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46話 自称魔王とホビット


「やはやは、ワシが元貴族で今はデルモン商会というちっぽけなモン経営してますオッサ=デルモンっていいます、はい」


「あ、ども」


 準備の出来た俺達は早速ロッテに声をかけると、すぐさま依頼主が飛んでやってきた。ソイツなんて言っちゃ悪いがその見た目はまさにちっさなオッサンだ。身長が100センチあるか微妙でその上顔が何ていうかその……


「何か頭身おかしくないかこの人?」


「おい、ソウタ思っても言うんじゃねぇよ!」


 一応依頼主、しかもタダの依頼主でなくめっちゃ金持ちの依頼主なんだぞ!


「やはやは、かまいませんよ。ワシ等はホビットいう、まぁ異世界の人には小人とでも言えばいいでしょうかね? そんなもんでして、頭がでっかい種族なんです、はい。しかも大体のホビットは頭でっかちな奴らばかりでして、結構嫌われてるんですわ。頭もデカくて態度もデカいというまぁ誇れん種族ですわ! やはっやはっやはっ!」


「はぁ」


「笑うとこですよ」


「は、ははは、は」


 の割には目がマジなんだよなぁ……


「ところで、もしかしてそこに居ますのはトラヴァーユの者でないですかな?」


「ああ、ボン=トラヴァーユだ」


「やはやは、貴方の父君には貴族の大粛清の際助けてもらいましてな! いやぁまさかご子息がいたとは!? その節は本当に感謝しておりますです、はい!」


「そ、そうですか」


「やはやは、あれ以来もう貴族でいるのも嫌になって、今は金だけある商売下手なしがない商人ですわ、やはやは。まぁ今回はその起死回生という訳で噂のDMZまで護衛してもらおうという訳なんですがね、はい」


「ふーん」


 いらない情報が次々と入って来るな。てか、金持ちの年寄りってほんと好きだよね、こういう自分のヒストリーとか今後の展望とか話すの。


「そうそう、トラヴァーユ家にはご息女も居ましたが元気ですかな?」


「あ、ああ! い、今も元気にしていますよ」


「そうですか……まぁもう会ったのも百年以上前ですからな。てっきりもうご結婚でもされてるのかと。やはやは、少し野暮なことを聞いてしまいましたな、はい」


「あ、姉はそうですね。今も貰い手が居なくて困ってますよ、は、ははは。はぁ」


 へぇボンって姉ちゃんいたんだな。


「で、えっとぉそのぉ前金の方は……」


「やはやは!? 忘れてましたな。此処ではなくて水の都に着いて出発してからでもよろしいですか? いや、信用の為とはわかってはいるんですがね、はい」


「いいんじゃねぇか?」


「そ、そうですね。どっちにしろ向こうに行ってからが本番ですし」


「はやくお魚喰いたいデシ」


「うん、そうだな」


「……怪しい気が」


「ん? どうしたソウタ?」


「いや、まあいいか」


 おっとソウタ君、そんな誰彼怪しんじゃダメですよ? こんな大金落としてくれる依頼主なんだからな、せめて前金貰うまでは信用しとこうぜ?


「やはやは、そう云えばこのクランには魔王が4人もいると聞いてこちらも了承したのですが……何処に?」


「あん? ああ、俺と一応そこの赤い髪の奴だな」


「ほう……では、貴方が魔王ゲルオですかな?」


「ああ今は自称だがな。でそっちのがヴォルデマールっていえばわかるか?」


「っ!?」


 流石に驚いてるな。てか、マズかったか?

 前にヴォルにビビッて護衛対象が逃げ出したことあるからなぁ


「あ、でもちゃんと言う事聞くから大丈夫だ! な、ヴォル?」


「アいっ!! ゲルオ様の言う事なら何でも聞きマシから!」


「てことなんで大丈夫ですよ!」


「な、な、はぁ、はぁ、何でも! 何でも聞きマシからぁあ!」


 ええいっ! 興奮すんじゃねえよ!!

 何に興奮したんだよコイツはっ!!


「……ふむ。やはやは、むしろ心強いですな! 何といってもあのDMZに足を踏み入れるのですから、それほどの方がいてくれるのならこの旅も安泰ですな、はい!」


「そうでしょ、そうでしょ! いやぁ大将は話が分かるお人でよかったですよ!」


「やはっ! 大将だなんてそんな! もっと呼んで下さい、はい!」


「いやぁいい仕事になりそうですね大将!」


「やはやはっ!」


 ふっ、大魔王様に鍛えられた俺のよいしょ術のお披露目だな!


