36話 元魔王、帰る。
ああ、来てほしくない明日になってしまった。
「ゲルオ殿、ちゃんと来てくれたか!」
「来るしかなかったんだよ!」
お前のせいでな!!
「はっはっは! それは悪かったな!」
ちくせう……逃げれるもんなら逃げてたわ!
朝起きたらすでにアロマとポミアンに囲まれてたしな……
「では先ずは今回の作戦に参加してくれた者を紹介しよう」
そうアメリアが他の参加した冒険者を紹介し始めた。
「先ずはヴォルデマールの所在を突き止めてくれたAランクパーティーの『ミックス』だ」
「おう、俺はリーダーでハーフエルフのゲンタだ。こんななりだがぁ精霊魔法に長けてる、宜しくな」
なんかどっかで見た事あるようなモヒカンだなぁ
「ぼ、ぼくはハーフオークのブンタです。一応魔法も近接戦闘も得意です。よ、よろしくです」
こっちはブタさんの頭をしたオドオドした感じのやつか。こいつもなんか見た事ある気がするなぁ
「なあポミアン?」
「何ですの?」
「ハーフオークってなんだ?」
「ワタクシも初めて聞きましたわね?」
「あ、あの! 僕はオークと、その……エルフのハーフで……」
あら、聞こえてたの?
「……そうか。ハイブリットなんだなお前」
オークの力にエルフの魔力とか羨ましいな!
「ハイブリット?」
「ああっと……たしか良いとこ取りみたいな意味だよ」
たしかな? 随分前に大魔王様に教えてもらった言葉だからあやふやだけど。
「あ、その……」
「ん?」
「ふん! ブンタはブンタだ、どうでもいいだろ。それよりお前誰かと思ったらあのゲルオじゃねえか」
「えっと……ちょい待て、今思い出せそうで出ないんだよ……」
うーん、なんか俺の記憶が思い出したくないって言ってるような感じなんだよな。
「ちっ、忘れてんならどうでもいい」
「ゲンタだっけか、ごめんね?」
「ふん!」
「あはは、一応うちの紹介が終わってないんやけど?」
「うん、アンタは?」
「うちはこの『ミックス』の紅一点! 魔族と人族のハーフでキララいいます。得意なのはそやね……逃走と値切りってとこやな」
戦闘能力がないんですがどうなんですかね?
「なるほど、ワタクシ達でいうゲルオ枠ね」
「カタ」
勿論それっていい意味でだよね!? そうだよね?
違うって言われるのが怖くて聞けないけど……
「まあ、彼らは特に索敵に向いた者達だからな。だがその分仕事はキッチリとしてくれるぞ」
そうアメリアはちょいとふんぞり返りながら言った。
……うん、薄いな。
「あとはこちらからでは戦闘面で期待できる『蒼の絆』だ」
ん? 蒼の絆ってたしか……
「久しぶりだな、ゲルオ」
「あ、お前はたしかソ、ソ……」
「ソウタだ! 忘れるなよあれだけのことしといて!」
「ああ! あの時のガキだよな!」
うん、クソ生意気な奴だ。
「こっちはあれ以来忘れた事なかったってのに……」
「……ども」
「にゃはは……」
後ろにはあの時のネコ獣人とちみっこいドワーフもいた。
「彼等にはその戦闘力でヴォルデマールが変換したと思わしい魔獣たちを討伐しに行ってもらう」
「任せてくれ」
「その他にも巨人のムライやSランク冒険者のボン=トラヴァーユが既に協力して向かっている」
おお、ボン見ないと思ってたらそんなことを……
「あれ? そういえばカラ坊は?」
緊急クエストの時でも出張ってたのに見ないな?
「カラッド殿は西の森へ行っている。ゲルオ殿たちが討伐した『ラピットベアクマァ』の残党狩りとでもいえばいいかな? まあ、そんなところだ」
まだ残ってたのかよアイツら……
「てか、ヴォルデマール自身は誰が担当するんだ?」
最大戦力でいうとやっぱアメリアかポミアンってとこなのかな?
「貴殿だ」
そうアメリアは何故かこっちを向いて言う。
「ふむ、ポミアンか」
「いや、貴殿だ」
「ア、アロマかな?」
「ゲルオ殿だ」
「……」
「カタ?」
「ゲルオ? どうしましたの固まって?」
「へぇ……俺と同じ名前とかいるんだなぁ」
言っちゃなんだがゲルオってヒドイなま――
「だから、ゲルオ殿。貴殿がヴォルデマールを――」
「いやだ! 絶対嫌だ! 死にたくないもん!」
わかってたよ! だってめっちゃこっちガン見してたもん!
「嫌だって……子供かよ……」
「てめぇソウタ! そうは言うがな!! 相手は能力で簡単に人を血肉に変える様な奴なんだぞ! お前だって嫌だろそんな奴!!」
「ち、ちにく?」
「ふん、コイツに賛同するわけじゃあねぇが、アメリアさんが相手した方がいいんじゃねぇか? 強制って力を持ってるんだろ?」
おお! モヒカン良い事いうじゃねえか!
