、一応死体として兵隊や盗賊らしき人がいるけどよ。
「そういわれればそうやな。あれやない、うちにとってのオカンとゲルオはんにとってのアロマはんは同じような扱いとかなんとちゃう?」
「恐ろしい記憶に関連している人物……とかか?」
「なんで私を恐ろしいと思ってるかいまだに疑問なんですけど?」
「……そりゃ……いろいろだよ」
特に俺にとっては人間であるお前は恐ろしいんだよ。
「もう一度コレ読んでみましょか?」
「ああっと……それか……」
キララが言ったソレは勿論あの分厚い説明書だ。
「ウチだけやと不公平やし、ゲルオはんちょっと読んでみといてくれへん? もしかしたら何かゲルオはんなら気づくことあるかもしれんしな」
「うう、マジか……」
「それかまた行きます? 多分ただ死ぬだけだと思いますが……」
「それは勘弁してください。お願いします」
土下座してでも行きたくない。もう正直いうと心が折れそうなんです。
「ゲルオはんが読んどる間にウチ一人で行ってみるわ。コワいけどな……」
そういうキララはなんか今にも泣きそうで……
「……ゲルオ様」
そ、そんな冷めきった顔で見るんじゃねえよ。キララが何を思ってるのかは、まあ何となくわかる。死に別れた親に、成長した自分をわかってもらえないとしたら……それほど恐ろしいことはないものだろう。ああ、そう思うと何だよこの世界。マジで悪趣味だな。
俺だってもしここにあの扉の名前の人物に会うことになるとしたら、怖くて仕方がなかっただろう。キララとはちょっと違う意味でだとしてもだ。
死んだ人にもう一度会えるなんてのがいい事なんてことはない。世の中じゃその手の話は美談で語られることが多いがな。
「そんじゃ、殺されたらごめんな? ま、そないなことになったらウチ……」
「……ゲェルゥオォさぁまぁ?」
「わ、わわ、わかったよ! 無理していかなくていいよもう!」
てかこええよ。なんだよその伸ばしながらドスの効いた言い方。生きてきた中で一番怖い名前の呼ばれかたされたぞ!?
「では一旦話し合いに持ち込むようにしてみましょうか」
「そうだな、強引に突破しようにも無駄に殺されるってのはもうわかったからな」
それこそ体と精神にこれでもかと刻まれましたよ。
「……かんにんな」
「お、お前の為じゃねえよ!? 俺が脱出するのに必要だから仕方なくだからな? 勘違いすんなよ」
アロマが怖いだけなんだからね!
「……男のツンデレは嫌いやないで?」
ちげえっての……
「そういやお前のオカンって何て名前なんだ?」
「……ミカレや。大盗賊ミカレって呼ばれてたで」
大盗賊ねぇ……知らんな。
ああ、説明書はまた後で読んどきます。うん、いつかね。
――――
――
さて、6度目の正直だ。
結局何の対策もなしなんですが大丈夫なんですかね?
先ずはエリアが移る前にアロマに気配を探ってもらう。前回は入った瞬間死んだからな。別に怖くて最後尾からついて行ったのがいけなかったわけじゃない。
「……いないとおもいます」
「カギの反応はどうだ?」
エリアで区分けすれば大きな範囲でわかるのもこのスキルの良いとこだよな。
「……あれ?」
「うん、どうした」
「おかしいで……カギがこの奥でなくゲルオはんのエリアに反応がある気がする」
「こっちにあるって事か!」
なんだよ、無理して危険エリアに行かなくていいって事じゃん!
「いやぁ良かったよかった……」
そいじゃ、早速反転して――
「いや、おかしいで……おかしい……」
「どうしたんですキララ様?」
「だって! ウチがスタートした時は確かに奥にあるってスキルが反応していたんや! なのにこっちに来る間にカギの反応が移動してるんやで!?」
「えっと……それってつまり……」
「アタイが持って移動してるって事だなぁマヌケ」
「後ろ!?」
「あ、ああ……そ、そないなことが……」
「その声は……」
アロマに促されて声のある方に向く。そこにはもう何度も俺を殺したお面を付けた女が銀色に光るカギをプラプラとさせて立っていた。
「はぁ……お前らもう諦めな。アタイもおんなじ奴をこう何度も殺すの飽きてきたよ」
「おい、人が死んでんだぞ! そんな言い方ないだろうが!!」
「まるで他人のように言いますけど貴方ですからね? 死んでるの」
知ってるよ!!
