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44話 元魔王、魔王を名乗る?


「えっと……じゃあぁ……これで決まりでいいか?」


「カタカタ」


「う、ううん? あっ! ええ、いいのではないかしら」


 長い、長い戦いだった。


 名前を決める、それだけのことがこんなにも時間のかかることだとはな。


「てか、もう俺とアロマとポミアンしか起きてねえな」


「です……わねぇ……」


「お、おいポミアン!」


「フゥン……むにゃ……」


 とうとうポミアンも寝ちまったか。


「ぐがぁー……」


「スー……スー……」


 他の奴らもすっかり夢の世界か……


「にひ、にひひ……ゲルオ様ぁ……」


 こいつはアンデットなのになんで睡眠いるんですかねぇ。


「アロマ、このままじゃあ皆風邪ひいちまうから毛布とりに行こうぜ」


「カタカタ」


 しかしこれじゃあ全員一致でって訳にもいかねえかもな。


 明日の朝にでももう一回聞くか……


「ふわぁあ……俺も流石に眠くなってきたな……」


 取り敢えず後はアロマに任せて俺は自分の部屋で寝ることにした。



――――

――


――「闇の囁き亭」


「ええっと、ではこの名前でご登録いたしますね」


「おお、頼むわ」


「……まあ、貴方たちらしい名前ですね」


「だろ」


「では、このクランのリーダーですが……ゲルオでいいのかしら?」


 おっと、それは困るぜ。


「いや、リーダーは――」


「ええ、ゲルオでいいわよ」


「ですね。ゲルオさんでいいです」


「――ってちょいちょい!」


 なんで俺が!?


「うん? どうしたゲルオ」


「どうしたじゃねえよ? 俺は一言もリーダーやるなんて言ってねえぞ!?」


 あくまでこの皆でクランを立ち上げたいってだけだったんだけど……


「は? なにいってんだぁゲルオぉ?」


「ひっ!」


 ちょっとゲンタさん、そんなマジな顔しないでよ。


 ビビっちゃうでしょ?


「てっきりうちはゲルオはんが立ち上げる言うたから、そのまんまリーダーやってくれるもんやと思っとったんやけど? なぁ皆?」


「ぼ、僕もゲルオさんだと思ってました」


「……うん」


 ほかの皆もなんかうんうん首を振ってる。


 え? なんでそんな一致団結してんの君たち?


 名前決めの時はあんなバラバラだったのに……


「そ、ソウタとかどうだ? 好きだろリーダー?」


 なっ! 君みたいな子ってほら? 俺みたいなのの下に付くタイプじゃないじゃん?


「え、あ……いや、このメンツをまとめるのはちょっとな」


 おいおい、最初あった時の社交性はどこ行ったんだよ!


「な、なら……ゲンタは? お前ってリーダーやってたんだろ、どうだ?」


「ふん、オレは別に好きでやってた訳じゃねえからな。大体よ、あんま向いてなかったしな」


 ですよね、俺も思ってたわ。

 く、このままじゃ退路が……


 そうだ! こういう時こその相棒!


「ボン、お前ならやってくれると思ってたよ」


 うんうん、ボッチからの脱却だぞ!


「ゲルオ……」


「ああ!」


「悪いがヴォルデマールがいる時点で君がやる以外の選択肢がないんだ……」


「アい?」


「あ……」


「彼が君以外の言う事を聞くと思うかい?」


「は、はは」


 そっか……そうかぁ……


「ヴォル」


「何デシか?」


「悪いがこのクランからぬ……ぬぅぅ……」


「どしマシた?」


「にゅ……うぅ」


 だ、ダメだ! これってアメリアの強制の範囲なのかよ!?


 抜けろって一言がいえない……っ!!


「だ、大丈夫でシカ?」


「……うん」


「では、ゲルオがリーダーで決まりね」


「ああ、はい、わかりましたよ……やりゃいいんだろやりゃあ!!」


 ちくせう、サブリーダー辺りの一番美味しいポジションに付くつもりだったのによぉ


「はぁ、初めてですよ? こんなクランのリーダーを擦り付ける様なとこは。普通はクランのリーダーなんて我先になろうとするもんですよ?」


 ロッテ……仕方ないだろこのメンツなら……


「他の事も今決めないといけないのかしら?」


「いえ、他の役職はこっちとしてはどうでも良いので後は自分たちで決めといてください。ぶっちゃけこっちとしては何かあった時の責任者が把握できてればいいだけ何で」


「おう」


 ぶっちゃけすぎだろ。


 てかまた巡り巡って俺の責任になりそうなんですが?


「何かご質問とかありますか?」


「うん? 質問ねぇ……」


 ああ! そうそう大事な事を聞くの忘れてた!


