表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/73

33話 元魔王、正直無茶した。


 Cランクの害獣『ラピットベアクマァ』討伐を受けた俺達は、ロッテから渡された地図を頼りに山間部へと来たんだが――


「おい、ここってどう見ても森だよな?」


「ええ、でも地図だとこの辺りがそうみたいなのよね」


「ちょっち見せてくれ」


「ええ」


 俺はポミアンの持っていた地図を受け取ってみたが、


「西門抜けたらまっすぐ行って山が見えたらそこ……」


 まあ、あってるな。

 だが山間部ではないような気がするんだが……


「確かこのクエストはギルドからだから依頼主とかはいないのよね?」


「ああ、『ラピットベアクマァ』の素材によって決まる出来高制って奴だ」


 まえにやったベヘモット討伐と同じだな。


「話ではクマに似た犬みたいなウサギらしいわ」


「聞けば聞くほど意味の分からん生き物だな」


 どれだよ? どれが正しい姿なんだよ?


「大きさは中型犬程度、鳴き声が悪魔の様な所からアクマァって部分が付いたらしいわ。それに因んで通称『アクマァ』って呼ぶらしいわね」


「へえー」


 クマも犬もウサギも無くなってんじゃねえかよ……


「ま、一匹ぐらいならDランクの初級冒険者でも難なく倒せるらしいからワタクシ達なら楽勝ね!」


「だといいけどな」


「あとは――」


「カタっ!」


 おっと、どうやらそんなこと話していたらお出でなすったみたいだな。


「ぐがぁああああ」


 それは確かに犬ぐらいの大きさでクマの顔、ウサギみたいな長い耳のモンスターだった。


「意外とノソノソした動きだな?」


「ああ、既にワタクシが活力を奪いましたから」


「さいですか……」


 どうりで動きがトロいはずだよ……


「トドメは誰がやる?」


「ワタクシ、能力以外は低いですからね……」


「んじゃ、アロマに頼むか」


「カタカタ」


 そういうとアロマは一瞬で近づき――


「カタッ!」


「があぁぁ……」


 骨チョップでアクマァを昏倒させ、


「カタ」


 骨の手刀でなんと首を切り裂いてしまった!


「おおう……エグイ……」


「カタ」


 アロマはペコリと此方に一礼する。


「な、なかなかやるじゃないですのアロマさん」


「ああ、というか俺もびっくりだよ」


 なんか日に日に強くなってないか?


「カタ?」


 まあ、どっちにしろ血抜きだとかの手間考えればありがたいのかな?


 いや、よく知らないんだけどね。


「じゃあ、後はゲルオに縮めて貰ってこの袋に入れてしまいましょうか」


「ああ、ほいっと」


 血も出なくなったアクマァを縮め袋にしまう。


「これで大体500Gかぁ」


「ま、この調子ならかなり稼げるのではなくて?」


「ああそうだな。って、あぶねえポミアン!」


「へ?」


 ポミアンの後ろに気付けばアクマァが迫って来てた!


「ちっ!」


「きゃっ!」


 俺は取り敢えずポミアンを突き飛ばしアクマァの攻撃に備える!


「がぁああああぁ」


「くっ……」


「があああああ」


「……」


「があああああ」


「遅い!」


 遅いよコイツ! 信じられないほど遅い!


「い、いたた。ちょっとゲルオ何するのよ!」


「すまん。こいつが迫って来てたから助けようと思ってやったんだが」


「があああああ」


 いまだにこっちまで来てない。

 これじゃあ、ただポミアンを突き飛ばしただけだな。


「はあ、ワタクシも言ってなかったし気づいてなかったのも事実だから、仕方ないわね」


「ん? まだ何かあるのか?」


「ええ、ギルドからの情報によればコイツは単体ならトロ臭くて、なんら脅威にならないらしいわ」


 活力奪わなくてもトロ臭かったのかよ!


「ああ、Dランクでも倒せるってそゆことね」


 ん? 単体なら?


「でも、さっき突然このアクマァが現れたでしょ?」


「あ、ああ」


「これはアクマァが吠えると近くのアクマァが寄って来るらしいわ――」


「へえ」


 ま、こんなのっそりなら怖くないがな!


「――ショートテレポートで」


「えっ?」


「カタ?」


「まあ、近場まで来るだけだし。来ても遅いのですからそんな大したことないと思いますわ」


「だ、だよな」


 あれ? でもそんな弱いのになんで害獣なんかに指定されてんだ?


「カタカタ!」


「ん? どうしたアロマ?」


「あ、ゲルオ。さっき何回ほえたかしら……」


「あん? 最初と合わせて……5回か?」


「そう……」


「それが何か……て……」


 まさか!


