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最強無敵のユーミルファナー  作者: 王国民
2章 王立養成学校
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古代遺跡の謎

 見学の前に戦闘教官と上級生たちが遺跡の安全を確かめたのち、生徒たちは各々(おのおの)遺跡を見て回った。

 苔や(つた)に覆われていたものの、建物自体には全く損傷が見当たらない。


「教官、そう言えば山に街を造ったのは何でですか? 不便過ぎますよね?」


 レオンハルトの疑問に、マーティスが腕を組ながら唸った。


「う~ん。何かしら理由が有って造ったのか、街を造ったあとに地面が隆起して山になったのかは判ってないんだ」


「山ってできるものなんですか?」


 滅び去った文明の街に心細かったフィーリアが、レオンハルトの腕にしがみ付きながら疑問を(てい)する。


「山っていうのは周りの地面がズレたりして押し上げられてできるらしい。古代文明が街を造ったあとに大災害でも起きたのかもしれん」


 どうやら古代文明のことは、まだ判明していることが少ないらしい。


「災害が起きたのに街が当時のまま壊れずに残っているのは何でです?」


 レオンハルトの目は(ひび)一つ入ってない石造りの建物を捉えて離さない。


「それは単純に頑丈だからだ。……見てろ」


 そう言ってマーティスは剣を構え、攻気功を全力で身体と剣に纏った。


「私の全力の斬撃は世界一硬いと言われているオリハルコンのインゴットにも傷を付けることができるんだが…………ハアッ!!」


 裂帛(れっぱく)の気合いと共に放った強烈な斬撃は、硬質の金属を叩いたような音を立てて弾かれた。


「…………このようにかすり傷一つ付けることもできない。君の父上、十剣(じゅっけん)のエルネスト様も、母上である魔法姫セレス様の全力を持ってしても傷付けられなかったらしい」


「お父さんとお母さんが!?」


 レオンハルトの中では、両親は無敵の超人だった。

 自分の本気の剣を余所見しながら受ける父には一生勝てないのではないかと思っていたし、自分の魔法を簡単に無効化してしまう母の前で魔法を使える気にはならない。


「その通りだ。人類最強クラスのお2人ですら傷付けられない。人間の力や現在の技術では加工できない材質でできている。だから災害でも残っているのでは、と言われているが事実は判ってないんだ」


「レオ君のパパたちでもムリなんだ……」


 フィーリアも2人の力を知っているのでショックを受けている。


「これほどの文明を誇った人類がなぜ滅びたのかは判らない。だが遺跡の内部に入れれば何か判るかもしれないが、破壊どころか傷付けることもできないので内部に入れない」


 遠くを見るような目で遺跡を見つめる。マーティスも元冒険者なので謎には興味があるのだ。

 後進を育てる道に入ったものの、まだ冒険に未練があるのかもしれない。

 胸に去来(きょらい)する未練を振り払うように頭を振って、レオンハルトたちに向き直る。


「まあ学術調査も終わっている。破壊できれば歴史的快挙だ。試してみるか?」


 さすがに無理だろうと思っているため口調は軽い。


「試していいですか? 剣じゃ通じないだろうし魔法で」


 魔法剣でも父の剣撃の威力に及ばないので魔法を選択したらしい。


「構わないぞ。傷でも付けられたら陛下から誉め言葉を戴けるかもしれん。陛下はどうしても内部調査をなさりたいらしい。古代文明が滅びた原因が判らないと同じことが起きた時に困るからな。調査が進まないのは陛下としても頭の痛い問題だ」