「てか、アンタ弱すぎ。まあ、でも終わりにするわけにはいかねえしなぁ」
「何の話だよ」
「こっちの話だ……よぉお!!」
く、一気に俺目掛けて詰め寄って来る!?
だが……
「伸びろ!?」
「っ!?」
何とか相手との距離を伸ばして強制的に離れることに成功する。
「……へぇ6度目にしてやっと楽しくなって来たねぇ」
「調子に乗って姿をまともに現したのがいけなかったな!」
こちとら正面対決ならたぶん負けなしだぜ! 勝てるとはいえないが。
「だいたいな、俺ばっか狙って卑怯だぞ! もっとアロマとかキララのほうも行けっての!!」
そうすりゃアレだ。なんやかんやで何とかなるんじゃね?
「……あんまアタイが言うこたないが、お前それ最低な発言だぞ?」
「ないわぁ……」
「あ、加勢しないんでサクッと一回殺していいですよ」
あれ? なんで敵ばっかになってるの?
だが、この感じはいいぞ。この流れなら話し合いに持ち込めるんじゃないか?
「じゃあ、一回パッと殺しとくか」
「待って待って!? ちょ、止めて! マジ止めて!? 本当に勘弁してくださいっ!!」
俺はそう言いながらスキル土下座を使用する。
あの魔王ギプスにすりゃ通用したこのスキル! どうだ!!
「……ふん、まあ殺すのは簡単だ。何が言いたい」
お、おおう!? これはまさか許されたのか!
「言いたいこと言った後に殺してやる」
あ、ダメだ許されてない。この手のタイプには時間稼ぎにしかなりそうにないですね。
「ああっと冗談は無しにしてやな。アンタと話したい事があんのや」
「……アタイと?」
「せや、だから殺すのは待っててくれへん? この人殺したらまた最初からなんはアンタもわかってるんやろ?」
「……」
「いい加減に元の世界に戻れんから、せやからここで姿を現したんとちゃうか?」
「……ひひ、ひっひゃは! ひゃっはっはっは!!」
「な、何がおかしいんや!」
「全然違うよマヌケ。アタイはね、この世界がどんなもんかもう知ってるんだ」
「ど、どうゆうことや?」
「ひっひっひ。詳しくならお前らのお付になったそこの嬢ちゃんにでも聞くんだね」
「っ!?」
「お付? いったい何の話や?」
「あ、いや、違うんですコレは……」
「あ、アロマ?」
「ゲ、ゲルオ様……」
い、いや考えるな。コイツ自体は確かに俺の知っているアロマだ。
それでいいんだ。
「ともかく、アタイは生きていたいんだよ。お前らを帰しちまったらもう終わりなんだろ?」
もしかしてこいつ、現実じゃもう自分が死んでるってわかっているのか?
「じゃ、じゃあウチが誰かもわかるんか?」
おお、まさか此処であれか? 感動の対面的な感じになるのか?
「……いや知らん。お前みたいな喋りの奴は初めてだな」
「なんでやねん!!」
おいおい、そこはわかってないのかよ!?
「ともかくだ。諦めてこの世界にずっといな。そうすりゃ殺さないでおいてやってもいい」
「……お前はてっきり奥に行かせたくなくて殺しに来てると思ったんだが?」
違うのか?
「……それもある。奥にはあれだ、大事な宝があるんでな。悪いが近づく奴は殺す」
「そないに大事なんか?」
「ああ、たとえこの世界がおかしくても、それでも万が一を考えて近づかせるわけにゃいかないんだよ」
つまりコイツは元の世界でないことは承知で、それでもこの世界をずっと存在させたいって事なのか?
「……この世界は夢なんですよ? わかっていないんですか貴女は?」
「それはこいつ等から見た話だ。お前だってわかっていてその姿でわざわざいるんだろ?」
「っ!? ち、ちがう! 私は……私は……」
アロマはひどく動揺しているようで俺に何度も申し訳なさそうな顔をしてくる。
そんな顔してみないでくれ。
「だ、大丈夫だアロマ。よくわからんが大丈夫だから」
「げ、ゲルオ様、わ、わたし……」
「どういうつもりか知らんがアロマが悪いことなんかある訳ない。てめぇマジでふざけんじゃねえぞ!!」
こともあろうに俺にこんな下らんこと考えさせやがって!
「へぇ……意外と男気あったんだねアンタ。その方向があってればよかったんだけどねぇ」
「わけわからんことばっかり言いよってからに!」
「そうだそうだ! それにアロマは人間の時は強かったんだからな!」
まあ、最近知った事実だけどね。
「だろ?」
「は、はい! そうですゲルオ様の言う通りです!! だから別に今あなたを殺してそのカギを奪うという選択肢もこちらには残されているんです!」
お、おおう……強気に出たなアロマ。
俺そこまでは考えてなかったんですけど?
