57話 自称魔王と停滞の魔王
「あっ! そうだ!」
アシモフは突然何かを思いついたのか、歪んだ笑顔で俺を見る。
「お兄さん、よかったらこれからずっとアシモフと一緒にいませんか? 魔王をアシモフの力で従えるのは初めてですけど、お兄さんならいけそうなんですよね?」
く、それはオレが弱そうだって事かよ!!
「……はあ、制限がうざいですね。でも、アシモフは別に悪いことをしたいわけじゃないんですよ? その証拠に今だってこのDMZ全体に異世界の魔物は外に出ないようにしているんですからね!」
とにかく今は逃げの一手だ。話に付き合ってやる義理はないってな!
「聞いてます? アシモフばっか喋っててなんだか損な気分ですね。ああ、でも一点だけ。あのお兄さんたちが入ってきた地帯は抜け道になってますから。アシモフは自由というエサをちゃーんと奴らにあげているんですよ? 慈悲深いですよね!」
そこで処理するためにあんだけ兵隊がいるんだろうが……
ていうかやけに饒舌じゃないかよアシモフ。
「取り敢えずヴォル、壁を作りまくって時間を稼ぐぞ!」
「アーい!! まっかせて下さいでシ……ねっ!!」
ヴォルはそう言うと床に手を当てさっきと同じように壁を生成する。
「よし! こんまま廊下を壁に埋め尽くさせながら移――」
「それは困りますね? 一応ここはアシモフの大事なお城何ですから」
「っ!?」
な、なんで目の前に……
「いちいち壊してくこっちの身にもなってほしいものですね。まあ、たいして時間はかからないんですけど……煩わしいのに変わりはないですし」
「アシモフの停滞は時間も例外ではないわ。不意打ち以外じゃこういった手はあんまし有効じゃないのよ」
「おいおい、それじゃ勝ち目ねえじゃん!」
「いや、アイツの能力は変な縛りがあったはずだ。じゃなきゃ私らはとっくに全滅してんかんな!」
た、たしかに……
ギプスはそういいながらもアシモフに能力を行使しているようだが、
「ころころ停止するルールを変えるのは面倒ですね」
「くっそクソクソっ!! 殺すんならおめえごと一気に気化させんのによ!!」
どうやらうまくいかないみたいだな……
「博士、なんかないか?」
「凄い無茶振りね。たしかアシモフの時間停滞は自分以外の生物に触れられない制約があったはずよ。ま、細かい部分は無視してるみたいだけどね」
「いやいや、そんなことわかったってよ……」
うん? ちょっと待て、たしかヴォルは前に街を肉に変えたっていてなかったか?
チラッとヴォルへと目を向ける。
「……やっちゃいまシカ?」
「できんの?」
「……無理ではないでシネ。一時的にこの廊下一帯をボクの体に変換する形になるデシけど……」
うう、それって色々マズい気がするんだけど……
「悩んでる暇はないようね」
「アァアア!! むっかつくな! ぶっ殺しちまいそうだぜ!!」
「ギブス? そんなことできるほど貴方が狂ってない事、アシモフは知っていますよ」
「ぬぬぬぬぅう!!」
確かに状況は全くよくない。
アシモフはさっきの玉を射出させるような攻撃を展開し、ギプスが必死にそれを気化や液化して何とかしのいでいる感じだ。
「まあ任せるデシ! あ、でもしばらくは此処を離れられないデシからね……少しお別れデシね」
「ヴォル……」
うう、なんだこれ? なんかめっちゃ寂しいというか……
「んじゃ! やってみるデシ」
「ん? いったい何を?」
「無機物を有機物へ変換……」
ヴォルはいままで聞いたことのないような低い声、まるで男性のような声でそう告げる。すると、さっきまでの白い壁や緑の廊下は一瞬で蠢く肉の壁や廊下に変貌を遂げた……
「……こ、これは?」
「ひひ……説明してやる義理はないな? さ、ゲルオ様」
「お、おう!?」
え? 何、今の声おまえなの?
「ひひ、ちょっと自分に変換しないとコレ出来なかったんで……あとはまかせて下さい……でし」
いうや否やヴォルは反転してアシモフに対峙する。
「わ、わかった! 死なないよな?」
「ひひ、もう死んでるデシから心配ご無用デシよ!」
うう、ちくしょう……何だこの感じ!
