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60話 自称魔王と魔王の神


「私が魔王神です」


 いや、知ってるから。


 じゃなくてさ、何でいるんだよここにっ!?


「知ってるからって顔しないで下さいよ、伸縮のゲルオ」


「そ、そんな滅相もないですよ……はは、は……」


 うう、そんなに俺って顔に出てるのかなぁ……


「カタ」


「ふむ……蒐集のポミアンも元気そうで何よりですね」


「え、ええ! ご、ご機嫌麗しゅうございますですわ!」


「そんなに硬くならなくてもいいですよ? あなた方は今はもう私の部下でも何でもないんですからね」


 そう魔王神は口を弧の字にすると首を傾げた。


 えっと、もしかして笑ってるつもりなのか?


「と、ところでいったい何の用で此処に?」


「ああそうでしたね。ツァーレン、此処に」


「はい今行きます! ほら、こちらに来なさい」


「……は、はは、はい!」


 するとこの簡易のテントにヒョロそうなおっさんがアシモフを連れて入ってきた。このおっさん……どうにもどこかで見覚えがある様な……


「……あっ!? アンタは俺から私財もろもろ盗っていったおっさんじゃないか!?」


 そうだよ! あの魔王をリストラされたときに態々ついて来てクドクドうるさかった奴だ! くっそ覚えてるぞこのハゲ!


「とった!? 何を言っているんだ君は! 私共は正式な手続きの元に貴方から本来得るはずだったモノを徴収したにすぎません! 断じて盗っただのという謂れを受けるようなことはしていませんよ!?」


「……ツァーレン、今はそんなことはいいでしょう?」


「う、は、はい」


「ええっ!? ツァーレンって、ゲ、ゲルオ?」


「な、なんだよ」


 ち、近いよ?


「あのどう見てもヅラを付けたおっさん。たぶん序列5の魔王『整数』のツァーレンよ?」


「えっと……マジで?」


 あのおっさんただの役人じゃなかったのかよ!?


「ああ、マジですよ。彼は私の補佐を基本して頂いているんですよ」


「……づ、ヅラじゃない。ヅラなんかじゃ断じてない」


 俺が言えた義理じゃないが全く魔王のオーラがないんですけど……


「それで、魔王神様どうするんですか?」


「停滞のアシモフ」


「……はい」


 アシモフは名を呼ばれただけで可哀そうなぐらいに身を震わせている。


「この度のクエストの件……結局何だったんですか?」


「あ……いえ……その……」


「あ? いえ? その? それはどういう意味ですか? 失礼ですがもう少しわかり易い言葉でお願いします」


「……は、はい」


 うう、見てるこっちが泣きそうなんですけど。


「必要以上の武器の要請……私が気付かないとでも思ってました?」


「あ、ああ……も、申し訳ございません……そ、そんなつもりがあったわけじゃないんです」


「つもりはなくてもそう取られれば意味がないのではないのですか?」


「ち、ちが……あ、アシモフは兵隊さんをただ……ただ……」


 魔王神は縮こまるアシモフの前髪をかき上げるとグイッと顔を近づける。


「ひっ! ひぇえ……」


「ちゃんと目を見て話してくださいよ。停滞のアシモフ」


「ご、ごめぇんにゃしゃいぃ……う、うう……」


 アシモフはもう目に涙をいっぱいに溜めていて今にも泣きだしそうだ。


 不謹慎ながらなんかちょっとかわいいと思ってしまった。


 あ、アシモフきゅん……


「停滞のアシモフ。別に私は怒っている訳ではないんですよ? ただどうしてこのような事が引き起こされたのかが知りたいだけなんです」


 魔王神は溜息を吐くとアシモフきゅ、アシモフから離れた。


「……うう、うう……いんだけは……ゆるじ……ヒグッ……ゆるじでぐだざいぃ」


 だがアシモフはそれには答えず、これからの自分の未来を創造したのかカチカチと震えながら泣き出してしまった。


「うーん困りましたね。泣かれたところでそれは答えになってませんよ? 私は理由が知りたいと言っているだけなんですが……それの何が怖いんですかね?」


 いやこえぇよ! こわいよね?


「それぐらいで勘弁してあげなさい魔王神」


「その声は……博士ですか」


「ええ、久しぶりね」


 おお、博士は魔王神と知り合いなのかよ?