 マーティスが周囲の生徒たちを、レオンハルトが狙っている建物から離して準備が完了する。


 ──我 顕現するは火神の怒り 今こそ裁きの力をこの手に集い 邪悪を打ち砕く破壊の剣となせ


 魔法陣に呪文を書き込んでいく。

 かなりの魔力を込めているらしく、いつもより発動が遅い。

 すでにセレスティーナの魔力を超えた力を(そそ)ぎ込み、魔法科の戦闘教官たちは悲鳴にも似た声を上げている。

 想像以上の魔力に、魔法科の教官たちは生徒たちの前にマジックバリアを張る。

 それを確認して、レオンハルトが魔法を放つために魔法名を唱えた。


「ヴォルカニックエクスプロード!!」


 転移するような速度で魔方陣が飛んでいき、建物に着弾する。

 魔方陣が当たった場所からマグマが噴き出して大爆発を起こした。

 吹き荒れる熱が空まで赤く染め上げ、熱気を受けた木々や蔦が瞬時に消し炭になる。

 一瞬で燃え尽きるため、山に火事は拡がらないが、地獄のような光景に下級生たちが泣き出している。轟音で聞こえないが。


 この魔法はレオンハルトの魔法剣を応用した火と土の合成魔法なので、レオンハルトしか使えない。

 レオンハルトは単なる火魔法として押し通すつもりだ。


 破壊の嵐が治まると静寂が戻り、あとに残った音は生徒たちの泣き声だけだ。


「この魔法じゃ駄目か~」


 レオンハルトはさして残念でもなさそうに呟いている。

 視線の先には無傷の建物が在った。


「あんな凄い魔法でも駄目なんて!!」


「それよりあの生徒は何なんだ!?」


「信じられん魔力だったぞ……」


 魔法科の教官たちは宮廷魔術師になってもおかしくない人たちだが、レオンハルトの魔力収集力に驚いていた。


「死んじゃうかと思った」


「おかあさん、恐かったよ~」


「まだ暑いよ」


 人生で1番の恐怖を味わった生徒たちは、大抵のことには動じなくなるだろう。


「信じられんことをするな。クロスは剣が得意かと思っていたが、魔法も超一流だな」


 マーティスがレオンハルトに近寄り、冷や汗を拭いながら称賛する。気温が高くて暑いだけかもしれないが。


「リアもびっくりしちゃった。火傷してない?」


 フィーリアはレオンハルトが怪我をしていないかのほうが気になるようだ。身体をペタペタ触っている。


「教官! もっと強力な魔法を使いたいから、転移魔法で山から離れてもいいですか?」


「はへ? 転移魔法なんかできるのか? この人数だぞ?」


 間抜けな顔ってどんな顔? と訊かれたら、こんな顔と言われそうな表情のマーティス。


「さすがに全員は無理だけど、何回かに分けてなら」


 レオンハルトの言葉に、何か言いたそうな顔で黙り込む教官一同。

 マーティスは己の常識のほうが疑わしいと思って同僚に確認した。

 実際に山を一望できる場所まで20人を転移させられたので信じるしかない。

 何回か繰り返し、全員を避難させると、レオンハルトは無属性の魔法、サーチで生き物を見付けて全て避難させた。


「それじゃ準備もできたし、やりますよ?」


 全力の防御魔法を、魔法が使える者が全員で展開する。

 地面に伏せた人たちが頷く。


 ──天から降りそそぐ神の意志 我が意に背きし悪辣なる者に裁きの光を


 レオンハルトが現在使える最強の魔法である。


「ディバインジャッチメント!」


 限界まで魔力を込めた魔方陣を空に向かって放つ。

 1秒と経たずに、厚い雲を切り裂いて光の柱が舞い降りた。

 世界の終わりのような光に満ちた世界に、その場に居た人々は祈るように目を閉じた。


 砕けた山の破片が飛び散り、大地を抉って飛んでいく。

 爆風に吹き飛ばされないように、必死に地面を掴む生徒たち。

 飛んでくる大地の破片から生徒たちを守るために魔力を振り絞って防御する魔法使いたち。

 もはや人生を諦めた上級生たちは、力が抜けたのか吹き飛ばされていった。


 光と暴風が治まると、山は消え去っていた。


「…………でかい山1つ吹っ飛ばすなんて…………お前は悪魔なんかか?」


 さすがに疲れて膝をつくレオンハルトに、マーティスが呆れたように呟いた。

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