40話 元魔王、厄介ごとは帰ってください
ヴォルデマールを捕え玉による無間地獄によって拘束できた俺達は、奴のしりとり変換が尽きるまでかなりの長丁場になると思っていたんだが……
「一時間持たなかったわね……」
「だな、まあ俺も一時間以上マでしりとり出来るかって言われたら無理だけど」
よく頑張った方なんじゃないか?
「……マ……マ……マ……」
「マしか喋らなくなってしまったな」
「げ、元気が無くなっちゃいましたね」
「おいゲルオ、元に戻してもらわなくていいのか?」
「あ、そうだったな。ヴォルデマール」
「マ……マ……マ……」
「おい! ヴォルデマール!」
「にひゃ!? な、何デシか? あ、ゲルオ様だぁ」
大丈夫かよコイツ?
「俺を元に戻せ! 直ぐ戻せ! 今すぐ戻せ!」
正直自分の体じゃないみたいで気持ち悪いのだ。なんか肩は重いし背が縮んだせいか袖とかダボってるし、なのにお尻周りはキツクて兎に角なんか落ち着かないのだ。
あと、喋る度に声が高くて一瞬誰だよお前ってなるしな。
「にひひ、戻すなんてもったいないデシよ? 最初は戸惑いマシけどそのうち慣れマシから是非そのままデいてほしいデシよぉ」
「一生その玉の中でもいいのか? ああん?」
「にゃあ!? そ、それは勘弁してほしいでしぃ……」
「大体ヴォルデマール、貴方は何しに此処へやって来たの?」
「え、えと、誰でしか君は?」
「うう、ワタクシはポミアンといいますわ」
「ポミアンでしか。いったらここから出してくれマシか?」
「え、そのぉ」
おいおい、悩むなよ。
「はあ、考えてやる」
「ホントでしかゲルオ様!」
「ああ」
「げ、ゲルオ殿!? そんな簡単に!」
アメリアが俺に突っかかって来るが、
「大丈夫だって。また同じようにすりゃいいだけなんだからな」
「そうはいうがな」
「それに、あくまで考えてやるだけだ」
「あ、そうか、そういう事か」
「そゆこと」
出してやるとは言ってない。
「んん? 何デシかコソコソと?」
「気にすんな、今日の献立について話してただけだ」
「そうでしカ、えと、それでボクが此処に来た理由でシヨね」
「ええ、聞かせて貰えて?」
「アい――」
――ボクはデシネ、ずぅとここ百年間は魔王神のとこに居たデシネ。でも自由に外には出させてもらえなかっタデシ。けど最近ボクのとこに勇者が沢山やってきたデシよ。彼らはボクにしりとりを教えてくれたデシ、そしたら簡単に外に出れたデシネ! ボクはそこでゲルオ様が魔王でなくなってしまった事を聞いたデシよ。心配でゲルオ様のとこへ行くことにしたデシネ! 早速行こうとしたボクは彼らにゲルオ様の城が近々ギルドの奴らが壊すと聞いたデシ。彼らがそれはとても困るから城に行ってギルドの者を処分してくれないかとお願いしてきたデシ。ボクは快くオッケーして此処にきたデシネ! えらいボクは彼らが去った後にちゃんと置手紙を書いて此処にキタでシヨ。
――まあ、こんなとこでシネ」
なるほど、つまりコイツは俺の為に来たわけか。
「て、ちょっと待て。ギルドは此処を壊そうとはしてないぞ?」
「アい? そなんデシか?」
「だよなアメリア?」
「ああ、それは魔王神直属の仕事だ。大体こんな辺鄙なとこのせいか計画が立てられただけだしな。当分はこのままなはずだぞ」
悪かったな辺鄙なとこで!
「でもでも、ボクを街へ帰るように言ったのはコノあと壊すからじゃないでしか? ゲルオ様が此処に来たのも最後に残った物を取りに来たのかと思ったのデシけど……」
あら? なんか凄い勘違いをお互いしていたって事か?
「なあ、周りに変換魔獣を放ったのってもしかして……」
「アい! そんなことになったら壊すドコじゃないでシからね。それにゲルオ様のお部屋もその期間入り浸れマシから、デヘヘ」
くそ、もっと早く来ていれば俺のベットちゃんがこいつに寝取られることもなかったのに……
「ふむ、ヴォルデマール殿いいか?」
「君は誰デシ?」
「アメリアだ」
「アメリアでシか。何デシか?」
「貴女は彼等というか勇者達に言われて此処に来たといったな?」
「アい、そうデシけどそれが?」
「おかしいな」
「どうしたんだアメリア?」
「いやぁおかしいぜこれは」
「そ、そうですね」
ん? どゆこと?
