43話 元魔王、現実に嘆く
前回までのあらすじ。
悲報、借金10万Gを背負う。更にアメリアの強制力が持続していることが発覚、これによりヴォルの面倒をこれからも俺が見続けることが決まった。
まあ、ヴォルは俺の忠実な配下となったからいいんだけどよ。ただ、いざという時でも奴と一蓮托生な身になってると思うとなぁ……
大体アメリアの奴なんで未だに能力を解除してないんだ? なに、俺とそういう形でもいいから繋がってたいとか?
照れるな……
「カタカタ?」
「あ、すまんアロマ」
ついこれまでの事を確認してしまって今の状況を忘れてた。
「にひひ! ま、ゲルオ様はボーっとしてても問題ナッシでしよ!」
「お! そうかヴォル、期待してるぞ!」
「アい!」
「アロマも頼むな!」
「カタ!」
俺に応えるように二人は戦闘態勢にはいる。
現在、俺達はさっそく借金返済のためにCランクの討伐クエストを受けていた。
ロッテにサクッとボロッと稼げるクエストを頼んだところ、一体200Gの魔獣討伐を紹介してもらった。但し今回は人数制限のあるクエストであると伝えられ、ジャンケンの結果ポミアンはお休みとなった。無論、俺は強制参加だったが……
なもんで俺とアロマ、ヴォルの三人で受注することになったのだ。
ポミアンはちょっと寂しそうにしてたがな……
「ま、帰りになんか買ってってやるかね」
「カタ?」
だが俺の予想ではヴォルがいるおかげで借金も案外サクッと完済できる気がするんだよね。あいつの能力ってS以外見当たらなかったしな、此のランクの魔獣なんかバッタバッタと倒してくれるだろう。
「にひゃあ! 出ましたデシよゲルオ様!」
「お、こいつがワイルドイノシシか」
「カタ」
ブルゥルルゥ!!
今回の討伐対象であるおっきな牙を持つ要はイノシシだ。初級者から中級者まで幅広く相手をしている魔獣のなかでもいっちゃんポピュラーな奴らしい。
因みに俺の時代にはただのイノシシって認識だったんだがなぁ
「にっしっし! こんなブタに牙が生えただけの奴なんか楽勝でシネ!」
「おおう、自信満々だなヴォル」
「まぁね! でし」
ぶっちゃけ俺がガチンコでやりあったら一発で死にかけるだろうなコレ。ロッテから聞いたがコイツは敏捷と筋力だけはBランク並らしいから……
耐久Fの俺じゃあ能力使わなきゃ瞬殺だろう。
「ヴォル! そんじゃ任せたぞ!」
「アいでし! いっくぞーイノブタ!!」
ブッ、ブギャアアアア!!
ヴォルの挑発に反応したのかイノシシはその巨体に似合わない俊敏な動きで突っ込んでくる!
「にひゃあ」
ブギュゥウウ!
それをヴォルはなんと真正面から拳をあてようと体を半回転して……打ち込む!
「おお! いけえヴォル!」
「アい!!」
シュボッ!!
そして突っ込んできたイノシシに渾身の拳が当たった瞬間――
パンッ!!
――破裂した。
「……」
「……アい?」
「……カタ」
遅れてボトボトと何かの肉片が辺りに散らばる音がする……
「…………」
「……あ、あの、えとデシネ」
それはさっきのイノシシの肉片だった。
「おい、ヴォル」
「アい」
「誰がここまでやれって言った!」
「んひゃああ! 御免なさいデシ!!」
そう、ただ肉片になっただけでない。もはや少しの原型も無いのだ!
これじゃあ最早ナニを倒したのかすらわからん……
「ちくせう、これじゃあ素材も何もないな」
俺の縮小でミンチにしたあのベヘモットよりひでぇ
「カタカタ」
「ん、そうだな」
初めからうまくいくもんでもないか。というか腐ってもヴォルは元序列3の魔王、ここらのランクの魔獣じゃあこうなるのも仕方がないのかもな……
むしろこの攻撃を受けてたアロマやアメリアってどんな硬さだよ……
女の子って柔らかいモノだと思ってたんだがなぁ
「ん? 何デシか?」
「いや、俺に触れるときは是非とも優しく触ってくれと思っただけだ」
デリケートに頼むぞ、お前からしたら俺はシャボン玉並の耐久なんだからな?