「ロッテ、クランにギルドから援助金みたいのが出るって聞いたんだが」


「ええ、でますよ。支援金ですね」


 おしおし、よっしゃああ! そうだよコレコレ、コレが最初の目的だったんだよ!


「ど、どれくらい出るんだ?」


「えっとですね……ああ、クランメンバーが一人につき1000G。最初の一年だけ月一で支払われますね」


「おおっ!」


 つまりだ、うちはガッキが来年からとして今は13人だから……


 月13000Gだとっ!!


「あ、もしかしてゲルオ貴方……」


「ふっふっふ、俺をリーダーにしたことを悔やんでも遅いぞポミアン!」


 これなら一年で借金返済に黒字が出るぞ!!


「うん? どうしたのポミアンさん?」


「エルフ、ゲルオは多分だけれど借金の――」


「ああ、ゲルオ。ギルドの借金にこのお金を充てようとか無理に決まってるからそこのところは承知しといてね」


「え……あ、そのぉ」


 いやいや、一度貰ってからならバレないよね?


「受け渡しの際はちゃんと使用目的を明確にするためにギルド専用の通貨みたいのを使用するから……バレるからね」


「……はい」


 くそ、くそっ! ちくせう!!


 なんでそういう事だけしっかりしてんだよこの世界は!!


「それって要は商品券みたいなものなんですかぁ」


「ああ、異世界人にはその方がわかり易いですね。こっちの世界にはそういった物ってないので」


 やっぱ他のメンツ連れて金稼ぐしかないのかぁ……


「では、クランでの活動について何点かご説明いたしますね。先ずはクランを設立したことによりクラン専用のクエストをお受けできるようになります。また、大規模戦闘となるレイドクエストでは小規模パーティーより優先的にお受けできることが可能です。勿論、報酬のほうにも特別手当などが――」


 うう、長い説明になりそうだな……


――――

――



「――という事で必ず月一での定例会にはリーダーのゲルオと他一名以上は参加してくださいね。以上で終わりになりますが何かご不明な点などございますか?」


「説明が長いからせめて三行でまとめてくれ」


 マジで途中から眠くなって頭がぼーっとしたんだけど。

 どうして興味のない事を聞き続けると催眠効果が生まれんだろうな?


「そうね、


 クラン専用のクエストに出れる。

 随時ギルドからメンバー募集が出来る。

 定例会にゲルオは出る。


             ってとこね」


「おおう、次からそれで頼むわ」


 てか、それだけのことを説明するのになんであんな長ったらしく言うんだ……


「はぁ、私もそれでいいならそうしたいけどね。一応、サービス業なんだから仕方ないでしょ?」


 へぇ、ギルドの受付ってサービス業なの? なんか違う気が済んだけど。


「ああ、あとあなた達の専属に私はなるから。これから宜しくね」


「それは助かりますわね! ね、ゲルオ!」


「ああ、やっぱ馴れ親しんだ人でないと不安だしな!」


 うん、決して他の人に聞くのが怖いとかじゃないんだよ?

 けどなんかそういうのってあるじゃん?


「ゲルオさん、どんなに混んでてもロッテさんのとこに行きますしね」


 うるさいよ本田。


「それとゲルオこれ」


「ん、なんだ?」


 ロッテは数枚の紙を手渡してきた。


「今のやり取りの間に作ってもらったメンバーの簡単な資料よ。ステータスとスキル、あとちょっとしたコメント付きよ」


「おおう」


 ペラペラとめくると確かにそれぞれのステータスだのが見て取れた。


「てかこれって結構大事なもんなんじゃないか?」


 個人情報ってやつだよな?


