11話 元魔王、幼女と掃除へ
本田とパーティーを組んだはいいが、まさかまたガッキの依頼を紹介されるとはな。
「ガッキといいましゅ! よろちくおねがいしましゅ!!」
「はい、あたしは本田ヒロっていいます。ヒロちゃんって呼んでね!」
「ヒロちゃんはこどもっぽいでしゅ。ヒロさんとよばちていただきましゅ」
「こ、こどもっぽい……」
ガッキと本田、微笑ましいじゃねえか……
「じゃなくてっ! おい、受付というかロッテ!」
「なんです? 気安く呼ばないで頂けますかゲルオ」
「ぐぅうう、お前さっき芋のお礼に良いクエスト紹介するっていったじゃないか!?」
それも込みで本田を誘ってやった部分もあるんだぞ!
「何か勘違いされていませんか? 今回は前回と違って――」
「ゲルオ、うるちゃいでしゅよ! もうクエストのじゅちゅうはおえたんでしゅから! もんくをいわない!!」
「が、ガッキ。あのなぁ俺は今回ちゃんと金になるクエストがしたいんだよ」
「あめしゃんはだめでしゅか……」
「いや、そのだなぁ」
ちょっと待て。ズルいだろこれは……
「ゲルオさん……」
やめろ本田、そんな目で見るな! お前の生活だってかかっているんだぞ!
「カタカタ!」
アロマ、そりゃお前は飲まず食わずだから良いけどよ……
「……今回は別口でちゃんとギルドからの報酬もあるクエストですよ」
「なにっ!」
それを早く言えよ!
「そうなんですか?」
「ええ、今回のゴミ掃除は中々受けて下さる方がいなかったので、特別報酬として2000Gが支払われます」
「おいおい、掃除だけでってマジか?」
「マジです」
おおおっ! ホントに良いクエストじゃねえか!
「感謝するぜ、ロッテ!」
「ふふふ、では“ゴミ”掃除頑張ってくださいね!」
「おう! 任しておけ!!」
「はい!」
「おねがいしましゅ!」
「カタカタ」
さって頑張っちゃうぞ! じゃんじゃんゴミも縮めてやるわ!
っとそうそう、
「で、今日はまたあの公園なのか?」
「ちがいましゅ! きょうはおうちでしゅ!」
「おうち?」
――旧上級居住区
そこは前時代的な貴族が蔓延っていたという如何にもな造りの家々が建ち並ぶ区画だ。
現在はそこそこの稼ぎの人達やボンのような上級冒険者が住んで居る。
因みにこの事は全部舌足らずなガッキが教えてくれた。
「しょういうわけでちから、ゲルオはしゃんとしてくだしゃいよ」
「おいガッキ、なんで俺を名指しで注意した?」
「カタカタ」
「だってゲルオはせけんをしらないでしゅから、いちばんしんぱいでしゅもん」
「子供に心配されるって……」
やめろ本田、そんな駄目な大人を見る目で俺を見るな。
「心配ご無用だガッキ。なんていっても俺はこう見えて元魔王だからな! 場を弁える事は得意な方なんだぞ!」
昔は他の魔王に目を付けられない様、空気のように過ごしたもんさ。
「ええっ!? ゲルオさんって魔王だったんですか!?」
あら? 言ってなかったけな?
「ああ、だから本田も俺を頼りにしていいんだぜ!」
「え、でも……あのステータスですよね?」
やめろ
「それでも魔王だったの! 序列だって7だったんだからな!」
しかも現存する中では最古参だったのにっ!
「ああ、それでお前もリストラの被害にって……」
「ゲルオげんきだしゅでしゅ! ガッキがしごといっぱいもってきましゅから!」
「ガッキ……」
気持ちは嬉しいが報酬アメだけの仕事はマジ勘弁してくれ。
「カタ」
そんなこんなで奥へガッキの先導のもと進んでいたんだが――
「うわっ! 何だこの臭い!?」
「うぅうう、すごい臭いですね?」
「ハナがまがりしょうでしゅ」
それはまるで腐った卵と牛乳を混ぜてそこに発酵させた魚介をぶち込んだような……
「うぇ、おぅえ!」
無理無理むりっ!! 何なんだよこの臭いは!!
「うぅう、おぇ……」
今の本田は見なかったことにしてあげよう。
「そうぞういじょうでちたよ。ましゃかこんなにだなんて」
「ん? ガッキ何か知ってるのか?」
「しっているもなにもでしゅね、あっ! みえてきまちた!!」
「ああん、なにが……」
そうガッキが示す先にあったのは……
「ま、マジかよ……」
「うわぁ……」
「……カタカタ」
「ここがきょうガッキたちがそうじしゅるオウチでしゅ!」
それは此処からでもわかる異臭と不快な羽音の響き渡る魔窟――
「ゴミ屋敷じゃねぇえか!!」
――――
――
元は立派な家だったのだろう、両隣にある家の規模から庭付きの一軒家だと分かる。なぜ両隣を見なきゃわからないかって?
埋め尽くされてんだよっ! ゴミに!!
「カタカタカタ」
くっ、アロマの奴何事もなく居やがるな。
こういう時骨の体は便利だよなぁ
「カタカタ?」
「……いやなんでもない」
「ガッキちゃん、ホントにこんな所をお掃除するの?」
「はい! ちかくにしゅんでるひとがこまってたんでしゅ!」
おいおい、マジかよ? それでガッキにまさか頼んだってのか!?
「あ! こまってたひとがきまちた!」
くそっ! 文句の一言でも気が済まんぞこんなの!
「あれ? ガッキちゃんじゃないか、どうしたんだい? それに……ん?」
「お前がいたいけな幼女にこんな事頼んだ奴……」
「ゲルオ!? 何で此処に!?」
「ってお前、ボンじゃねえか!」
「えっと……お知合いですか?」
「あ、ああ」
以前ベヘモット退治で死闘を共にしたボンだがまさか……
「んん? おいゲルオ。 ガッキちゃんだけならまあいいが、其処にいる女はなんだ? まさか貴様アロマさんがいながら――」
「おいボン! お前がガッキにこんな仕打ちをするような奴とは思わなかったぞ!」
「はあ? 何のことだ?」
「このゴミ屋敷を掃除するようにお前が頼んだってガッキに聞いたぞ!」
「僕が? ガッキちゃんに? そんな事一度たりともいった覚えないぞ?」
んん?
「あ、あ、えとガッキはべつにボンしゃんに――」
はっ!! まずい、それ以上言わせては駄目だ!
「おーまーえーがー! そんなニュアンスでいったとかなんとかしたせいじゃないのか!」
「ううっ!? そういわれてみればそんな事を言ったような……」
よし! 会話していて薄々コイツのせいじゃない気がしていたが、コイツの事だ、こんな感じでいってみれば――
「言い出しっぺが何もしないってのはどうなんだろうな?」
「ううう、わかったよ。まあ、僕自身も困っていたからな。手伝ってやろう!」
きたコレ! そうでなくっちゃな相棒!
「えっと、何か知らないうちに話が進んでいるような?」
「カタカタ?」
「ボンしゃんもてつだってくれるんでちか?」
「ああ、確か前にこのゴミ屋敷の愚痴をいった覚えはあるしな。僕も手伝うよ」
「んじゃ、頑張って始めますかね!」
こうしてゴミ屋敷との壮絶な清掃バトルが始まったのだった――




