37話 元魔王、ヤバいのと目が合う
「おっしゃあああ! 行くぜアロマ!」
「カタカタッ!」
「なぁゲルオ殿?」
「なんだ」
さぁこれからヴォルデマールを城から追い出してやる! と最後尾で意気込んでいたらアメリアが話しかけてきた。
「貴殿にできれば城の構造を教えて頂きたいんだが……」
「あ、ああ! いいぜ」
「助かるゲルオ殿」
「そういや、モヒカンは探知系が得意だったんじゃなかったか?」
俺に聞かなくてもいいような気がすんだけど?
「ふん、俺が得意なのは精霊による索敵だ。それに、うちの奴らは城のマッピングなんざ嫌だとよ」
「うちの奴?」
「ゲ、ゲンタさんの精霊が嫌がっているんですよ。精霊って地図が苦手らしいんです」
なんだそりゃ?
地図が苦手な女子かよお前の精霊は……
「まあいいか、我が城の構造だったな」
「にしても外観からしてえろう広そうやね」
「ええ、ゲルオの癖にね」
「……我が城だがな! 目の前にある大きな扉の先は三層の迷宮になっていて、その上に居館がある造りだな。奥には塔なんかもあってそこから地下牢なんかもあるが……まあ、今回は別段行く必要もないだろう」
しかもそこ、俺ですら千年間使った事ないしね。
「お、お城に迷宮があるなんて珍しいですね」
「せやけど不便そうな城やなぁ」
ふん、俺から言わせりゃ最近の城が軟弱すぎんだよ。昔は魔王の城っていや、お前何処で暮らしてんだよ? みたいな作りばっかだったんだぞ。
この前行った魔王神城なんかどっかのテーマパークかよって思ったしな。
「ふむ、ゲルオ殿の城はかなり防衛力の高い城だな」
「お、わかるかアメリア! さっきお前らが何となく通った門へ繋がる橋も跳ね橋だし、城壁だってしっかりと迎撃機構を備えたものなんだ! しかも、塔からは対空結界を張ることだって出来る優れものなんだぜ!」
「……の割には使われた形跡が全くないわね」
「一体何を相手に考えた城何かな? だーれも来いひんかったんやろ」
「確かに、これではまるで城というよりも砦だな。其処のところはどうなんだゲルオ殿」
「あ、いや、俺も大魔王様に余ってるからやるって言われて貰った城だからな。何でこんな風な作りなのかは知らん。だが千年前はこんな城ばっかだったぞ?」
「へぇそうなんですか、勉強になりましたゲルオさん」
ブンタはいい子だなぁ
「はん、古いもんなんざとっとと壊しちまえばいいんだよ」
ゲンタはワルイ子だな!
「……カタ」
「それよりもゲルオ、迷宮内はどうなってんだ?」
「たしかひたすら迷路になっているだけだな。即死トラップどころか落とし穴すらない、まさに親切設計な迷宮だぞ」
まあ、そのぶん宝箱もないがな。
「ここまで来て三層もの迷宮の時点で心が折れそうですわね」
「確かにな、しかも一つも旨みがない」
「骨折り損のくたびれ儲けってやつやね」
「ぼ、僕もこんな事でもなければ行く気は起きませんでしたね」
「はん、どおりで千年間も勇者も冒険者もこねぇ訳だな」
ぐぎぎ、言いたい放題だなお前ら!
「あん? マジかよ」
「ど、どうしましたゲンタさん」
「精霊どもがこの先の迷宮からかなりの数のモンスターがいるって言われてな」
「あら? もう俺の城には配下も何もいない筈なんだが?」
「ど、どうやらダンジョン化しているみたいですね」
「ふむ、大方ヴォルデマールの影響だろう」
「な、なあ? やっぱりこの人数はちょっと無謀何とちゃう?」
「キララ殿、悪いが今すぐに被害が出る変換された魔獣の討伐を優先したんだ。一応それらが終われば援軍に来てくれるとは言われたが……私も元とはいえ魔王の一人、戦力的には十分だと判断している」
「せやけどこんな馬鹿みたいにながい迷宮を踏破して、そこからヴォルデマールを相手にってのはホンマにいけるんか?」
悪かったな、馬鹿みたいに長い迷宮で。
「キララ、グダグダ言ってんじゃねえ。俺らが此処で成果を出さなきゃいけねぇことを忘れたのか?」
「あ……そやったね」
「ゲ、ゲンタ……さん……」
「ふむ……」
え? 何この重い空気?
おいポミアン、チラチラこっち見んなよ?