配下を置いて逃げるって……くそ……
「先ずはヴォルデマールか……つまんないね」
「ひひ、殺しちゃったらごめんね?」
後ろが気になる……けど、今はヴォルデマールを信じるしかないな……
――――
――
取り敢えず壁の中からでた俺達はこれからどうするか少し話すことにした。
「アシモフの能力について手短に話すわ」
「あ、ああ」
「アイツの停滞は基本的に支配領域にしか適応されないわ。アシモフの所有している場所、物、時間が対象になっているわ」
「それって何で決まるんだ?」
「さあ? それはアシモフに聞いて、そこまでわたしは興味ないからね」
おいおい、それじゃあどう対策すんだよ?
「ただ、DMZの黒い地面の上にいる限りはアシモフの所有地ってのは確かね」
それってこの場所全部じゃん?
「ああ、あれだな! わかんぞ!」
「うん? 何か知ってんのかギプス」
「アシモフってたしか淫魔族だったよな」
「ええ、そうね」
淫魔族? ああ、サキュバスとかインキュバスか!
「て待てよ? たしか淫魔族は異性を誘惑するのに長けた種族だったよな?」
「そだな。で、アシモフは魔王になる前はインキュバス。ようは男の淫魔だったはずだ」
んん? てことは……
「女に強いのか?」
「いえ、ここの兵隊共見ればわかるでしょ? バカなの?」
「おい、簡単に人のことバカっていうなよ?」
ていうか、たしかにやけにこう筋肉質な方々だったりタンクトップで比較的露出度の高い恰好だったりしていたような……まさか……
「お、男を狙うインキュバスなのか?」
「あったりだゲルオ! 私はその当時のアシモフの事は知ってんぞ。えらい苦労してたんだよなたしか」
「へぇえ、全く興味ない話ね」
おい博士、一応アシモフはおまえの上司なんじゃないのかよ……
「つまり、アシモフは魔王の停滞能力とは別に淫魔族の誘惑で所有権を握ることが出来るって事……なのか?」
「たぶんな! 兵隊共のアシモフへの視線はキモイぐらいだったしな!」
ああ、たしかに異常ではあると思ったが、そういう人もいるしなぁ……
「ふふ、だからお兄さんは安心してていいですよ? ちゃーんと優しくしてあげますから」
「っ!?」
「く、もう追いつかれたんか!?」
う、ウソだろ? ヴォルは?
「ヴォルはどうした?」
あいつは簡単にやられる奴じゃないんだぞ!!
「……まあ、教えてあげてもいいですかね。アシモフはさっきギブスが言ったように淫魔族の魔王なんですよ。ですから、その特技でほら? お兄さんの幻惑をね?」
「あ……」
「く、幻惑なんかに負けない! とか言ってましたけど二秒とかからずに落ちましたよ」
「くそ、弱点が丸見えだったか……」
というかな……ヴォルデマールのばっかやろう!!
何だったんだよさっきの見せ場はよっ!
おまえ、おまえ其処は踏ん張って幻惑に勝つとこじゃないのかよ!
「実に簡単に突破できましたよ? お兄さんだって知ってるでしょ、戦いは何も倒すだけが勝利ではないってね」
だが、そういうアシモフをよく見ると片腕がないことに気付いた。
「アシモフ、お前腕が……」
「そこは流石魔王ヴォルデマールでしたね。すっかり幻惑にかかったと思ったんですが、落ちる最後に一発貰いましたよ。ちょっと楽しかったです!」
……笑顔で言う事じゃねえだろうが。
「アンタが心配することないわよ? アイツは自身のダメージを停滞できるからね」
「……」
どっちにしろアシモフの遊びは続行って事か。
「……ふう、私が残んかな」
「ギプス?」
「アシモフの能力は支配地域さえ抜ければ効果はないわ。そこまで抜ければこっちのものよ!」
「んで、今いっちゃんここでアシモフのモンになっちまうとマズいのはゲルオだけってな。ていうか私と博士は女だから奴の所有物に出来んしな!!」
あれ? そうなると博士が死なないのってなんなんだ?
