奴隷の少女
レニーは剣を抜き島緑に向ける。目つきは真剣で、断ったら問答無用で斬られそうな気配を感じる。まずは言葉を投げかけてみるか。
「レニー様。私はオアシスの第一発見者のミドリです。オアシスは第一発見者のものであると法律で決まっているとお聞きました。それを武力で奪おうとするのはおかしいと思います」
「うるさい、うるさい。見慣れぬ服装に、顔つき。そして、言葉を話す奇妙なラクダ。そんなおかしな奴らの言葉は聞かない。第一、武力で奪って何が悪い」
少女は開き直っているようだ。交渉は無理そうだ。
そこまで欲しければあげるよ。
「…分かりました。その楽園はお譲りしますよ…」
レニーの発言に不満そうなクリスが首を振って抗議する。
「ミドリ、よろしいのですか?僕は戦えませんが、ミドリの応援はできます。がんばれー!、がんばれー!、ミドリ!」
「恥ずかしいから…止めてくれ。俺に何をさせたいの!?」
少し引きながら俺とラクダの会話を聞いていた少女が言う。
「結論はでたか。ミドリと言ったか。レニー様が統治することをあり難く思え。何もタダで寄越せと言う訳ではない。レモン、今日からお前の主はミドリだ。分かったな?」
レモンと呼ばれたレニーと同じ歳くらいの少女がラクダから降りてきた。
黒髪に丸い顔。身長は俺(170cm)と同じくらいある。民族衣装をまとう姿はレニーに引けをとらないくらい美しく感じた。
「レモンと申します。レニー様の奴隷をしておりました。家事に勉強何でもできます。ミドリ様、よろしくお願いします」
レモンの声は小鳥が囀るような小さい声だ。
奴隷?異世界なので奴隷制度があるのか?
レモンのような美しい少女が傍にいて嬉しくないわけはない。
ただ…正直…。
「どうした…?不満そうだな。レモンは見ての通り器量よし、教育も施しているので学もある。私が言うのも何だがかなりいいと思うぞ」
「いえ…私が暮らしていた所では奴隷はいませんでしたので…」
「一度言ったことは簡単には覆られない。レモンはお前のものだ。好きにすればいい。さあ、ここから立ち去れ!」
レモンはレニーの方を見て頭を下げる。
「レニー様、今まで良くしていただき、本当にありがとうございました」
「ふんっ!私も助かったぞ?むさ苦しい男どもしかいない中ではどうしてもな!」
断れる雰囲気ではない。ウインター達に会ったら相談してみるか。
レモンと島緑にラクダのクリスは楽園を去り、灼熱の砂漠を進む。