俺に何とかしろオーラだすんじゃねぇ
「……行くぞ」
「モ、モンスターは任せて下さい!」
「それでは三層の迷宮攻略を開始する」
「ああっ! 待てまて! んなことしなくても大丈夫だ」
「ん? ゲルオどういう事?」
あ、危ねぇ、シリアスな雰囲気に呑まれて迷宮に突っ込ませるとこだった。
「まあ、こっちに来てくれ」
俺は皆を裏手の白い壁へ案内する。
「ここは?」
「ふふ、アロマ!」
「カタ!」
アロマは返事に応えると壁へと手をかざす。
ゴゴゴゴォ
「おお! 隠し扉か!?」
「ふふふ、お前らが思ったように不便極まりない城だからな」
「せやろな」
「だから居館の道へ通じるエレベーターを此処に作っておいたのさ!」
ダンジョン化していても基本の内部構造は同じはずだからな、多分使えるだろ。
『……』
あれ? なんか反応が薄いんだけど……
「ど、どうした皆?」
「ゲルオ殿、『えれべぇたぁ』とはなんだ?」
「あれ、知らないの?」
千年経っても大魔王様が提唱していたエレベーターは作られてなかったのか?
てっきり異世界人の誰かがもう作っているもんだと思ってたんだがな。
「えっとだな、エレベーターってのは――」
俺はエレベーターがどういったモノか簡単に説明をした。
「――ていう物な訳よ!」
「つまり、ゲルオ殿の伸縮で箱型の部屋を上下させるのだな」
「あ、いや別に伸縮の力が無くても出来るだろうけど……」
まあ、いいか。
「へえ、でもあれやな」
「ん、なんだキララ」
「転移陣でええんちゃう?」
「え?」
「転移陣ならスペースもとらんし、今の時代にはいらん気がするなぁ」
「え、エレベーターが……時代遅れ……だと……」
くそ、ドヤ顔したのが恥かしいんだけど!
「カタカタ」
「あ、アロマ」
どうやらアロマがエレベーターの確認をしてきてくれたらしい。
「カタ!」
グッとサムズアップを決めてくれた。
「おお! やっぱ使えるんだな!」
「カタ、カタ」
「とにかく、これでイッキに居館のとこへいくぞ!」
「ゲルオ、勢いで誤魔化そうとしているけど……イタイだけよ?」
ポミアン、わかっててもスルーしてくれよ。
「みんな乗ったか?」
「ええ」
「カタ」
「うむ」
「おお」
「は、はい」
「ええで」
うん、みんな個性があってわかり易いな。
「んじゃ、縮め」
俺は久しぶりにエレベーターを上の階にあげるのだった。
――――
――
「ちーん! 最上階に到着です」
「げ、ゲルオ、なにを言ってるの?」
いや、だってこういうもんらしいんだもんエレベーターって……
「なんか胸の辺りがキュウっとなって気持ち悪かったです」
「んん? うちは結構楽しかったで! これ、うまくやれば金儲けできる匂いが……」
「おい、大丈夫かブンタ」
「あ、はい。ごめんなさいです」
「ふん」
「ふむ、原始的だがなかなか理にかなった装置かもな」
「さいですか」
「特に人力でも可能な点はいい。ドワーフが好きそうな技術かもな」
「そんぐらいドワーフどもなら知ってると思うけどなぁ」
千年前はこぞって大魔王様に技術提供を受けてたしな。まあ、ゆうても千年の間に色々変わったのかもしれないが……
「しかし、ここは迷宮の上……居館へ続く道なのか?」
「ああ、此処から見える奥の建物が住んでたとこだな」
「ゲンタ殿、ヴォルデマールはこの先か?」
そういやすっかり居館にいると思ったけど、迷宮内にいられてたら嫌だな。
「うん? ああ、そうか……ふん、どうやら居館のほうにいるみてぇだ。ただ其処もダンジョン化されててモンスターも少ないがいやがるな」
「迷宮よりはましやろ? そう広いとこでもなさそうやしな」
しかし、はたから見ると強面のモヒカンが一人でブツブツ喋っているみたいで怖いな。
「なぁポミアン、精霊魔法ってどういうもんなんだ?」
「え、その、ワタクシもよく知らないですわね」
ほう、ポミアンでも知らんのか。
「ふん! 見えねぇ奴には説明したとこで意味ねぇよ」
あ、聞こえてたのね。
「えと、その! せ、精霊魔法はスキルじゃ習得できない凄い魔法何ですよ!」
「そ、そうなの」
何故かブンタが食い気味で答えてくれた。
「しかも! ゲンタさんの精霊魔法は門外不出といわれているエルダーエルフ族に伝わるものなんですよ!!
「へぇえ」
もしかしてモヒカンって良いとこの坊ちゃんだったりすんのかな?