「そうだそうだ! 昨日の俺にやったみたいにさ、言葉で縛っちまえばいいじゃん!」
「……いやな、ヴォルデマールは狂っててな。会話にならんのだよ」
「へ?」
「私の力は知能の低い獣なんかには通じにくくてな、分が悪いのだ」
「ポ、ポミアンは?」
「ワタクシの蒐集で活力を集めたいのですけど……ヴォルデマールは不死者なのよ……」
「ああ、オレにやった時みたいに集めるものがないって事か?」
「ええ、そうよ」
「ポミアン殿の蒐集を最大限に活かすとしたらゲルオ殿、貴殿が一昨日にやった合わせ技が一番いいと判断した」
「え? また跳べと?」
いやいや! 今度こそ死んじゃうから!
「大丈夫だゲルオ殿」
「何がだよ」
「話を聞いた限りでは跳ぶ距離を変えたのだろう?」
「あ、ああ」
「なら相手との距離自体も伸ばせるのではないか?」
「……ああ! 確かに可能だと思うけど」
それって真正面から対峙するって事なんじゃね?
「ヴォルデマールに触れればその時点で終わりだからな。頼んだぞゲルオ殿」
「ワタクシとアロマさんが常に貴方には付いて行くから安心なさい」
「カタカタ」
「あ、ああ」
なんか突然すごいプレッシャーがのしかかって来たんだけど……
「では、『蒼の絆』は東の渓谷へ向かってくれ。先に渡した資料の通りの魔獣がいるはずだ」
「はい! じゃあなゲルオ。死ぬなよな?」
「……じゃ」
「あ、ソウタまってにゃ」
アメリアに指示され早々とソウタ達は行ってしまった。
あれ? そういえば何かコイツ等に言わないといけないことがあった気がしたけど……
まあ、思い出せないって事は大したことでもないか。
「んで、行きたくないけど俺達はどこ行くんだ?」
「私たちが向かうのは最近城主がいなくなっていて、取り壊しが決まっていた城でな……」
へぇ、そんな城が近くに……ん? 最近!?
「おい、それってもしかして!」
「ああ、勘がいいなゲルオ殿。この街の北西にある城、貴殿の所有していたものだよ」
「マジかよ」
「ああ、マジだ」
「ゲルオ……」
「俺の城取り壊し予定だったのかよ……」
「そっち!?」
「カタカタ」
――――
――
「はぁ、はぁ、着きましたわね」
「たくっ! 街から見えてるくせにこんなに回り込んでいかないといけないなんてな。ここの元魔王もその城も見ているだけでイライラするぜ!」
「ゲンタさん、大丈夫ですか?」
「ふん、大丈夫だよ」
「はは、うちも体力には自信あったんやけどこりゃしんどいわ」
「ふふん! まあ何せ千年間攻められることが無かったからな!」
流石は俺の城! いい立地にあるぜ!
「カタカタ!」
「……これで経験値もアイテムもないからな。私も始めて来たがこんな事でもなければ誰も行く気にならないだろう」
「うまみが何もないって所は流石ゲルオね」
おい、その言い方じゃ俺にイイとこないみたいじゃないか!?
まあ、それはともかくだ。
我が愛しの城『ゲリオン城』
街を見下ろせる高台に建てられていて確かに交通の便が悪い。行くまでに何度も崖に阻まれて昔は其処に魔獣がひしめき合ってたしな。考えてみればリストラされるまで数えるほどしか外に出たことがない。
「それにしても帰って来たんだな、アロマ」
「カタカタ」
あれから約二ヶ月ぐらいかぁ
「まあ、今はヴォルデマールが何故か住んで居るようだがな」
「うう、てかなんでよりにもよって俺の城にいるんだよ!」
「ゲルオ殿、元貴殿の城だ。今は取り壊し予定で魔王神に所有権があるそうだぞ」
「ワタクシの城もそうなっているのかしらね」
「いや、ゲルオ殿の城が余りにも使い勝手が悪いので、取り壊し予定として放置していたようだぞ?」
「何それ?」
だったらまだ住んでてよかっただろ!
「はん、持ってくもん持ってって用済みになったってぇとこだろうよ」
「ん? どういうことです?」
「ブンタはん、そりゃ城の金になるもん全部剥いでったってことやろ」
「……なんかそう聞くと泣きたくなって来たんだけど」
帰ってきたら自分の家がすっからかんとか、もうね?
「カタ、カタ……」
全くうれしくない帰還だな……
「じゃあ、早速行くか」
「おうよ、精霊にきいて奴の居場所もバッチシだぜ!」
「せ、戦闘になるような魔獣が出てきたときは任せて下さい!」
「なんか残った金目のモンないやろかなぁ」
「さ、行きますわよゲルオ」
「ああ」
そういって門をくぐるとアロマが前に出て振り返り、
「カタカタいませ」
ペコリ
とお辞儀をした。
「……ああ! ただいまアロマ」
「カタッ!」
……さて、元とはいえ俺の城なんだ。
出ってもらうぞヴォルデマール!