『ガァアアアギャアアアア』


 いきなり、合唱のような醜い鳴き声が響き渡る!


「おいおい、これって雪だるま式に増えてくんじゃ……」


「カタカタ!!」


 周りを見れば、動きは遅いものの既に群れの様な数でアクマァが此方に向かって来てた。


「は、はは」


「ゲ、ゲルオ……ワタクシこれは流石に無理だと思うのですけど?」


「ああ、に」


「に?」


「逃げるぞポミアン!!」


「ですわね!!」


「カタ!!」



――――

――


 そんな事がことの始まりだったわけよ?


 んで、あれから体感一時間……


「くそぉおおお! まだ追ってきやがる!!」


「ゲルオ、流石にワタクシもう……体力が……」


「カタ、カタ!」


 マジでふざけんなよ! 絶対生きて帰ってギルドに文句言わねば死ぬに死ねない!


「移動速度が遅いからいいが、それでもこの数を相手とか詰んでるだろ……」


「はぁ、はぁ、ゲルオ。奴ら加えてショートテレポートを用いて……確実に、ちかづいてきてるわ」


「ジリ貧だな……何とか一網打尽に……」


「そう、ね……」


 おいおい、大丈夫かよポミアン……


「あっ」


「ん? どうしたポミアン!?」


 後ろを見るとポミアンが地面にうずくまっていた。


「も、もう……むり……」


「バカ野郎! 死ぬぞ!」


「う、ううう」


「くそ、俺が担いで……」


 いや無理だな、俺の筋力じゃ……すぐに疲れて追いつかれちまう。


「アロマ! 頼む!」


「カタ!!」


 瞬時にアロマがポミアンをおんぶして俺に並走してきてくれた。


「あ、アロマさん……ありがと」


「アロマなら疲れ知らずだからな。俺がおぶるよりゃ安心だろ?」


「ふ、そうね。筋力Dじゃ無理ですものね」


「カタ……」


 おい、そこはちょっと俺をフォローしてくれよ?


「でも、状況は変わらないわ」


「ああ、いっそのこと街まで連れてくか?」


 んで、街の方々に倒してもらうって寸法。

 森に入ってすぐだったから街まで近いと思うしな。


「それだけどゲルオ」


「ん?」


「逆に走っているのですけど」


「……」


「ほら? 山がさっきより近くない?」


「あ、ああ」


「つまり……」


「ドン詰まりじゃねえか!?」


 ああもう! どうすんのよコレ!!


 例えコイツ等ぜんぶ縮めても、吠えた音まではどうにもできんし!

 ポミアンの蒐集だってこの数に対して能力なんか使ってみろ? 疲労で倒れちまう。

 しかも、その後に追加が呼ばれたら意味ないし! ホント何なんこの状況!?


「……ワタクシの蒐集でいっきに倒す方法は一応あるわ」


「マジで?」


「ええ、ただしこの距離ではこっちも巻き添えなのだけど」


「そうか、距離か……」


 そうはいっても奴ら、ショートテレポートで近場にどんどんやって来て、それをリレーのように使って近づいてきているからなぁ……


「せめて、奴らの転移範囲がもっと滅茶苦茶ならよかったのですけどね」


 ああ、それこそ地面の中とか空の上とか……ん、そら?


「ああ! 空か!」


「どうしたのゲルオ? ついに狂った?」


「おい、ついにって何だよ!?」


 まるでいつ狂ってもおかしくなかったみたいな言い方しやがって!


「まあ、いいや。それよりいい手を思いついた」


「っ!? ホント!」


「ああ、ポミアン。ちょっとは体力も回復したか?」


「え、ええ」


「じゃあ、全力で能力使ってもらうから覚悟してくれ」


「わかったわ」


「アロマ」


「カタ?」


「まずはポミアン背負ったまま……俺の背に乗れ」


「……カタ?」


「……」


 あれ? 反応薄いなぁ


「えっとだな、ポミアンをおんぶしたアロマを俺がおんぶ――」


「言わなくてもわかってますわ!」


「じゃあ何だよその反応は?」


「無理でしょ!? やっぱりこの危機的状況に頭が……」


「ああ、もういいからアロマ! 頼むから乗ってくれ!」


『ガァアアアアアアアギャアアアアアア!!』


 おわっ! なんかさっきの倍ぐらいの鳴き声なんだが……


 しかも近い! すげぇえ近いんだけど!!


