28話 元魔王、魔王に遭遇
洞窟内が燃え盛る中、地響きと大音量が響いている。
「魔王ムライだと……」
ボンがそう呟き呆然としているが、
「ボン! それより此処を離れないと!」
声も気にはなるがこのままいたら黒焦げになっちまう!
『まてやこらぁああ!!』
う、うるせぇえええ!!
「ちょっとだまってろよ! 火が迫ってんだよ!!」
シンヤがそう吠える。
『お前ら自分らでやっておいてどうする事も出来んというのか!!』
「悪かったな! 火を起こすしか出来なくて!」
おおう、よくあんなバカでかい声出す相手に言い返せるな……
「それにしてもこの声、どこから?」
「大きなうえ反響もしていてわかりませんね」
「……くっ」
そうリョウタとマリがいうなか、ボンはどこか焦燥しているみたいだ。
『……はあぁ、仕方ないのぉお。わしがちゃちゃっと消してやるか』
「な、これだけの火の勢いをどうやって――」
『こうすんだよぉおおお!』
その声と共に巨大な手の様なものが現れ、燃え盛るベヘモットロードとその周辺を包み込み鎮火してしまった。
いや、冷静に現状を言ってみたが何それ?
「……というかような物じゃなく、手だなアレ」
「な、何がおきてるんだ」
「……序列12の魔王だ」
「え? ボンさん今なんて?」
「あんな非常識なことが出来るのは序列12の魔王『巨人』のムライ。この『巨獣の魔窟』の管理者でもありどんな物も大きくできる魔王だ」
「ほぉお、わしのこと知っとるか?」
そういって現れたのは白く長い髭を携えたムキムキの爺さんだった。
「け、けどどうして魔王がここに!?」
マリの言う通りだ、ここ一層なんですけど?
「月に一度のイベントじゃから、視察に来ておったんじゃ。今回はどんな戦いが観れるかワクワクしておれば……」
ああ、そりゃ台無しだよな。
一分もかからずに終わったし……
「自分たちが何しでかしたかわかるか? いくら何でもやり過ぎじゃろうが!」
「そ、そりゃ悪かったと思てるけどさ」
「だまらんかぁあ!! いいかお前ら! いくらダンジョンが破壊不可といっても限度という物があるんじゃぞ!!」
「あ、でも不可抗力な事でして」
「それだけではない、火事なんて洞窟内で起こしおって! ワシだけでなく他の冒険者達にも迷惑がかかるのじゃぞ?」
うわぁ、おっしゃる通りで。
「じ、自分たちに非があるのはわかりました」
「でも、いきなり怒鳴る事もないんじゃ……」
む、マズいな。リョウタ達はもしかしてあんま失敗をしたことない子なのかな?
「減らず口までたたきはじめおって……貴様らここを出禁にするぞ!」
「そ、そんな!」
「り、理不尽だぞ!」
「ちょっとは自分たちの意見も聞いてくださってもいいじゃないですか?」
このままヒートアップさせるわけにもいかないな。
なんていってもこれ系統はすぐ頭に血が上るからなぁ
「すまんがボン、リョウタ達を抑えてくれ。良い方法がある」
「っ!? わ、わかった」
「アロマも頼む」
「カタ」
俺は一歩前に出てムライに対峙する。
「んん? なんじゃお前さん?」
「げ、ゲルオさん?」
「もしかして私たちの代わりに……」
「ゲルオ兄貴! 無茶だ!」
「ふ、お前らは其処で見てろ!」
俺は再度何もさせないようボンとアロマに目線を送る。
「カタカタ」
「……ああ」
先ずは相手の目をちゃんと見る。みる。
うわあ、どうやったらそんな怖い目付きに成長するの?
「ほう、良い気概をしておる。名はなんと」
噛まないように、一呼吸おいて――
「俺は元序列7の魔王『伸縮』のゲルオ」
「っ!! おぬしがあの? ふむ、臆病と聞いていたのだがな」
そして相手が此方を確認したら背筋をただす。
俺はその場に膝をつき、手を膝に乗せる。
「むむ? いったい何を?」
いいかリョウタ達! これがこういう時のベストアンサーだ!!
「誠に申し訳ございませんでした! 以後このような事は起こしませんのでどうか! どうか今回ばかりはご慈悲をぉ!!」
そういって頭を地面にこすりつける! これでもかとだ!
「な、な、なぁああ!?」
「げ、ゲルオさん……」
「カタ、カタ」
ふふふ、謝るだけならタダだしな。こんなもんで許してもらえれば大儲けってもんよ!
