オアシスの支配者
「師匠、あれは…オアシスですよね?ノダル砂漠には水源はないはずだったのでは…僕たちは大発見をしてしまったのでしょうか。それとも暑さでおかしくなり、僕は夢でも見ているのでしょうか?」
「儂にもオアシスに見えるな。どちらにせよ、オアシスに行くしかないようだな」
護衛のナッシュはオアシスに向けて走って先に行ってしまった。
護衛対象を置いて先に行くとは…生還したら減給だな。
「マルコ、儂たちも行くぞ」
「あ、待ってくださいよー」
透き通るような綺麗な水が広がるオアシス。その水はそのまま飲めそうに思えた。何より砂漠地帯とは思えないように涼しい。オアシスが砂漠の楽園とはよく言ったものだ。
ウインターとマルコはオアシスの水を飲んだ。ついでに3頭のラクダにも飲ませた。
ラクダの世話をする。ラクダも水をごくごくと美味しそうに飲んでいる。
「お前は何者だ!」
突如、護衛のナッシュの怒声を含む声が聞こえた。
声をする方を見ると、ナッシュは刀身1mある剣を抜き、一人の異国風の男と対峙していた。
ウインターは隊商として外国にも行くので色々な人種を見てきた。オアシスにいた男は白と黒の奇妙な服装をしている。我々と同じ黒髪に平たい顔をした男だ。
「見慣れない顔だな?もう一度だけ言う。お前は何者だ?」
「島緑です。外国風に言えば緑・島です。…言葉が通じている!?私は日本人です。気がついたらこの砂漠に居ました。ここはどこですか?」
「日本人?聞いたことがないな。ここはエリモス王国の西にあるノダル砂漠だ。俺は隊商の護衛をしているナッシュという者だ。後ろにいる男が商人のウインター。横にいる子供はマルコだ。俺たちはピソーク・ワームに群れで襲われてノダル砂漠に逃げ込んだ」
「エイモス王国に、ノダル砂漠ですか?それに、ワーム?なら…アメリカ…―」
「どれも聞いたことがない国だな。電話?飛行機?も分からない」
「どういうことだ…」
ミドリ・シマと名乗った異国の男は困惑しているようだ。家名があるのはどこかの貴族様なのか?敵意は感じないし、強そうにも思えない。ここは商人である儂が交渉した方が早そうだ。
「ミドリ・シマ殿、儂は先ほど紹介されたウインターと申します。このオアシスはミドリ殿の物で間違いないですか?」
「どういうことですか?」
「ノダル砂漠には水源はもうないとされ、もし見つけたら第一発見者が所有者となる決まりがあります。水は大変貴重なものです。それを我々は勝手に飲んでしまいました。もし、金銭を要求するなら可能な限りお支払いします」
「金は要りません。その代わり情報を下さい」
「分かりました。我々が知る限りの情報をお教えします――」
「……色々な情報ありがとうございました。疲れたでしょう?今日はここに泊まったらどうですか?客人として歓迎しますよ」
ウインターはまだミドリと話たいことがあった。何よりまだ子供のマルコが疲れているので、お言葉に甘えて休ませてもらうことにした。
「リンゴにバナナ、まさか…砂漠の真ん中でご馳走になるとは夢にも思いませんでしたよ。これを他人に話しても信じてもらえるだろうか…」
なんとオアシスには飲める水だけではなく、バナナとリンゴの木があり、夕食に別けてもらえた。
貴重な食べ物と水を無償で提供された。
異国人は気前が良いのか?それとも無知ゆえの振る舞いか。
「美味いな、俺はバナナ?というのは初めて食べるがこれは町で売れるんじゃないか」
「僕はリンゴだな。あっ、バナナも美味しいです」
儂が包みからパンを取り出すと、異国人が興味津々に見ている。
「これは、エイモス王国で作られたパンです。よければ食べますか?長持ちするので、時間が経っても問題ありませんよ」
「頂きます。ほう…これがエイモス王国産のパンですか…」
夜になり、儂らはハンモックなるものに案内されて寝た。
寝心地は最高だった。
朝、起きて顔を洗い水と果物を食べた。これも無償で提供された。
「ミドリ・シマ殿、昨日話したことをもう一度確認します。この場所を隊商の中継地点として活用してよろしいですか?もちろん対価はしっかりと払います」
「問題ありません」
水と食べ物を分けてもらい、ウインター達はオアシスを後にした。
「これは大発見ですぞ。悲願だった儂の祖父らの交易ルートが復活するかもしれん」
オアシスの支配者が気まぐれを起こさない限り、我らの代は安泰だとウインターは思った。