「へぇアンタらがこの大盗賊と名高いミカレ様を殺すだって……」
「ミカレ!? てことはやっぱアンタはウチの……」
ミカレと名乗った女はお面越しからでもわかるくらいに笑いをこらえて体をくの字に曲げる。
「ひっひひ! ムリムリ! お前らみたいな殺し馴れてもいないような弱い奴がアタイを殺せるわけないだろ? 人を殺すのは意外にコツがいるんだぜ?」
いうとミカレは笑いながら細身の剣を抜き出しクルクルと片手で回す。
「アタイが本気になればお前らなんて数秒で殺せんだ。今までは順番でその男からだったからなだけで、元に戻らなけりゃ後の二人も殺す予定だったんだからな」
「そうはいうけどな? ゲルオはんの能力にはアンタきっと手も足も出んで。さっき体験したやろ?」
「ええ、近づくことすらできませんね」
「いや、そう言われればそうなんだけどね」
えっと、何故に俺が担当みたいな流れに?
アロマさんが戦うんじゃなかったんですかねぇ……
「っ!? ……ま、一回ためせばわかんだろ。殺すコツが何のことかってのがな!!」
その一言が終わると同時にまたしてもこちらに目掛けて突っ込んでくる!
「だ、だからなんで俺に!?」
同じように距離を伸ば――
「っ!? ぐぅう」
急に横っ腹に激痛が走る!?
「アタイとの距離の話だろ? なら違うもんを用意すりゃいいだけじゃねえか」
「な、何が起きたんや?」
「!? 透明の何かを跳弾させた?」
「お前らを殺すだけなら何通りもあるんだよ。くらべてお前はどうなんだ? アタイを殺すのに何通り用意できる? それを瞬時に幾つもだぞ?」
腹がイてぇ……え? マジでまた死ぬのか?
「う、ウチは……」
「逃げるのだけは得意みてぇだが、それだけじゃこういう風に仲間から死んでくだけだぞ」
「……それを、それをアンタが言うのんか」
「いうさ。アタイはそうやって仲間を助けてきたんだからな。お前みたいな自分の事しか考えんガキとは違うんだよ」
「……なんも、そんなんなんも教えんうちに死んだくせに!!」
「き、きら……ら……」
盛り上がってるとこ悪いけど、マジ苦しいんで何とかなりません?
「何に怒ってるか知らんが、ほれ」
「な、なんやナイフなんか渡してきて」
「死ねば楽になんだろ? どうせ次もあるならサクッと楽にさせてやりな」
「っ!?」
「く、ゲルオ様大丈夫ですか?」
「み、みりゃ……わかんだろ……」
大丈夫な訳ないです。
「あ、アロマはん……ウチ……」
「で、アンタはアタイと今から殺り合うのか?」
「……先にゲルオ様を何とかしましょう」
「へへ、そりゃありがたいねぇ」
「ゲルオはん……」
「あ、だ、だいじょ……ぶだから……たのむ」
頼むから殺さないで?
「わ、わかったで! ごめんなゲルオはん!!」
ち、ちがう! そっちの頼むじゃなくてなんとか治して――
「あれ? うまくいかへんなぁ」
「ば、バカ!? そうやるんじゃないっての!」
痛い痛い痛い痛い!! ちょ、マジでふざけんなよ!?
「こういう時はな? この部分をサクッとやってだな……」
「へぇ~勉強になりますね」
「な、なるほど~動物のアレと大体は同じなんやな」
……絶対に許さんからな。
……ぜっ……いに……
――――
――
「……何か言う事はないですか?」
「ホンマにすいませんでした!」
「これが現実じゃなくて良かったな。現実ならお前マジで許されないからな?」
「……現実だと死んでると思うんですが」
ホントにこのやり取り何度させるつもりだよ……
「てかアロマ! お前さっきあんなに自信満々だったのにどういうことよ?」
「……ちゃんとこっちからも相手にダメージは与えていました」
「うん? 何の話だ?」
「ああ、ゲルオはんは意識がヤバかったからわからんかったけど、アロマはんどうやらオカンに致命傷っぽいもん与えていたみたいなんや」
「話している間にやったんですが……向こうも一枚上手でした」
「ああ、もしかしてそれで俺狙いで勝負を決めに来たのか」
俺が死ねばリセットは確実だもんな。
まあ、これ以上この話してもしゃーないか……
「でだ、やっぱりお前の親だったって事でいいのか?」
「せやね……名前もバッチリ言ってたし間違いないで。ま、向こうはウチが誰かわからんかったみたいやけどな、はは」
そう力なく笑う。
「その……なんだ……」
気の利いたことでも言えればいいんだが、そんな対人スキル俺にはないんだよね。
「まあ、ゲルオ様と違って姿形が違うんですから。例え親だとしても仕方がないのではありませんか」
「……せやろか」
俺を引き合いに出す意味なくね?
