15話 元魔王、収集も程々にしろと思う
状況は最悪だ、前衛のガッキとボンが倒れ、本田も魔力が枯渇され倒れてしまった。
「……ふふ、意外とワタクシに嘗めた態度の女、凄い魔力の持ち主だったようね。優秀なモノはこんな事でなければ、嫌いではなかったのだけどね」
「く、俺はまだ少し動けるようだが……」
やはり俺が元とはいえ魔王だからだろうな！
「貴方は基本弱すぎて話にならないもの、蒐集を使うまでもないわ」
「あ、そうですか」
えっ？ 気のせいだったの？
ちくせう、悲しくなって来たぞ流石に！
「さて、あとはこのゴミを処分――」
「カタカタッ！」
「っ！！」
ボンに近づこうとしたとこでアロマが間に入って蹴りをお見舞いした。
「な、何故うごけるの？ 蒐集！」
「カタ？」
「っ！！ ない？ 集められるものが？」
はん！ 何か知らんが流石はアロマ！
「残念だったなポミアン！ 我が唯一の配下アロマにお前の力は通じんぞ！」
「カタカタ」
「……貴方はいったい？」
「カタっ！」
そのままアロマはポミアンに突っ込んでいくが、
「まあいいわ、動けなくさせればいいんだから……蒐集」
「カタっ！！」
「なっ！？」
ポミアンがそう呟くとともに、アロマの周りに大量のゴミが降り注いだ！
「あ、アロマ……」
「……ヵ……」
「ふふふ、ちょっと品が無かったわね。ワタクシとしたことが」
「アロマ！ おい！ 返事をしろ！！」
「無駄だと思いますわ？ 残念でしたねゴミ魔王」
「くっ！ 縮め！！」
シュン
「カ、カタ？」
「！！」
よし、ちょっと焦ったが全部小石程度にできたな。
「なるほど。これで大量に集めたワタクシの所有物を棄ててきたのね」
「はん！ 何が所有物だよ！ まともなもんなんざ何処にもなかったっての！！」
「カタカタ！」
「なんですって！」
「聞こえませんでしたかー？ どれもゴミだっつってんだよ！」
くそっ！ 思い返したら腹立って来たぜ！
「ここの全ては何であろうとワタクシが蒐集したもの、お前に価値を決める権利などない、ワタクシがその価値を決める権利がある！」
「お前にとってナンテどうでも良いんだよ！ 俺にとっちゃゴミだゴミ！ それにな、臭いんだよ！」
「なっ！？」
「大方、そんなんだから魔王辞めさせられたんだっての。まあ、俺も人の事は言えないが」
「……ワタクシは、ワタクシは魔王よ」
「ん？」
なんか雰囲気が……
「ワタクシは魔王だ！ あんなポット出の魔王神なんぞがワタクシの何がわかるというの？ 配下も配下で、魔王で無くなった途端去っていくし！ 媚びへつらっていたグズ共は掌返して見限っていくし！ ワタクシはあの序列９の魔王、蒐集のポミアンですのよ！ 玉石混交と謂われ恐れられたワタクシが、魔王で無いわけがない！！」
なんだコイツ！？ 急にヒステリックになりやがって！？
「そう、ワタクシを魔王としない世界は間違っている。そんなものはゴミに決まっている。価値のある玉などない。石という価値すらないゴミだ……だからゴミを集め続けて世界をゴミで埋め尽くすのよ」
くそっ！ 何言ってんだってアイツ！
「カタカタ」
ああそうだね！ 俺はあそこまでショックじゃなかったよ魔王で無くなっても！
「ふふふ、ワタクシまだ躊躇していたのですね。全力で、全開で蒐集を使ってしまえばよかったのですわ。ふ、ふふふふふふふ」
「ま、まずいぞ……ゲルオ……」
「ボ、ボン！ 大丈夫か？」
「大丈夫ではないが、このままだと此処はゴミで溢れる、つまりだ……」
「ゴミにおぼれて死ぬってか？」
「……ああ」
なんだその死に方！？ 最悪だぞ！！
「あは、あははははははははは！！ 集まれ！ 蒐まれ！！」
みるみるうちに、ゴミがポミアンの周りから増え始めていく。
「くそっ！ そんなんだから誰もお前についてかなかったんだよ！」
俺にだって、アロマが残ってくれたってのにな！
「ははは……うるさい！ ワタクシは誰もいらないもの！ ほしいものは全部集められるんだから！！」
「そりゃ凄いな！ 一人で何でも出来てきたってか！！」
「そうよ！ お前の様な生き恥さらして残った魔王とは違うのよ！ ワタクシは！！」
「そうかよ、なのに自分で集めた物は優れてるって言いたいんだな」
「ええ、わかっているじゃない。ワタクシが集めたモノなら例えゴミでも価値のある物！ ふふふ、そんなワタクシが蒐めたゴミで埋め尽くされるゴミ以下の世界！ 最高だと思わない？」
「く、ゲルオ、あいつかなりヤバいこと言ってるぞ！」
「ホント何なんだよ、ただ掃除しに来ただけだったのによ！」
意味わかんねえぞ！ どっから世界規模の話になったんだいったい！
「ゲ、ゲルオさん。流石にこれ全部縮める事は……」
「ムリムリ、死んじゃう」
疲労でおかしくなるわ！
「カタカタ！」
「ん？ どうしたアロマ？」
「カタカタ」
アロマいったい……ああ、そっかさっきのアロマみたいに！
「ううう、こんな最後だなんて……」
「ううん、むにゃむにゃ」
本田は何かに祈るように、ガッキはなんか眠ちゃってるが、
「良い考えが浮かんだ、ようはアイツを止めりゃあいいんだろ？」
「おお！ 何か思いついたのか！」
「ああ、たくっ！ これで終わりだよきっとな」
「あはははは、うん？ まだ何かするつもり？ 一人じゃ何もできないような元魔王が？」
「ああ、確かにそうだな」
一人で何も出来ない癖に、俺には今までアロマぐらいしか側にいなかったよ……
「それよりもコレ返すわ、大事なお前の集めたモノ何だろ？」
「っ！！」
「けどなポミアン、一人でそんなに抱えられるのか？」
「あは、あははは！ そんなちっちゃなゴミをワタクシが抱えられない？ おちょくるのも大概にしなさいよこのゴミがああああああ！！」
俺はさっき縮小させた全てのゴミを元の大きさに戻して返してやる、ただし重さの数値は伸ばして――
「そうか、じゃあ埋もれろ」
「あははは、は？」
瞬間、そのゴミは見た目からは想像できない凄みを増してポミアンに落下していく。
「あはは、流石はワタクシがあつめた――」
そう言いかけ、元『序列９の魔王、蒐集のポミアン』はゴミに埋もれた――