「……子供を相手にするのは苦手です」


「でしょうね。アシモフ……」


 博士はアシモフと目線を合わせるように膝を折る。


「……は、はか、ヒグっ……せ……?」


「わたしも大人げなかったわ。最近全然かまってあげてなかったものね」


「ち、ちが……あ、アシモフが……わるっ……ひぐっ」


「さびしかったのよね?」


「ヒグっ……う、うう……」


「でも、だからってやって善いことと悪いこと、わかるわよね?」


「う、うう……はぃぃい……あ、アシモフ……」


「……うん」


「アシモフ……悪いことしましたぁ……」


「うん……だったらどうするの?」


「……お、おにいざん……」


「うん?」


 アシモフは目を真っ赤にはらして泣きながらも俺をまっすぐと見る。


「……うう、ご、ヒグっ……ごべんなざいでずぅうう、ううぅ……」


「あ……えっと……」


「ほらゲルオ? ちゃんと貴方からも何か言わないと」


「お、おおう……そのなんだ……」


「……ヒグっ……ひゃ……ひゃい……」


「ああぁ……もうこんな事すんじゃねえぞ」


「……はい……ぼうじまぜん……スン……」


 ああくそっ!! なんかこっちが悪いみたいな気分になってきたんですけど!?


「てか……そもそもコイツは500歳越えだろうがっての。これじゃあホントにただのガキじゃねえかよ……」


「それをいったら貴方はその倍生きているのだから、貴方から見れば子供みたいなものじゃないかしら?」


 それを言うならお前はこいつよりたしか年下じゃなかったか?


 ……ろりっこのポミアン……わるくないな……


「まあそこは勘弁してやってくれ。アシモフは幼少からここで閉じ込められてきた孤児だからな……」


「そ、そうなのか……」


 此処でそんなカミングアウトするのか……


「ゲルオ、淫魔族が成長するにはそれ相応の経験が必要だと聞くわ……だからもしかしたら……」


「……う、ううう……ヒグッ……」


 みたまんま、中身は子供だったって訳かよ。


「…………」


 ああ、アシモフが言ってた此処に置いてったってそういうことだったのかよ……


 ちっ……ムナクソわりいなぁ……


 何でおれがそいつらによる因縁のとばっちりを受けんだっての……


 覚えてろよ淫魔族……


「コホンっ! 魔王神様?」


「むむ? あ、ああ! つい魅入ってしまいました。それでは魔王アシモフ」


「……スン、ズルっ……は、はい」


「貴方は国家クエストを騙り、私利私欲のためにクエストを発令したということで間違いはないですね?」


「はい……アシモフは悪いことをしちゃいました」


「では、その罰として……」


「……」


「貴方には引き続きこのDMZの魔王として序列10位にいて貰います」


「……あぇ?」


「これはどの序列よりもある意味で過酷な配属です……いいですか?」


「……ぁ」


「ふむ……伝わりづらかったでしょうか?」


「っ!? い、いえ! あ、アシモフは謹んでお、お受けいたします魔王神様!」


「……そうですか」


 魔王神はそう一言いうと目を細めてニヤッと笑った。


 えっと、それって喜んでいるのか? 威嚇してる訳じゃないよね?


「貴方に負担をかけすぎていました。これは支配者たる私の責任でもあります。以後はこのようなことが無いように定期的に外へ研修旅行に行くようにしなさい」


「い、いいんですか? そ、そんなことをアシモフがして?」


「幸いにも今回の事でエンカウントエリアはこれまでの脅威を成さなくなってしまいましたからね……巨大穴はそもそもあの城がきちんと機能していればこんな惨事は起きえなかったでしょう。ですよね博士?」


「ええ。不安ならツァーレンにでも聞けば?」


「……まあ、大丈夫でしょう。私共からも今後は安心して派兵できますしね。デルモンが今回かなり利益を上げているのでそこを利用しましょう、突き当たっては来月の予算で……」


「ああ、それは帰ってからにして下さいねハゲ」


「……禿げてない。ヅラじゃないもん」


 やめてやれよ……


「という訳ですので、伸縮のゲルオには感謝しなさい」


「グスッ……うう、はい……はい……ぃ……」


 そうしてアシモフは泣き崩れるとそのままガクッと倒れて寝てしまった。考えりゃこいつは一昨日から寝てないしな、無理もないか。しかも昨日は釣り糸で縛られたまま外に放置されてたっぽいしな……そう考えると憐れだな。


 俺はベットからおりてアシモフを代わりに寝かしてやった。


「くそ、こんな可愛い寝顔の癖に生意気なんだっての……」


「そのわりにはあまり嫌な顔をしないんですのね?」


「……うっせ」


「はぁ……アシモフはまだいい方ですよ……他の問題児に比べれば」


 そう魔王神は溜息を吐くとただでさえ渋い顔を曇らせる。


 あの、この子より問題児が未だに何で魔王やってて俺はリストラされたんすかねぇ?