「……ブンタ、喋り過ぎだ」
「あ、ご、ごご、ごめんなさい」
「まま、ええやないの。ブンタはんも良かれと思ったわけやし」
「ふん」
「な、な? ポミアン」
「何ですの? い、いきなり近づいてきて!?」
「なんか複雑そうだな、あいつら」
「ええ、みたいね」
「絶対、深く関わらない様にしような」
「あ、貴方はホントに……」
だって厄介なことを抱えてますオーラが凄いんだもん、構ってらんねぇっての!
「どうした? 行くぞ」
「カタ?」
「へーい」
先頭をズンズン行っていたアメリアとアロマが来てないことに気付いたようだ。
「さあ、此処からは戦闘にもなるからな。互いの役割を今一度だが確認しておこうか」
アメリアの言に皆頷いて返す。
「では、前衛は私とブンタだ」
「は、はい!」
「まあ、ブンタはこう見えて筋力も魔力もSSだからな。期待している」
「任せて下さい!」
おお、マジで見かけによらずだったのな!?
「ゲンタ殿には要所での精霊による加護だな、いけるか?」
「余裕だ」
んで、モヒカンは支援系と……その筋肉は飾りかな?
「アロマ殿とポミアン殿はゲルオ殿を守っていてくれ。道中でゲルオ殿に倒れられると困るからな」
「ま、任せなさい!」
「カタ」
あれ? なんか俺の扱いって戦えないゲストキャラみたいじゃないか?
「キララ殿は……」
「うちは?」
「まあ、適当で」
「ラジャ! 目ぼしいもんないかチェックだけはしとくで!」
おい、ソイツだけ目的がおかしくないですかね?
「よし、では行くぞ!」
そうアメリアが意気込んだので俺はずっと捨てられるず持っていた居館のカギを取り出す。
「じゃあアメリア、このカギで――」
「はぁあああ!!」
ズズゥンン!
「――開けて……くれたら……よかったんだけどなぁ」
「ん? どうしたゲルオ殿」
「いや、何でもないよ」
確かにダンジョン化って扉とかは適応外だけどさ、強引すぎでしょ?
「む、早速でてきたな」
ぎぃい……ぎぃ……
「うわぁ、これはキツイ」
ソイツはまるで人体で作った椅子みたい生き物だった。背もたれから歯がぎっしり生えていて、座る部分も同様に歯が並んでいる。
「こりゃあ座り心地の悪そうな椅子やなぁ」
「椅子を変換したモンスターでしょうか?」
「さあな、そもそもダンジョン化した場合のモンスターは自然発生だしな」
「来るぞ」
ぎぃいい!
化け物はアメリアに向かって跳びかかる!
「はぁああああ!!」
ぎぎっ!
だが、なんなく剣で処理してしまった。
「おお! やるなアメリア!」
「ふふん、私はどちらかというと魔王の能力より自身の技量で成り上がったものだからな。こちらの方が得意なんだ」
「ゲ、ゲルオ!?」
「ん? なんだよポミアン」
急に服を引っ張んなよな? ドキッとしちゃうじゃん!?
「ま、まだ生きてるみたいよ!?」
「あん、何がって……うおっ!?」
ぎぃ……ぎぃぃ
見ればアメリアにバラバラにされた椅子型のモンスターは体をくっつけようと動いていた。
「ふむ、この程度では死なんか……ブンタ殿、いいか?」
「は、はい! 燃えろ!」
ブンタがそういうとブシュっという音をさせて消し炭にしてしまった。
「うええ、ここまでやんなきゃ死なねぇのかよ」
「ゲンタ殿、ヴォルデマールの大体の位置はわかるか?」
「うん? えっとだな……ああ、どうやら一階の奥にそれらしいモノを捉えたみたいだな」
「玉座の間か何かかな?」
「いや、我が城にそんなもんはないぞ?」
「まあ、ゲルオに玉座とか似合わないにも程がありますものね」
ポミアン、さっきから俺にしか絡んでこないけど俺の事スキなの?
「まあ、そんな事はどうでもいいとして奥の部屋は何かわかるか?」
「えっと、ここの奥だったら確か……俺の使ってた部屋だな。だよな、アロマ?」
「カタカタ」
「そうか……しかし、ヴォルデマールは何のために此処に来たんだろうな?」
「はん、狂人だって話だからな。意味なんかあんのかね?」
「行ってみりゃあわかんじゃね? とその前に――」
ぎぃいい!
ぐへぇ、ぐへぇ
奥から次々と肉製の家具みたいのが出てきやがった。
「――はあ、我が城にこんなキモイのが量産されてるなんて」
頭が痛くなるぜ。
「ゲルオ殿、元だぞ。元貴殿の城だ」
わかってるよ!
