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34話 元魔王、目先の欲に釣られる


「か、からだが、あぁあぁぁ……」


 昨日の死闘を経ての朝、俺は全身の打撲と筋肉痛に悶えていた。


「カタカタ」


「ア、アロマ……」


「カタ!」


 元気だね君。


 俺は体が重いし……いたいし、筋肉が悲鳴を上げてるんですけど?

 いいよな骨の体。筋肉とかないし打撲とかないし……


コンコン!


「ゲルオさん! 起きてます!」


「あん? 本田か?」


「カタ」


キィ


「あ、どうもですアロマさん」


 アロマが本田を部屋に入れたようだ。


「相変わらず部屋に合ってない布団ですねぇ」


「別にいいだろが」


 結構気に入ってんだよ、ベットと違ってワンアクション挟まないしな。


「で何の用?」


「ああ、さっきギルドに行ったんですよぉ」


「それがどうしたんだよ?」


「そしたらロッテさんとギルドマスターにゲルオさんを連れてきてくれって言われちゃいまして」


「はあ? 嫌だよ、見ればわかるだろ?」


「何がです?」


「昨日のクエストで体がボロボロなんだよ!」


 お前も帰って来た時の姿見てただろうが!


「でも、それは昨日の話で寝たからもう平気ですよね?」


「いやいや、筋肉痛と打撲でホントにムリだから……」


 てか、寝ただけでどんだけ回復すると思ってんだよ?

 たまに異世界人はそういう無茶振りしてくるけど、いったい何なの?


 今日は一日アロマに看護されながら寝るつもりなんだ、体を動かす気にもならん。


「そうですか……」


「カタ?」


「あ、いえ。何か特別に報酬のことで話があるって事だったんですけどね」


 んん?


「ポミアンさんもぐっすり眠っているし、困ったなぁ」


「本田、特別に何だって?」


「あ、別にもういいですよ」


「あ、いやそのだな?」


「取り敢えずこの話はなかったことにするように言っておきますから」


「ちょっとまて!」


「はい?」


「行く、行きます!」


「え、でもゲルオさん体が……」


「這ってでも行くから! そう伝えといてくれ!」


「は、はい」


 そっかそっか! 報酬な!


「そうだよ、お金の為に頑張ったんだ」


 生き残ったことに安心してすっかり忘れてたぜ!


 それに、


「ロッテの奴に文句言わないとな!」


 よし! ポミアン叩き起こしていくぞ!


「まってろ特別報酬!」


「カタカタ」


「……」


「カタ?」


「アロマ……おんぶしてくれ……」


「……カタ」



――――

――



「うう、体が痛いですわ……」


「あん? どうしたポミアン?」


「ゲルオ? お願いだから歩いて行って貰えないかしら?」


「ええ、俺も辛いんだけど……」


「ううう、昨日ワタクシあんなに頑張ったのに……酷い! ひどいですわ!」


 うう、それを言われるとなぁ


「ああ、わかったよ。アロマ?」


「カタ」


 俺はアロマから降りて代わりにポミアンを背負ってもらう。


「あ、ありがと」


「カタ」


 はあ、けど俺も辛いんだよなぁ……


 あ、そうだ!


「なあ、ポミアン? ミズモの時みたいにさ、ギルドに着いたら俺をお前の蒐集で呼んでくれねえか?」


 うん、まさにテレポートって奴だな!


「え、えと」


「無理か?」


「む、無理とかじゃなくて! ゲルオはワタクシのモノになりたいんですの!?」


「お、おおう」


 そういやそんな縛りがあったなこいつ。


「でも、ミズモは呼んだじゃないか?」


「ミズモは枠が違いますもの」


「ま、確かにそうだな」


 ミズモはマスコット枠だもんな、そこに俺を入れるのもおかしい話か。


「まあ、どうしてもというのなら――」


「オッケーわかった。んじゃ、頑張ってノロノロ行くわ」


「――かんがえ……ないから行きますわよ!」


「うお! な、なんだよ急に」


 え、なに? なんで怒ってんの?


「カタ!」


「お、おい! アロマ!?」


 なんでか俺を置いてさっさと行ってしまった……


「ひ、ひどくね?」



――「闇の囁き亭」



「ゲルオ? 遅かったわね?」


「ゲルオさん遅いですよぉ」


「お昼になっちゃいましたね」


「カタ」


「お、おまえら……な」


 ふざけんじゃねえぞ?

 そう思ったなら迎えに誰か来いよ!


 はぁ、いいかもう。


 見れば其処にはロッテの他にエルフも来ていた。

 この後に本田とエルフでクエストにでも行くのかな?


「んで、話があるんだろロッテ?」


「はい、それでは奥の部屋へどうぞ」


「ああ、んじゃな本田とエルフ」


「はーい」


「ええ」


 にしても、仲いいね君ら。


 んで、俺達はロッテに連れられこの前に説教もらった部屋と同じとこに案内された。


「SSランク冒険者ポミアン様とEランク冒険者ゲルオを連れてきました」


 あら? アロマはカウントしないんだな。


「うむ、いいぞ」


「失礼します」


 ロッテが開けると相変わらずしかめっ面なカラ坊がそこに居た。


「失礼するわ」


「ちーっす」


「カタ」


「く、ゲル兄。一応ちゃんとしてもらえないか?」


「はいよ、失礼します」


バタン


「まあ、腰を掛けてくれ」


「おう」


「ロッテ、なんか飲み物を頼む」


「はい」


「あ、俺は出来たらミルクティーで!」


「ワタクシはレモンティーでお願いしますわ!」


「……はい」


「ロッテ、俺はあのギョクロとかいうので頼む」


「……」


 ロッテは無言で出て行ってしまった。


「あれ、ちゃんと戻って来るよな?」


「た、たぶんな」


「ていうか今日はあの変に畏まった喋りじゃないのな?」


 まあ、こっちのが話しやすいけど。


「ゲル兄のしょっぱなのあれでその気が失せたわ」


「そ」


「一文字で返すなよ……」


「んん、それよりもワタクシ達を呼んだことについてなのだけど」


「あ、ああ。今回のクエストだがな? あれは何が起きた?」


「んん? 何がって普通に討伐クエストしただけだが?」


 あれ? ていうか特別報酬の話じゃないっけ?