「……うわぁ何だあの態度」


「ソウタ、そんなこと言っちゃいけねえぜ。立派なリーダーじゃねぇか」


「そ、そうですよ。ゲルオさんって世渡り上手だなぁ」


「うう、すまんゲルオ」


「よっ! 流石ホビット一の心のデカさ!」


「やはやは、そうですかな? やはやは!」


 ま、これぐらい言っときゃいいか。


「で、大将は向こうで何を売る気なんですか?」


「やはやは……ふむ。此処では何ですからな。水の都に着いてから話しますよ、はい」


「そうですか……」


 うーむ、意外と食えない奴かもなコイツ。

 なんか俺の第六感センサーがヤバいフラグを感知し始めてやがる。


 ま、前金貰ってヤバくなったらトンズラだな。


「デルモンさん、日程はどうするんだ?」


「えっとあなたは……」


「あ、ソウタって言います」


「またの名を増田だ」


「名字はやめてくれ」


「あ、うん」


 え、何かマジな返しされたんだけど……


「ええっとではソウタ君。こちらとしては、水の都である程度仕入れてから行く予定ですな、はい。で、せっかくなのでその間は観光でもして貰っていいですよ。仕入れやらなんやらで一日は潰れてしまいますので、それが終わり次第にDMZの境界まで二日かけて行く予定ですな、はい」


「デルモン氏、細かい所は向こうでという事か?」


「ええ、そうですなボン様、はい」


「く、俺は君でボンは様……」


 いやいや、仕方ないだろボンは貴族でお前はただの冒険者なんだから。


「つまり、今日と明日は自由って事かぁ?」


「ええ、えと、そうですなモヒカン君」


「お、おう!」


 なんで嬉しそうに答えてんだよゲンタ。


「では、転移の準備も出来ましたので行きますか?」


「ああ、じゃ出発だな!」


「ん? ゲルオさん達の荷物が無いように見えるのですが……」


「あ、ああ大将。俺の能力でしてね、こんな風にホイッと」


 いって縮小させた荷物を元に戻す。


「小さくできんですよ。便利でしょ」


「……おおっ!?」


 ふっふっふ! 伊達に自称魔王じゃないんだぜ!


「す、すごいですな!! いや、これはホントに凄いですぞゲルオさん、いやゲルオ様!!」


「様ってそんなぁ」


「ふむ、この能力があれば……費用も……」


「あ、あの大将?」


「あ、ああすまないですゲルオ様、はい」


「ええっと様は、その、やめてくれ。俺は貴族でもないし正式な魔王でもないんだ」


 ほら、大将呼びしてる奴が様だなんて言われてるのって滑稽じゃん?


「そうでシ! 様はボクみたいな従順なゲルオ様の配下しかいってはダメでシヨ!!」


 いや、お前はそんな従順ではないけどな?


「あ、はぁ……ではゲルオ殿でいいでしょうか?」


「ああ、それでいいぜ大将!」


「やはやは、しかしこれは思わぬ収穫かもしれないですね。はい」


「ん? なんだって?」


「やはやは、期待しているという事ですよゲルオ殿!」


「え、マジで? いやぁうれしいなぁ」


 こんな最初から依頼人の信頼も勝ち取っちゃうなんて俺って凄くね?


「おーい、行くぞゲルオ」


「わりわり」


「では、くれぐれもはみ出さないでくださいね」


「え? どういう事だ」


「ソウタ知らないのか? 転移陣からはみ出るとその部分はこっちに残るんだぞ?」


「いや、そんなの初めて聞いたんだけど……」


「ああ、光の栄光亭のはウチの安物と違いますからね」


「えっ!?」


 おい、どういうことだよロッテ。


「まま、はみ出さなきゃいいだけですから気にしない気にしない」


「因みにここ最近はどうなんだ被害?」


「……えへへ」


 笑ってごまかすなよ。


「えっと、つま先気を付けて下さいね。あと、肩とかわりと残るんで」


「おら! ヴォルお前は一番外側だ!」


「ひ、酷いデシよ!!」


「うっせぇぞ、お前は再生すんだろぉがっ!」


「げ、ゲンタさんの言う通りですよヴォルさん!」


「おいおい、一応デルモン氏は真ん中にしないと駄目だろ」


「す、すいませんですボン様、はい」


「おい、これ大丈夫なんだよな? 大丈夫なんだよな!?」


「じゃ、転移始めますねぇ」


 くそ、毎回こんな思いして転移すんのかよ……


 てか買い替えろよ被害出てんならよっ!!



――――

――


――その頃の女子達


「カタカタ」


「な、なんかすっごいソワソワしてますわね」


「ゲルオさん達だけで遠出のクエスト行ったらしいですよ」


「えっ!? そうなの本田!?」


「ポミアンさん、ちょうどトイレ行ってましたもんね」


「カタカタ、カタカタ」


「最後の最後までなんや世話しとったもんな」


「お前は俺のカーちゃんかって言ってましたしね」


「凄い速さでお弁当作って渡してましたよ」


「……アロマ、すごかった」


「カタカタ――」


「あれ? アロマさん?」


「さっきまでそこに居たよね?」


「うう、ゲルオの癖にワタクシを置いていくなんて」


「そ、ソウタも行ったのかにゃ……」


「なんやなんや二人とも落ち込んで?」


「ヒロ、ホントにアロマさんいないんだけど……」


「うーん? 一体どこに」


「あ、マズい事に気が付いたんやけど」


「なにキララ?」


「うち等って料理出来る人おるん?」


「……」


「……」


「……ルリ、焼くだけなら」


「あたしもサラダぐらいなら」


「うちは買う事ならできるけど……」


『…………』


「あ、アロマさん探さな!」


「え、ええ!」


「く、料理できるのが後は男どもだけって忘れてたわ!」


「……焼くが最強だと思う」



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