「それでどうすんだこれから」
どうにも向こうは俺らを元の世界に帰すつもりはないらしいしな。
「私だけなら何とかできそうなんですが、ちょっと相手の戦闘スタイル的に相性が悪いですね」
「アロマはんの戦闘スタイルってなんやの?」
「正面から凄く速く殴るですね」
「あれ、殴っとったのか……」
え? 一体何やってたのこの子?
「ですが彼女はどうも初見殺しに特化したタイプの様で。もう何度かやり合えば活路は見出せそうなんですが……」
「無理だからね? これ以上とか無理だから」
お前ら自分が死んでないからわからんだろうが、平然と繰り返せばいいとか思うんじゃねえよ? 痛いのとかなかったことになってる訳じゃないからな?
「そうなるとやっぱり彼女からカギを奪うしかないですね」
「うん? どゆこと?」
「ウチが先に探せれば良かったんやけどな……」
「それってつまり……」
「ひっひひ!! アタイが先に探せたって事さ」
突如入口の方からそう声がかかる。
そこにはドアの方に体に預けて腕を組むミカレがいた。
相変わらずお面のせいで表情は見えない。
「く、遂にここまで来るようになったか」
もう安全なとこないじゃん!
「オカ……ミカレ!」
「んで、どうすんよ? さっきの話は受けるのか?」
「……悔しいですが、ゲルオ様とキララ様を庇いながらでは私の技量では難しいです」
あれ? これってなんか詰んでない?
まさか一生このままこの世界にいろって事になるのか?
「ま、じっくり考える事だ。あとはそうだな、その嬢ちゃんに聞いてみればいいんじゃないの? なんてな……」
「……く」
「じゃあまたな、キララ」
「っ!? あ、アンタもしかして……ほんとは……」
そういってミカレは何処かへ行ってしまった。
くそ、万策尽きてる。正直俺はもう死にたくないのであれに挑むとかしたくない。
いや、まだ一つあるっちゃあるけどさ……
「……アロマはん」
「はい」
「どういうことか説明してくれへん?」
「キララ! おまえっ!?」
それがどういうことかわかって言ってんのか!
「ウチかて疑いたくないし、オカンの言う事を信じたいわけやあらへん! でも、でも信じたいからこそ隠してることがあるんなら言ってほしいんや!」
「……でも、でもなぁ」
そりゃ確かにアロマに怪しいとこはあるっちゃあるけどよ。
けど、けどそれでもこの世界のアロマはアロマなんだろ?
「ゲルオ様……いいんですよ」
「アロマ……」
「ゲルオ様……騙していてごめんなさい。私は貴方の記憶から出来たアロマではないんです。正確にはこの世界を形成した者のデータベースから出来た偽物なんです」
そういい、俺に深くアロマはお辞儀をする。
「俺の知らないことを補完していたのはやっぱり……」
「ええ、本当に申し訳ございませんでした」
「……」
「ゲルオはん……」
「……別に構わねえよ」
「えっ!?」
「どっちにしろ元はあのアロマなのは確かなんだろ? しかも此処はそういう世界だ。お前が騙したとかそんなこと言わなくていいんだよ」
それに、補完されていた理由もスッキリしたしな。
「俺が子供ん時からある書物っぽいし、あながち間違ってはないんだろ?」
「は、はい……一応ですがなんか難しい理論で今に至るまでの記録のようなものに触れて再現をしているみたいなんです。ただ……」
「ただ?」
「わ、私に関してはその……もっと重大な隠し事がありまして……」
「重大って?」
「いやですね? あるというかないというか……」
どうにも歯切れが悪いアロマ。いったい何のことを……
「いえ、初めにちゃんとゲルオ様がお読みになっていればこんなややこしいことにはならなかったと思うんですよ。ええ、これに関しては私のせいではないですよ?」
「お読みにっていったいなんの……」
「しかも結構重大なネタバレが既にでているのにそれも無視してしまわれて……」
「ネタバレ? 何の事や?」
うん? 何かあったかそんな事……
「そもそも、この事態の発端はゲルオ様のせいなんですよね」
「はあ? 何言ってんだ?」
「?? いや、ウチが手に取ったからで……」
「そうだぞアロマ。なんでも俺のせいにすりゃいいとかいうご都合主義はおかしいからな?」
そこまで俺を中心に世界が回ってたらどれほど良かったか……
「……ゲルオ君もしかして本当に気づいてないの?」
「あん? なにがだよ」
うん? 今、俺の事を君って言わなかったか?
