砂漠の楽園
不毛の大地に突如現れた楽園、オアシス。オアシスに近づいてみるも、蜃気楼ではなく実態を伴っているように思える。水があり、樹木があり、何と実がついたリンゴの木があった。
「あり得ない」
それが島緑の第一感想。そのまま飲めそうな水があることと、なぜ砂漠地帯にリンゴの木があるのか。
水は透き通るように綺麗でオアシスも若干涼しい感じがする。川もないのになぜ水があるのか?水が自然に湧いているのか?考察は後にする。喉が渇いて我慢ができなくなり水を飲むことにした。そのまま直接口をつけて水をごくごくと飲む。
「美味い」
今までこれほど美味い水は飲んだことがない。直接飲んだら危険だと思ったが、持ち物もないしどうすることもできなかった。軽率な行動だっただろうか?
念の為に、空のペットボトルの中にオアシスの水を入れた。
水を飲んで渇きを癒したら腹が減った。体は正直だ。リンゴの木から赤いリンゴの実を1個とり食べる。シャリシャリとみずみずしいリンゴで、甘くてとても美味しかった。1個程度で10代のお腹は満足できるはずなく、結局3個もリンゴを食べてしまった。
「まさに、ここは砂漠の楽園だ」
砂漠という人間にとって生存が厳しい環境の中、飲める水があり、食べる物もある。
ここを砂漠の楽園と言わずどこを楽園というのか!
「これからどうしよう?」
独り言で自問する。オアシスがあるこの場所から移動するのは危険だと思う。今いる砂漠の広さは分からないが、2日程度人間が歩いて脱出できる狭さではない。
これほどまでのオアシスなら観光客や、現地人の人が利用してる可能性は高い。昔、隊商はオアシスを通って休息をとり、次の目的地に向かったそうだ。つまり、このオアシスで救助を待った方が俺の生存確率は高くなる。やることがないのでオアシスを見て回ろうか。
リンゴの木はあるけど他の木はない。
「どうせならバナナが食べたかったな」
ふと俺が一人呟いた言葉に反応するように、リンゴの木の隣に大きく実ったバナナの木が出現した。
「えっ!?」
いつまでも驚いても仕方がないのでバナナの実から一本もぎ取る。バナナの皮をとり除き食べる。スーパーで売ってるような美味しいバナナの味だった。リンゴだけでは満足できなかったのでバナナを腹一杯食べた。水が飲みたいと思ったらオアシスが出現して、腹が減ったらバナナが出た。
「ここは…俺が想像したことが現実になるのか?…俺を家に帰してくれ……」
島緑は目を瞑り祈ったが相変わらずオアシスにいる。
駄目か……他のことも試してみるか。