「勿論でシヨぉ~! ゲルオ様に乱暴はしないでシネ」
「ああ、頼むな」
「別の意味なら……マシ……」
「ん? なんか言ったか?」
「何でもないマシ」
「そっか」
まあまだ始まったばかりだ。
俺も気合い入れてくぞ!
――二時間後
「…………もう帰るか」
「……カタ」
「ま、待ってくださいデシ!」
「ええい! これ以上は無駄だ、帰るぞ!!」
「次は、次はグチャグチャにしないデシから!」
「さっきので終わりだっつっただろ」
「そんな~」
くそ、まさかこんな事になるとはな。
「カタ……カタ……」
「ああ、当分は肉喰えねえな」
ヴォルの奴、何度言っても力の加減がうまくいかずにどれもこれもミンチにしちまいやがった。アロマに任そうとしても変に対抗心を燃やし、結果アロマが倒したのを追撃、破裂のコンボで台無しに……
さっきまで小鳥の囀りが聞こえる平穏な森は、すっかり血肉にまみれた心臓の弱い人は決して見ちゃいけない森へと変わっていた。
まさに臓物の森だなこれは……
「どこぞの戦争の後みたいだな。この惨状を目撃した奴に疑われるのも嫌だしとっとと撤収すんぞ! こんなの掃除しろとか言われても困るしな」
「ううう、わかたデシ」
「カタカタ」
結局、アロマが仕留めたので無事なのは一体だけだったな。
「……はぁたった200Gぽっちか」
まあ、生活費はポミアンが出してくれるから全額返済に充てられるがよ。今日の頑張りがまったく懐に入らないのは悲しいもんだな……
「なんかもっと楽な方法ないかなぁ」
「カタ、カタカタ」
こつんっ
「うう、はい。地道に頑張りますよ」
アロマに喝を入れられてしまった。
「ゲルオ様! 明日は頑張りマシでしから!」
「ああ、期待しないでおくよ」
「アい! にひひぃまっかせてくださいマシね!!」
分かってんのかコイツ?
はぁ、返済期限もまだ先だし焦る必要はないのかねぇ
「あ、これじゃポミアンにお土産買ってけねなぁ……」
なんか情けなくなってくるぜ……
――――
――
「おかしい、おかしいぞ」
「どうしたのかしらゲルオ」
「ポミアン、仮にも俺らは元魔王だよな?」
「ええ」
「しかも三人とも序列は10以下だったんだぞ、その俺達が力を合わせてるってのになんで……なんで……っ!」
「にし? どしマシでしかゲルオ様?」
「なぁんで一か月たっても借金が減らねえんだよ!!」
「そういわれましても」
「デシよねぇ」
別に今回は何もしてこなかったわけじゃねえんだぞ。
魔物討伐も素材採取も、護衛任務だってしたさ!
だってのに毎回何かしらこいつ等二人は問題を起こしやがるっ!
ヴォルの手加減は治らんし! ポミアンはもういらないってのに素材を集めすぎて、逆にギルドに大目玉喰らうし! 護衛任務はアロマとヴォルが怖いとか抜かして対象が逃げ出すし!!
おかげで違約金だの罰金だので借金が減るどころか少し増えてる始末……
「ふ、ふふうふ」
「だ、大丈夫ゲルオ?」
「ゲルオ様、なんか面白いことあったデシか?」
「ああ、働くと借金が増えるっていう面白い現象にあってるよ」
「それは良かったデシ!」
「どこがだよっ!」
「にひゃあああん!」
はぁ、余計なことしなくても定期的に金が入ってくるようなそんな素敵なシステムってないのだろうか……
「そう、例えば俺がこいつらの面倒を見てる間に誰かが別で働いてくれたりとか……」
「また変なこと考えてますねゲルオ」
「ん、ロッテか」
「今日はもう閉めますからそろそろ帰ってくださいね」
「ああ」
そうか、もうそんな時間か。
……あ、そうだ。
「なあロッテ」
「はい何です?」
「前言ってたクランっての設立したいんだがいいか?」
「あら? 早かったわね」
「ああ、人数は集めるからよ。今日は……ダメそうだから明日いいか?」
「ええ、勿論」
よし! そうだよ、クランだ!
