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最強無敵のユーミルファナー  作者: 王国民
1章 英雄誕生
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初めての買い物

 フィーリアの家で勉強した翌日、レオンハルトとフィーリアはピアを連れて街に出ていた。

 連れられてが正しいが、2人の認識では自分たちがメインだ。


「いっぱい人が居るな~。僕たちの家より人が多いんだね」


「この街の人口は15万人は居ますからね。旅人や冒険者、傭兵や行商人なども来ますから、いっぱいですよ? ぼっちゃま、リア様、はぐれないように私の手を握ってくださいね」


 キョロキョロするレオンハルトと、それに付いて行こうとするフィーリアを捕まえて手を繋いだ。


 レオンハルトは普段街に出ない。遊びはレオンハルトかフィーリアの屋敷だったからだ。

 しかし、平民の子どもと遊ばないわけではない。たんに2人の屋敷だと広くて遊ぶ場所が多い上に、オヤツが豪華なので、子どもたちが集まるのだ。

 最近は勉強ばかりの息子を、両親はとても心配していたので、エステルの提案は渡りに船だった。


「いろんな人が居るな~。本だけじゃ分からないこともいっぱいだねぇ、ピア」


「そうですよ。ぼっちゃまは訓練やお勉強を頑張っていますけど、お父様とお母様は他のことも学んで欲しいんです」


 ピアの話を聞いているのかいないのか、レオンハルトは街並みや人混みに夢中だ。


 この世界では貧しい者は家がない。所謂(いわゆる)、貧困層と言われる貧民だ。

 孤児院から(あぶ)れた親の居ない子どもや、借金を背負ったり職を失った者などだ。

 小さな子どもの服装は、ボロ布を巻いただけのような腰巻きに裸足。

 (とお)を超える子どもたちは、着古してサイズの小さくなった貫頭衣を上下に切って、胸と下半身を(おお)って、お腹を出している。

 ファッションではなく、(たけ)が足りない服を着るための生活の知恵だ。

 食事は教会や街の人間の施しで、数日に1度だけ固い黒パンと塩スープ、たまに野菜スープだ。

 レオンハルトやフィーリアの両親も多額の寄付をしている。

 大人はたまに貰える人足(にんそく)の仕事などで食い繋いでいる。


 中間層が最も多い。

 家は木造で色さえ付いていない小屋、ログハウスなどで、部屋数も2~3部屋しかない。

 ピンからキリまで居るが、大体そんな家に住んでいる。

 服装は中古品を買って、服が破れたら継ぎを当てて、着られなくなるまで着倒す。

 靴は、木でできたサンダルや木靴などを履いている。

 中間層の上のほうは、安い庶民向けの新品を買ったりもする。それを売った物が中古品だ。

 それを中間層の下が買い、その中古品を捨てた物が、貧困層の服になるのだ。

 食事は1日に2度、固い黒パンに豆と野菜のスープ、たまに乾パンのようなオヤツを食べる。


 富裕層は全体の5%以下だろう。

 やはりピンからキリまで居るが、下は煉瓦や石造りの家。上はレオンハルトやフィーリアの家のような大邸宅だ。

 服は上等な布を使い、(えり)の付いたキッチリした服装や、ゆったりしたローブなどを着ている。

 レオンハルトも貴族のお坊ちゃんが着るような、金糸の刺繍が入った黒い服を着ているし、フィーリアも上品な白いローブにストールを掛けている。

 靴は革製の足首まで保護するブーツが人気だ。

 食事は軟らかい白パンやハチミツなどの甘味料を使った菓子パンなど。

 肉と野菜のスープに、ソースの掛かった肉や魚を食べる。香辛料なども使って飽きないような味付けになっている。

 デサートにはフルーツやケーキが出る。


 どの国でも格差はひどい。

 貧困層の居る場所を避けて、舗装された道を行くピア。

 2人にはまだ見せたくないのだ。


「ぼっちゃま、リア様、食べたい物や欲しい物はありますか?」


 市場に着いたらさっそく、ピアが買い物を見せて勉強させる。

 良い匂いに、鼻をヒクヒクさせたレオンハルトがフラフラ向かう。引っ張られて付いて行くフィーリアとピア。

 ジュウジュウと音と良い匂いを振り撒いている、豚肉の串焼きの屋台に到着した。


「ぼっちゃま、この木札に書いてあるのがメニューと値段です。こちらが塩、2000リラ。こちらがタレ、2000リラ。こちらが塩胡椒、2200リラ。こちらが香辛料、2500リラと書いてあります」


 屋台の店主は、いきなりメイドがやって来たのに驚いたものの、上等な服を着たレオンハルトたちを見て、納得したように頷いて、目を細めて笑っている。


「僕は辛いやつ! リアはどうする?」


 元気よく手を挙げて、ピアに伝える。


「あたしは辛いのダメ。甘いのがいいな」


 店主によれば、タレが甘いらしい。


「では、お金の説明をしますね?」


「「ハーイ!」」


 お客が多いので、勉強中の2人は少し屋台から離れる。

 肉や調味料が高いので、買って行く者は新品の服を着ている者ばかりだ。


「では、このピアがお金の説明をしますね。まずは銅貨ですよ。小さいのから順に1リラ、10リラ、100リラです。大きさも違いますし、数字もあるので判りやすいですね」


 うんうんと頷く2人。


「次は銀貨です。やっぱり小さいのから順に、1000リラ、1万リラ、10万リラです。普通の屋台では、1万リラ銀貨くらいまでしか、お釣りが足りないので、あまり使いません。気を付けてくださいね?」


 お~、という表情でコクコクする。


「そして大きなお店でしか使えない金貨です。小さいのから順に100万リラ、1000万リラ、1億リラです」


 周囲からどよめきが聴こえる。そんな大金を持ち歩く奴は滅多に居ないので当然だ。

 周囲が騒がしくなったので、フィーリアが怯えてレオンハルトにしがみ付く。

 ピアは周囲を見回して威圧する。普段から英雄たちと暮らしているので、意外に迫力がある。

 台風の目みたいに、レオンハルトたちの周りから人がサーっと退いていく。

 満足したのか、1つ頷いて説明を再開した。


「そしてこれが最高の貨幣、竜金貨ですよ!」


 精緻(せいち)な竜の模様が付いた直径8センチの金貨を掲げる。

 少し離れた場所から悲鳴が上がり、レオンハルトは煩そうに眉を寄せている。

 フィーリアは泣きそうだ。フィーリアの父、フランクが居たら、メイドにそんな物を持たすなとエルネストたちが怒られるだろう。


「これ1枚で100億リラです! スゴいですよね~。庶民の私では本来一生見ない物です!」


「「「庶民は金貨だって滅多に見ねえよ!」」」


 庶民たちが一斉(いっせい)にツッコんだ。

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