「……そうですね。序列8位と16位はいい加減にしてほしい所ですよ」


「200近くもいた無駄を24まで減らせたんです……それはもう後にしましょうツァーレン……」


 そ、そんなにいっぱい魔王っていたのかよっ!? てかリストラされ過ぎじゃね?


 その方達って大丈夫なの?

 ねえ、なんか他人事じゃないからすっごい心配なんですけど!?


「では次ですね」


 ん? 次ってこれで終わりじゃないの?


「では伸縮のゲルオ、この度は大変ご迷惑をかけてしまいました」


「え、えっと……」


 魔王神はそういうと軽く頭を下げる。


「……ツァーレン? 貴方はやらないんですか?」


「く、なぜバレました!? うう、伸縮のゲルオ、此の度はありがとうございました」


「え、ええっとなんでアンタまで?」


「私はこうみえてもギルドのグランドマスターですからね」


「……はあ?」


 ぐ、グランドマスターってたしかギルドの一番エライ人だったかな……


 え? なにそれ、こんなお偉いさんが二人も頭下げるとか怖くなって来たんですけど?


 でもそこどまりナンスね。


「そこでですね。実はあなたに話を――」


「おックレマシでシネ!! ゲルオ様の愛する部下『変換』のヴォルデマールただいま参上でし!!」


 あああ、このタイミングで来るのかよお前……


「おいおいヴォルデマールっ! ハシャギすぎじゃね……って、ま、まま、魔王神様!?」


 如何やら一緒にギプスも此処にやってきたみたいだな。


「え? な、なな? なんでギブスがここにいますの!?」


「おおう!? ツァーレンのハゲまで!? ん? しかもそこにいんのは……ポミアン?」


「……うう、どうしてギブスが此処に……はっ! そういえば水の都って彼女の……」


「ハゲじゃない……私はちょっと薄く見えるだけなんだ……」


「……ふむ。ヴォルデマールも来ましたか。ちょうどいいですね」


「アレアレ……なぁんでここに魔王神がいるんでしかねぇ……殺していい?」


「うん? もう私に勝てないこと忘れてしまったのですか変換のヴォルデマール」


 あ、そういやコイツ魔王神に恨み持ってるんだった!


「お、おいヴォル落ち着け!」


「…………」


「ヴォル!!」


「……アい。ゲルオ様に迷惑かけちゃダメでしたネ! 反省ハンセイデシ!」


「ほう……やはり貴方に彼を任せたのは正解でしたね。ほらツァーレン、私が正しかったじゃないですか」


「そういうのは結果論というのです魔王神様」


「そうですか?」


「……よし! 私は空気を読んでここは黙っとくぜ!」


「……ワタクシも最優先は魔王神様から貴方への話だと思いますから……控えておきますわ」


 いや、そんな畏まらないでいいんよ? 俺偉い人の話とか一番聞きたくない部類の話なんで……


「伸縮のゲルオ、そんな嫌な顔せずに聞いてください」


「うう、す、すいません」


 俺の顔、もうちょっと誤魔化せよ……


「では話の方ですが……伸縮のゲルオ。此の度、貴方がどれほどの事をしたのかわかりますか?」


「俺が?」


「ええ、貴方はそんな気はなかったとは思いますが図らずともこの世界の寿命を確実に伸ばしました。この黒い地面……エンカウントエリアの縮小によって」


「えっと……マジすか……」


 これってもしかしてもしかしたら……俺ってすごい?


「ただし、その世界は私の支配する大陸の話ではありません」


「……え?」


「正確にはこの世界の人間どもですね」


「それはどういう意味だぁ魔王神様よぉ?」


 お、おいギプス!? そんな口の利き方で大丈夫なのか? 様付ければいいってもんじゃないんだぞ?