「ゲルオ、ヴォルデマールがいたとこは魔王神城の近くなのよ。そんなとこに冒険者ならともかく、勇者がいるなんてどう考えたっておかしいでしょ」
「あ、確かにそうだな」
「そ、そうでしネ!? ボクも今気づきましたデシ!」
うん? ていう事はだ。
「おいおい、まさか利用されたって事か」
「そう考えるのが妥当だろう」
うわぁまずいな、これってあれだろ?
誰かの陰謀だの何だのに巻き込まれていくケースだろ?
そういうの勘弁してほしいんだけど……
「なぁアメリア、コイツってこの後どうなんだ?」
どうにも話で聞いてたような凶悪な奴とは思えないんだよなぁ
「今回の事で更にきつくなるだろな。最悪は魔王神が直々に封印処理してしまうだろう」
「封印処理?」
「ああ、文字通りの意味だ。封印された後に、もう誰も近づけぬように処理されてしまうんだ。こいつにとっては死に近いかもな……」
そうか……
「どっちにしろゲルオ様に会えたのは良かったデシけどね! にっひっひ!」
そうヴォルデマールは自分の現状がいまいち理解していないのか、俺に花が咲いたような笑顔を向けやがった。やめろよ、そういうのは俺に効くんだ。
「……」
「どしマシた、ゲルオ様?」
「なあ、悪いがホントにお前が誰かわかんねぇんだ。なんでお前はそんなに俺の事をそのぉ……慕ってるんだ?」
俺の事を様付で呼ぶ奴なんざたしか……
うん、魔王だった時でもアロマぐらいだったはずだ。
……あれ? アロマって喋れたっけか?
「ゲルオ様、この服に見覚えないデシか?」
「ふく?」
ヴォルデマールの服を改めて見てみる、緑や赤で彩られたものだ。
「これ、実はフードついてるデシネ」
そういってヴォルデマールはフードを被るが……
「あら? それって……」
「あ、ああ」
「カタ?」
そのフードはネコミミみたいのが付いていて、この前アロマが買った民族衣装に似ていた。というか、そのもの自体な気がする。
つまりそれは……
「おまえ、この城の……」
「はい、このゲリオン城にむかーし昔に住んで居た人間でシヨ」
「?? どういう事だ?」
「あ、いやこの城はだな? 元々――」
「ああー!! ヴォルデマールさん捕まっちゃってますよぉお!!」
「予定が狂うな」
話そうとした矢先にそんな声が突然うしろから聞こえてきた。
「あ! ゲルオ様、あいつらがボクをギルドの奴を処分してほしいといった人でシヨ」
そこには十人ほどの女を侍らせた男の子がやれやれとかぶりを振って立っていた。
「な、なぜお前が……」
なんかアメリアが凄く嫌そうな顔してんな。
「ゲルオ、あいつはぁ向こうじゃかなり有名な奴だ」
「知っているのかラィデン!」
「誰だよ! 俺はゲンタだっての!」
すまん、大魔王様が教えてくれた一度は声に出したいセリフだったもんでな。
「で誰なんだモヒカン」
「まあ、それならいいか」
モヒカン好きなんだねやっぱ。
「あいつは若干6歳でSSランクになったガキでな。まあ、とにかくすげぇ奴なんだよ」
「へぇ」
おい、流石に情報量が少な過ぎるだろソレ。
俺は隣のブンタに目配せする。
「あ、えとですね。名前は『アーク=ドラクニア』ですね。天才といわれてあらゆる魔法と武術を使いこなすそうですよ。今は確か8歳になったのかな? でも妙に大人っぽくて不思議な感じがする人ですね」
「なるほど」
つまり生意気なガキってことか。
「アーク、何故お前が此処に?」
「アメリア……予定ではアンタは既にヴォルデマールに倒されているはずだったんだ。ミックスという不穏分子も一緒に排除できる話だったんだがな……」
「っ!? どういう事だアーク!」
「はぁあ、こういう事だよ」
いうとガキが凄いスピードでアメリアに接近してきた!
