26話 元魔王、羨望される?
「なあ、一応ステータスの確認をしておかないか?」
『巨獣の魔窟』へ行く前に一つそんな事を聞いてみた。
「ええ、でも……」
「ああ、もちろんスキルとか嫌ならいいし、そうだな一番いいステータスだけでもいいぞ」
よし、こういっておけば全部を見せようなんて事にはならないはずだ。
つまり俺のクソ貧弱なステも見せなくていいってこと!
うーん、我ながらうまい切り出しだな!
「それならいいですよ」
「ああ、因みにゲルオのステータスは敏捷以外D以下だ」
『ええっ!?』
「お、おいボン!」
何でいっちゃうの!? 意味ないだろそれじゃあ!
「うん? どうしたゲルオ?」
「い、いやもういい」
「??」
ボンに悪気は一切ないんだろう。俺があくまでポーターとして付いてくるって伝えていたしな。
「ゲ、ゲルオさん……」
あーあ、せっかくなんかいい感じに俺の事見てくれてたのになぁ
「なんだ?」
「……ごい」
「え?」
「すごいですよ! ゲルオさん!!」
「は?」
「Sランククエストを超えるっていうのに、そのステータスでも立ち向かうなんて!」
「ああ、俺だったら無理だ……ビビッて逃げ帰っちまうよ」
「私達、どこか自分の数値やスキルに安心していたのかもね。これがホントの冒険者……」
あの、全然褒められる様なとこはないんだけど?
「ボンさん、しかもゲルオさんはポーター何ですよね?」
「あ、ああ。だから戦闘面では――」
「つまりキングベヘモットからそのステータスで生還したって事ですか!?」
「う、そうだね。まあ、ゲルオは全治3週間のケガを負ってしまったが」
「ゲルオ兄貴はそんな大怪我したのに、俺達の為に……」
「私達もそれぐらいの気概を持たなくちゃ!」
「ああ! ランクや数字だけじゃない、もっと大事な物が学べるはずだ!」
「おっしゃ! 気合入って来たぜ!!」
何これ? 俺をよそに俺の事で盛り上がってるんだけど。
「ボ、ボン?」
「なんだ?」
「俺、あんな目で見られても困るんだけど……」
「……そ、そうだな」
「カタカタ」
ア、アロマ。期待や羨望ってこんなに怖い物だったんだね……
――――
――
一通りのステータス確認を済まし、俺達はようやっと『巨獣の魔窟』へやって来た。
「じゃあ、もう一度確認だね。今回は先ずHPと耐久が高いリョウタは前衛、敏捷の高いシンヤとマリの二人は遊撃。僕は後衛で更に後ろからアロマさんとゲルオという構成だ」
回復出来る奴があれだけいて一人もいないってどういう事なんですかね?
「何か質問はあるかい?」
「あ、あのボンさん。荷物ってこんなに多くても大丈夫なんですか?」
「ああ、そういえば言い忘れてたね。ゲルオが魔王だったてのは覚えているかい?」
「ああ! 元魔王とか、めっちゃかっこいいぜゲルオ兄貴!」
「元って付くのが良いのよね」
初めて肯定的に捉えられてるんだけど、マジうれしいよ!
「じゃあ、後は本人からでいいかな?」
「あ、ああ」
「何が始まるんです?」
「まあ、見ててくれ」
ボンが促すなか、俺はいつも通りに荷物を手のひらサイズにまで縮ませる。
「……まあ、こんなもんか」
『…………おおおおお!』
うわっ! び、びっくりした。驚きすぎだろ!
「ゲルオ兄貴、いまのはスキルですか?」
「いや、違うな。まぁ魔王専用の特技みたいなもんだ」
「私たちの魔法とは違うんです?」
「ああ、MPは消費しない。まあ、疲労は溜まるけどな」
「か、鑑定の中には何も表示されないんですね」
「ほお、そうなんだ」
てかおいっ! リョウタは鑑定持ちだったのかよ!
「一説によると魔王の能力はその者の特性らしいからね。鑑定はあくまでステータスとスキルが見えるだけだから」
「なるほど……それは魔獣とかでも?」
「ああ、だから鑑定にばかり頼っている者はいつか痛い目に遭うものさ」
「べ、勉強になります」
まあ、昨日のガキはざまぁとしかいいようなかったがな!