「ゲルオ、クランを立ち上げますの?」
「ああ、これで問題もきっと解決すんぞ!」
「おおおう! 流石はゲルオ様デシ!」
「はっはっは! だろ!」
これならば被害は最小限にお金を稼げるはずだ!!
「カタカタ」
「で、何が解決するんデシか?」
「はっはっはぁ……」
――――
――
「よし、皆来たみたいだな」
クランを設立することにした俺はさっそく知り合いに片っ端から声をかけてポミアン邸に来てもらった。
「おうゲルオ、呼ばれはしたがよぉ一体何の用なんだ?」
「うちは夕飯ゴチになるって話で来たんやけど?」
「うん? 僕は今度一緒にクエストに行く為の打ち合わせと聞いたんだが」
「ゲルオ、ちゃんと言わなかったの?」
「まあな」
いきなりクラン作っから家に来てくれなんて言ってもコイツ等きっと来ないからな。核心に触れる部分は隠しておびき寄せるのが一番いいんだよ。
「とにかく先ずは食事でもしようぜ。初対面の奴もいるだろうしな」
「ゲルオ、ごちそうになりましゅ!」
「おう、くえくえ」
因みに今日呼んだメンツはガッキとボン、ヴォルの時に一緒したモヒカン率いる「ミックス」あとは……
「ここでいいのかな……」
「お、お邪魔しますにゃ」
「……ども」
「お、来たきたっ!」
いまだに帰らずに此処で活動していた「蒼の絆」だ。
「あ、ああああ! そ、ソウタ!!」
「なっ!? リ、リリアなのか? お前どうしてここに?」
「どうしてって……いやいや、それよりなんで私も――」
うんうん、こうして感動の再開も出来たようでエルフも良かったな。
てかこの一か月合わなかったってのも凄いが……
「このクソ野郎! 命の恩人だってのに何か月も放置しやがってぇえ!!」
「い、いや、そのだな……お、おれだっていろいろ……」
「しかも何よそのミィとの距離感は!」
「にゃ、にゃあ」
「……っは! あんたたちまさか!!」
「ち、違うんだ! これは!!」
うん、良かったよねきっと……
クイクイ
「ん?」
「……よろ」
「あ、ああ」
このチビッ子ドワーフはやけにフレンドリーな気がすんだが……気のせいか?
さて、あとはいい感じの空気になったら話を切り出すかね。
――――
――
「で、ゲルオさん。そろそろ本題に入んないとマズくないですかぁ」
「あ、ああ。わかってはいるんだけど」
最初の一歩って踏み出せないもんじゃん?
「ほら! 貴方が自発的に考案したのだから頑張りなさい」
「お、おう。そうだな」
ってその言い方じゃいつも自分で何もしてないみたいじゃねぇか。
「うっ、ううん!」
「どしマシたゲルオ様? 咳でしか?」
「ちげえよ! ああ、えっとな……みんなちょっといいか」
そう俺が言うものの――
「へぇえ、リリアはこっちのブランドかぁ。僕はやっぱ……」
「ボンさんいいセンスしてますね!」
「もっとちゃんとたべなきゃだめでしゅよ!」
「が、ガッキちゃん、ボクはスライム何でそんなに食べなくても……」
「おお、良い剣だなそりゃあ」
「わかるか? これはルリ特性でな……」
「……はい」
「あ、ありがとう」
「……うん」
「あ、あはは」
「せやからここらで一発キメなあかんで!」
「にゃ、そうなのかなぁ」
――うん、見事にみんな盛り上がっていて聞いてないね。
「はぁ、仕方ないわね。本田?」
「はいはいなんです?」
「得意でしょ、雰囲気ぶち壊すの」
「ええーそんな事ないですよ?」
「自覚してないからなおたちが悪いんだろうな」
「にっひひ! ではボクが何とかしマシか!」
「やめろ。大惨事になる」
「アい……」
さて、困ったなどうするか。みんなが仲良くなっているのは良いんだがなぁ……
「カタ」
「お、何だアロマ」
「カタカタ!」
「お、おう」
どうやら任せてくれと言ってるようだな。
「カタ」
するとアロマは片足を上げて――
ドォオオン!!
