古代文明の遺産
本日2度目の更新です。
倒した女性に近付くレオンハルト。
彼女の身体が魔力で構成されていたことに気付いていたので、容赦なく斬ったのだ。
「生きてるよな? お前何なんだ?」
身体を上下に断たれた彼女は、上半身と下半身をくっ付ける。
魔力で構成されているので、魔力さえあれば大丈夫なのだろう。
「敗北しましたので所有者と認定致します」
立ち上がった女性は、レオンハルトを真っ直ぐ見つめて宣言した。
「では本機の説明をさせて頂きます」
「ちょっと待った! 先に教官たちを送る」
レオンハルトは回復系の魔法は苦手なので、マーティスたちを学校に送ってから事情を聞くことにした。
転移でクレーターまで戻り、気絶している教官たちを学校まで転移させた。
「で。お前は何なんだ? いきなり攻撃してきた理由も話してくれ」
レオンハルトはまだ少し警戒して距離を取って訊いた。
「その前に質問をしても宜しいでしょうか?」
やはり少女めいた仕草で首を傾げる。
身長は170センチ近くの長身なのに、小さく見えるくらい儚げだ。
レオンハルトは質問を許可する。
「ありがとうございます。学校とはマスターの本拠地と推測致しますが、彼らと一緒に帰還しないのは何故でしょう?」
レオンハルトは腕組みしながら、ジト目で女性を見て答える。
「お前が教官に攻撃したからだ。先に事情を聞いておかないと説明しようがない。最悪戦いになれば、お前が皆を倒すだろ?」
戦闘教官があっさり負ける以上は、危険かもしれない奴を連れて帰れないだろう。
「納得しました。本機は危険ではないことを証明致します」
そう言って事情を話し始めた。
「本機は街の地下に存在した研究所で開発された装着型魔導戦闘人形、UーML型。開発者が付けた名前が、通称ユーミルです」
いきなり知らない単語を言われて疑問顔のレオンハルト。それでも必死に理解に努める。
「ファナーって言うのがお前みたいな奴の総称ってことで、個体名がユーミル?」
「その通りです。本機の身体は魔力で構成されていますから基本的には不滅です。しかし、コアが破壊されると身体を保てずに消滅します。コアには機能が全て詰まっています」
ユーミルはコアらしき赤い珠を心臓付近から浮かび上がらせる。
「それが壊れるとマズイんだな?」
「肯定します。大事なことなので記憶しておいて下さいね? そして本機の能力ですが、魔力で構成されているため、形を変えることが可能です。本機をマスターが装着することによって、武器や防具などになります」
レオンハルトは装着のところで不思議そうな顔になる。
本当にできるんだろうか? といった疑うような顔である。
「大きく分けて、ウェポンモード、アーマーモード、ウイングモードの3つです。ウェポンモードは各種武器に、ディフェンサーモードは鎧や盾に、ウイングモードは飛行可能な翼に変化します」
「飛べるのか!? 凄いぞ!」
レオンハルトは空を飛ぶ魔法を開発しようと研究したが、未だに開発できないので大喜びだ。
「そして最強の聖剣となるホーリーウェポンモードがあり、相当な魔力の使い手でなければ扱えません。本機が目覚めたのはマスターとなり得る魔力を感じたためです。本機が攻撃を仕掛けた理由も、マスターを見付けるために強力な魔力を扱える戦士かどうか判断するためです。魔力が強いだけでは本機の機能を充分に活かせませんから」
「武器や防具になるなら技量も要るもんな」
ユーミル以上の戦闘能力がなければ本人が戦ったほうが良いだろうから理には適っている。
「ところで、ユーミルが創られた理由は何だ?」
これほどの戦闘能力を持たせるからには理由があるはずだ。
「申し訳ありません。データが欠損しているので」
「判んないのか……他の遺跡に入れば判るかもしれないな」
「研究所に入るには鍵が必要ですが」
遺跡の調査は終わっているから、国が保管しているか紛失したかのどちらかだろう。
レオンハルトの魔法で吹き飛んでいないことを祈りたい。
「もしくは本機の聖剣を使って入り口を破壊するなどの方法が」
乱暴な話だが、レオンハルトのトンデモ魔法で全部吹き飛ばすよりはマシだ。
「何にせよ、お前のことは判ったし、学校に帰るか」
「マスター。その前に低消費モードに変身しても宜しいですか?」
首を傾げて許可を求める。
「低消費モードって何だ?」
「はい。説明致します。マスターに装着されていない状態で、魔力の消費を抑えるためのモードです。装着されている時はマスターから魔力供給も可能ですが、待機状態では自然の魔力を吸収しながら活動します。ですが回復は遅いのです。低消費モードに変身すると消費量より回復量のほうがかなり多いので、回復が早まります」
現在の状態は戦闘モードらしく、全機能を使える上に戦闘能力も高いが、身体が大人な分、身体を維持する魔力も多い。
なので身体を130センチほどの少女に縮めて、幾つかの機能を停止させるのだ。
「戦わないなら普段は低消費モードに変身すればいいだろ? 何で許可が要るんだ?」
メリットだけではないだろうから使用者の許可が必要なのだろう。
「幾つかの問題があります。まず戦闘能力が下がり、機能を停止するので不便なこともあります。ただ、装着はできるので武器や防具にはなれます」
装着者の魔力を使うから低消費モードでも関係ないらしい。
「それと性格も低消費モードになるため変わります」
「無口になるってことか?」
「はい。話すのも魔力を消費するので、話す頻度は下がるでしょう。性格は変わってもメモリーデータは一緒なので知識などは変わりません」
他にも100センチくらいの幼女に変身する潜入偵察モードがあるらしい。
幼女の姿で油断させて情報収集したり、小さな身体を活かして狭い場所に入ったり隠れたりする。
低消費モードと違い、身体が小さいが別の機能を持つので消費は高いらしい。
機能を使わなければ1番消費が少ないらしいが、性格的にじっとしてないので消費は多い。
「何にしてもさっきの戦闘で消費してるだろうから変身を許可する」
命令を受けると赤い眼が一瞬、ぼんやりと光るようだ。
「了解しました。命令変更、これより低消費モードに移行します」
ユーミルの身体が光を放ち、徐々に縮んで130センチより少し大きな少女になった。
赤い眼と前髪を切り揃えた金髪は変わらず、髪型がツインテールになった。
服装も肩が出ている青色のワンピースにエプロン、丈が短く太ももが見えていてニーソックスを穿いている。靴は足首までの革靴だ。服も魔力でできているので自由自在らしい。
「オレとおんなじくらいの背だな。本当に小さくなった」
ぼんやりとした眼でレオンハルトをじーっと見つめて、軽く頭を下げた。
「申し訳ありませんが動くのメンドクサイので背負ってください」
凄くものぐさな性格らしい。さすが低燃費だ。
サブヒロインにして古代文明の遺産です。
ネタバレになるのであらすじに書きませんでしたが、書き足しておきます。