「ギブス、貴方は薄々感づいていたのではなのですか?」


「……はん」


「異世界の魔獣も怪物も、例え神様であろうと私がいる限り大したことはありません」


「じゃ、じゃあアシモフは何のために?」


「それは簡単ですよ、異世界の素材は大変便利じゃないですか。貴方もこの世界の随所で見ませんでしたか? 不思議な道具の数々を……」


 あ、ああ確かに見たな……思えばギルドのカードや端末も昔にはなかった。魔王神都や水の都の街並みだって千年前にはなかった代物だ。けど……


「けどそれはこの千年の間に誰かが発明したんじゃ――」


「そのわりにこの世界は未だにエレベーターすら出来ないんですよね」


「!?」


「やっぱり外に頼り過ぎたかなと今では反省しています。まあ、博士に頼めばいいんですけどねぇ……」


「ん? いや、わたしはそっちの事は専門外だ。仕組みは知っているが興味がわかないからな。死んでも嫌だ」


「死なないでしょう貴方は」


「……なら生きてても嫌だ」


「かたくなですねぇ」


 えっと……てことは俺のやった事ってつまり……


「察しがいいですね。その感じをあの面談でも見せて頂いてればよかったのですけどね」


 く、う、うるさいなぁ……緊張してたんだよ。


「つまりはゲルオさん。貴方がしたエンカウントエリアの縮小で少なくともこの世界の文明スピードも改革もイッキに遅れるようになりました。少なくとも現状を維持するので当分はいっぱいいっぱいでしょうね。ええ、ホントまた私の仕事を増やすんですね貴方は……」


「ええ? お、俺アンタに迷惑かけてたっけ?」


「……最初の魔王の職務怠慢から始まり、財務整理も私共がやりました。更には巨人ムライのダンジョン火災、辺境の森に於ける大規模自然災害、ヴォルデマールの根回しに今回の地殻変動! わ、分かってないですかホントに! あ、あなた地面を縮めるって何が起きるか普通分かりますよね? 大陸の形が少しかわ――」


「まあまあ、いいじゃないですかツァーレン。それでもエンカウントエリアの縮小は余計な心配の種が無くなったのには変わりないのですからね。文明の進歩が必ずしも幸福と繁栄をもたらすわけではないと貴方だって嘆いていたではないですか」


「それはそうですが……はぁ……そうですね。まあ、幸いにもこの度の地殻変動は綺麗にずれ込んだせいかほとんどの者が気付いていなかったみたいですし……何故か地震も起きなかったみたいですしね。いや、ホントその能力どうなっているんですかね?」


「あ、えとなんか……すいませんでした」


 取り敢えず土下座しとこう。


「ゲ、ゲルオ様? な、なんで土下座してるデシか? させるんじゃなかったデシか?」


「あ、おいヴォル何言ってんだよ! そんなこと俺はいった気がするだけだぞ!」


「……それって言ったって事にもとれるわよゲルオ」


「こういう所が小者くせぇんだよなぁ」


 生き残るための知恵と言ってほしいな!


「いやいや、謝らないでください伸縮のゲルオ。私たちもある程度わかっていてこのクエストを見ていたのですから」


「……あん?」


 おいおい、それってもしかして……


「停滞のアシモフの不穏な動きは察知していたのですよ。ですが私もそれだけで動くわけにはいかない。そんなところで見つけてしまったのですよ……元魔王のいるクランを」


「……いい当て馬だったって事かよ」


「そうですね、きっぱり言いましょう。現状動かせる魔王レベルの人材は貴方ぐらいでした。他の元魔王の方々はそれなりに平穏な暮らしを手に入れていましてね。冒険者なんて言う無職に近い職業をしていらっしゃるのがあなたとポミアンさんぐらいだったのです」


「おい、はっきり言いすぎだろ」


 てか他の元魔王さん? ちょっとどういうことなの?


 心配して損したというかなんか裏切られた気分ですよ?