「いやいや! 普通でいきなり地形が変わるかよ!?」


「あ、やべ……」


「んん? 地形?」


 ああ、そういやポミアンは直ぐぶっ倒れちまったもんな。


「あの一帯は確か山間の森林だったはずだぞ! それをゲル兄達がクエストで行った後、見た事もない岩山が幾つもある地形になっていたんだぞ! 普通なわけあるか!!」


 うう、確かにそうだが……


「ていうか、特別報酬の話って聞いたんだが?」


「む、ふむ……」


 さっとカラ坊の奴、目を逸らしやがった。


「おい、覚えてるぞ。そうやって目を逸らす時は嘘か疚しい事してる時だって」


「なんのことか?」


「てめぇえカラ坊! 騙しやがったな!!」


「え、え? 騙した?」


「はん! そうでも言わんと来ないだろうがお前は!!」


「ポミアンこれは罠だったんだ! こいつ等なん癖付けて今回の事、報酬も払わず茶を濁すつもりだぞ!」


「な、何ですって!」


「お、おい!? そこまでのつもりはないわ! 報酬はちゃんと払うっつの!」


「……ホントか?」


「いくらオレでも元魔王を相手にそこまで無謀な事せんぞ」


「あら? そう」


「ただ、やはり今回のソレはお前らがやったという事でいいんだな?」


「まあ、その……な?」


「ふむ」


「けどよ? 仕方なかったんだぜ?」


「んん? 仕方なかった?」


「ああ、あんなの相手にさせられたんだ。こっちが文句言いたいんだが?」


「ええ、Cランクとは思えないほどの強敵でしたわ……」


「ちょっと待て、相手は『ラピットベアクマァ』だったはずだが?」


「ああ、それだけど」


「ちょっと詳しくいいか?」


「うん?」


「失礼します」


 お、どうやらロッテが飲み物を持って来てくれたみたいだな。


「じゃあ、飲み物もきたし聞かせて貰おうか?」


「ん? ちょっと待ってくれ!」


「なんだ?」


「俺のやつミルク入ってないんだけど?」


「……じゃあ、話を聞こうか?」


「ええ、ワタクシ達が――」


 え、無視?


――――

――


「――んで、そこで俺がかっこよく跳んでだな!」


「ちょっとゲルオ! まだワタクシの活躍まで話してないのですけど!」


「ああん? まあ、それでポミアンが大体やったんだよ」


「ちょ!? なんでそんなざっくばらんに言ってしまいますの!」


「ああもうっ! 自慢したいだけのガキかお前らは!!」


「おわ!」 「きゃっ!」


「大体わかった。つまり、それだけの数のアクマァに追われたんだな?」


「ああ、そうだけど」


「……ふむ」


「なにかありますの?」


「いやな、アクマァは集まっても5匹が限度と聞いていたのでな。まさかそんなに増えていたとは……」


「異常だったってことか?」


「そうだな。取り敢えず、今はこっちでも其処を調査している」


「ふーん」


「わかり次第の報酬でもいいか? 何せ数も数だろうし、討伐報酬だけになるだろうが結構な額になるだろうしな」


「うん? 素材の方は?」


「ミンチに決まっとるから無理だな」


「あ……そっか」


 あの質量に押し潰されたんだもんな。


「ま、いいか」


「ええ、代わりに討伐報酬が貰えるのなら構わないわ」


「ふむ、そう言ってもらえれば助かる」


「んじゃ、今日はこれで解散か?」


「あ、いやちょっと聞いて欲しいことがあってな?」


「うん?」


「カタ」


「何ですの?」


「今回のことでお前たちが持つ力がかなり有用だとわかったから話すんだがな」


「あ、ああ」


 なんか嫌な予感がするなぁ


「この街に序列3の魔王『変換』のヴォルデマールが来ているらしい」


「誰?」


「ヴォルデマールですって!?」


 そうポミアンが驚いていると、


ガチャ


「カラッド殿、そこからは私から話させてもらおうか」


「あ、アメリア殿!? どうして貴方が!?」


 なんか銀髪の目つきのキツイ女が入って来た。


 ていうか、


「ロッテ、あの人まさか扉の前でずっと待ってたのかな?」


「ゲルオ、私が飲み物を持ってきたときはいなかっわ」


「ポミアンはどう思う?」


「え? ……たしかにタイミングが良すぎますわね」


「だよな!」


「ううんっ! いいかな?」


 射殺すようにギロリと睨みつけられる。


「は、はい!」


 やべえ、冗談の通じない人だ!


「ふん、私は『光の栄光亭」より来た副ギルドマスター、アメリア=クーベルタンという。今回、魔王ヴォルデマールの件についてこちらまで来た者だ。悪いが拒否権など許さずに協力してもらうぞ」


 そうふんぞり返ってまたこっちを睨んできた。

 



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