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4話 元魔王、現在ホームレス


「なっ! ここはどこだぁあ!!」


ビクッ!


 どっかの誰かの大声で、せっかく眠っていたのに目が覚めてしまった。


「たくっ! 誰だよこんな時間に大声で……って……どこだここはぁああ!!」


 なんで芝生なんかで俺は寝てるんだ!? いつものベットは? あのフカフカで一日中ごろごろしていたくなる俺の自慢のベットは!


ポンポン


 ん? 誰かに肩を叩かれてる?


「カタカタ」


「あ、アロマ……ああ、そうか」


 そうだった、俺、おれ……


「魔王、首になってホームレスになったんだった……」


――――

――


「おい、あんたも何かにやられたのか?」


「あ、ああまあそんなもんさ」


 すっかり目が覚めてしまった俺は、近くで大声出してた昼間のゴミと何故か語り合っていた。


「お互い災難だったみたいだな。俺もこんな見た目のせいでいつもゴミを見る様な目で見られてな……今日もなんだかイライラしてて昼間にどっか行こうとしたんだが、そっから記憶がねえんだよ」


 まあ、あんた如何にも悪人面ででっぷりしてて臭そうで禿げてるもんな。


「仕事はなにしてんだ?」


「っ!!」


「あ、すまん。失言だったな」


「いや、いいってことよ。あんたも似たようなもんだろ?」


「な、なぜそれを!?」


「こんな公園で一夜を明かそうなんざ、家がねえって事じゃねえか。俺でさえ家ぐらいはあるってのに兄ちゃんみたいな若そうなのがこれじゃあ、世知辛いじゃねぇかよ」


「おっさん……」


 俺絶対お前より年上なんだが……


「良かったら俺の家にくるかい?」


「あ、いやいいさ。一応連れもいるんでな」


「連れって……ああ、そこの骸骨の嬢ちゃんか」


「それに、芝生もいいもんだ。ゴミも落ちて無くて寝心地も良かったしな」


「そうかい……」


 というか絶対コイツの家になんざ行きたくない。


 まあけど、


「あんただって、ゴミなんかじゃないさ」


「ああん?」


「ほれ、今日は公園には何処にもゴミが無いんだよ。なんてったってゴミ掃除を全部終わらしていたのを俺は知っているからな」


「そうかよ」


「だからここに寝っ転がっていたおっさんはゴミじゃなかったってことじゃねえか」


「……へへ、ありがとよ」


 意外と悪い奴じゃなかったみたいだな。いや、蹴られたのは忘れんがな!


 さて、おっさんも帰ったことだし頑張って寝ますかね。


「カタカタったよ」


「ん? なんか……」


「カタカタ?」


 なんかアロマがいつもと……まあいいか、寝よ。


――――

――



ザー

 ザー


「はぁあ、最悪の目覚めだ。」


 まさか朝から雨になるとはな、俺のスマートな黒一色のスーツがビショビショだぜ。


「カタカタ」


「とりあえずギルド行くか」


「カタ」


――「闇の囁き亭」


 うーむ、雨だとゆうのに朝っぱらから此処は賑やかだな。


ドンっ


「おい! 貴様またんか!」


 皆さん勤勉な事で、雨の日なんて休みゃあいいのにな?


「おい! 聞こえてないのか!」


 今日はもっとマシなクエストないかなぁ、飴一個と幼女の好感度だけじゃ生きてけないんだが、


「きさまぁあ! 無視をするんじゃない!」


 アロマはその点いいよな、飲まず食わずで生きていけるしって――


「アロマ! お前昨日の飴もってないか? お前食わないよな?」


ブンブン


「な!? いいじゃないか飴ぐらい、なあ俺にくれよ?」


「くそ! 貴様ホントにいい加減にしろよ!!」


 ちっ! なんだよさっきからうるせぇな、いない者と扱えば諦めてくれると思ったが、


「うるさいぞ!! 俺は今アロマに飴を強請っているところなんだ! それとも貴様が俺に何か恵んでくれるとでもいうのか!」


「な、ななな、なんだ貴様! 僕は貴様のせいでなあ!!」


 ああもう、貴様貴様うるさいな、何回貴様いうんだよこいつ。


「はいはい、なんか知らないけどごめんなさい」


 そう言っている間に昨日の受付嬢の所に辿り着いた。


「なあ、仕事くれ」


「はい、ゲルオ様ですね。後ろの方は連れですか?」


「ち、違う! というかお願いだからそろそろ話を聞いてくれ。目すら合わせて貰えないなんて流石に泣きたくなって来たぞ」


 あら? なんか随分と弱気になってきちゃったねこの子。


「ゲルオ様? 昨日に引き続き今日もなんかやらかしたんですか?」


「何もしてないぞ、勝手に言い掛かってきただけだ」


 おかげでアロマから飴もらえなかったしな。


「ああ、ゲルオ様は存在自体が……いえ、失礼しました」


 もう十分失礼だよ!


「カタカタ」


「む、ああ、ありがとう骨のメイド。主人に代わって聞いてくれるのだな?」


 アロマめ、余計な事を


「見てくれればわかると思うが、こいつの濡れた服で僕のこの12万Gもする上着が濡れてしまったんだ!」


 ちくせう、マジでどうでもいい話じゃねえかよ!


「ふざけんなよテメェ! こっちは明日も生きてけるかわからん状態だってのに服が濡れたぐらいで騒ぎやがって! そんなもん明日になりゃ乾くだろうがよ!!」


「ゲルオ様、昨日と違ってヒョロそうな相手だから随分と強気ですね」


「そ、そうだったのか。確かにさっきは飴程度で必死ではあったが……」


「カタカタ」


「はん! 貴族の坊ちゃんか何かだろうが貴様に俺の苦労なんざわからんだろうな! いいか、俺は地位も名誉も金も失ってんだ! マジ濡れたぐらいでふざけんじゃねえぞ!」


「うう、なんだか僕が凄く悪い事したみたいじゃないか」


「ふん! ちょっとでも悪いと思ったなら……そうだな」


「カタ?」


「受付嬢さん」


「はい」


「こいつは今日の俺の連れだ。こいつに合ったクエストを紹介してくれ」


「なに!」


「まあ、俺があんたの手伝いして、それでこの問題はチャラだ。いいな?」


「……ふん! いいだろう! これも何かの縁だと思って貴様に手伝わせてやろう」


「……いいんですね?」


「ああ、構わん」


 ……よっしゃあああ!! まともなクエストだ! 報酬が飴なんかじゃないぞ!!


 こいつがバカで良かったぜ! まあ、見るからに弱そうだしな、ランクもDとか、まあCでもなんとかなるだろうな。


「ではボン様の本日のクエストはSランク『巨獣の魔窟』でのベヘモット討伐ですね」


「ふふ、ベヘモットか。今日は僕の真価が問われるな」


「へ?」


 あれ? いまなんて?


「ゲルオ様、ご冥福を」


「っ!?」


「カタカタ」




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