「ええ、一応ゲルオがリーダーですからね。メンバーの戦力をしっかり把握しておいた方がいいでしょ?」


「まあ、そりゃそうだが……」


 うん、みんな強いね。

 俺が貧弱すぎてリーダーなのに全くそんな気がしてこないよ。


 しかも何人かちゃんと記載されてない人がいるんですが、特にアロマとか……


「それに、私が専属となった以上はそれなりの成果を上げて頂きたいので」


「なに? お前の給料に響いたりすんの?」


「ボーナス辺りは響きますね。なんでゲルオにはしっかりとしてもらいます」


 うわぁ、何か目がマジだな。


 それにしても……


「……ふむ」


「ゲルオ? どうしたの資料をそんなに見て」


「ああ、ポミアン。いやな、ほんとこう見るとよくもまぁ色んな種族が寄せ集まったと思ってな」


「確かにそうだな。僕達ぐらいじゃないか? 種族から身分までこんなに多種多様なクランは?」


「せやね。異世界人のクランも混ぜこぜなんはあるけど何故かリーダー以外女のハーレムばっかやしな。アンデットやモンスターに変態までおるんはうち達ぐらいやない?」


「うっ……」


 あ、なんかソウタがダメージ受けてる。


「へへ、まさにオレ達のクランは名前通りって感じじゃねえか!」


「そうね……にゃ」


 しかし、メンツを見渡すとこう思ってしまうな……


「この中だと俺、一番弱そうじゃね?」


「カ、カタッ!?」


「いやいや、ゲルオさん何を今更?」


「全身から滲み出てますものね」


「何がだよ」


「小者臭が」


「……」


 く、ぐぅの音も出ねえ。


「なあ、やっぱ俺なんかリーダーってのマズくないか? 他のクランの奴らに舐められちまわないか?」


「そ、そんな事……な、ないですよ?」


「おい」


 ブンタ、だったら目逸らすんじゃねえよ。


「アいアいアい!! いい考えがあるデシ!!」


「やっぱクジ引きで決めた方がいいんじゃないか」


「ええー、今更変えるとかゲルオさんもうちょっと空気読みましょうよ?」


「お前にだけはいわれたくなかったな」


「アーい! アい!! いい考えありマシよ!」


「ロッテ、リーダーを交代制とかって無理?」


「無理に決まってるでしょ? バカなの?」


「う、そんな真顔で言わんでも」


「……アい、なんで無視するデシかぁ」


 だってお前ろくなこと言わねえじゃん。


「……ゲルオ様が実は女にへんか――」


 あ、おまえ!!


「ああぁあっと!! なんだヴォル? 何かあるのか?」


「――ん、ううん、アい! ありマシよ!」


 あぶねえ、コイツ何てこと口走ろうとしてんだよ!


(ゲルオさん、実は女体化が癖に……)


(えっ!? ど、どど、どうしましょう。そうなったらワタクシ……)


「……」


 本田、ポミアン……本人に聞こえる様な内緒話はやめてくれ。


「で、どういう考えなんだ?」


「にっひっひ! 簡単でシヨ、要は箔がつくようなモノをゲルオ様が名乗ればいいんでシヨ!」


「箔?」


「元、なんてつくからカッコ悪いデシ。だから名乗ってしまうデシ!!」


「あん? 元って……」


「魔王を名乗れば良いデシ!! このクランのリーダー『魔王 伸縮のゲルオ』とっ!!」


「え、あ……いいのか?」


 俺はついつい同じ元魔王であるポミアンに振ってしまう。


「……ふむ、そうね。確かにワタクシ達って序列を首になっただけで、魔王本来の力は衰えている訳ではないのよね。それって、現在も正真正銘の魔王といっても過言ではないのかもしれないわ」


 そういう風に考えた事なかったな。

 俺にとってはなんか序列を貰ったから魔王として認められた感があったし……



「……ああ、でも大魔王様はもういないんだもんなぁ」



「ゲルオ?」


「よし! んじゃ、これからは自称魔王とでも名乗るかね。ヴォルにしてはいい考えじゃねえか」


「アいっ!」


「はぁ、なんか色々と荒れそうですね」


「ん? 何か言ったかロッテ?」


「いえ、まあ自称なら問題もないでしょう」


「おうっ!」


 そそ、あくまで自称だからな。

 魔王神が文句言ったって大丈夫だろう、多分。

 ダメだったらそん時ごめんなさいすりゃ何とかなるだろ、きっと。


「うむ、魔王ゲルオ率いるクランにその魔王の相棒が僕かぁ……いいね!」


「いっそのこと皆それぞれ自称魔王を名乗っちゃいますかぁ?」


「ヒロ何言って……ってそれも面白いかもね」


「……ふ、ふっふ……光を使う魔剣士にして魔王かぁ……」


「そ、ソウタ? どうした……にゃ?」


 触れてやるな猫、そういう年頃なんだソイツ……


「じゃあゲルオ、一応決まり何でリーダーからクラン設立の宣言をお願いね」


「あ、ああ」


 ちょい恥ずかしいなぁ


「んじゃ! 今日から始動だな!」


 そういって皆の顔を見回すが、みんなそれぞれ考えに没頭しているようで全くこっちをむいてくれん……


「カタカタっ!!」


ビクっ!


 おおう、アロマが喝を入れてこっちを向かしてくれた。


 はぁ、しまんねえなぁ



「ここに自称魔王ゲルオが宣言する。クラン『パッチワーク』の設立を!!」



「おおぉおお!! ……アい? 言わないんデシか?」


「あ、えっと、おぉおですわ」


『おおー……』


 いや、ほんと最初ぐらいちゃんとしてくれよこの寄せ集め共はよ……





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