42話 元魔王、浮かれるも沈む
ヴォルによる騒動も落ち着いて来た頃、俺達は報酬を貰うためにギルドへ向かっていた。
「ふっふっふ、報酬きっとエゴイことになるだろうな」
「ええ、ラピットベアクマァの討伐にヴォルの鎮圧、一応最後にいた変な子供を抑えたりとワタクシ達ってヤバいくらい活躍しましたものね!」
「にっひっひ! ボクのおかげでもあるデシよね!」
いや、それ言いだすとなんか酷いマッチポンプな気がするんだが……
「カタ?」
「う、うん! ま、とにかく今回ので当分働かなくてもいい額が貰えるはずだしな!」
「そういえばゲルオ?」
「あん?」
「貴方そろそろランクも上がっていい頃なんじゃないかしら?」
「おお、そんなんもあったな」
すっかり忘れてたわ。
「そんなんって……」
「ランク? なんでしかソレ?」
「ああ、お前には関係ない事だ」
「そうでシカ」
ヴォルの奴は流石に冒険者とか関係ないだろうな。
というか、聞くとこによると魔王になるまで自我があんまはっきりしなかったらしいし、コイツの悪行って大体その頃のモンみたいなんだよなぁ……
「ま、んな事より金だ金!」
くっくっく、悔しがるカラ坊の顔が目に浮かぶぜ!
――――
――
――「闇の囁き亭」
「ああ、もう一回言ってくれ」
「えっとヴォルデマール様は魔王の地位を剝奪されました」
いや、そりゃ別にどうでも良いんだ。
コイツが魔王をリストラされなかった理由は管理上の問題だったわけだしな。
「そこじゃない」
「ええっと、ゲルオは今回の事でランクがCとなりました」
うん、まあ上がり過ぎなくてコレは納得だよ?
いきなりSランクとかなって受けれるのがハードなもんばっかとか嫌だしな。
だけどな、
「そこでもないんだ」
「もう、何なんですか? あとは今回の報酬がヴォルデマール様の損害と相殺して、借金として10万Gとなったことぐらいですよ?」
「そこだよそこ!! どう考えてもおかしいだろうが!!」
なんで俺がコイツの損害を肩代わりしてんだよっ!
「え、でもこれでもかなり抑えたんですよ?」
「いやいや、抑えたとかいう話じゃなくてな? わかるだろ」
ていうかそんなに俺に報酬払いたくないのかよ!
「……ふん、いい加減諦めろゲル兄」
「……カラ坊っ!」
「ヴォルデマールの事は任せたといってなかったか?」
「はぁ? それは、ち、ちい……んん!?」
え、なに? 言えないんだけど!?
「ふふ」
あっ! まさか!?
「くそ! アメリアの能力!」
おいおい、能力まだ持続してんのかよ!?
「はっはっは! そうだゲル兄ぃ! いわば今のアンタはヴォルデマールの連帯保証人みたいなもんなんだよ!」
な、なんだってぇええっ!?
「だ、だとしてもだ! ヴォルの借金だろうが!」
「そのヴォルデマールに支払い能力がないんだ。そうなれば必然、ゲル兄に向けられるに決まってるだろう」
「ヴォルの私財は! なぁお前お金とか持ってないのか?」
「お金? ええっと……んん??」
ああ、ダメだなコレ。
「あ、そうだ変換で……」
「ゲル兄、流石にそれは真っ黒だからな?」
ですよねぇ……
「それでもだ、被害総額はプラチナ硬貨並みだったんだぞ? それが10万Gまで減ったんだ、かなりうちも無茶したんだからな?」
「うう、そう言われてもなぁ」
「……まあ、流石に悪いとは思ってるさ。でも中央のギルドには示しみたいのを見せなきゃならん。スグに返せとはいわんからこれで勘弁してくれ」
「う、ううう」
「ゲルオ」
「ぽ、ポミアン」
「ワタクシの分は貰えたのですし、其処から貴方たちの生活費は出してあげるわ」
う、うう、そういってもらえると有り難いんだが。
「だったら借金も払ってくれよ! 10万Gポンッとさ!」
「そうしたら貴方働かないじゃない」
「うっ!?」
ポミアン、それが目的か!
ちくせう! こんな世の中おかしいよ!
「くそ、正常なのは俺だけか……」
「いきなりどうしたの?」
「何でもねえよ」
「それにアメリア殿もヴォルデマールの事で無茶したみたいでな。それらもろもろも含めてだ、分かってもらえないか?」
そういってカラ坊は柄にもなく俺に頭を下げた。
「……はあ、そういうのはズルいだろ」
「……すまん」
しかたねえか、まぁヴォルが何のお咎めなしってのはないとは思ってはいたがよ。
「げ、ゲルオ様」
「あん?」
「ご、ごめんなさいデシ……」
「……たく、いいよ謝んな」
「で、でもっ!」
「お前はもう我が配下だ。それに……」
「それに?」
「ああ、何でもねぇよ」
ああもう! 金よりこいつを仲間にした方がいいなんて恥ずかしいわ!
「まあ、特別に今回はスキルポイントを倍にしといたからな」
なに!?
