表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

20××年6月19日 種まき

 昨日、雛子の家からプランターを貰ってきた。

 案の定、雛子は世話もしていないプランターを、背中に隠そうとしながら「育ててるもん! ベランダ菜園してるもんっ!」と言ってきた。

 何がベランダ菜園だ。貧乏草しか生えてないプランターだったぞ。

 ぶーぶー文句を言いながら彼女が膨らませた頬を、容赦なく片手で潰す。


 こいつと会う度にどきどきしてた頃もあったんだよなぁ?

 今は会っても馴染んだ気軽さはあるものの、心浮き立つ気持ちも喜びに満ちた緊張もない。

 何が良くて付き合い始めたんだったっけ?

 まぁ、それは後で考えよう。


 渋る雛子を説き伏せて、プランターを持って帰った。

 中の土は雑草だらけだったので、公園の木の根元に捨てる。

 途中ホームセンターに寄って、新しい土や肥料を買うのも忘れない。

 土は野菜用培養土で良いらしい。

 やっぱり野菜なのか。

 あ、でも一昨日この日記を書いたあと、よくよく調べてみたらマンドラゴラのあの、人の形部分は根っこではなかった。根茎。茎らしい。

 カブの仲間ではなく、生姜の仲間ということになる。

 そしてこれも初めて知ったのだが、マンドラゴラには雄と雌があり、季節でその雌雄が分かれるらしい。

 春に花が咲くのが雄、秋に花が咲くのが雌。

 今は6月なので、花が咲くのは夏から秋にかけて。ということは雌だな。


 作業はベランダで行った。

 買ってきた土をプランターに敷き詰め、種を撒く。

 適当な間隔で撒いて、あとで生えてきた芽を間引くらしい。

 このあたりの作業は普通の野菜もファンタジーな野菜も同じなんだな。

 めっちゃセクシーなマンドラゴラになれよー、と言いながら撒く。

 せっかくの雌なのだから、断然そっちの方が良いに決まっている!


 撒いた後はプランターの底から水が滴るくらいにじょうろで水をやった。

 ちなみにじょうろも雛子から問答無用で譲り受けたものだ。

 じょうろだってベランダのスミで放置されるより、俺に使われる方が喜んでいることだろう。


 さて、ここまでの作業を終えて、困惑する栽培方法を見つけてしまった。

 撒いたマンドラゴラの種に精液を掛けるというものだ。


 二度見した。

 なんか掛けると早く芽が出るとか。

 何でっ?! と二度見した。

 他のサイトを見てみても、そう書いてあるところは多い。

 これはどうもマンドラゴラの起源が、死刑囚が絞首台でビビッて射精したところから生えてきたというところから来ているらしい。

 早く芽が出てほしいのはやまやまだが、ベランダでそんなことができるはずもなく、無視することにする。

 やって誰かに見られでもしたらマンドラゴラを育てるどころじゃない。社会的に抹殺されてしまう。


 普通に野菜を育てる感覚で、マンドラゴラを育てることにする。

 とはいえ、早く芽が出てほしいものだ。楽しみである。 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