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2話 元魔王、初の冒険者ギルドへ


 冒険者ギルド、俺がまだ魔王でなかった千年前にはなかったものだ。


 まあ、俺自身は魔王になってから城に籠っていたから町がどうなっているか何にも知らないんだけどな。


 ギルドの中には多種多様な者でいっぱいだった。魔族は勿論、妖精に獣人、エルフに異世界人、勿論普通の人族や勇者までいた。


「はあ、知らない間にこの世界も変ってたんだなぁ」


「カタカタ」


 アロマも同意してくれたみたいだ。


 やっぱり新聞とっとくべきだったかぁなんて考えていると、


「よぉ、お前あのゲルオじゃねえか?」


 なんか厳ついモヒカンヘアーのエルフ?が話しかけてきた。


「や、やめようよゲンタさん」


 それをこれは……ブタか? なんか喋るブタが止めようとしていた。


「ふん、なんのようだ」


「ここはお前みたいなクズの元魔王がいていい場所じゃねえんだよ!」


 そういって吠えるモヒカンのエルフ。


 舐めるなよ。全てを失った俺に怖い物なんてないんだからな!


「こ、こいつは!」


 ふふ! どうだ!! 俺のこの見事なまでの!


「な、速攻で土下座しやがったぞコイツ!」


「なんか知らないけどすいませんでした! 許してください!!」


 ちらっと横を見るとアロマも一緒になって土下座してくれていた。


 ええやつやな、おまえは……


「く、お前は元魔王としてのプライドはないのか!」


「まったくないです! ホント勘弁してください!」


 今はプライドなんかで生きてけねぇえんだよ! そんなもんより金が欲しい!!


「あなた達何を騒いでいるんですか!」


「ちっ! しらけちまったよ。いくぞブンタ!」


「ああ! まってよゲンタ~」


 ふぅ、どうやら何とかなったみたいだな。


 それにしても土下座って便利だな! これからも頼りにしてるぜ!


 少し注目の的になっていたが、直ぐに喧騒に飲み込まれて何もなかったかのようになった。


 俺とアルマは奥のカウンターみたいな場所へと向かった。


「ここが受付か?」


「はい、ギルド『闇の囁き亭』へようこそ」


 なんか禍々しい名前だな。


「こほんっ! 俺は元序列7の魔王、伸縮のゲルオだ! わかっているな?」


 アロマみていろ、元魔王のネームバリューの威力を!


「はい、現在無職のゲルオ様ですね。どういったご用件でしょうか?」


「うう、えとその、あのぉ」


 ちくせう、ネームバリュー全くねぇ


「初めてのご利用ですか?」


「は、はい! そうです」


「では、ご依頼の方でしょうか? それともご登録でしょうか?」


「と、と、登録の方だ!」


「ではステータス等を拝見しますので住基カードをお持ちですか?」


「ステータス? 住基? なんだそれ?」


「……えっと、普通魔族は誰でも持っているんですが……」


「それっていつからだ?」


「ざっと五百年前からですね」


「そ、そうなの?」


「もしかして失くされました?」


「あ、いや、ずっと引き籠ってましたのでその……」


「ああ! ゲルオ様はそういった方でしたね! まさか住基カードすら発行せず引き籠っていたとは思いませんでした」


「すいません」


 だって必要なかったしそんなの。


「まあ、今は異世界人や越してきた勇者達に、住基カードも兼ねるギルドカードをこちらで発行できますので安心してください。ただ魔族に発行するのは初めてのことですが……」


 さっきからチクチク言葉が刺さるなぁ


「ではこちらの水晶玉へ手をかざしてください」


「あ、はい」


 俺は言われるがままに手をかざす。


「ステータスってなんだ?」


「ステータスとはその者の力を数値化などしたものの事ですね。住基カードすら作っていないのでしたら知らないのも仕方がないですが」


 いやいや、意味は知ってるよ。けどそんなのがこの世界にあったんだなぁと思ってね。千年前はたしかにそんなのなかったんだが、時代って変わるんだね……


「しかし、これはちょっと元魔王としての凄いとこがわかっちゃうかもなぁ」


 なんせあの大魔王様に抜擢されて魔王になった俺だからな!