「今の聞いただろ! もう時間ないから早く!!」


「カタ!!」


「ちょ、アロマさん!!」


「く、うぅううう」


 ぐっと重みが背にかかる、ほんとに重いけど……けどぉおおお!!


「行くぞ!」


「どこに!?」


「上にだよ! しかっり捕まってろよ!!」


 俺は渾身の力で垂直にジャンプする!!


 勿論、こんな状態で跳んだって1ミリ程度だろうが――


「伸びろぉおおおおおおおおおお!!」


「ゲルオいったいどぉおぁああアアアアアアアアアア!!」


 瞬間、一気に空へと向かって跳んでいく!


「ヒャッハー!! すげえぇえええ! マジで出来ちゃったんだけど!!」


「そ、空に、そら、そらぁあ!?」


「ふっはっはっはっは! 跳ぶ距離をこれでもかと伸ばしてやったんだよ!!」


「あ、貴方の能力ってホント……」


「カタカタッカタ!!」


 下を見れば今までいた森が綺麗に一望できた。


 ていうか、そんな高さまで跳べるとわな!


 さすが俺! 凄いぞ俺!!


「さあ、こんだけ離れてりゃいけるだろ?」


「え、ええ勿論よ。凄いのは貴方だけではないってところ見せてあげるわ!」


「ああ、期待してるぜ! 蒐集のポミアン!」


「任せなさい、伸縮のゲルオ! 来い! そして潰せ!!」


「お、おおおおおお!!」


「……どうよ! 集めてやったわ! 奴らの上にっ!!」


 目の前にポミアンが持ってきたもの、それは眼前を埋め尽くす――


「カタッカタ!!」


「さすがだな、ポミアン!」


「当然よ!」



 ――巨大な幾つもの岩山だった。



 当然その山は重力に従い、そのまま真下に落ちていく!


『ガァアアアアァ……ア』


 そして、アクマァの無数の群れを森ごと押し潰していった。


ゴガァアアアアァァンンンン!!


 遅れて耳をつんざく轟音が辺りに鳴り響く。

 その衝撃は凄まじく、辺りの木々も巻き込みそのほとんどをなぎ倒してしまった。


「は、ははは! やったなポミアン!!」


 山が落ちる光景はまさに圧巻だったぜっ!


「ええ! ところでゲルオ?」


「あん?」


「落ちていってるのですけど?」


「まあ、そりゃな」


 上がったら落ちるもんだしな。


「この高さって大丈夫なの?」


「……」


「まさか何も考えてないとかありませんわよね」


「……ポミアン」


「な、なに?」


「足から頑張って落ちような!」


「う、うそでしょ……」


「は、はは、ウソじゃない。てか、どうしよぉおおぉぉぉ」


 やばいやばいやばいやばい!! 地面が! 地面がぁああああ!!


「カタカタ!!」


「しゅ、蒐集ぅううう!!」


 あ、こりゃ死んだかも――


バシャンッ!!


「っ!!」


 な、なにが――


――――

――



ピチョン……


 う、うう、あれ? い、生きてる……


「おお! 何か知らんけど生きてる!!」


 あんな上空から落ちたのになんで? てかすげえびしょ濡れだ!!


「カタカタ!」


 おお、アロマ! それに近くにはポミアンもびしょ濡れで座り込んでるな。


「大丈夫かポミアン! てかいったい何が起きたんだ?」


「はあ、はあ、大量の、水の塊を、下に集めたのよ……」


 ああ! 確かに最後何か冷たいのに突っ込んだような?

 あれは水だったのか……


 見れば近くにさっきまで無かった小さな泉みたいのがある。


「もしかしてアロマが引き上げてくれたのか?」


「カタ」


「ふふ、ワタクシもよ。ゲルオより……先に……アロ――」


「カタカタ!」


「ん? ポ、ポミアン!」


ペタン


 ポミアンはそのまま倒れ込んでしまった。


「どっかケガでも!」


「カタ」


 駆け寄ろうとしたところ、アロマが制止した。


「う……ぅうん……」


「はあ、疲労で倒れただけかよ……」


 どうやら能力の使い過ぎが原因みたいだな。


 心臓がドキッとしたぜ。


「しかし、随分と様変わりしたな」


 一面の森は見る影もなく、いまでは岩山と小さな泉のある景色になっていた。

 だが当然それだけでなく、そこかしこは天変地異でも起きたような惨状になっている。


「これなんも言われないよな?」


「カタ?」


 ……ま、いいか。とりあえずこの惨状は見なかったことにしてとっ!


「帰るかアロマ」


「カタ」


 アロマにポミアンを背負ってもらい、今日はもうギルドへ寄らず家に帰ることにした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