「とにかく、これで楽に持ち運べるからな。他にはないよな?」
「はい!」
「よし、じゃあ行こうか!」
「あっ! ちょい待ち!」
「なんだゲルオ」
「今回も一層だけなのか」
「ああ、前回キングが居た場所にロードは月一で現れる」
「キングとロードだとどっちが強いんですか?」
「希少なのはキングで、強いのはロードだ」
なるほど、あと最後にこれだけは聞いとかないと……
「ボン、ロードの亜種でデーモンとかアークとかそんなのいないよな?」
「……」
「いないよね?」
「……ああ大丈夫さ!」
「そ、そうか」
「そうだ」
大丈夫ってまったく答えになってないよね。
――――
――
「喰らえ! バーニンっ!!」
そう吠えるとともに、シンヤがほのおを纏いながら大型モンスターに殴り掛かる。
ぎゅぎゅううぅ
一撃で屠る様はさすが異世界勇者といいたい、言いたいんだが……
ほのおを纏っているせいか、どう見ても拳が届く前にモンスターは塵になっている。
「よし! ここは自分が!」
そう言ってリョウタは火炎を槍に纏わせながら回転させる。
ぶおおおおぉぉ
突撃してきたモンスターはその火炎の壁に阻まれて息絶えるんだけど……槍必要か?
「いきます!」
マリの一刀が目にも止まらぬ速さで魔獣を切りつける。
じゅうううぅ
その切断面はどこか香ばしい匂いがしていた。
うん、なんかお腹減った。
「ちょっと質問良いか?」
「はい、なんです?」
「魔法と武術って合わせる意味あんのか?」
『っ!?』
やべ、なんかマズい質問だったか?
「あ、その……そっちのほうが相乗効果もあると思いまして」
うん、まあ場合によっては一理あるだろうけどさ。
「例えばシンヤ」
「なんすか?」
「さっきの殴る前に敵が塵になってる。だったら最初からほのうだけ飛ばして、懐に来たりMPが尽きた時の保険に体術を見舞った方が良くないか?」
「あ……た、たしかにそうだ……」
よし、この調子でいいくるめて空気を元に戻そう!
本田とは違うのだよ俺は!
「リョウタだって火炎の壁を張るだけにして、接近する奴にリーチの長い槍で攻撃とか」
「な、なるほど……その方が槍を活かせそうですね!」
「マリはせっかくの加熱なんだから、予め熱し易いもんでも別に持ってたらいいんでない? ほら、わざわざ刀に熱を帯びさせる必要ってないしさ」
正直、あんま言う事なかったなこいつには。
「っ!! ゲルオさん!」
「は、はい。ごめんなさい素人が――」
「有難うございます! 悩んでいた問題について解消できそうです!」
ええっ!? あんなんで何が解決できたの!?
「ううむ、けっこういいアドバイスだっと思うぞ? さすがその貧弱なステータスで生き延びていただけはあるって事か?」
「ま、まあな」
すまん、つい口に出て気まずかったから出まかせにいっただけなんだ……
そんな鵜呑みにすんなよ? な?
「やっぱすげえわあの人。力の使い方を熟知してんだな」
「ああ、それでいて自分たちにそっとアドバイスをしてくれるなんて……」
「こういう方がいるだけでなんて心強い!」
「ゲルオは僕の相棒だからな! 当り前さ!」
「カタカタ」
「あ、あはは」
乾いた笑いしか出てこない……
こんな空気は望んでないんだよぉ
「さあ! ゲルオさん行きましょう!」
「さっそくアドバイス通りやってみるぜ!」
「ああ、いわれた物みたいのがあればよかったのに……」
まあ、昨日のソウタに比べれば良いんだろうけどさ。
「ゲルオ? どうした?」
「カタカタ?」
「う……わかってるよ」
ああ、ポミアンや本田はある意味一緒にいて気の休める奴らだったんだなぁ
「さあ、もうひと頑張りだぞ!」
んなこと考えてるうちに、この前休んだとこが見えてきた。