「そんなことできるのか!?」
「正確にはギルドポイントだ。これはステータスの強化も出来るギルド発行のポイントでな? こういった特別な場合にのみ許されたポイントなんだぞ?」
「へえぇ」
そうなの……てっ!
「ステータスもできんのか!」
「あ、ああ。ただし――」
「よしっ! 早速見せてくれ!」
「あ、はい」
漸く、ようやくこれで低いステータスともおさらばだぜ!
元魔王の癖に敏捷以外D以下だからなぁ俺。耐久なんかまさかのFだし……
改めて見ると貧弱すぎるだろ俺……
「ではこちらになりますね。現在のゲルオは1万2千ポイントあります」
「おおう」
それって凄いあるのか?
基準がわからん。
「で、こちらワンランクあげるのに必要なポイントです」
「ふむふむ……」
え? なにこれ?
「おい、1万ポイントって書かれている気が済んだけど……」
おかしいなぁ見間違いかなぁ?
「そうですよ」
「……ウソでしょ?」
「ホントです」
「……」
こんなんじゃ焼け石に水だろ……
「まあ、本来は成長や修行で上がるようなモノですから。こんなポイントだけで上げるとしたらそれ相応の対価が必要に決まっているでしょ?」
「あ、うん……そうだよね」
けど俺千年も生きてるのにこのステータス何だよね。
あと何年生きたら成長期来るんですかねぇ……
「で、どうします?」
「……スキルでお願いします」
「はい!」
まあ、世の中そんな甘くないってことかな?
でも激辛なのは何とかしてほしいわ……
「んじゃ、えっとこれと、おっ! コレもいいなぁ……」
俺は数少ない取得できるものから役立ちそうなのだけ粗方手に入れることにした。
――――
――
「では、これで全部ですね」
「おう」
「……まあ、別にいいんですけどね」
「なんだよロッテ」
その何考えてんのって顔で人を見るのやめろよ。
「見事に戦闘に役立たなそうな死にスキルばっかりだなぁと」
「はん! 攻撃スキルなんかあったら戦闘に参加しなきゃならんだろうが」
だったら普段の生活に役立つもんを取得した方がいいに決まってる!
大体な、俺の貧弱なステータスで戦闘スキルなんて持っててもマジ意味ないんだわ。
「そうですか……ていうか風呂洗いとかスキルであったんですね」
ああ、それは見た瞬間これだと思ったな。
露天風呂めっちゃ大変なんだよ……洗うの……
「まあ、いいでしょう。ゲルオらしいですし」
「だろ! ああ、あとコイツを登録してくれ」
「アい?」
「ええっと、ヴォルデマール様をですか?」
「ああ、一応俺が面倒見ることになってるからな。そうなると一緒に行くことにもなるだろうしな」
それに目を離した隙に勝手な事されるのも怖いしな。
街に帰ってきたら「肉の街に変換しちゃいマシでし!」なんて事になったら責任感で圧死するぞ俺。
「げ、ゲルオしゃまぁあ!」
「うわっ! 寄るな! 抱き着くな!!」
「カタカタっ!」
ボクンっ!!
「にひゃ!? アロマっちやめて下さいデシよぉお!」
うわぁ今人体から鳴っちゃいけない音したなぁ……
ともかく、アロマの本気の右ストレートのおかげで助かった。
――――
――
「はい、登録終了です」
「アい!」
ヴォルデマールの登録も無事に終わり後は帰るだけだな。
因みに能力はまあ、うん、あんなSばっかりってあるんだな。
世の中不公平だなぁ……
「それにしてもワタクシ達も大所帯になってきましたわね」
「あん? そうだな」
俺にアロマ、ポミアンにまあ、一応本田だろ。ボンともだしそこにヴォルが入るから最大でパーティー組んだら6人かぁ……ミズモとエルフも居れたら8人だけど。
「カタカタ!」
「ああ、一緒にクエスト行ってくれる奴も増えたよな」
最初は俺とアロマだけだったってのになぁ
まあ、すぐボンと組んだけどさ。
「ゲルオ、よかったらクランを設立してみない?」
「クラン?」
専用のパーティーじゃなくてか?
「ええ、6人を超えていればパーティーより一つ上のクランってのを設立できるわ」
「パーティーと何が違うんだ?」
「そうね、パーティーがちょっとした集まりでクランは組織ね。異世界人なんかには同好会と部活みたいなものっていえばわかってくれるんだけど」
どうこうかい? ぶかつ?
「うーん? 旨みとかあるのか?」
「そこなのね。一応ギルドの方から少し活動資金なんかの支援もあるわ」
「おお!」
「まあ、急がせることでもないから考えといて」
「ああ、わかった」
ふむ、クランかぁ……ちょっと考えてみるかね?
ただ今後はヴォルの作った借金の返済をとっとと済ませて、お金の心配を消すことが優先かなぁ
「アい? なんでしか」
「ヴォル、扱き使ってやるから覚悟しろよ!」
「にひ! それは光栄デシネ!」
「アロマにポミアンも頼むな?」
「カタ!」
「ええ、まあ貴方と冒険するのは悪くはないからね」
「てことでロッテ」
「はい?」
「ボロッと稼げてサクッと終わるのない?」




