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砂漠化する世界でオアシスを創る  作者: 地下水
第三章 砂漠の王国
34/43

行列

 食料を都市アルブに届けるために、ミドリはモンブランの背に乗り上空を飛行する。背後には10頭ものワイバーンが配下のように着いてきている。ワイバーンの群れはモンブランの命令を忠実に聞き、実行してくれる。安全な食べ物と水と住居を提供したのだ。これくらいしてもらわないと割りに合わない。

 他のワイバーンにも乗ってみたが…乗り心地も、性能もモンブランの方が圧倒的に上だった。もっと個別に時間をかけて、ワイバーンとの絆を深めればまた違った感想が出てくるかもしれない。

 もうすぐか…?後30分もしない内に到着するだろう。ミドリは現地にいるクリスに連絡する。ミドリが生みだしたクリスとはなぜか離れていても、頭の中で会話ができる。 

 

 「クリス聞こえるか?そろそろアルブに着く。ライフさんとオリーブにも伝えてくれ」

 「分かりました。こちらはすごいですよ!」

 「…ん?何がすごいの?」

 「屋台に並ぶ人の行列が沢山です」

 「ああ…分かった。とにかくもう着くのでよろしく」


 大勢の行列か。最初に果物を販売した時から人気が出てすぐに売り切れてしまう。今では開店1時間前にも関わらず行列ができる。

 アルブの白い町が見えてきた。


 「モンブラン。ゆっくり降下してくれ。仲間のワイバーンにも伝えてくれ」

 「ギャウ」


 上空は風が強いため、言葉を伝えにくいが上手くいった。

 下に降りると、ライフと3頭のラクダと若い男が出迎えてくれた。若い男はワイバーンの首に掛けてある鞄から、食べ物を積み下ろしを手伝ってもらう為に臨時に雇った。

 作業が終わったのでワイバーン達は棲み処に帰って行く。10頭以上のワイバーンがいるのでかなり目立つ。もう何十回と繰り返してるので、知ってる人は「ああ、またか」と思っている。中には初めて見る人もいるので驚いている人もいる。

 

 オリーブが待っている屋台がある裏路地に向かう。何度も来て慣れたので、迷わず目的地まで行けるようになった。臨時に雇った若い男が何やらライフさんと話している。男はラクダ1頭を連れてどこかへ去って行った。


 「ライフさん。何かありました?」

 「実は…積み荷からリンゴを1個落としたようで…」

 「ふ~ん。彼を臨時に10回くらい使ってますよね?屋台の場所は分かると思うので先に行きましょう」

 「ええ、分かりました」


 屋台に近づくと人だかりができている。どうやらこれが行列らしい。

 

 「ちょっと!通りたいので横に寄ってくれ」

 「あー、ミドリ。ようやく来ましたね」

 

 屋台の隣にいるクリスに話しかけられた。クリスは人前で話しており、周りの人も普通に受け入れていた。魔法がある世界だ。他に人語を話す生き物もいるかもしれないからと、ミドリは無理やり納得した。人語を話すラクダと、一生懸命に仕事に取り組む少女のオリーブのおかげもあり、常連も増えているようだ。


 「いつも以上に混んでいるな。食べ物を屋台に並べる。オリーブも手伝ってくれ」

 「うん。手伝うよ。あたし役に立ってる?」

 「ああ…すごく助かるよ。今日の昼食はお肉を食べに行こうね」

 「やったぁー。あたしラクダ肉が食べたいー」


 ぴょんぴょんと小さくジャンプしている。喜んでいるみたいだし、仕事も頑張ってくれるだろう。

 やがて、大量にあった果物に野菜も全て売り切れた。人だかりもやがてまばらになり無くなる。今日も一日疲れた。早くご飯を食べてオアシスでゆったりしたい。

 

 「あれ?あの男は…?」


 荷物を背負った一頭のラクダと男がまだ屋台に来てないことに気がついた。

 ライフさんと話をして、手分けをして探す。


 「駄目です。見つかりません。来た道を戻って探しましたがどこにもいません」

 「こちらもです。目撃者の話ではあの男はあろうことか…ミドリ様の果物を別の場所で売りつけて、ラクダと共にどこかへ行ってしまったそうです」

 「何!!つまり俺の財産を持ち逃げしたということか?」


 果物は魔法でいくらでも作れるので問題はない。だが、ラクダの価値は違う。“砂漠の船”と呼ばれるだけあり、地球でも近代までは砂漠地帯を移動するのに利用してきた。現代でも利用する場合があるほど砂漠に特化した生き物だ。

 

 「ミドリ様すみません。わしの不手際です」

 「いや、俺も見落としていました。まさか財産を持ち逃げされるとは思ってもみませんでした。商売だから失敗もあると思います。しかし、この経験を次の商売に活かしましょう。だけど、他の人を雇ってもまた裏切られそうで困りますね。信用できる人となると、ミドリの島から何人か連れてくるしかないですかねぇ…」

 「そういうことでしたら…心当たりがあります。アストラ国には奴隷の売買が認められています。ミドリ様は奴隷が好きではないと聞いていますが、奴隷は主人を裏切りません。決して安い買い物ではありませんが、ここは長期的に考えてみたらどうでしょうか…?」

 

 奴隷か…。以前に出会った元奴隷のレモンを思い出した。かなり美少女だった。元気にしているかな?

 せっかく異世界に来たんだ。奴隷市場に行くだけ行ってみるか。

 

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