7話 元魔王、入院する
『おぬしはこれより序列7の魔王、伸縮のゲルオじゃ!』
ええ、お、俺なんかがですか?
『流石はゲルオ様です』
いや、――の―――は俺の事過剰評価しすぎだから
『そんなことはないぞ! なんていってもおぬしは――
ああ、そうだよ。俺は、おれは、
――この大魔王が自ら抜擢したのだからな!!』
――パチッ
「うーん、この倦怠感。マジきつい」
何か夢見てたなぁあ、どんなのか一瞬で忘れたが恥ずかしさみたいのだけが残ってんな
「カタカタ!」
「おっと!」
どうやらアロマが看病してくれてたんかな?
「おおっ! 気が付いたかゲルオ!!」
「えっと……ボンだっけ?」
「そうだっ! 頭の方とかも大丈夫みたいだな」
「ああ」
俺は自分の体を見回す。どうやら全身包帯だらけで、なんか身動きがうまくできない……
「うむむ、うごけん」
「仕方ないさ、お前は小さくなったとはいえあのキングなベヘモットの一撃を喰らったからな。HPがちょうど1だけ残ってて慌ててポーション掛けたからな」
一発で12万!! てか1だけって、死にかけじゃないか!?
「それはわかったけど、この包帯は?」
「勿論、それだけでなく全身複雑骨折に内臓破裂、正直あんなぐにゃぐにゃでよく生きてたよ」
「カタカタ!!」
マジかよ!? 馴れない事はするもんじゃねえな……
「兎も角、ゲルオ! ありがとう!!」
そう言ってボンは深々と頭を下げた。
「よ、よせよ。元はといえば俺をお前が庇ったからだろうが」
「いや、そうでなくてもあのキングを僕が倒せていたかわからない……いや、きっと倒せずに死んでいた可能性もあった」
そ、それは……
「大げさじゃねえか? お前だけだったら冷静に引き返すなりして大丈夫だったさ」
「ゲルオ……」
まあ、今回は元々俺が呼びこんだ事態でもあるしな、ここで情けない事いったら元魔王として恥ずかしいってもんだぜ!
「ただ、ほれ! 討伐したんだ! がっぽり金は入るんだろ?」
しかもキングだ! これは当分働かなくてもいけるんじゃないか!
「あ、いや……そのだな」
「カタ……」
ん? 何この不穏な空気。 えっ? なにマジで辞めてよ
「お目覚めの様ですね。ゲルオ様」
「あ、ああ。受付嬢さん」
「一命を取り留めたようで良かったです」
「ありがとよ。というか此処はギルドだったのか?」
「はい、ギルドの医務室ですね」
「いやあ、悪いね。使わしてもらっちゃって」
「いえいえ、ちゃんと治療費は報酬から引きましたので」
…………えっ?
「ゲルオ、落ち着いて聞いて欲しいんだが、今回の報酬だがな――」
「やめて!! 聞きたくない!!」
「いや、やめてって」
「うそだ! あんな死ぬような目に遭って、嫌だ! 誰が真実なんて聞くかよ!!」
ちくせう、わかってるんだ! いつだって真実が残酷だって事ぐらいな!!
「今回の報酬ですが。12万Gとさせて頂きます」
「いうなっつってんだろが!!」
ていうか、低すぎだろ!
「先ずですね、キングの素材がペチャンコでどうしようもないんですよ。それに小さい方は査定額もそれに合ったものでして、申し訳ありませんがこの額とさせて頂きました」
「うう、うそだぁ」
「更に、ゲルオ様は保険に加入していないので治療費として8万Gを請求させて頂きます。ですので、支給額は御三方で4万Gとさせて頂きます」
「……」
「まあ、あれだ。僕は今回ゲルオに世話になったからな。全額譲るよ……」
「……すまねえ、ホントすまねぇ」
――――
――
「それではゲルオ、大事にな?」
「ああ、体が全快したらまたクエスト行こうぜ!」
「っ!! ああ! その時はまた荷物を頼むぞ!!」
まあ、ボンの奴はああ見えてボッチだろうからな。良い金蔓になりそうだぜ!
「カタカタ」
「なんだよ……」
「カタ」
アロマの奴、なんだそのわかってますよ的な空気は、
「俺は元だが魔王だぞ! 情やなんやらに流されたりなんかしないんだからな!!」
「カタカタ!」
分かってんのかなぁ? ホントに……
「さってと。早く治さないとなぁ」
ヒマで仕方ないし、せっかく手に入れた4万Gで生活基盤を手に入れなければ!
「その為にも、アロマ! 保険ってどう入ればいいんだ?」
「カタ?」
――1週間後
「退院、おめでとうございます!」
「……」
「それでは、これからもギルドでの活躍を期待していますので頑張ってくださいね!」
「……」
バタン
「……」
「カタカタ……」
…………入院費が別とか、世知辛えなぁあ
今回の報酬 40000G
入院費 39500G
ゲルオの残金 500G