思わず疑いのまなざしで博士を見てしまう。
「……男じゃないわよ? わたしの不死は別件よ。言ってなかったかしら?」
いってねえよ。もうアンデットとか不死とか、ロボットとかこの世界の死生観めちゃくちゃだよ!! まあ、それ言っちゃうと俺だって千年越えて生きてんけどさ……
「私ならまあ死ぬこたないだろうしな!」
「……いいのか? だってお前は水の都の魔王だろ?」
今回のクエストのいわば正規の雇い主みたいなもんじゃないかよ?
「心配すんなって! ヤバくなったら自分を気化して逃げっから!」
「わたしは逃げるわよ。こんなことになったら此処で安心して研究も出来ないしね」
「お前はもうちょい考えてしゃべれよ?」
「考えたうえで喋ってるけど?」
こいつ、本田と同じ匂いがするな。
なんで助けちまったんですかね……
「あ、ならうちに来てくれよ! 今回のでもうアシモフから素材が貰えんかもしれんしな!」
「……契約金次第ね。でも、一応考えておくわ」
「ひゃっひゃ! たのむわ」
「さてと、律儀に待ってあげたアシモフを褒めてほしいんですが、もういいですか?」
「はん! んじゃ、死なねえ程度に溶かしてやんよアシモフ!!」
「はぁ……女はやっぱ嫌いですよ……男なら平和的に殺してあげれるのに」
うう、平和って言葉の後に殺すって普通付かないよね?
てか、またあの道を戻るのかよ……
「……ヴォル、ちゃんと帰って来てくれよ」
俺は博士と共にここに来た道へ走り出した。
「……で、あと何回残ってます? まだ日付が変わるまでだいぶありますよ?」
「ああ……やっべぇな……」
――――
――
「ちょっとアンタ、右にずれてるわよ? このままだと全く別方向に行くんだけど?」
「し、仕方ないだろ! 目印もないような荒野なんだぞ!」
くそ……マジにどう進んでるかわからん。
「はぁ……しかないわね。コレ」
「あん?」
博士はそういい俺にうっすい手のひらサイズの透明の板を渡してくれた。
「何だこれ?」
「わたしの特別性よ? この世界じゃどうやってもエネルギーの補給をできない代物なんだからね? 感謝しなさい」
「いや、そうじゃなくって何だよコレ?」
「この状況で渡したんだから地図に決まってるでしょ? その赤い点がアンタで目的地が青い点にしといたわ」
「いやいや、早く渡せよ」
「だって、大事な物なんだモン……」
く、そのクール系の顔でモンとか言うなよ? ちょっとドキッとしちゃうだろ?
「んじゃこれを頼りに行きますかね!」
これであとは全力で逃げるだけだな!
俺は意気込んで進みだす! だが……
「あら? どうした博士?」
後ろからついてくる気配がない?
「……アンタら魔族と違って体力には自信がないのよ。悪いけど置いて行っていいわ」
「はあ?」
何言ってんだよコイツは?
「このままいちゃどうせ追いつかれるわ。そのときアンタに渡したそれまでアシモフに渡るのはちょっと困るのよ。そういった意味でも渡したんだからね」
「ふざけんなよ? おまえ、此処で置いてったら助けた意味が全くないじゃん」
「悪いけど意見の交換会をしているほど暇じゃないのよ? どうせわたしは死にはしないしね。まあ、当分は自由じゃないでしょうけど」
……ああ、此処の奴らってやっぱおかしいわ。死なないとかじゃないだろ? できるからとかやらなくちゃとかそういうのじゃないだろ?
「そういうわけでとっとと……」
「……」
「……あんた何やってんの?」
「抱っこだ!」
よろこべ! お姫様抱っこだぞ!
「ちょっ!? や、やめなさい!」
「だいたい! 俺だって体力に自信なんかないわボケ! 耐久Fなめんなよ!!」
「はぁ? あ、アンタ仮にも魔王でしょ!?」
魔王がステータス高くなきゃいけない訳じゃないだろ?
だよね? ね?
