10話 元魔王、女学生とパーティーを組む?
名前だけの自己紹介を済ませていつもの受付嬢のとこに来たんだが――
「と、ととと登録をおねぎゃいします!」
「はい、新規で異世界の方ですね」
「はい!」
あらら、あんなにどもっちまって大丈夫かねえ?
「カタカタ」
「ん? なんだよアロマ?」
「カタ」
まあ、いいか。
「――ということですが疑問はありますか?」
「い、いえ。召喚された時と同じ説明だったんで大丈夫です」
「では、後ろの方もご一緒に確認してよろしいんですね?」
「はい! パーティー組みますんで!」
「確かに出来るだけお互いの能力は知っておいた方がいいですもんね」
あれ? 俺そういえばボンのステータスみてなかったな。
「では確認の為にHPからいきますね」
「はい!」
まあ本田は能力の低さでリストラされたらしいからな、あんまり期待はしてないが――
「HPは10200ですね。これは異世界人の中では平均的ですね」
「は、はい」
ほう、やっぱ人ってそんなもんなのな。
「MPは……100」
「え、100ですか……」
ああ、まさかこいつも100とはな、
「そう落ち込むなよ、俺だって――」
「万です。100万です」
え?
「ええ?」
「そ、そんなはずないです。だってあたし……」
「いえ、あなたの身の上とかどうでもいいので次行きますね?」
「えええ……」
聞いてやれよ、どこまで薄情なんだよこの受付嬢は
「では、ここからはランク形式ですね。先ずは筋力ですが……Dです」
「は、はあ」
「魔力は貫禄のSですよ!」
まあ、MPが高かったしな。
「耐久ですが残念ながらDです」
「そ、そうですか」
おいおい、俺よりランクが2も上なんですが!?
「敏捷はCです。普通ですね」
「はい」
「総じて本田様は優秀な魔導系統として、今後は紹介できそうですね!」
「あ、あたしが魔法」
「では。此処からはスキルとレベルについてご説明します」
!!
「お、おい受付嬢! 俺その説明受けていないんだが?」
「ゲルオ様には適正スキルがなかったので時間の無駄と判断し省きました」
「いやいや、敏捷はそれなりにあっただろ!」
「メンド、ん、失礼しました。煩わしかったのでする気が無かったんです」
「おい、全然言い治せてないからな? むしろ不快感がつのる一方だからな?」
「まあまあ、ゲルオさん。落ち着いて一緒に聞きましょうよ」
「む、そうだな」
「じゃあ、受付嬢さん続きをお願いします」
「はい」
……本田の奴、自分のMPと魔力の高さに落ち着きやがったな。
まあ、不安材料がなくなったらそうもなるか。
「では、先ずはスキルですね。こちらはギルドで適性のあるものを選んでいただくか、魔法屋で購入したスクロールや、道場にて伝授され習得するのが一般的となっております」
「あ、あたしが買ったスクロールとかもかな?」
「ただし、適性の無い場合は意味のない行為になってしまうので注意してください」
「へぇ、因みにどうやって選んでいくんだ?」
「では、こちらをご覧ください」
そういって取り出したのは半透明な薄型の板だった。
「薄型タブレットみたいですね」
「まあ、そう思って頂いて結構です。これに本田様のギルドカードの情報を送り込んで……」
ピッ
「ほう、カードリーダーみたいの付いてんだな」
「……はい、読み込みました。するとこうやって得られるスキル一覧が出てきます。後はご自分に合った物を選んで頂ければ、なんやかんやで習得してます」
「な、何やかんやですか?」
「ええ、なんやかんやです」
おいおい、途中まではしっかりしてたのに最後フワッとしたな!
「まあ、使えるならいいか。それより、これはいくらでも覚えれるのか?」
「いえ、それ相応にスキルポイントが必要になります。こちらはご本人様のレベルを上げることにより、溜める事が可能となります」
「ん? そういえば俺の時代も経験値とレベルはあったがそういう物じゃなかったぞ?」
俺の時は経験値もレベルも勇者達の物で、魔族は適用外だったっけな?