「さあ、此処からは任せてくれ」
「ぼ、僕も頑張りますよ!」
「はん、精霊よ彼の者に……」
アメリアとブンタが殺到する化け物を薙ぎ払い、焼き尽くしていく。
「……ま、うちら此処で大人しくしてましょか」
「だな、適材適所ってあるしな」
「……貴方たち二人の適所っていったい何処なのかしらね」
そりゃ、最後尾でしょ。
そんなこんなで任せていたら、懐かしの我が部屋の前に着いた。
「ゲルオ殿、部屋の中はどうなっている?」
「フワフワで極上のベットのみだ」
あれがまた眠気を永遠に誘うんだよなぁ
「……だけなの?」
「ああ、それ以外はいらんかったからな。だいたい寝てるだけで一日終わってたし」
「さ、流石は千年も何もしてこなかった魔王ね」
「まあな!」
寝る、起きる、ぼーっとする、からの寝るって永久に出来そうだよね。
「伸縮でなく寝宿に変えたった方がしっくりきそうやなゲルオはん」
ふん、したくても既にあの時代はいたんだよ……
「それでは、扉を開ければヴォルデマールと対面だな」
アメリアが空気を換えるようにシリアスな雰囲気で言った。
「……ふん」
「き、緊張しますね」
「はあ、しかし結局ええもんは一つもなかったなぁ」
キララとかいうのは何しに来たんだよマジで?
「ゲルオ、準備は良い?」
「うん? えと、どうすんだっけ?」
「ちょっと待て……ゲンタ殿、ヴォルデマールとの距離はわかるか?」
「ああ、この先の奥の方でじっとしてんな」
「よし! ならばゲルオ殿はヴォルデマールをその位置から動かさぬように距離を調整してくれ。近づこうとすれば伸ばし、遠ざかろうとすれば縮めてくれ」
「お、ぉおお! わ、わかた」
「……大丈夫?」
ヤバい、今更になって緊張で震えが……
「カタ」
「……あ、アロマ?」
ボコン!
「いだっ!」
いきなりアロマに殴られたんですけど!?
「な、なにすんだよ!」
「カタカタ」
「う、うう、マジ痛いんですけど……」
頭がちょいとクラクラするぐらい痛い……
「ふむ、ゲルオ殿」
「な、なんだよ」
俺は今アロマに殴られたショックで――
「震えが止まったみたいだな」
「え?」
――ああ、確かにさっきまでの嫌な緊張が無くなってんな。
「アロマ、まさかこの為に?」
「カタっ!」
アロマはグッと親指を立てる。
「ふふ、流石はアロマだぜ」
ただ、もう少し威力は下げてほしかった。
俺ってほら? 耐久がまさかのFだしね……
「では、ゲルオ殿がヴォルデマールの動きを止めている間に私とポミアン殿で仕掛ける! その後いい感じに弱らせたら渡しておいた束縛機構を持つ捕え玉を投げてくれ。しかもだ、魔王神印の優れものだから効果はエゴイぞ!!」
ちょっと待て、いい感じってなんだよ?
「へへ、弱ってないうちは意味ねぇからな、おめえら気ぃつけて投げろよ?」
「ボクいつもタイミング早いんですよね……」
「うちは得意やでこれ!」
「な、なあ? いい感じっていったい――」
「よし! 行くぞ!!」
「あ、ちょとぉお!」
そして、アメリアが扉を開けたその先には――
「にひ、にひひひ! ああんもう! こでが、こでがゲルオ様の使っていらベットでしかぁああ!! はぁはぁ、たまらん! クンカクンカ! クンクンカクンカ!! 残ってる、残ってるデシよ匂いが! スッーーっ! ハァァあああぁ…………にひ、にひひひひ!! やっぱボクは天才でシね! 変換魔獣を放ったから当分はボクのことを優先しないでしね! にひひ、彼らのいう事聞いてよかったでしヨ~やべ、よだれが……」
『…………』
赤い髪の変態が俺のベットで悶えてた。
……え? 何なのコレ?
「……にひひ……ん? あ」
「あっ」
目が合っちゃったんだけど……
「……う、うう」
赤い髪の変態はベットから飛び降りると、こちらを向いてキリッとする。
「にひひい! 来たなギルドの回し者たちよ! ボクこそは序列3の魔王『変換』のヴォルデマール! えっとその……でし!!」
「……入り直すか」
「ええ、お取込み中みたいですものね」
「せやな……」
そうして静かに退室することにした。
「え、あの! ボクに合いに来たんでしよね! ねぇえ! なんで退室するんでしか!?」
ノックは大事だと思いました。