「兎に角逃げんぞ! ヴォルとギプスの頑張りを無駄にゃできんしな! それに駐屯所まで行ってギアゴア達に説明すりゃもしかしたら俺らに協力してくれるかもしんないし!」
まあ、生きてるってか消えてなければの話だけどな。
だが、そんなネガティブなこと博士に言ってもしゃーないか……
「それは……随分と気薄な希望ね」
「……何も真実を話してやる義理はないだろ?」
「っ!? アンタ、なかなかいい考えじゃない」
「だろ?」
すると博士は顎に手を当て思案顔をする。
「ねえ、思ったんだけどアンタの能力、こういう使い方ってできる?」
「……や、やってみるわ」
――――
――
「はは、マジでもう着いちまったよ……」
あんなに遠いと思った駐屯所に着いちまったよ……
「流石わたしね!!」
……く、抱っこされてただけとは言えねえか。
「あれ? あのでっかい目玉ヤバい奴よ?」
博士に言われ見てみると巨大な目玉に何個も口や耳が付いたピンク色の変なのがいた。
「あれは?」
「最近でてきた個体ね。でも今のところアレは巨大穴からしか確認されてない筈のモンスターよ」
てことはアシモフのせいってことか……
「あっ!」
よく見ると全滅している可能性もあったギアゴア達だったが、何とかまだ消されるずに戦っているようだった。だが、別れた時にはギアゴアと合わせても10人までいたはずなのに今では半数に減っていた……
「あれは次元に戻されないからね。ここで何とか処分するしかないわよ?」
「……サービス残業すぎんぞ」
今回働きすぎじゃね俺?
「あいつらを助けないで迂回するってのも手だけど?」
「……いや、利用できんもんは利用しねえとな」
――――
――
「……おかしい。お兄さんに途中で追いつくと思ってたんですが、ここまで来てしまいましたか」
「……アシモフきゅん。どうしてここに?」
「……ギアゴア? 無事だったんですね! それより此処にお兄さんたち来ませんでした?」
「……あ、アシモフきゅん。それより先鋭部隊はどうしたんっすか? なんでアシモフきゅんだけで来てるんすか?」
「……ルウ君、そんなことよりお兄さんは――」
「やっぱり博士の言う通り偽物だぞコイツ!!」
「ふざけやがって! 俺達のアシモフきゅんの真似なんかしやがって!!」
「なっ!? 何を言っているんです!?」
「同志となったゲルオ氏もいっていたしな!」
「行くぞお前ら!! 全力でぶっ潰してやりゃああ!!」
『おぉおおおおおお!!』
――――
よし、どうやらうまくいったみたいだな!
「しっかしこのケータイってのは便利だな!」
遠くの状況を音声、映像付きで見る事も出来るとは!
「まあね! 悪いけどこの世界に蔓延ってる異世界人共の持ってるモノより高性能なんだからね!」
「ていうか博士の考えた通りうまくいって良かったぜ!」
「ふん、わたしは天才じゃないけどそこらの奴よりは優れている自負はあるもの」
博士の考えはこうだ。俺の能力『伸縮』は対象の距離までを縮める事も出来る。そこで俺の常備している圧縮岩をできるだけ遠くに投げ、そこから俺までの距離を縮めるという俺式の瞬間移動みたいなことをやってみたのだ!
勿論もくろみ通り移動に成功! おかげで疲労が半端ないけどな!!