それに喋り方が違かったような……
「はぁ……説明書を読めばわかりますよ」
「いや、だからこんな分厚いの読めって言われても……」
「最初のとこの前書きだけでいいからさ」
「ううん……」
「ほら」
そうアロマに渡される。いや、なんでこれを今更読まなきゃならんのだ。
あ、なんかいいから読めって空気ですね。
はぁ……
『 ようこそ夢現の素晴らしい世界へ! 』
ここは貴方の過去を夢として再現した現実との狭間の世界となっております!
記憶の中での彼らに今一度逢いたい……そんな事も実現できてしまうのです!!
ただし注意が必要!!
この世界を維持するために、貴方の一番恐ろしかった記憶を元に構成されています。
それが一番確かな記憶であり形にしやすいからです。
いきなり違う形になってしまっては大変ですからね!
ですがスリルをお求めになっておられる方が多いので問題はないですよね?
場合によっては死ぬケースもありますが安心してください!
所詮は夢です。死ぬことなくリセットされて最初に戻ります。
ええ、目覚めた時から再スタート! まさに安心設計!
まあ、リアルでもあるので痛かったりするのは仕様です。
どうしても苦しい時はいっそのこと死ぬか意識を失うかしましょう!
オススメは眠る事です。
しかし寝てしまった場合は世界から出る際のカギは徴収いたします。
なのでもう一度はじめから捜索して頂きます。
また、同じことの繰り返しは精神が死んでしまう危険性があります。
その為に隠し場所は変えるようにしております。ご安心してください。
当然ながら鍵を使用する扉も変わりますのでご注意してください。
あと私が出るような方はできれば使わないでくださいね!
恥ずかしいので頼みますよ?
最後に、この世界の住人は夢ですが今は現実です。
『ドキドキ! ドリームワールド』は自立型の遊戯用魔本となっております。
ご利用者様の最善の世界を提供できれば幸いです。
―― 著作:就寝のターリア ――
色々とツッコミどころがある内容なのは置いとくとしてだ。
「……ターリアってあのターリアなのか?」
「うん? 誰やそれ」
「ほら、あの自己主張のやたら強い名札のあった部屋だよ」
「あ、ああっと! そういやあったわ!!」
そう、あの時この名前をみて俺は思ったんだ。
思い出したくない奴の名前が出てきたと……やっぱりここは恐ろしい場所だと。
うん? 恐ろしい場所?
「えっと……大体わかっちゃいました?」
「……お、お前まさか」
アロマはそういうとペロッと舌を出してウインクする。
いや、そんな事をアロマはしない。
アロマがしないというなら……お前は……
「いやですね? その、本当に私がアロマさんならうれしかったんですよ? でも、そのぉそれがやっぱり別人だとしたら……こんなに失礼な事ってないと思うんですよね?」
「ええっ!? い、いったいどういうことなんや!?」
「お、お前まさか……アロマじゃなくて……」
ああ、あの時の秘密ですってのはそういうことなの……か?
「失礼しちゃいますよね? 確かにこの日は彼女の真似をして会いに行った私も悪かったですけど、それでも気付いてくれないのはショックです。まあ、彼女の振りをするのは楽しくなかったわけではないですけどね」
「じゃあ、俺が本当に恐ろしいと思ったのは……」
「だいたい、アロマさんが貴方にとって恐ろしいものなはずないじゃないですか」
そういってアロマの姿をしていたそれは本来の形へと戻る。
「お久しぶりですゲルオ君。実に千年以上ぶりね」
「ま、魔王ターリア」
「ええ、そうですよ。貴方の元上司にして大魔王に仕える序列5の魔王!! 『就寝』のターリアとはこの私の事です!!」
ああ、そういやこんな感じの人だったな。人って言うか魔王っていうか……うん。
「あ、因みに本当のアロマさんは何故か身に覚えもないことでゲルオ君を看病した聖人みたいな方ですからね? そこのところは忘れちゃダメよ?」
「そうなるよね……」
実に千年越しに明かされた事実だった。
お読みいただきありがとうございます!<(_ _)>
次回も楽しみにして頂ければ幸いです!(*´▽`*)