戦うって選択肢だけが正しいわけじゃないんだぜ!
「ほら! お前らも謝って! 土下座が無理なら頭だけでも下げんさい!!」
「カタカタ」
おお! 流石アロマだ、真っ先に俺の後ろで土下座してくれたぜ!
「で、でも……」
「でもも何もない! 非があるんならちゃんと謝らなきゃダメだろ?」
「……いや、そのだなゲルオ」
「なんだボン」
「頭あげてくれればわかる」
「あん?」
俺はしぶしぶ頭をあげてみる。そこには、
「……」
ムライが無言で巨大になって腕組んでいた。
「あ、あのお。なんか気に障っちゃった?」
『ゲルオ殿、わしはの? 餡の少ない饅頭と、おぬしの様な中身の籠ってない誠意が一番……』
「は、はあ」
『一番きらいなんじゃぁあああああ!!』
「う、なぜバレたし!」
「ちょっと演技がすぎたんだよ。この前ぐらいがちょうどよかったんじゃないか?」
「ぼ、ボンさん! そんなこと言ってる場合じゃ!?」
「ふむ、土下座をまだマスターしきれてなかったか」
これなら謝らずにダッシュで逃げるべきだったな。
俺は立ち上がり、とりあえず土と燃えカスを取り払う。
『もう許さんぞ! わしのお気にのロードちゃんをあんな燃えカスにするに飽き足らず、このような不快な思いまでっ!』
「く、沸点の低い奴だ! これだから年寄りは!」
『お前に言われたくないわ! あと、土下座してる時にニヤニヤしよって……っ!』
あれ? そんな顔しちゃってた?
「うーむ、とりあえず逃げよう」
「ああ、賛成だ! リョウタ達行くぞ!」
「えっ!? 戦う流れじゃないんですか!?」
んなわけねえだろ! ガチの魔王相手にやってられるかっての!
「走れ走れ! 生き延びることが先決だ!」
「おし! いくぜぇえ!」
「ううう、何でこんな事に」
「マリ! 嘆いていないで行こう!」
リョウタ達はそう言って全速力で元来た道を引き返す。
てか、はええ……
『に、逃がさんぞ!』
途端、ムライは更に大きくなり阻もうとしてくる!
「ゲルオさん! 逃げるっていてもサイズが違い過ぎて!?」
「ちっ! こうなったら! 縮んどけ!!」
『なっ!?』
伸縮を使いムライを元の大きさに戻す!
「結構疲れるな……アロマ!」
「カタカタ!」
流石アロマ! 俺のことをわかってるな!
「カタカタ」
俺はアロマにおんぶしてもらい、そのまま後ろを向く
「ち、縮ませる力か!? なぜ魔王にも通じる!?」
「へーん、こっちはてめえと規格が違うって事だよ!」
よくわかんねけどな!
「く、もう一度!」
ムライはまた大きくなって追いかけようとするが、
「はいはい、縮め縮め」
「ぬ、ぬおおおおおおお!!」
よしよし、このまま奴を縮めつつ逃げれば!
「カタカタ」
「ん? おお、もうリョウタ達は入って来た場所まで逃げ込めたのか!?」
「カタ」
俺はアロマに背負われながら力を使い続ける。
「ぐぅうううう! 相性が悪いのこれは……」
「へいへい! 自慢の巨大化はその程度かよ!」
「なんじゃと! ゆ、ゆるさぁぞわりゃああああ!!」
その一言にブチ切れたのか、俺の縮ませる力より早く巨大化していく。
「はは、ムライ。もう少し煽り耐性付けとけよ! 魔王ならな!!」
『がぁあああああああ!!』
「カタカタ」
俺はそこで奴の力を伸ばす方に替える。
『がああ、あ?』
ごぉおおおおおんんん!!
勢いを増していたムライはそのまま天井にまで達するも、破壊不可のダンジョンに阻まれ、そして――
ぐぎぃいい!
『あだぁあああ!!』
嫌な音を響かせて、そのまま元の大きさに戻っていった。
「おおお!! やりましたねゲルオさん!」
「す、すげえ」
「で、でも顔色がかなり悪そうですけど……」
くううう、流石に疲労感がハンパない。
「……ぐ、ぐぐぐ、ま……て」
マズいな、ゆうても天井に頭ぶつけただけだからな。
「さあ、みんな今のうちに脱出だ!」
『はい!』
「カタ!」
最後にちらっとムライを見る。
「く、おのれぇ次にここに来た時は……」
なんかピクピクしながら恐いこと言ってた。