「しっかしアンタのいう通り信じたわね連中」
「まあな!」
「すっごいキモい喋り方だったけどね」
「仕方ないじゃん! でもおかげで信じて貰えたろ?」
「まあね」
駐屯所に着いた俺は未だに戦っていたギアゴア達に合流。なんかでっかい目玉のモンスターがいたけど何時もの縮めて岩のコンボでなんか簡単に倒してしまった。ギアゴア達は所々体の一部が消えていたものの元気そうで、助けに入った俺にえらく感謝してくれた。
「あそこで助けたのは結果的に良かったわね。ついでにアンタのアシモフきゅんも演技には思えないほどだったし」
「ま、まま、まあな!!」
演技だよ? ホントほんと。
「ともかく少しでも疲労が回復したら移動再開よ!」
「ああ……」
とはいうものの、流石に疲れた。ボンたちのいるとこまであとちょっとのとこまで来たんだがな……
「博士、ここまで来たんだから――」
「いやよ?」
「うっ……」
博士……あんた……
「いまさら歩きたくないもの」
「おい」
そこかよ……
「それに、わたしも時間稼ぎぐらいできるわよ?」
「あん?」
そういうと博士は俺を突き飛ばして――
「まったくやってくれましたね……」
――半分になってしまった。
「は、博士っ!?」
「大丈夫よ! こう見えてわたしも死ねないんだからね!!」
言いながら博士はなんか緑色の液体をアシモフにかけていた。
「くっ!? こ、これは……」
「わたし特性のジュースよ? ま、死にはしないから安心なさい。苦しむだけだから」
「うう……か、かゆい……カユイカユイ!」
「え、えげつねえな」
「さ、わたしはここまで。アンタは逃げなさい」
「いやいや、まだ――」
博士を掴もうとしたが、
「この女ぁああああ!」
「くぅうっ!?」
気が付けば目の前にいたアシモフに博士は捕まれ遠くに投げ飛ばされていた。
「時間をまた止めたのかよ……」
「……はぁああぁあ……ごめんなさいお兄さん。アシモフとしたことが取り乱しちゃいました。おかげで痛覚を止める事にしちゃいましたよ」
「…………」
「あ、知りません? 痒みってちいさな痛みなんですよ? それが大きくなって痛みになるんです、かゆい、痛いの順なんですね! じゃあ、痛いの次って何だと思います?」
「……気持ちいとか?」
「は……あっはっはっはっはっ!! 気持ちい? 気持ちいいですか! お兄さんはホントに面白いですね!」
「だろ?」
「でも、痛いの次は違いますよ? 痛いの次はなんもないんです。ホントにビックリするぐらい何もなくなるんですよ? けど、痛みの苦しみを感じなくなったってのはお兄さんの言う通り気持ちのいい……いや、気分はいいですね」
「そう、わりいけど俺は痒いぐらいで気分よくなれるんで」
「……そうですか」
「ああ、だって気持ちよくね? 痒いとこに手が届くとさ?」
「ああ、アシモフもそう思います! でも、いつだって自分じゃ届かないんですよ。だから、他のモノに頼りたくなるんです」
「それが今回のお遊びってか?」
「……さあ? どうでしょうか、アシモフはもうそこがよくわからなくなってますから」
「ギアゴア達はどうした?」
「……止めました。仕方ないでしょ、アシモフの物だからどうしたって仕方ないでしょ?」
「悪いことしたな」
「ええ、正直こんな事するとは思いませんでした。お兄さん……」
「うん?」
「見かけによらず……やっぱり魔王なんですね」
「当ったり前だろうが! 俺はお前なんかよりもずっとずっと前から魔王やってんだよ!」
舐めんなよガキが……
「じゃあ、お兄さんの疲労が回復する前にサクッとやっちゃいますか!」
あ、バレてた……
「ゲームはアシモフの勝ちですね! おにいさん!」
「ま、まて! ヴォルもギプスも殺したわけじゃないだろ?」
「?? 何言ってんです? このゲームで殺すってのはお兄さんの事だけですよ?」
「お、俺だけ?」
「だって他の奴らって死なないですし……」
「え……」
ううんっと……そういやギプスも「私は死なないしなっ!」みたいなこと言ってたな……
あら? じゃあ初めからコイツの殺意の対象って俺だけだったの?
「ええ、ですから……お兄さんを一回でも殺せればアシモフの勝ちって事です! でも、死ぬ寸前でちゃんとアシモフの物にするんで安心してくださいね!」
……あ、初めからコイツの狙いってまさか……俺?
「せ、せめて痒いレベルでお願いします」
「?? あっはっは! 大丈夫ですよ? どっちにしろ気持ち良くなりますからね!」
くそ! せめてスキルの土下座が使えれば……っ!!
あ、アロマ……
……
…………
………………?
あれ? なんもこないな?
俺は恐る恐るつい閉じてしまった目を開ける……
「……な、なんですか貴方?」
「……カタ」
「あ……ああ……」
「カタ?」
「アロマぁあああああ!!」
そこには俺の一番の配下、アロマがいた。




