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5話 元魔王、ポーターになる?

 

 『巨獣の魔窟』それは序列12の魔王 巨人のムライが治めるダンジョン


 ランクはフリーのFランクとされているが、実際はどのモンスターも巨大化している為ランクはA以上が無難とされるのだが――


「まさか貴様がEランクだったとはな」


「ちくせう、てっきりDかCランクだとおもったのにっ!」


「カタ」


「だいたい、貴様たしか元魔王だろ? 千年も魔王でいたのにこんな事あり得るのか?」


「ありえるんですー! ここにいるのが何よりの証明だよクソっ!」


「そうやけになるな。ああ、こんな奴に突っかかるんじゃなかったよ」


 こうなったら仕方ない、命はあっての物種だっけか?


「ボン! クエスト取りやめてくれ!」


「いや、そうなると違約金が発生してしまうんだが……」


「い、いやくきん!?」


「はい、ボン様のクエストは報酬が出来高制でして、取りやめた場合は12万Gの違約金とさせて頂きます」


「じゅ、じゅうにまん!!」


 無理だ、三で割っても4万とか無理だよぉ


「お、俺だけ抜けるってのは?」


「既にゲルオ様のギルドカードにてパーティー申請が完了していますので、誠に恐れ入りますが連帯責任とさせて頂きます」


「は、はは」


「諦めるしかないな。まあ、任して置け! こう見えても僕はSランク冒険者なんだからな!」


「カタカタ」


 ああ、アロマ、確かに笑うしかないなこれ……



――『巨獣の魔窟』


「では、ダンジョンへ行く前に改めて自己紹介しておこうか」


「うい」


「カタ」


「僕の名前はボン=トラヴァーユ。こう見えて貴族トラヴァーユ家の者だ」


 こう見えても何も見るからにだろうが、だいたい、


「なーんで貴族の坊ちゃんが一人でいるんだ?」


 普通護衛か何かいるもんなんじゃないか?


「ふむ、ゲルオは世事に疎いんだったな。実際貴族といっても暮らしが少しいいぐらいなもんさ。一昔前の貴族なんかは皆、異世界人や勇者達に駆除されてしまったしな。」


「えええ……」


 駆除って、異世界人や勇者って怖いな。ドン引きだわ……


「それに僕は何故か誘っても皆逃げてしまうんだ……服の事でちょっと文句を言っただけなのにな」


 それだよそれ、気づけよ。


「ともかく、君たちには戦闘面では期待していないのでポーターとして付いてきてくれ」


「ポーター?」


 あれかな? なんかサイ――


「カタ!」


 おっと!?


「ポーターってのは運び屋の事さ。基本低いランクの者が命がけで高ランク冒険者の荷物運びをすることを指すかな」


「ほう、世界最強の禿のおっさんを想像したけどそういうわけじゃないんだな?」


「?? まあ、ハゲが誰か知らないが、戦う必要はないぞ」


 おいおい、それって千載一遇のチャンスじゃねえか!?


「ただし、先も述べたように命がけだ」


「ん? なんでだ? 強い奴の後ろにいりゃいいだけじゃん」


「カタカタ」


「あのな、ダンジョンはそんな甘い物じゃないんだ。誰かの命の面倒までは見てられないんだよ」


「えっと、それはつまり……」


「ポーターは基本使い捨てだ。こっちが助けるほどの義理はない」


「にゃ! なんだと!!」


 クソっ! 美味しい話だと思ったらこれだよ!


「まあ、しかし君たちは幸運だ。なにせ僕はそこまで薄情な奴らとは違うからな! よっぽどのことが無い限りはちゃんと面倒を見てやるよ」


 ボ、ボン。お前って奴は、


「なんて使える奴なんだ! じゃなくていい奴なんだ!!」


「……」


「カタカタ」


「……ごめんね」


「さあ、骸骨の君。君はちゃんと僕が守るから安心してくれ。ああ、そこのポーター早く来い。荷物を途中で落としたら速効見捨てるからな」


 ちくせう



――――

――


 洞窟内は不自然なほど広く、そこに居るモンスターはネズミンという下級モンスターまで5メートルとかあってマジやばいとこだった。


「ふう、まるで自分が小人になった気分だな」


「カタカタ」


「それにしても君の『伸縮』という能力は便利だな」


「まあな」


「意外とポーターとしては重宝されるかもしれん」


「え、マジで! そっかぁ」


 そう! 俺の能力『伸縮』は物体を伸び縮みできる力!


 3人分ぐらいの大きさの荷物だって掌サイズに出来てしまうのだ!


「しかし、重さも縮むっていうのか? まあ軽くすることが出来たのは良かったぜ。あの小ささで最初すげえ重かったからなぁ」


「ん? 何か言ったか?」


「いえいえ、何でもないですよ」


「そ、そうか」


 まあ、ボンは流石Sランクって感じだよな。並みいる巨大モンスターをバッタバッタと切り刻んでいるからな。


「カタカタ」


「ん? そうだな。ここらで休憩するか」


「さんせいさんせい!!」


 時間の感覚がわからんからな此処、やっぱ休めるときに休みたいもんだ。


「それじゃあゲルオ、元に戻してもらっていいか?」


「ああ!」


ボンっ!


「うん、どうやら大丈夫みたいだな」


「なんだよ疑ってたのかよ?」


「一応だ、万が一駄目だったら引き返せる位置と思って、此処で休憩にしたのもあるしな」


「へいへい」


 んだよ、信じる心が無いとは寂しい奴だなこいつ


「カタカタ」


「おお、あんがとアロマ」


「カタ」


「む、すまぬな」


 取り敢えず疲れる事のないアロマが見張りを買って出てくれた。ふふ、流石は俺の配下だ!


「君の配下は優秀だな」


「当たり前だ、アロマはやらんぞ!」


「いや、欲しいかといわれてもな……」


 分かってねえなコイツは、外見だけじゃないんだぜ? あれで意外と可愛いとこがあるのだ。


「それより、あとどれくらいなんだ?」


「そうだな、ベヘモットは週一で復活するモンスターなんだが、コイツは困ったことにこの第一層に出現するんだ」


「あれ? じゃあこれ以上は奥にいかないのか?」


「いや、大きさのせいでもう少し奥へ行かないと駄目だな。次の層へいく穴の手前にだいたい徘徊している」


「なるほど……モグ、うおっ! こにょサンドひっちうめぇにゃあ!!」


 照り焼きチキンと卵が口の中で俺を幸せにしてくれる! 


 これだけでもコイツとクエストきて良かったぜ!


「そ、そうか? まあ結構自信作だったからな!」


「あら? これお前が作ったのか? 女子力高いなお前」


「じょ! そうか、そうかぁ」


 ん? なんだコイツ男の癖に嬉しそうにして……


「カタカタ」


「む、もう少ししたら移動するか。モンスターがそろそろ現れるかもしれないしな」


「ごくん。オッケーわかった!」


「……」


「ん? なんだよ?」


「いや、何でもない。いくぞ」


 さあて、俺は後ろで見学でもしてますかね。


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