「っ!?」
そこからガキンっとか鳴らしながら剣で打ち合い始める。
「え! 敵? 敵って事?」
「あれを見て仲間とは言えないでしょ」
うええ、もう勘弁してほしいんだけど……
「アメリア、お前ではオレには勝てない」
「く、ふざけるな!」
何かヒートアップしてるところ悪いんだが……
「ポミアン」
「なに?」
「取り敢えず面倒だからあいつら全員黙らせてもらえる?」
「ええ、蒐集」
「っ!? ち、力が……」
「わわ、力がぬけ……」
こうしていきなり現れた闖入者をポミアンの能力で無理やり黙らせるのだった。
「やっぱお前チートだわ」
「あら? えっと転移陣が描ける人連れて来たんやけど……なにこれ?」
――――
――
結局その後は転移陣を描いて貰い、全員でギルドへ帰還した。
「ゲルオ殿、ちょっといいか?」
「ん、なんだ」
「彼らは置いて行って良かったのだろうか」
「もち」
「そ、そうか……」
だってあんな厄介ごとの塊みたいなの関わってられないっての。
俺はそんな事にヒマを使いたくないんだよ!
「ううう、帰りたくないデシぃよ。せっかくゲルオ様に会えたのにぃ」
「……」
この後はこのギルドから魔王神城へ直接転移させるらしい。
「では、ゲルオ殿。今回は非常に助かった! 本当に感謝している」
「うぅうう、げ、ゲル、ゲルオさまぁ」
はあ、仕方ねえな。
「なあアメリア、その前に俺を元に戻してほしいんだが」
「あ、そうだったな」
「ヴォルデマール」
「……アい」
「ちょっと玉越しでいいから俺の近くに来い」
「??」
「……ええ! 元に戻しても反動で女にまたなるだって!」
「え、え?」
「じゃあ男のままにいるにはお前がいないと困るな!」
チラ
「ああ、こーんな頑張ったのになぁあ……なんとかならないかなぁ」
チラ
「え、えとゲルオ様?」
(だまってろ)
(あ、アい)
「俺とポミアンがいればヴォルデマールは簡単に捕まえられるんだけどなぁ」
チラ
だめかな?
「ふふ、わかったよゲルオ殿」
おお?
「貴殿がいなければ今回はまったく違う悲惨な結果になっていただろう。だから、特別だ。特別にヴォルデマールは任す」
「あ、ああ!」
「返事をしたな?」
「え?」
あ、そういえばコイツの能力って……
「では、私だけ帰還させてもらおう。またなゲルオ殿」
「あ、ちょっとアメリア!」
「ふふ、これは『強制』だからな?」
そう言い残してアメリアは消えてしまった。
「んじゃ、俺らも行くか」
「モヒカン、向こうに行くのか?」
「いや、またしばらくは此処を拠点で活動する」
「げ、ゲンタさんがこっちのがゲルオさんが居ておもし――」
「わぁあああ!!」
「うお!? なんだよ急に?」
「う、うん! ともかくだ、まだいるからよ。縁があったらなんだ……そのだな、ああ……」
なんだよ、モヒカンマッチョがいじいじしてもキモイんだけど。
「また、クエスト受けましょかって事やな!」
「キララ……ああ!」
「じゃあな」
「さよならです」
「またなぁあ!」
「ふむ、じゃあワタクシ達も帰りましょうか」
「カタ」
「ああ」
考えてみれば二日連続でマジしんどかったなぁ
「あ、あのゲルオ様!」
「あん?」
「ど、どうして……ボクを」
「ま、一応俺の城に住んでたやつだからな」
昔話過ぎてもう話すような事でもないけどよ。
「世話になったからなぁ」
「あ、ああ……」
「そのかわしだ! ちゃんと俺の言う事聞けよ!」
「あ、アいっ! このヴォルデマールは一生ゲルオ様について行くデシ!」
「ちゃんと躾けるのよゲルオ?」
「任しとけって!」
という訳でヴォルデマールを捕え玉から出してやってと。
「じゃあ、最初の命令だ」
「アい!」
「いい加減に俺を元に戻せ!!」
「あ、それはデキないデシ」
「……」
「……」
「カタ?」
「アロマ」
「カタ!」
「ぐわわ! 何するデシか骨!」
「ポミアン」
「ええ」
ドサァア!
「んひゃぁああ! もう捕え玉はやめて下さいデシ!!」
「じゃあ戻せやおらぁあ!」
だんだん女の体がいいと思って来て不安なんだよ!
だから早く頼むから戻してくださいお願いします!
「はあ、また一段とうるさくなりそうね」
「カタカタ」