「ゲルオ様の時代は昔すぎますから。そうですね、大型アップデートが500年前にあったと思ってください」
「なるほどな。理解したわ」
「なので、今現在はお渡ししたカードに、経験値を溜めレベルアップすることでスキルポイントが増加し、より多くの取得を目指していく感じです」
「経験値はどうやって得るんですか?」
「基本は討伐ですね。注意することは本人が止めを刺さないと得られない事でしょうか」
「あれ? もしかして俺って……」
情けなくて一度もちゃんと見ていなかったギルドカードをみるが、
「ない、今説明してる部分みたがまったくないぞ!?」
幼女の清掃活動で溜まってないのはまだしも、死ぬ思いしたベヘモット討伐による経験値がない!!
「俺の、俺の苦労がぁああああ!!」
「えっと、あのような事態がありますのでパーティーを組む際はしっかりとお互い相談してから臨むようにしてください」
ボンめ! えらく報酬を簡単に引き下がると思ったらこういうシステムがあったとはな!!
「他に方法はないんでしょうか?」
「そうですね、クエスト事態をしっかりこなしていれば少しずつですが溜まってはいきますよ。ただ一番効率がいいのはモンスター討伐というだけですね」
「なるほど、ではスクロールや伝授の違いは何なんでしょうか?」
「おお、それは聞いておきたいな」
「大まかにいえば自分自身で苦労して覚えるかどうかですね。スクロールもキチンと内容を理解する地頭が必要ですし、伝授は修行に耐えなければなりません」
「ああ、それじゃあたしが買ったのも……」
「そうですね。初級冒険者にありがちな失敗ですね」
「ううう、結局無駄だったんだ」
本田には言えないが、そのスクロールはちゃんと焼き芋の燃料として無駄にはならなかったがな。
「その点ギルドなら素早く覚えられるって訳か?」
「ええ、ただしスクロールや伝授はスキルへの理解が深まる為、通常より強力だったり無駄がなかったりなどのメリットもあります」
「一概には言えないって事か」
「そういえばギルドによくあるクラスってないんですか?」
「その質問は異世界人の方は多いですね」
「ああ、ナイトとかビショップとかだろ?」
「これは非常に根深い問題がありまして無くなりました」
「昔はあったんですね」
「いったい何が……」
「あるドラゴン使いのクラスがいつも募集を――」
「ストップ!! わかった何が起きたかは分かった!」
「え? ええ?」
本田はわかってないみたいだがなるほどな、
「あれだ、クラス差別みたいのが出来ちまったんだろ?」
「ええ、有体に言えばそうですね」
「差別ですか。つまり不遇な方達の為に……」
いつの時代も優劣をつけて蔑む奴らがいるもんだ。そうやってクラスやステータスや千年間サボってたなんて事ぐらいで人を判断しやがって!
「カタカタ」
「いえ、為にでなく“せい”で、ですね」
「あれ?」
「不遇なクラスだからもっとポイント低くしろとか、強いクラスは修正しろとか、運営が悪いなどいってギルドに毎日押しかけて、終いには不法占拠まで起こしたらしいですよ?」
「おうふ」
「そんな事もあってクラス制度は無くなって、今のスキルのみ取得するようになったんです。まあ、ランク分けで実力はわかりますしね」
これはちょっと擁護できませんね……
「じゃ、じゃあちょっとスキルを選びますね――」
――――
――
こうして本田のスキル選びも終わり、ようやっと次の段階に移れた。
「では、本田様とゲルオでパーティー申請を通しておきました」
こいつ遂に俺に様つけなくなったな。
「お、お願いします」
「おう!」
「アロマ様のカードはもうしばらく待って頂きます。申し訳ございません」
「カタカタ」
まーだ時間かかってんのか、これだからお役所仕事は……
「ゲルオ、うちは役所ではないのですからそんな露骨な顔はしないでいただけますか」
「は、はい」
くそ、そんな顔に出てたか?
「それでは今回は時間も押していますのでこちらのクエストを紹介させて頂きますね」
「えっと、これって?」
「お、おい、マジかよ?」
「あら? 丁度依頼主も来たみたいですよ」
そういってやって来たのは、
「ああっ! ゲルオにアロマしゃん! おひしゃひぶりでしゅ!!」
Eランククエストの依頼人ガッキだった……