「のわっ!」
「きゃっ」
家が揺れるほどの踏み抜きをしてみせた。
「お、おお! 何だ一体!!」
「あ、アロマさんですかね?」
「び、びっくりしたにゃ」
その音には流石にみんなも驚いたようで、こちらに一斉に注目が集まった。
「カタカタ」
ぺこり
「おう、流石はアロマだ」
アロマは一礼し一歩下がる。自然と俺が注目の的となった。
「あ、ああっと、えとだな……く、くら……」
く、なんだかメッチャ緊張するんですけど!
「おう、なんだゲルオ? くら?」
「あ、ああ! その、今日皆に集まって貰ったのはだな。しょ、食事だけでなくなてな。よかったらその……あれだアレ、アレを作ろうとだな……」
やばいやばい、テンパって来た!
「ゲルオはん、ゆっくりでええから大丈夫やで」
「がんばれゲルオ、僕の相棒なんだからなお前は」
「ゲルオ! がんばでしゅ!」
う、うう、ありがとう。
「え、何なんですコレ?」
「がんばれ! がんばれ!」
「ポミアンさん?」
よし、深呼吸してっと――
「――はぁ、此処にいる俺達でクランを設立したいんだが……どうかな?」
『…………』
う、うう。ち、沈黙が辛い……
「あ、いややっぱいまの――」
「いいんじゃねえか! なあ皆!!」
「も、モヒカン……」
モヒカンはこっちをみてニヤッとする。
「そやね、うちは賛成やな。ゲルオはんとは気ぃが合いそうやしな」
「ぼ、僕もいいとお、思います! ゲルオさんは変な目で僕たちを見ませんし……」
おおう! キララにブンタ!
「ふん、ゲルオは僕の相棒だ。嫌だといっても付いてくさ」
ボン、うれしいこと言ってくれるぜ!
最近は出番がなくてホントにごめんな?
「ガッキはらいねんからならだいじょうぶでしゅよ! でも、おてつだいはしましゅね!!」
おっと、まだ年が足らなかったのか……
「ボクは農協ギルドですけど、入ってもいいですか?」
「勿論だミズモ! 大歓迎です!!」
「はい!」
くぅう! かわいいなミズモ!!
後は……
「……ふん、悪いが俺達は――」
「いいよ」
「――て、ルリ!?」
「ソタ、いいと思う。ルリたちでだけ、限界来てた」
「だ、だけどな?」
ん? なんかソウタの奴チラチラとだれを見て……
「別に? 気にしないわよ私は、ええ、これっぽっちも気にしてないわよソウタさん」
「あ、ああ……くぅ」
「にゃ、にゃはは……」
うわぁ、見てるこっちも胃が痛くなる光景だなぁ
「いいのかチビッ子」
「うん、問題なし。あとルリって名前」
「ああ、じゃあ宜しくなルリ」
「うん!」
お、おおう。意外と可愛いじゃねえかよ……
なんか自然と口角が上がっちまったぜ。
「うわぁロリコンですね」
「ええ、ワタクシ達に興味をあまり示さないと思ったら……」
「……子供に変換しようかな」
おい、小っちゃい子ってのは可愛いもんだろ? 仕方ねえだろ?
あとヴォルはそんなシリアスな声出すなよ。
こええよ……こわい。
「えっと、それじゃあここにいる皆でって事でいいか?」
「おう!」 「はいはーい!」 「勿論ですわ」 「無論だ」 「は、はいです!」
「もちでしゅ」 「はい!」 「いいんじゃない」 「あ、ああ」 「にゃん」
「……ふむ」 「ええで!」 「にっひっひ!」
おおう、一斉に応えられると誰が誰だか……
クイクイ
「ん?」
「カタカタ!」
「……あ、ああ! 全員一致だな!」
よしよし! なんかワクワクしてきたぜ!
「んで、先ずは明日にでも届出なんか?」
「ああ、それも大事だがなモヒカン。もっと大事なことを決めなきゃならん」
「んん? なんですかぁ?」
「先ずはだな……」
「そんな溜める事でもないんやないか?」
う、いいだろ最初ぐらい雰囲気作っても!
「名前だ! 俺達のクランの名前を決めんぞ!!」
さて、いい案が出ることを期待するぜ!