「わ、ワタクシが……無職に近い……」


「ププ……ぽ、ポミアンざまぁ……」


「ぎ、ギブスぅうう……」


「ぼ、冒険者で何が悪いデシか! ゲルオ様は立派でシヨ!」


「ヴぉ、ヴォル……」


 でもお前が言っても説得力がないんだわ……


「魔王神様、一応その総大将の私が此処にいるの忘れてません?」


「貴方は別に公務をしているでしょう? たいていの冒険者なんてフリーターに毛が生えたかどうかもわからないチンピラまがいの輩じゃないですか」


「あ、あいかわらず辛辣ですね……」


「せめて定職についてから冒険者を名乗って頂きたいところですね。ほとんどの輩が自称じゃないですか。ねえ自称魔王のゲルオさん?」


「う、ううう」


 こ、此処で突いてくるのかよ……や、やるな魔王神……クリティカルだ。


「おっと話が逸れてしまいましたね。兎にも角にも一件落着。貴方が居なければ最悪のシナリオもあり得ました」


「……魔王神。此処に来たのはその可能性も視野にしていたの?」


「博士は優しいですね。私は何でもシンプルにしていきたい性格なのでね」


「……そうね。貴女はそういう人だったものね」


「どうでしたかね?」


 魔王神はそういうと俺をまっすぐ見つめてくる。


「それでですね、伸縮のゲルオ。今回の事で私も認識と評価を改めさせていただきました。つきましては、貴方さえ良ければ自称なんて名乗らなくても良いようにしたいと思うのですが……どうしますか?」


「あ……それって……」


「カタ」


「ゲ、ゲルオ……」


 ポミアン、なんて顔してんだよ……


「ゲルオ様?」


「できればあなたの意志で答えて頂きたいのですが?」


「お、俺は……」


 戻れるのか? あの魔王だった時代に……


「カタ」


「アロマ……」


 魔王だった時……何も不安な事のないあの日々……


「勿論、必要な時だけ力を貸していただければいいですよ、貴方の価値がよくわかりましたのでね。もし今のクランメンバーと一緒にいたいというならそうですね……そのままあなたの配下にしましょうか? それならずっと一緒にいられますよ、変わらずに」


 どうだろうか。もしだ、もし今の皆も一緒についてきてくれるなら……それもいいかもしれない。そんで皆と騒ぎながらさ……変わらない毎日……


 変わらないか……


「先も述べたように、貴方には大変ご迷惑をかけたと思ってはいるのですよ。ですから一度だけ無理を此処で通しましょう。ええ、たった一度だけの神様へのお願いですよ? こんな事そうそうないのですからね?」


 …………俺の願い……


「あのさ、魔王神様」


「はい決まりましたか。まあ、返事は大体わかりますがね」


「そうですか、だったら……」


 最初から決まってたよな――




――――

――



「全く彼には困ったものですね。というか何で私まで……」


「…………」


「あれだけこちらが先んじて妥協点を提示してあげたというのにあの男は全くっ!!」


「……くく……」


「うん? 魔王神様?」


「くく、くっはっはっはっはっは!!」


「え、えっと? どうしました?」


「いやいや、ツァーレン。久しぶりですよ、こんなに笑えたのは……」


「??」


「アレはあのままにしましょう。その方が面白い」


「お、面白いですか?」


「ええ」


「う……い、胃が……」



――

――――




「良かったんですの?」


「あん? いやよかねえよ」


「ええっ!? そ、其処は別にいいっていうセリフじゃないんですの!?」


「だって……せっかくまた食っちゃねできるっていう好条件を蹴ったんだぞ? いいわけないじゃん!」


「……カタカタ」


「そ、それでもボクと一緒にいたいって、げ、ゲルオしゃまぁあああ!!」


「言ってねえよ! 思ってすらいないわ!!」


「ンヒャン!!」


「でも、いいもん見れただろ?」


「ああ! 私も大満足だぜゲルオ!!」


 ギ、ギプスっ!?


「わわっ!?」


 うおお! な、なんていう幸せな感触……


 こ、これがクエストのご褒美って事でいいんですか!


「ギ、ギブス! ゲルオから離れなさい!」


「ああん? いいじゃんかよぉ~お前のコレってわけじゃないんだろぉ?」


「くぅうう! このぉ……」


「でもサッスがゲルオ様デシね! 魔王神の奴いい気味でシヨォお!」


 まあ、おかげで魔王の話は台無しになったがなっ!


「カタカタ!!」


「はっはっは! そうだろアロマ? 中々見れないもんな!」



 神様の土下座なんてなっ!









 ただすっごい笑顔でやっていたのがいまさらになって怖くなりました。


「アロマ、今日一緒に寝よ?」


「カタ?」

お読みいただきありがとうございます!<(_ _)>

これにてゲルオの国家クエストはひとまず終了です!(*´▽`*)

次回からは各メンバーとのクエストの風景やらの日常に突入しますよ!


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