 さぞ、すんげーステータスがでてくるだろう!


「えっと、まずは生命力ですね。これはHPといわれて無くなると死にます。覚えていてくださいね」


「なにそれ? 呪いか何かですか?」


 どういう原理だよHPって、


「それでゲルオ様のHPですが……120001ですね」


 おお! これって凄くないか!!


「ふふふ、いきなり大台を出してしまったな。さぞ驚いたかな?」


 受付嬢はその数値に驚きを隠せていないようだ。


「ええ、驚きました。まさか120001とは……」


 ほれほれ、どう驚いたか聞かせてくれ!


「最近なった序列24の魔王様でも軽く百万はいくというのに、まさか千年も生きてるゲルオ様が並の魔族と変わらないHPとは……」


「……」


「千年間なにやってたんです?」


 ……何もしてきませんでした。


「次だ、つぎ!!」


「精神力、MPと呼ばれるものですね。こちらは無くなれば魔法が撃てなくなります」


 ふむ、わかりやすいな。


「こちらは……100です」


 んん?


「なんか桁足らなくないか? 後ろに万つけ忘れて無い?」


「いえ、100です。ちょうど100って珍しいですよホント」


「それってどれくらいの数値なんだ?」


 MPはまたHPとは桁が違うんだろ? そうなんだろ?


「えっと、魔族ではそうですね……あそこに男の子いるじゃないですか?」


「あ、ああ」


 まさか子供並なのか!?


「その子がおぶってる赤ん坊ぐらいですね」


 なっ!!


「あ、あかご、なみだと……」


「まぁ、初級魔法ぐらいなら一発ぐらい撃てますね」


 いや、いやいやいやいや!!


「ほ、他のステータスはきっとその分凄いに違いない!」


 絶対そうだ! よくあるじゃないか、メタルなやつとかさ!


「ではここからはランク方式での記述になります。明確な数値ではないですが指標としてとらえて下さい」


「あ、ああ」


「ランクはSSSからEまでの八段階で評価されます」


「オッケーわかった!」


「……はあ。ではまず筋力はDですね」


「う、うむ」


 まあ、俺って肉体派じゃないしな。


「魔力は当然Eですね」


 当然とか言うなよクソっ!


「耐久は……Fです」


 あれ?Eまでの八段階じゃなかったっけ?


「最後の敏捷はBですね!」


 ここまで来たら其処は低くてネタにしてくれよ!!


「総じてゲルオ様……」


「は、はい」


「よく生きてますね!」


「余計なお世話だよ!」


 ちくせう……俺は魔王だったんだぞ! 何でこんなにステータス低いんだよぉ


「これでは薬草採取すら怪しいラインですね……どうします?」


「いや、どうしますって言われても……」


 俺はついつい助けを求めるようアロマへ視線を投げかける。


「カタカタ」


 するとアロマは自ら水晶玉へと手を伸ばしてくれた!


「アロマ! お前って奴は!!」


 一緒にギルドへ登録してくれるんだな!


「ええっと、スケルトン族の方ですかね? あ、筆談で、アロマ様ですね」


「カタカタ」


「なに!!」


 筆談……そんな意思の疎通方法があったのか……


「あの人は無視するとしまして、ではいきますよ……」


「ごくりっ」


「えっと、これは……」


 な、なんだ? もしかしてアロマは俺と違って凄いのか!?


「アロマ様のHPはなしです。MPもなしです」


「えっ?」


「カタ?」


「いや、なんか全表記がされないんですけど……なんかしました?」


ブルブルブルブル!


「してないです! なんもしてないです!」


「うーん? じゃあ故障かな? 申し訳ないですがアロマ様の発行は後日でいいですか?」


「カタ」


「まあ、仕方ないか」


「では、一応一番低いランクのクエスト、要は仕事ですね。こちらを紹介させていただきますので頑張ってくださいね!」


「こ、これは!!」


 こうして俺は初の仕事をすることになった。





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